君が好き。
君が好き。

最後まで言わなかった言葉。
最後まで言えなかった言葉。

将臣、将臣。
名前を呼んでも、手を伸ばしても、もう、君は、どこにも居ない。
この世界のどこにも。

私は18歳の女子高生に戻った。
君の居ない現実世界に還ってきた。

2度と繋がることのない、私と君の世界。
もう会えない、触れられない。


それでも、私の胸の中の最後の君は、私の大好きだったあの笑顔。


ねぇ、将臣、君の記憶の最後の私は、笑ってる?


ねぇ、私はちゃんと上手く笑えた?


あの時、君と別れる直前、私、上手く笑えてた?

聞きたいよ、君の答えを、君の口から、君の声で。





「神子、わたしの力を取り戻してくれて有難う。
これでわたしも皆も京へ帰ることが出来る。時空を越える事が出来るよ。」

荼吉尼天を封じ込める為、望美が作り出したラビリンスは、
荼吉尼天の消滅と一緒にその意味を失って、崩れ去った。
龍脈の乱れは正常に戻り、そして白龍は神様として本来の力を取り戻した。
今日は、とうとう、皆が京へ還る日。
そして、私も。

必死で明るい声を出そうと努力する望美が、
それでも少しだけ声を震わせて、私たち一人一人を見つめながら言った。

「白龍、それに皆、本当に有難う。わたしきっと忘れないよ。
皆の事も、京の事も、絶対に絶対に忘れないよ。」
「望美・・・、離れ離れになってしまっても、貴女は私の対だから。」

朔が望美の手を取って、薄っすらと瞳に涙を浮かべている。
そのすぐ側で譲もヒノエや景時と別れの挨拶を交わしていた。

・・・。」
「・・・将臣・・・。」

ついさっきまで九郎や敦盛達と会話をしていた彼が、
ゆっくりと、私の側に近付いてくる。

「お前、コイツらより先に自分の世界に戻る事になるんだって?
見送りが大勢ってのは気分いいもんだろ。」
「ふふ、そうね。ちょっとした人気者気分よね。」

将臣の軽口に、いつも通りに返す私。
彼はそこで、ふっ、と、目を少しだけ細めて私を見つめた。

、マジな話、お前中々人気者だったぜ。」
「そうだといいけどね。」

他愛のない会話。
別れの時間は、もう、すぐそこ。
なのに、大切な言葉が、どうしても出てくれない。
それは多分、将臣も一緒だ。

「・・・。」

私の名前を呼んだ彼が、私の手を取って両手で握る。
私は視線を上げて将臣を見つめた。

「お前には・・・感謝しきれねぇ程感謝してるぜ。
お前が平家に居てくれた事で、特にメンタル部分じゃ俺は心底救われてたからな。
・・・・・・・・・サンキュ、。」
「・・・・・ううん、こっちこそ。君があそこに居なかったら、
私はあんなに早く平家に受け入れられる事はなかったわ。」

握られた手に、彼の掌の温度が伝わる。
私の手は、小刻みに、震え始めていた。
不意に、ぎゅ、と、彼の両手に力がこもる。


、俺は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


言いかけて、彼がそこで口を閉じた。
もう、時間が、ない。
お互いに、そう分かってるのに、先の言葉が出ない。
それから彼がやっとまた口を開きかけた、その時。


、そろそろ時空を開くよ。」
「白龍・・・。」
「・・・行こうぜ、。」


白龍の言葉に、将臣は私と手を繋いだ状態で皆の方へと私を引っ張っていく。
私はそれにただ小さく頷いて、彼と一緒に望美達の側に向かった。

「君たちとは色々あったけど・・・、
こうして出会えて本当によかったと思うわ、有難う。」
「ええ、さん、僕たちも君のことは決して忘れません。
最も、貴女の様な美しい人は何があっても忘れられませんけど。」

