余裕なんてない隣で熟睡しきって文字通りスヤスヤと寝息を立てている彼氏の顔をジッと見つめる。 長く伸ばした赤い髪。 切れ長の瞳。 整った眉にすっきりして高い鼻筋。 薄い唇も艶があって色っぽい。 こうして改めてみると、やっぱり綺麗な顔をしてると思う。 学園内に関わらず、女の子が放っておかない訳だ。 だけどこんな間近でマジマジと見たのは初めてかもしれない。 あたしは元々顔のいい男と言うのは余り信用してない。 そう言う連中に限って性格が歪んでるから。 B6の男共は本当にそのいい例だと今でもマジで思ってる。 それなのに今、あたしはそのB6の一人である七瀬瞬と同じベッドで横になってるなんて、 世の中何がどう転ぶか分からないものだ。 って言うか、コイツと付き合う事になったっての自体スゴク不思議なんだけど。 初対面のシュンは転校生のあたしに対してあり得ない冷たさだった。 そしてあたしは当然のようにコイツが大嫌いだったのだ。 それなのに、今、こうやって二人で居られることが嬉しくて堪らない。 マジで変な感じ。 でも勿論、嫌なんかじゃなくて。 「・・・・・・・・・・・・・・・・。」 何だろ、そう思うと無性に悔しいな。 この安らかな寝顔がムカつくわ。 こっちが至近距離から超ガン見してるってのに、 シュンは全く目を覚ます様子もなく眠り続けている。 毎日毎日バイトとバンドの練習に追われてるから疲れてるってのもあるんだろう。 だけど何か、あたしとしては悔しい。 こっちは何だかんだで初めてのお泊まりに緊張して眠りが浅かった上に早く目が覚めたって言うのに。 暫くの間奴の寝顔を睨みつけた後、あたしはシュンの鼻に手を伸ばしてそれを軽く摘まんだ。 「いーち、にーい、さーん・・・・」 そして小声で数を数え始める。 メチャクチャベタな悪戯だけど、こう言うのってどの位で目を覚ますものなのかちょっと興味があった。 って言うか、こんな滅多にないチャンスは活かすべきだと思う。 取りあえず窒息死する手前で解放すれば大丈夫だろう。 「しーい・・・ごーう・・・」 シュンの眉間に僅かにしわが寄り始めた。 予想より早い。 この分だと10は持たないかもしれないな。 なんて暢気に考えていると。 「ろーく・・・ナーナ・・・」 「!!!!!!!!!!!」 ――ガバッ! 「どっっわあ!!シュン!!??」 唐突過ぎるくらい唐突に、シュンが恐ろしい勢いで上半身を起こした。 まさに飛び起きたって表現ピッタリに。 ゼーハーゼーハー。 肩で息をして、キョロキョロと周囲を警戒している。 しかもかなり鬼気迫る形相で。 「仙道!!、今仙道の声がしただろうっ!!??」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はいいい!?いやいやいや、してないない。」 「だが、アイツがオレを呼ぶあの忌々しい悪魔の様な声が聞こえたぞ! っくそ!仙道め・・・!アイツが邪魔さえしなければ、 一日限定の超激安タイムサービスに間に合ったと言うのに!」 如何にも悔しげに唇を噛みしめるシュン。 更に言うなら拳が震えていらっしゃる。 「シュンー、それ夢だから!夢だからね!! ここはあんたの部屋で、今はまだ夜が明けたばっかだよ!」 「・・・?何?夢だと・・・?チッ、夢にまでアイツが出てくるとは、最悪だ!」 舌打ちをしたシュンは益々ムカついた様にそう呟いた。 って言うか、あたしとしては「一日限定超激安タイムサービス」って、 どんだけ生活感溢れた夢だとツッコミたいとこなんだけど。 いや、それ以前にシュンが言ってるキヨの声とやらが気になった。 それってもしかして、てかもしかしなくてもあたしじゃない? あたしの声じゃない?だってシュンの奴・・・・。 あたしが7まで数えた瞬間に飛び起きた。 7。 七。 キヨ風に言うならナナだ。 これはもう決定としか言いようがない。 それ位に敏感に反応するほどシュンはキヨが嫌いなのか。 まぁ、ある意味この二人は思いっきり屈折しまくった友情がないでもないと思ってるんだけど。 