心に広がるBlue sky「うわぁ・・・、すごっ・・・。一ってマジで南先生が好きなんだ、感心する。」 「・・・・っ!!??わああっ!?!?」 「さん!?いつの間に!?」 聖帝学園を卒業して半年以上経ったある日の昼下がり。 あたしはその日、一の大学のサッカーグラウンドを訪れていた。 一は丁度ランチを取っている最中。 今は恋人になった南先生と木陰になったその場所で、シートを広げて二人仲良くお弁当を食べていた。 お弁当。 有る意味、恐怖のお弁当。 南先生の事は尊敬しているし、大好きなんだけど、あたしにはあれを口にする事は無理だ。 バレンタインの時の阿鼻叫喚図を思い出し、密かに身震いする。 お弁当箱の中身はどのオカズも黒一色。 それはどう見ても大きさの違う爆弾が仕込まれているようにしか見えない。 あれが元は肉や野菜と言う食材だったなんて信じられない。 料理と言う領域を超えている。 凄い。 とにかく凄い。 っていうか、これはもう一種の才能よね・・・。 なんて思いつつ、取りあえずはあたしの登場に驚く二人に挨拶をする。 実を言うと、この二人とも卒業以来初めて顔を合わせるのだ。 「お久しぶりです、南先生。一も!」 「ま、マジで久しぶり!っつか来るなら連絡くらい入れろよ!」 「さん、久しぶり。元気だった?あ、ほら、ここに座って。」 言って、南先生があたしの為に場所を空けてくれる。 あたしは素直にそこに腰を下ろした。 「さんお昼はもう食べたの?良かったら、一緒に・・・。」 「大丈夫です、先生!あ、あた、あたし、実は朝が遅かったら今全然お腹減ってなくて!」 「そうなの?じゃあお茶だけでもどうぞ。」 「あ、有難うございます。」 「・・・・・・・・・・・・あからさまにホッとしてんじゃねーよ、。」 クククッ。 笑いを堪えるような口調で、奴が小さくツッコミを入れる。 そしてその一はあの黒い物体Xを口に頬張っているところだった。 その様子を視界に入れつつ、あたしはこの二人は想像以上に上手くいってるんだな、と妙に納得してしまった。 何だろう、下手にラブいシーンを見せられるより、ずっとリアルにそう思ってしまう。 何より、尊敬の念だけでは食べられないあのお弁当を平然と口にしているのだ。 これはもう超ド級の愛じゃないだろうか。 「一君、私ちょっと空になったお弁当箱を洗ってくるわ。さんはゆっくりして行ってね。」 「え?でも・・・。」 「分かった、・・・・・・・サンキュ、悠里。」 「ううん、いいのよ。じゃあ、ちゃんと戻ってくるから心配しないで。」 言葉だけでなく、視線と視線で会話をする二人。 こう言うところは、やっぱり恋人同士の甘い感じが出てる。 そこであたしは、南先生が気を使って席を外してくれたんだと気付いた。 先生は分かっていたんだろう。 あたしが今日、ここに来たことの意味を。 あたしが今日、一に会いにきたことの意味を。 「ごめんね、二人っきりの貴重な時間を邪魔しちゃって。」 「いや、構わねぇよ。それに俺達の約束だっただろ?」 「・・・覚えててくれたんだ。物忘れの病的に激しかった一君が。」 茶化すように言うと、彼はあたしの頭に手を伸ばしてくしゃりと撫でた。 「当たり前だ、忘れねーよ。この半年間、今か、今かって、ずっと待ってたんだぜ? 翼の奴にも何度か確認して、その度にまだだから大人しく待ってろって怒られちまったりな。」 「・・・・・・・・・・・・・うん、ありがと。待っててくれて。」 「お前はB6や悠里以外で本当の俺を知っても怖がらずに笑っててくれた奴だ。 俺にとっては大事な友達で、大事な仲間だからな。」 「一・・・・。」 大事な友達。 大事な仲間。 それ以上になれないのかって。 あたしは一番、特別な位置に居たいって。 だけど今は違う。 嬉しい。 心から嬉しいと思えてる。 大事な仲間、大事な友達。 それは今のあたしにとっての最高の位置。 