「おう!!このインチキ南蛮人が!ようやくおめぇの所まで来られたぜ、
俺を馬鹿にしやがるのもいい加減にしろよ!?この鬼を怒らせた代償、高くつくぜ!!」
「オーウ!アニキ、そんなに怒らないで下サーイ!」

突き進んだ奥の奥。
辿り着いた先には勿論、ザビーの姿。
チカは私を片腕に抱き、
少し離れた場所に居るザビーをこの上なく不機嫌な目つきで睨みつけている。
さすがに銀髪の鬼、迫力は並みじゃない。
それに迫力だけじゃなく格好いい、さんとしたことが、見惚れてしまったじゃないか。

「煩ぇ!!!気安く呼ぶんじゃねぇ!!
しかもよりによってに手ぇ出すたぁな・・・。これからゆっくり後悔させてやるぜ!」
「彼女は既に洗礼を受けた身デース!ザビー教のキュートなマスコットガールね!
ヴィーナスは我々の愛のシンボル!幾らアニキとは言え、渡せマセーン!!」

例の無駄に大きなバズーカを構えながら、ザビーが言った。
ザビーのその台詞に、私は思わずチカの腕を軽く掴んで揺さぶる。

「わお、ヴィーナスだって。ダサいのに微妙に嬉しいかも。」
「アアン?!おめぇも妙なとこではしゃぐんじゃねぇ!!」

チカにお叱りを受けつつも、笑って流してザビーに目を向ける私。
そこでバチリとザビーの青い瞳と私の瞳がかち合った。

「さぁ、さーん!アナタはもうザビー教の一員なのデース!
共に愛を、世界に愛を知らせるシンボルになるのデース!!」
「楽しそうなお申し出だけど、ご辞退させて頂きます。」

にっこり。
満面の笑みで再度、丁寧にお断り。
さんってば、なんて礼儀正しい娘さんなの。
と、思ってみたりした訳だけど、どうやらこれは宣教師様にはお気に召さなかった模様。
金色のバズーカ構えた体勢が、より一層的確なターゲットを捉えようとしている。

「チカ・・・、何かヤバそうよ。」
、おめぇはまた俺の後ろに下がってろ。あの南蛮人はここで叩き潰してやるぜ。」
「・・・でも、殺さないでね・・・。」
「さぁな、保障は出来ねぇぜ。」


―ジャラッ。


チカの碇に連なっている鎖が大きな音を立てる。
同時に彼は、さっきと同じように、私を庇う形で私の前へ進み出た。
私はもう一度、繰り返してチカに釘を刺す。

「チカ、殺さないで。」
「・・・・・・・・・ちぃっ、甘ぇな、おめぇは。」

彼が不機嫌な舌打ちをして、言った、その瞬間。

「愛を知りなサーイ!!!」
「来やがったな!!クソッタレ南蛮人が!!!おぅ!!野郎共、暴れてやれ!!!」

「「「「「おおおおおおおおおお!!!!」」」」」





決着はついた。
当然、チカ達海賊の勝利で。
そして彼は、私の言葉通り、ザビーを殺したりはしなかった。
その代わり、凄い数のお宝を強奪していたけれども。

「はっはー!大漁大漁!!よぉし、野郎共、さっさとこんなイカれた場所から離れるぜ!」

さっきまでとは打って変わって上機嫌なチカ。
船にはチカの言葉通り、お宝の山。
さすがザビー、信者達から巻き上げた物に違いない。

「日も落ち始めてるわね・・・。あ、チカ、港に戻らなくていいの?」

離れていく陸を舳先から見つめながら、私はチカに訊ねる。
チカはいつの間にか戻ってきた、鮮やかな色をしたあの大きなオウムを肩にとめていた。

「おぅ、食料と水の調達は船に残った野郎共が済ませてあっからな。
・・・それにあの港にゃ、まだあのインチキ南蛮人の手下共がのさばってやがる・・・。
ま、あれだけ俺達が大暴れしてやったんだ、時期に奴らも出て行くだろうが、
今はあのイケスカねぇ修道服見るのも反吐が出るぜ・・・。」

如何にも憎憎しげにチカが答える。
「何もそこまで、実は結構楽しめたわよ、私はさ。」
なんて言おうものなら、あの長い脚で思いっきり蹴飛ばされるかもしれない。

、そう言やぁ、おめぇとは約束があったな。」
「え?何かしてた?」

きょとん。

素で思い出せない。
私が聞き返すと、チカは小さく溜息を吐いた後、
でも何故かすぐにニヤリとした笑みを浮かべた。

「思い出せねぇってんなら俺が思い出させてやるよ。
まずはこっちに来い。話はそっからだぜ。」

言ったチカが、私に向かって手を伸ばす。
彼の手が私の腕を掴んだ瞬間。
チカの肩のオウムが、バタバタと2,3度、はばたきをした。

「モトチカ!モトチカ!ケダモノ!」
「・・・わお、相変わらずお利巧さんだねぇ。」
「モトチカ!モトチカ!ケダモノ!」
「るせぇ!!おめぇだろうが!下らねぇ言葉覚えさせやがって!
って、おめぇもいい加減鳴き止め!!」

チカの怒鳴り声に、オウムがふわりと彼の肩を離れる。
そして私とチカの頭を2度旋廻してから、
いつものように夕闇空に飛び込んで行ってしまった。

「モトチカ、ドハツテン、も追加しておこう、うん。さすがさん。」
!!おめぇ!次から次へと妙なことばっか覚えさせてからかってんじゃねぇ!!」
「冗談、冗談。」
「ちぃっ・・・どうだかな・・・。」
「ほっほっ!それより私とキミの約束って何だったの?」

