絡めた指先。
熱を含んだ瞳。
触れた唇。
湿った吐息。
交わる体温。
それから、お互いが、重なり合う、重み。
その全部が、夢みたいな、朝。

「・・・・んん・・・・・・え・・・!?」

目が覚めた瞬間、
ぼんやりとした視界にまず飛び込んできたのは、将臣のドアップ。

―ガバッ

咄嗟に状況が理解できなくて、思わず勢い良く布団から体を起こした。
それからようやく回り出す、私の、脳みそ。

「そうだ・・・私・・・昨日・・・将臣と・・・。」
「ん・・・、・・・・・・ ・・・?・・・・何だお前・・・、先に起きちまってたのか・・・。」

薄っすらと瞳を開けた将臣が、私を見上げて言った。

「おはよう・・・、・・・い、今、起きたところ・・・・。」
「そっか、ふぁ・・・やべ・・・さすがにまだ眠いぜ・・・。」

動揺して言葉さえまともに出せない私に、全くいつもと変わりない様子の将臣。
彼はゆっくりと体を起こして、また、ひとつ、大きく欠伸をした。

、お前、寒くなかったか?さすがにこの布団一組に二人じゃ狭いよな。」
「・・・・え!?あ、うん・・・大丈夫だった・・・。」

私は将臣の顔さえ見れないで居るのに、彼はそう言って自分の頭をわしわしと掻いている。
余りにも、いつも通り過ぎる、君。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
?どうしたんだ?ってお前、そんな格好じゃ風邪引くぞ。
ほら、まだ時間もあんだ、布団被ってろ。」

言って、彼はバサリと私の体ごと布団で包み込むと、そのまま自分の方に引き寄せる。
そして、至近距離で私の顔を覗き込みながら、苦笑した。

、お前実は拗ねてるだろ?顔に出るから分かり易いぜ。」
「・・・・・な!私は・・・・。」
「図星か?はははっ!マジで分かり易い奴。」

声を上げて笑いながら、将臣は布団の上から私を強く抱きしめる。
私は軽く頬を膨らませた後、布団の中に顔を埋めた。

「私は君の反応が分からないわよ・・・。」
「おい、 、機嫌直せよ。」

言った将臣が、私を包んでいた布団に隙間を作って、
そこから体を滑り込ませて来た。

「えっ・・・!?ちょ・・・・っ・・・!」
「暴れるなって、まだ起きるには早い時間だ。さすがにこのまんまじゃ、俺も寒いんだよ。
お前が暴れると隙間から風が入ってきちまうだろ。」
「・・・・・あっ・・・・・!」

ビクン。

直に触れ合う、私と将臣の、肌と肌の温かさ。
私は思わず、体を大きく震わせた。

「ん?何だよ、今更怖がるなよ・・・。」
「・・・こっ、怖がってる訳じゃないわ・・・。」
「そっか?けど・・・震えてるぞ・・・お前。」

言いながら、彼は腕を私の腰に回す。
空いた片手で将臣が私の髪を梳く様にして撫でた。
どくどく、と、早鐘を打つ、私の心臓。
昨夜の事を鮮明に思い出して、私は咄嗟に彼の胸に顔を押し付ける。

「どうした?」
「・・・・私の体・・・傷跡だらけだったでしょ・・・。」

咄嗟に口に出した言葉。
今まで何度、戦場で傷を負ったか知れない。
致命傷になる様な物は勿論多くはなかったけど、
傷が残ってしまう程、深い物も少なくは無くて。
気付けば、体中、傷だらけの私。
本当は、将臣に見られたくは無かった、こんな醜い傷跡。

・・・お前・・・。」
「君とこうなった事は、全然後悔なんかしてないわ・・・。
・・・・・・・・・・だけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ったく、お前は・・・、俺を馬鹿にすんなってんだよ。」


先を続けるより早く、彼が私の頭を軽く小突いて言った。
私は思わず、視線を上げて、彼を見る。

「将臣・・・?」
「傷跡だらけで当然だろ。俺達は今までシャレになんねぇ位戦に出てんだ。
これはお前が俺と一緒にこの平家を守るために、戦い続けてきた証じゃねぇか。
必死で生き抜いてきたからこそ、出来たもんだろ。」
「まさ・・・・・・・・・ぁっ!」

将臣の節くれだった指が、私の横腹の傷跡をそっとなぞる様に触れた。
そして、鼻先を擦れあわせるみたいにしながら、彼が私の唇に自分の唇を重ねる。
その唇がゆっくりと私の顎へ、鎖骨へと降りていった。
辿り着いた先は、さっきまで指でなぞっていた、私の横腹の傷跡。

「将・・・おみ・・・。」

彼の名を呼ぶ私の声が、微かに震える。
今にも、泣き出してしまいそうな声。
彼は唇を傷跡に押し当てた後、今度は舌でそれをなぞった。

「ァっ・・・!」
「この傷一つ取っても、俺はお前が戦場を生き抜いてこの腕に居る事を実感できる・・・。
安心しろ・・・、 、お前は十分綺麗だぜ・・・。この俺が・・・こんな臭いセリフ吐いちまう位はな・・・。」

肌に感じる、将臣の吐息。
いつも以上に、優しい声。
低くて、甘い。

「ま、俺の方も人の事言えねぇけどな。傷の数なら負けねぇぜ、実際。」

私と同じ目の高さまで顔を持ってきた彼は、そう言って苦笑した。
私も釣られて微笑む。

「それと、分かってるとは思うが、だからって傷増やせってのとは違うからな?」
「フフ・・・当たり前でしょ・・・・・・・・。・・・・・でも・・・・・・有難う。」

言った私の髪に、彼の大きな掌がそっと触れる。
そしてまた、いつもと同じに、私の髪を梳く様に滑る、君の、指。

「ったく、お前は毎回同じパターン過ぎだろ。
小さい事で悩みすぎなんだよ。・・・ま、分からなくはねぇけど・・・な。」

ほんの少し、笑いを含んだ声で、彼が言った。
私は彼の体に腕を回して、肩口にある、太刀傷にそっと唇を触れさせる。
古傷。
それは、私がここへ来るより前に、出来た物。
私はさっきの将臣と同じように、その傷に舌を這わせた。

・・・・・・・・・・。」
「お返し・・・、結構照れくさいものでしょう・・・?」

目を合わせずに、私は言った。
瞬間。
彼が私を見下ろす様に、体に重みを傾けてきた。
絡められる、脚。
重なった肌と肌から、熱が、また、上昇してる。
去来する、昨夜の、回想。

「っ・・・将・・・臣・・・・・・?」
「参ったぜ・・・俺も知盛の奴の事は言えねぇな・・・・。」
「・・・え・・・・?」

見上げる彼の顔。
熱っぽい、視線。
どこか少しだけ、困ったみたいな、表情。

「将・・・・・・?」
「今日の俺に朝帰りは無理だ・・・。もっと俺に、お前を感じさせてくれ、 。」

耳に届いた、将臣の、言葉。

「・・・っ・・・!」

私の返事は、口にするより前に、彼の唇に飲み込まれた。


―私も、君を感じたい。


(終わり)



後書き
・・・・・・・・・・・・・・ど、どどどどうした!?将臣で微エロやってしまったよ、私!
突っ込みどころは沢山あると思いますが、もうスルースルーでお願いします。
そろそろ望美達との戦風景を書きたいなー・・・・と、思っていた筈なのに、
仕上がった作品は・・・・・・・。・・・ここまでのお付き合い、誠に有難うございました。
失礼致します!!!(脱兎)


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