強がりじゃなく、そう思える。 うん・・・、あたし、やっぱり今日・・・ここにきて正解だったんだ。 今日が・・・約束の日、だったんだ・・・。 さっき南先生が紙コップに注いでくれたお茶を一口飲むと、あたしは青空に視線を移した。 雲一つない快晴の青。 それからあたしはゆっくりと口を開く。 「卒業式の日、南先生に告白しに行こうとしてたあんたを捕まえて、あたし・・・告白したんだったよね。」 「・・・・・・・・・ああ、そうだ・・・。俺がねこにゃん達の猫缶隠してる空き教室で、お前が昼寝に使ってたあの場所でな。」 卒業式のあの日。 あの日も、空はまぶしい位に快晴で。 スカイブルーの絵具をそのまま色付けした様に鮮やかで。 教室から見えたあの空は、今でもあたしの目に焼き付いている。 その室内で、あたしと一は向かい合って立っていた。 うるさい位に鳴り響く心臓の音。 緊張しまくりで、だけど卒業だと思うと言わずに居られないと思った。 本当は、一の気持ちを知っていたけど。 それでも、どうしても伝えたくて。 ―――好き、なの。あたし、一の事が好き。 え?お、お前・・・。 ―――転校してきてからずっと、一だけが好きだった。 言い終えてすぐ、あたしは一歩、一歩、アイツに近づき、その胸にコツンと額を押し付けた。 ほんの一瞬、ピクリと一の体が震えて、あたしの両肩に奴がそっと手を置いた。 そして。 ごめん・・・・、俺は・・・お前の気持ちには応えられない。 お前の事は・・・その、大事な仲間で、友達だって思ってる、けど・・・ そこで言葉を切った一が、グイと、あたしの体を自分から離した。 そして真っ直ぐにあたしの目を見て言ったのだ。 俺が好きなのは、南先生なんだ。 知っていたけど。 分かっていたけど。 一の口から直接聞くと、あたしは茫然としてしまった。 仲間。 友達。 とても綺麗な言葉だ。 だけど、この時のあたしには、ただただ残酷に心に響いて。 震える唇を噛みしめて、涙だけは見せまいとした。 そしてその後、一は南先生に告白し、先生と両想いになる事が出来た。 それからあたしはその日の夜に一にメールをした。 『いつか、いつだか分かんないけど、もしも一のことを大事な友達だって、 大事な仲間だってあたしが心から思えるようになって、 あんたの前で本当の意味で笑えるようになったら、 その時はあたしから一に会いに行きます。 だからその時は、笑って迎えてくれると約束してくれる? 凄く身勝手なことを言ってごめん、だけど、どうか、お願いします。 待っていて、あたしは一と過去を笑い飛ばせる関係になりたい。 今は出来ないけど、いつかきっとそうなるから。』 涙でぐしゃぐしゃになりながら、送信するまでに随分時間がかかったのを覚えてる。 本当はそんな綺麗ごとあり得る訳ないって、心の片隅で思っていて。 だけど、あたしはやっぱり一との関係をどんな形であれ続けて行きたかったのだ。 あの時のあたしの頭には、それしかなかったんだと思う。 今は勿論、そうじゃないけど。 『ああ、約束する。約束の日が来るのを待ってるぜ。』 返信された文章はごく短くて。 だけどあたしはこの時またしても大泣きしてしまったのだった。 「・・・今だから、言えるけどさ。」 「何?」 「お前が俺に告って来たあの時、俺・・・実は一瞬心がグラついちまって・・・、 その・・・お前の事抱き寄せようとしてたんだよな・・・。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。え?」 きょとん。 思いもよらぬ台詞の内容に、あたしは一瞬間抜けな顔で問い返す。 一はあたしから目を逸らして明後日の方向を向いた。 「これ、悠里には内緒な。」 「・・・・・・・・・・え?え?えええええ!?マジ、なの?」 「・・・・ああ、マジで。」 