弁慶がそう言って柔らかに笑う。
私はそれに微笑んで答えた。

「平家と源氏と言う敵同士だったとは言え、
お前の刀捌きと心根は見事だった。今までこうしてお前と戦えた事、
誇りに思うぞ、。」
「・・・ええ、九郎、私もよ。」
よ、お前の還る世界でも、その心根を忘れぬようにしなさい。」
「はい、リズ先生。」

金色の瞳にしっかりと視線を合わせ、私はリズヴァーンの言葉に大きく頷いた。
将臣たちのこの世界で、私は彼にも多くのことを教わった様に思う。

「・・・殿、貴女の怨霊達に向けられた思いに、わたしも救われていた。
有難う・・・・・・・・。」
「私は何も出来なかったわ、敦盛。だけど、そう言ってくれて嬉しい・・・。」
「何も出来なかったことなんてないぜ、姫君。
お前はそこにあるだけでどんな花々よりも俺を癒してくれていたからね。」
「・・・ヒノエ、敦盛はそう言う意味で言った訳じゃないと思うぞ。
・・・・・あ、さん、その・・・今まで兄さんがお世話になりました、どうかお元気で。」

譲はそう言って私に軽く頭を下げた。

「お世話になったのは私の方だけどね。将臣だけじゃなく、皆に色々迷惑も掛けたし。」

肩をすくめて笑う私。

「そんなことないよ〜、寧ろちゃんのお陰で随分戦いも楽だったしね。」
「ええ、兄上の言う通りよ、殿。それに私も望美も、貴女が居てくれてとっても心強かったわ。」
「・・・有難う、景時、朔。」

皆と最後の挨拶を交わし、白龍が時空を開く。
私のすぐ傍に居た望美が、半分耳打ちするようなヒソヒソ声で言った。

さん・・・!将臣くんに、気持ちを伝えなくていいの・・・?』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・望美。」

私を見上げる彼女の瞳が、心底、私を気遣ってくれてるのが分かる。
私は咄嗟に将臣に視線を向けた。


優しげに、でも、とても寂しそうに、私を見つめる、君の瞳。


、あの光の奥が貴女の世界だ。」


白龍の声。
私は将臣から視線を逸らして、皆に背中を向けた。


―望美や譲の奴には・・・絶対笑顔で見送ってやれ、なんて言っちまってるけど、
マジな話、お前に関しては自信がねぇんだ。・・・情けねぇぜ、ホント。


昨日。
冗談めかして、君の言ったその台詞。


―じゃあ、私が笑ってあげるわ。だから君も、絶対笑ってて。


いつもみたいに気軽に返した私。


将臣、将臣。
私、君が本当に大好きです。


今、この最後の瞬間に、口に出来れば、君に伝わるだろうか。
だけど、言わない。
だけど、言えない。
口にすれば、笑顔でなんて、居られなくなってしまいそうだから。


ゆっくり、ゆっくりと、私は光の中に足を踏み出して行く。

!」

私の名前を呼ぶ、将臣の声。
私は少しだけ俯いた後、彼の方へと振り向いた。


「サンキュ!!将臣!!君のこと、一生忘れないわ!」



―カッ!!


私の周囲が、突然光に包まれる。
遠のく、皆と、将臣の姿。



ねぇ、将臣、君の記憶の最後の私は、笑ってる?

ねぇ、私はちゃんと上手く笑えた?


あの時、君と別れる直前、私、上手く笑えてた?



聞きたいよ、君の答えを、君の口から、君の声で。



(終わり)



◆此方のお題は選択式御題様からお借りしました。
---------アトガキ----------------------------
・・・・・・・えーーっと、書くのを途中で止めた後に再開したので、
前半と後半部分の内容の釣り合いが取れてない(苦笑)
取り合えず、数あるラストの一つ。みたいな物を書きたかったのですが、
これって微妙に悲恋??と言うか、バッドエンドなんですかね(苦笑)
他の八葉とかも一言ずつ出してみましたが・・・。
今回はここまでのお付き合い、誠に誠に有難うございました!失礼します!


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