笑って誤魔化しつつも、私は素早く話題を戻す。
勿論、モトチカ、ドハツテンは頭の中にしっかりメモリーした上で。

「チカ、私お腹空いてき・・・・・・っ・・・?」

―グッ。

顔を上げてそう口にした、瞬間。
彼が掴んだ私の腕を唐突に自分の方へと引き寄せて、私を背中を帆柱に押し付けた。
トン、と、体に軽い衝撃が走る。
視線を上げたすぐ先には、チカの顔が超至近距離にあった。
生温かいお互いの吐息が、一瞬にして重なる。

「・・・わ、お、・・・チカ、ケダモノ。」
「はっは!るせぇ!元はと言えば、おめぇが言い出した事だろうが!」
「え?さん全く記憶にございません。」
「さっき言った筈だぜ、思い出せねぇってんなら、俺が思い出させてやるってなぁ?」
「な――――

言葉が言葉になる前に、チカが私の肩を掴んだまま、私の方に更に屈みこんで来た。
そして、必然的に、触れ合う、チカと私の唇。
因みにさん、情けないことに余りに唐突過ぎて咄嗟に対処出来ず。
結果、私の唇の隙間からチカの舌が侵入してくるのをやすやすと許してしまった。
私が準備万端の時にはこっちから仕掛けても焦ってばかり居るくせに、
攻めに転じると強気なことこの上ない。
悔しいことに、逆もまた然り。
私は口内でまるで生き物みたいに動き回っているチカの舌に翻弄されながら、
弱々しくも両腕を突っ張って、抵抗を試みた。
不意に、ふっ、と、チカが少しだけ私から距離を取る。

「おぅ、、いい加減観念して、目くらい瞑ったらどうだ?ん?」
「・・・・うう、このさんとしたことが、不覚を取ったわ・・・。」
「はっはー!思い出したか?確かにおめぇが言ったことだぜ、これを条件に水に流すってなぁ?」
「本気にしてると思わなかった・・・。」

背中を帆柱に押し付けられた状態のまま、私はクタリと首を横に傾けた。
と、チカの片手がその私の顎をグイと強引に上向かせる。

「おっと、まだまだこれで終わりじゃねぇんだぜ?
おめぇにゃ、今まで散々からかわれてきてっからな、その礼も兼ねて、
俺の口付けをゆっくり味合わせてやる。」

言い終わるとすぐに、チカはまたしても私の唇を自分の唇で塞いだ。
キス。
と言うよりは、まるで喰らいつかれて居る様な感覚。
舌がぬるぬると絡み合わされ、逃げることを許さないと言わんばかりに強く、強く、吸い上げられる。
噛み付く、貪る、奪われる。
この間の私のキスなんか、これに比べたら本当に子供の悪戯みたいなものだ。
元々着崩していた着物が、チカのせいで更にしわになって乱れてしまった。
チカ曰く、「ねぇ胸」が、谷間らしき辺りまで見え隠れしている。
お互い息を切らしそうになりながら、チカがゆっくり私から離れた。
私は帆柱に背中を預けたまま、ずるずると床に座り込もうとした。
だけど、チカが掴んでいた私の腕を、軽く引っ張って、自分の方へと私の体を引き寄せる。

「・・・何、チカ、ホントに獣化しちゃう?もしかして私の色気漂う『ねぇ胸』に欲情したんじゃないの。」
「んだよ、その矛盾しきった言葉は。しねぇよ、今は、な・・・。」

わお。
言って、いつもみたいに茶化そうと思ったんだけど、
後半部分のチカの声が余りにも真剣だったので止めた。
それに私自身、まだキスの余韻が残っていたから。
チカの背中に腕を回して、わざと視線が合わないようにきつく抱きついた。

「チカ、助けに来てくれて有難う・・・。」
「ケッ、んだぁ?急にしおらしくなりやがって・・・・。ま、いいけどよ・・・。
それに・・・・・礼なんざ要らねぇぜ、おめぇを掻っ攫われたのは・・・俺の落ち度だからな・・・。」

彼はそう言って、クシャリ、と、私の髪を掌で撫でた。

不意に私は、チカの肩越しに空を見上げる。
薄暗い空に、星が幾つか、姿を見せ始めていた。

妙で大変な一日だったけど、楽しかったと言えば、楽しかったような気がする。
何よりチカが心底心配してくれたことが、実は凄く嬉しかった。


これはどう言う感情だろう?
チカも皆も勿論知らないだろうけど、私にとってここはゲームの世界。

長曽我部元親。

キミは私の愛するキャラ。
だけど、ちょっと複雑な気分だ。
ねぇ、これってもしかして、キャラ愛とは違うもんなの?

愛ってのは複雑難解。
2×年生きてきたけど、これはちょっと計算外だわ。


答えが出るのはきっともうちょい先の筈。
それまでは、何も考えずにキミの腕で甘えていたい。

今はもう少し、この複雑な気持ちに蓋をして。



(終わり)



後書き
えー、今更ながら気付きましたが、このヒロイン、私が書いた今までのヒロインの中で、
一番ボケていておかしげな気がします(笑)今までツッコミ系ばっか書いてたのに、
どちらかと言うと元親の方がツッコミ役に回っている。攻めなのか受けなのか微妙な感じだし。
*補足*『モトチカ!ドハツテン』=怒髪天を衝く。から来てます(笑)
(激しい怒りの形相になる)
ではでは、ここまでのお付き合い、誠に有難うございました、失礼致します。


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