そう答える一の横顔を見ながら、あたしは不意に思い出した。 あたしの肩に置かれた一の掌。 少しだけ熱を持っていて、小刻みに震えてた。 「・・・じゃああの時妙に震えてたのって・・・。」 「・・・俺なりの葛藤があったんだよ・・・。 その、悠里の事は勿論一番だったけど、お前の事を全く女として見てなかったかっつーと・・・。 うっわ、俺すげぇいい加減な男みたいじゃねぇ!?」 「・・・・・・・・ブッ、ブっ・・・くっ、あっは!マジで・・・!?どうしよう、ごめん、凄い笑えるんだけど…!」 「おいおい、そこ笑うとこなのかよ!?」 「うん、だよね・・・そうなんだけ、あははははははっ!」 笑いを堪えようとしたあたしは結局それに失敗し、笑い声を上げる。 告白をした直後のあの時。 あたしは一の表情を見ている余裕なんか全くなくて。 ただ想いを伝えるのに必死だった。 当然だけど、彼にも彼なりの色々な思いがあったのだ。 「・・・・・・・一。」 「何だ?」 「あたし、あんたのことがマジで大好きだった。待っててくれて有難う。」 そこであたしはひと呼吸置き、そして再度、口を開く。 「今も大好き。これからも宜しく、B6共々、大事な仲間として、友達として仲良くして。」 言い終えて、差し出したあたしの右手。 一は一瞬驚いたようにあたしに視線を移して、それからすぐに笑った。 「おう!辺り前だろ?こっちこそこれからもヨロシクな!」 ガシッ。 勢いを付けてあたしの手を握る、一の大きくて温かい掌。 高校生のあたしは、ずっとこの手が欲しくて。 この人が大好きで。 だけど、大丈夫、今のあたしには男の人の手だとは見えてない。 何故なら、あたしには。 「実を言うと、本当ならもっと引きずってたのかもしれないんだ。」 「え?ってこた、何かきっかけがあったのか?・・・いや、待て、そりゃもしかして・・・」 「・・・ああ、分かった?うん、あのさ、あたし――――「貴様ら、いつまで手を握り合っているつもりだ?さっさと離せ。」 唐突に聞き慣れた声がしたかと思うと、あたしと一の間に人影が現れ、 スパンと繋いでいた手と手を強引に放された。 「翼・・・!」 「おいおい、翼・・・いきなり現われてそれかよ!?」 「フン、この俺がすぐ傍まで来ていると言うのに、気付きもしなかったのはお前達の方だろう。 その上、手を握り合ったまま見つめ合っているとは・・・!」 文字通り突然姿を見せた翼は、そう言っていかにも不機嫌な表情であたしと一を睨みつけた。 どうやら何か勘違いをしてるらしい。 「お前絶対誤解してるだろ。」 「黙れ、一!南先生と言う存在がありながら、にまで手を出そうとしおって。 このflirtめ!だが俺は認めん、一、例え相手がお前であろうとも認めんぞ!」 (浮気者) 「ちょっと、翼!?何また意味不明などぐされ思考を働かせてんの!違うから、それ!」 何故か一人、ヒートアップして一を敵視し始める翼。 あたしは慌ててそれを止めに入った。 「・・・・・・・違うだと?ならば、それを証明して見せろ。」 「え?証明?」 「そうだ、3日前の俺への返事・・・、お前は言っていただろう、 一への気持ちにキッチリと片を付けてからでなければ俺の所には行けないと。 あれは、一に会った後ならそれが出来ると言う意味だったんじゃないのか?」 「・・・それは・・・そう、だけど・・・。」 「へぇ、翼の奴とうとうに告ったのか。」 不機嫌面MAXな翼とは逆に、一はニヤニヤとした表情であたしを見ている。 この先の展開に大体の想像が出来てるからなんだろうけど、だからこそあたしとしてはやり辛い。 やり辛いと言うか、恥ずかしすぎる。 「、一の居るこの場で答えろ。俺の恋人になり、俺の側に居ると。」 「ええ!?ばっ、何考えてんのよ!?」 「出来んと言うのか?」 「そんなこっぱずかしいこと一に限らず人の居る所でなんか無理!」 