「っクっ、何故か妙に息苦しかったのは仙道の奴が出てきたせいだな・・・! 靴底だ!!あんな奴に夢でまで苦しめられるとは!!」 「・・・・・・・・・・・それ言うなら屈辱!って言うか落ち着いて、シュン。 さっきも言ったけどまだ朝になったばっかだからさ。」 どうどう、とシュンを宥めつつ、何かコレ間違ってるなと思う。 だって仮にも初めてのお泊まりの朝の目覚めがこんなギャグテイストってどうなんだろう。 普通もっとこう甘さとくすぐったさみたいなベタなシチュあったりしないだろうか。 でも元々あたしがシュンの鼻つまんだのが原因だしな・・・。 ははははっ。 心の中で乾いた笑いを洩らす。 自分でやっといてなんだけど、現実なんてこんなものなのか。 「、・・・不機嫌そうな顔をしてどうした?」 「え?や・・・別に・・・。」 「別に、と言う顔はしていないが?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 別に、シュンが起きてからキヨの事しか言ってないとか思ってないわよ。」 えらく拗ねたみたいな声になってしまった。 でも正直、自業自得とは言え面白くない。 シュンは一瞬驚いた様な顔をした後、フッと小さく笑った。 そしてあたしの体に両腕を伸ばす。 「可愛い事を言うじゃないか・・・。拗ねてるのか?」 「・・・・・・・・・かもね。」 「素直じゃないな・・・、だがお前はそこがいい・・・。」 あたしからもシュンの背中に腕を回し、奴の赤い長髪に顔を埋めた。 「こうしていると、昨夜の事を思い出す・・・。 、お前はいつもいい香りがするな・・・、いつまでも抱きしめていたくなるぞ・・・。」 耳元。 囁くように言って、シュンがあたしの耳朶にキスをする。 そして、舌でねっとりとその周辺を舐め始めた。 「っ・・・あ、シュ、シュン・・・?」 「抱きしめていたくなるだけじゃない・・・もっと触れたくなる・・・、お前を感じたくなる・・・。」 耳の形をなぞる様にシュンの舌先が動き、同時に彼の掌がゆっくり肌の上を滑っていく。 「・・・シュン・・・、あんた・・・つ、疲れてるんじゃないの・・・?それに時間だって・・・」 「今日はバイトは休みだ。バンドの練習時間まで・・・オレはフリーなんだ・・・。」 言ってすぐに、シュンはあたしの耳朶を甘噛みする。 やわらかく、やわらかく耳を食まれる感触に、 体が微弱な電流を流されたみたいな感覚に陥った。 「硬くなるな・・・、オレにもっと見せてみろ・・・、オレの唇に、舌に感じて蕩ける姿をな・・・。」 「っ!・・・シュン、あんたって・・・よくそんな恥ずかしい台詞言えるわね・・・。」 「だが本当の事だ・・・。違うか?」 シュンの掌がゆっくりあたしの体を這いまわる。 そして奴は至近距離からあたしをジッと覗き込んだ。 こっちが気後れする位、色気のある瞳だ。 「そうよ・・・、本当の事、よ。」 今回ばっかは素直に頷いて、あたしは自分からキスを強請る様に目を閉じた。 間近で、シュンが笑った気配がする。 その後すぐに唇が重ねられる。 重なった瞬間からの濃厚なキス。 奴が微かに吐息に近い声を洩らすのが聞こえる。 それから何度も何度もキスを繰り返して、気づけばあたしはまたベッドに沈めこまされていた。 シュンが起きたばかりのあの予想外の展開は、それでもやっぱり甘い雰囲気には勝てないってヤツで。 取りあえずは、鼻をつまんでシュンに悪夢を見せたことは、内緒にしておこうと思った。 (END) あとがき
初書き瞬でしたー。どうにもギャグになりがちなのを無理に収めた感が(苦笑)
アンケで瞬とヒロBと言うコメント頂いてたので書いてみたのですが、 やっぱ初はどのキャラであろうと難しいですねぇ…。しかし私的難関は二階堂と斑目です。 二人とも大好きなんですけど、自分で執筆となるとかなり頑張らねば。 瞬は清春と絡んでる時が一番好きかも知れない(笑) ではでは、ここまでお付き合い下さった貴重な姫様方に深く感謝しつつ、失礼致します。 |