雨。
雨音が静かに響く。
独特の匂いと雰囲気を漂わせ、清浄な空気が辺りを包んでいく。
あの日も、雨だった。
私がここへ、この世界へ来た日も。
そして将臣、君が彼女達と別れたあの日も、
雨だったのだと、私は知ってる。
「将臣・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
「将臣・・・・。」
「ん?あ、ああ。お前か、。どうした?今日は昼寝はもう終わりか?」
ほんの少しだけ笑いを含んだ声で、此方を振り返った将臣が言った。
気のせいか、その一瞬、妙な間があった気がする。
私は彼の傍までゆっくり近づいた。
「昼寝なんかいつしてたって?」
言って、私は膨れた顔をしてみせる。
将臣がははは、と、今度は声を上げて笑った。
「悪い、悪い、そう怒るなって。
急に声かけられたからビビっちまったんだよ。」
「ふぅん・・・・。」
彼の顔を見つめ、私はその視線庭へ移した。
「・・・もしかして思い出してた・・・・?君がこの世界に来る前に・・・
逸れてしまった・・・弟さん達のこと・・・・。」
雨に濡れる地面に目を落とし、私は言った。
敢えて幼馴染の彼女のこととは言わずに。
将臣が、ふっ、と、哀しい微笑を浮かべる。
困ったような、苦笑のような、そんな笑顔だ。
「毎日忙しくて考える暇もねぇはずなのに、頭から離れた事がない。
特にこんな雨の日はどうしても思い出しちまうんだ。参るぜ、実際。」
「・・・・・・・・・・・会えるよ。」
「ん?」
「君は絶対、弟さん達に会える。半年後には、だけど。」
私の台詞に、将臣は一瞬驚いた様子でこっちを見た。
「ははっ、えらく確信的じゃねぇか、もしかして俺のこと慰めてるつもりか?」
「違う、『知ってる』の。半年後に絶対会えるって。もっと言えば・・・・、
最初は夢で・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
『彼女と会えるよ。』
と言う言葉を、私は咄嗟に飲み込んでしまった。
胸が、キリ、と、痛む。
「とにかく会えるから。」
「何だぁ?ノストラダムスの大予言かよ、それは。」
「それよりもあてになるはず。」
「・・・・そうか、ま、お前がそう言うんなら・・・そうかもしれねぇな。」
クスリ。
将臣が小さく微笑む。
彼の片手が、ゆっくり私の髪に触れた。
「随分のびたな、前は肩につく程度だっただろ。」
「そうね、この世界来てからのばしてるから、今じゃ腰に届きそう。」
将臣が不意に目を細めて私を見下ろす。
「だな。通りで懐かしい気分になっちまう訳だ。」
「・・・・・え?」
「いや、アイツの髪も長かったからな。
ついさっきは昔のこと思い出しちまってる最中だったから、
一瞬マジでビビっちまった。」
「・・・・そっか・・・それで・・・・・・。」
思わず納得してしまう、振り返った瞬間の将臣の、反応への違和感。
その、理由に。
私に彼女を見たんだ。
将臣の大事な幼馴染で、そして、白龍の巫女。
君は平家の還内府。
彼女は源氏の巫女。
将臣、その事実を、君はまだ知らない。
そして私も、今はそれを伝えられない。
本当はこれからこの半年後に起こる様々なことを、
私は多分この世界の誰よりもよく知ってる。
そのどれも、ある意味でシュミレーション済み。
君の大事な幼馴染、彼女の立場で。
「さてと、そろそろ戻るか。
このまんまここに居ても風邪引くだけだからな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「どうした、?」
「もう少し・・・こうしてたい・・・・・。付き合ってくれない?」
「え?・・・・・ああ、いいぜ。んじゃ、もう少しだけ雨でも見てるか。」
私が襖を背にして座り込むと、将臣もその隣に腰掛けた。
雨音が、耳に優しく、雨音が、耳に哀しく、響く。
片手を床についている将臣の大きなての節くれだった長い指。
私はその先にほんの少しだけ指先を触れさせた。
「サンキュ、将臣。」
「?何がだ?」
「色々と。君にはお世話になりっぱなしだったからさ・・・。」
「何だよ、急に改まって。変な奴。」
コツン。
床にあった手が上がって軽く私を小突いた。
半年後。
君はその時も、私にそうして笑ってくれているのかな?
私だけに、笑ってくれているのかな?
だけど、今は先のことよりも、私の知らない、今の君を見ていたい。
雨音に、一緒にこうして耳を澄まして。
その雨の記憶に、私のことも、もっと刻んで、お願いだから。
--終わり--
後書き
やっちまった初遥か3夢!!!
・・・・これ、読んで下さった方いらっしゃるのでしょうか?
もしもいらっしゃいましたら拍手で一言感想頂けると嬉しいです。
初夢(意味が違いますが)で緊張してた割りに将臣微妙で申し訳ないです。
では、失礼します!!!!
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