「ははっ、まぁな、の言う事も尤もだけどさ・・・。ここは、やっぱ言っとくしかねーんじゃねぇの?」 さっきと同じくニヤニヤした顔つきのまま、一が言った。 コイツ絶対に面白がってる。 だけど状況的にはあたしが圧倒的に不利で。 これはもう、降参してしまうしかない訳で。 ああああもう!ああああああああもおおおおおおお!! もおおおおおおおおお! 「翼!」 「何だ?」 「あたしは、あんたには凄く感謝してるわ。 卒業式のあの日から、一の事で落ち込んでたあたしをずっと見ててくれた。 モデルの仕事や大学で自分だって忙しいくせに、いつもあたしを気にかけてくれた。 あんたは未だに常識なくて馬鹿なとこもあって、俺様だし、態度デカイけど。」 「What?、お前っ!」 「いいから聞いて!あたしはあんたのそんなとこも全部ひっくるめて、・・・・好き。 一緒に居させてほしい、これからも、ずっと。」 一が傍に居るって言うのに、何を口にしてるんだろうあたしは。 そうは思うものの、勿論台詞の内容に嘘なんかひとつもなくて。 あたしは結局、自分から翼の手を取って、握りしめていた。 「良かったな、翼。」 言いながら、一がポンポンと翼の肩を叩く。 だけど翼は妙に複雑な表情をしていて、更にどこか拗ねたみたいな態度だった。 何か気にくわなかったのだろうか。 「?翼?」 「・・・・一には、大好きだと言っていたな、。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・、はい?」 「一には大好きだと言っていた。なのに俺は、ただ好きなだけなのか?」 「どっ、どこから見てたのよ!?」 てか、その辺見といてあたしらの関係誤解したの!?コイツ!? 「そんなことはどうでもいい。答えろ!」 「ちょ、ちょっと翼、落ち着いて!一、あんたも何とか――――」 言ってやってよ! と言う言葉を続ける前に気付く。 一の奴が、あたしと翼を置いて、いなくなりやがったことを。 どんだけ素早い動きでいなくなったんだろうか、あたしは翼のせいで全然気付かなかった。 居なくなっというより、逃げた、逃げやがったんだ、一は。 「ほう?こんな時にまでお前は一の名前を呼ぶのか。」 「だ、だから違うって、落ち着け!落ち着こう、翼!」 「・・・。」 グイっ 唐突に伸びてきた翼の手が、あたしの腕を強引に掴んで自分の胸へと引き寄せる。 あたしは咄嗟に抵抗できずにポスリとその中に収まった。 「お前が何と言おうと、俺は・・・俺はもう誰にもお前を渡さん。 一だけじゃない・・・・誰にもだ。それ程に俺はお前の事を愛している。・・・・、お前は違うのか?」 「翼・・・。」 翼の腕の中。 視線を、空へと移す。 広がっているのは快晴の青。 瞳に眩しいスカイブルー。 再度、あたしは心の中で一に告げる。 有難う、一。大好きだった、あんたのことが。 今も大好き。仲間として、友達として、ずっと付き合っていこう。 ふ、と、あたしの唇が自然とほほ笑んだ。 そして、自分からも翼の背中に腕を回す。 本当ならこんな恥ずかしいこと、絶対に出来ないし、しないつもりだった。 だけどきっと、今、言わなくちゃいけない。 あたしはそっと踵をあげ、翼の耳元に唇を寄せる。 「あたしも、翼だけを愛してるから。」 (END) あとがき
長ったらしい上にクサクサな最後になってしまいましたね(笑)
本当はどっかでぶった切ろうかとも思ったんですけど、 ぶった切る部分がいまいち見つからなくて、読みにくかったら申し訳ありません。 本当は悠里ももうちょい出番があったはずなんですけど、 そうするともっともっと長くなって収拾がつかなくなりそうだったので、止めました(苦笑) それ以前にこの夢は翼夢と分類して良かったんだろうか(今さら) ではでは、ここまでのお付き合い、誠に有難うございました!姫様に感謝です!失礼します |