京。
春の京は、雅やかなその風景を、より一層華やかに彩っている。
鳥の歌うさえずりと、軽やかに頬を撫でる風。
水彩絵の具で画かれたようなふんわりと澄んだ空。
泣きたくなるほど、真っ青に澄んだ、青空。
--お前の予言大当たりだぜ、!マジで夢でアイツと再会できた。
しかもこっちで会う約束までしちまったんだぜ。ちょっと出来すぎな気もするけどな。--
そう言った将臣に、私は苦笑する事しか出来なかった。
とうとう、来たんだね。
分かっていたのに、胸が痛む。
龍神の神子。
この世界の、言わば救世主。
彼女が居なければ始まらない、
彼女が居なければ動かない、
そして何も変わらない。
将臣、君の神子でもあり、幼馴染でもある彼女。
彼女の存在で、世界が、動く。
この異世界の。
そして、君と私の。
動き出す、運命の歯車。
平家と源氏の本当の戦が、これから始まる。
「ただいま、久し振りだな。あの後マジで譲たちに再会できたぜ。
が呼び出し喰らわなけりゃ、お前も紹介してやりたかったんだけどな。」
今まで見たどの笑顔よりも嬉しそうに、将臣はそう言った。
私は彼が彼女と再会する夢を見た直後まで一緒だった。
だけど結局私はまた此方に呼ばれ、彼を残して一足先に戻ってきたのだった。
「アイツら離れた時と全く変わってなくてな、正直ちょっとビビッちまったぜ。
ま、こっちに来た時期が2年以上も違うんじゃ仕方ないか・・・。」
ほんの一瞬、寂しそうな瞳で将臣が苦笑する。
「でも、会えて良かったわね。弟さんたちと。」
「ん?ああ、そうだな。けどまさかホントに再会できるとは思ってなかったぜ。
、お前の言ったとおりになったな。実はこれも、案外お前のお陰だったりしてな。」
「まさか、私は・・・ただ・・・知ってただけで・・・・・・。」
答えて、私は曖昧に笑って見せた。
「お前はマジで不思議な奴だぜ。」
言った将臣が、片手で私の頭をクシャリと撫でる。
私は頬を少しだけ膨らませた。
「君はすぐに私を子ども扱いするわね?」
「ははっ、そう怒んなって。これでも結構真面目に感謝してるんだぜ。」
上機嫌の将臣の笑顔。
思わず、私も微笑する。
彼の上機嫌の理由、やっと再会できた3人。
少し卑屈気味だった気持ちが、将臣、君の笑顔で溶けていく。
「しかしアイツが龍神の神子ってのには驚いたぜ。俺はどうやらその八葉ってやつらいしんだが。
結局側に居てやれる間しか守ってやれなかったけどな。」
「・・・え!?」
唐突に持ち出されたその話題に、どくん、と、心臓が大きく跳ねた。
「ああ、悪い。話が見えねぇよな。けどお前も話くらい聞いたことあるんじゃねぇのか?
龍神の神子の伝説。結構こっちの世界じゃ有名だろ。」
「・・・あ、うん・・・知ってるわ。君のその耳の宝玉も・・・八葉の証だったんでしょ?」
私は彼の耳の内側にある、蒼く澄んだ光を放つその小さな石を指差して言った。
将臣は少し驚いたような顔をして見せた後に、肩をすくめて苦笑する。
「、お前はホントに何でもお見通しなんだな。ま、無駄な説明しなくて済むから俺は助かるけどな。」
「面倒くさいのは苦手だもんね?君は。」
「はは!ま、そーいうことだ。」
私はまた彼に笑顔を向けると、そのまま視線を縁側へ移す。
開け放たれた襖が、外のやわらかな風を招きいれた。
「・・・なんにしろ、アイツらが居場所を確保して、
その上守ってくれる奴らが周りに居るってことを確認できただけでも上々だな。」
「そうね、再会できて、しかも元気でやってくれてたんだったら安心よね・・・。」
「ああ・・・、どっちにしろ・・・ここへ連れてくることは出来ねぇからな・・・・・・・。」
平家の還内府の将臣。
君はまだ、知らない。
この先、幾度となく彼らと戦う事になってしまうこと。
それでも、君は彼らとの絆を深めてしまう。
知らずに。
何も知らずに。
「将臣・・・・・・・。」
「ん?」
私の方に視線を向けた彼の胸に、私は軽く頭をコツンと押し付けた。
「どうした?。急に・・・。」
「早く・・・戦を終わらせようね・・・。私はこの先も、ずっと君と戦うから・・・。
平家のみんなの為に、この世界の人達の為に・・・。」
そして、将臣、君の為に。
それが私の、願い、だから。
将臣の大きな掌が、私の頭にそっと触れる。
「サンキュ。そうだな、さっさとこんな戦は終わらせちまいてぇよな。
譲たちを戦に巻き込んじまうことがないようにさ。」
ギュ、と、胸が痛んだ。
君の痛みが、リアルに私の胸を締め付ける。
龍神の神子。
私の分身だった彼女。
あの時には分からなかった、君の胸の痛み。
私は頭を彼に押し付けたまま、彼の服を両手で掴んだ。
「ずっと一緒に戦う・・・何が起きても、私は・・・君と一緒に・・・。」
私はもう、この世界で万能の彼女、龍神の神子の分身を持っては居ない。
第3者では有り得ない。
この手で、この先の辛い戦で、君に出来ることは限られているけど。
それでも。
「・・・ああ、サンキュ。・・・素直に嬉しいぜ、その台詞。」
彼の空いた片手が私の肩に触れた。
頭にある方の手が、ゆっくり私の髪を梳くように滑る。
将臣が、私に触れる時の、癖。
私の出来る事がどんなに限られていても、それでも、君の側に居る事だけは、出来るから。
将臣、君の側で、私は戦い続けたい。
この先にある、彼等との戦を。
(終わり)
後書き
どうにか書き上げた!そしてまたしても将臣夢です。
1話完結のつもりで書きつつも、連載感が否めないような・・・・・(苦笑)
でも連載ではなく、どちらかと言うとシリーズ風味なので、いきなり話が飛んだりします。
本当は将臣と望美達の再会シーンも書こうか迷いましたが、現在その時間が取れず(涙)
そして何よりそれこそ連載めいてしまうので止めました。追々そう言う話も出すかもしれませんけどね。
これを読んで下さった有難い方々、心よりの感謝と共に失礼します。
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