「やあ、我が麗しの姫君。ご機嫌いかがかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
深夜。
ゆらと揺らめく蝋燭の炎。
室内に灯された光は数本。
その広い一室の片隅。
女は常と同様悲哀に満ちた絶望色を強く滲ませた双眼で男を見上げた。
「昨夜はここに足を運べなかったからね・・・。
だが残念だよ、。部下から聞く所によると、君は自ら命を絶とうとしたらしいじゃないか。」
男・松永久秀はゆるりとした口調で未だ無言の彼女に向けて言葉を紡ぐ。
足早に、しかしあくまでも静かに余裕を見せた様子で、彼はの側へと近づいた。
「私との約束を、覚えているかい?。」
そう口にしながら、久秀は片手の指先で彼女の顎を捉える。
瞬時、彼の台詞にが僅かにその虚ろとも表現できる瞳を見開いた。
「・・・・っ・・・!」
「そうだ、君の可愛い一人娘だ。歳はまだ3つだったか。
あの無垢で小さな姫君を殺さねばならないとなると・・・私も心が痛むよ。」
「・・・ああっ!止めて下さいっ・・・!どうか、どうか、あのコだけは…!」
耐えきれぬ様子で彼女は懇願する。
鈴の音を思わせる儚い高音。
悲痛な思いを強く含んだ、可憐な音色。
久秀は口角を微かに吊り上げた。
「安心したまえ、私も無用な殺生は好まない。
卿が私との約束さえ守ってくれれば、あの無垢なる姫君を手に掛けるような真似はしない。
覚えておくといい、君が命を絶つ事を許されるのは、私が君を手放すと決めた瞬間のみだ。」
言い終えると彼は指先での顎を捉えたまま、
小刻みに震えている彼女の紅唇にゆっくりと自らの唇を重ねた。
「そうだ、君は知っていたかな?今日は君の哀れで愚かな夫君と家人達の命日だったのだよ。
クック・・・今宵は故人を偲んで遺された君の傷をじっくりと私が癒して差し上げるとしよう。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
唇を触れあわせ、湿った吐息をの唇へと吹きかけながら、久秀が囁く。
それはどこまでも甘さを帯びた声音だったが、同時に身の凍る程の冷たさを含んでいた。
の瞳は一層仄暗い絶望を滲ませ、白い頬には幾筋もの涙が零れ落ち始めた。
だが、その表情は傀儡の如き虚ろなものだった。
(終わり)
後書き
初久秀夢・・・超ダークな上、ヒロイン殆ど喋ってないですね、すみません。
それから思ったのですが、確か久秀は二人称、「君」だけじゃなく「君」も使ってなかったですかね??
もしそうならそっち仕様でいこうかと思ったんですが、微妙な記憶だったので止めました。
(確認後に二人称を君に変更しました)
って言うか、スッゴイ緊張しますね、松永卿を書くのは。あの色気を表現出来るように精進します。
ここまで読んで下さった姫様には深く感謝いたします、失礼します
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