ハァハァハァハァハッ
ハァハァハァ・・・
浅い息を繰り返し、胸を上下させる。
どうやってここまで戻って来たのかも覚えていない。
気付けば私は城内のいつもの室で立ち尽くしていた。
握る得物の苦無が血でぬめぬめと滑る。
体のそこここを濡らす鮮血が返り血なのか、
それとも私自身のものなのか、それすら分からなかった。
「帰ったか・・・。」
「・・・久秀様・・・・。」
障子が音もなく開き、我が主・松永久秀様が姿を見せる。
私は視線を上げ、素早く床へと跪いた。
「豊臣秀吉、並びに竹中半兵衛暗殺の命、遂行致しました。」
「そうか、ご苦労だったね。・・・ふむ、今回は中々苦戦したと見える。」
「・・・お見苦しい姿で申し訳ございません、私はこれにて。」
「待ちたまえ。」
「っ!」
言いざま、伸ばされたあのお方の腕が私の肩を捉える。
「常々思っていたのだが、君は赤が良く似合うな、。
その白い肌に美しく映えている。ふふ、ついつい見惚れてしまったよ。」
「・・・久秀様、お召物が汚れてしまいます。」
主は私を見下ろし、微かに瞳を細めて唇の端を上げて笑っている。
その視線が私の隅々を観察するように動いた。
「傷を負っているのか・・・?痛むだろう。」
やがてその視線が私の脇腹付近で止まり、久秀様はいつもと同じくゆったりとした口調で言った。
「いいえ、それ程深い傷ではありません。お気遣い頂き、有難うございます。」
「気遣いか・・・、クック・・・そうだな、
私は他人に自分の所有物に傷を付けられるのは嫌いだよ。」
胸元。
言葉を紡ぎながら、主は私の忍び装束に手を触れる。
私は無言でそれを受け入れた。
この先、久秀様が私をどう扱おうとしているのか、私の身に何が起ころうとしているのか。
そんなことはもうよく分かっていた。
それでも無論、私に抵抗の意思など無い。
「私の物に危害を加えた輩には憎悪すら感じる。」
――ビリリッ
主は手荒く腕を振り動かし、言葉と同時に私の忍び装束を引き裂く。
瞬時、私の素肌が露になり、脇腹の傷が姿を見せた。
竹中半兵衛の太刀を受けて出来た傷だ。
「傷は余り深くは無い様だな…。掠った程度か。」
「――・・・・・・・・・。」
傷口。
その上を指を滑らせる様になぞりながら、久秀様が呟く。
当然痛みは感じたけれど、この程度なら我慢できない程ではない。
何より忍びは痛みには強くなければやっていけない仕事だ。
その為の訓練すら受けている。
私はただ無言で久秀様を見つめていた。
私の傷口を辿る主の指が赤く染まっていく。
綺麗だ。
私は純粋にそう感じていた。
「クック・・・従順で優秀な我が忍び・・・君には褒美を与えねばならないね。」
喉の奥を鳴らして小さく笑い、久秀様は私の頬に片手を伸ばす。
そして傷口に触れる指はそのままに、私の唇に主の唇が寄せられた。
「君はもう知っているかもしれないが、苦痛と快楽は同時に与えられると癖になるらしい・・・。」
血に染まった指先でつ、と、胸元を撫で上げられる。
私は僅かに瞳を伏せた。
視界に滲む、赤。
紛れもなく、私のもの。
主は赤い指先で私の胸の先端を弄びながら、口付をより深いものへと変化させた。
絡められた舌が、強弱をつけて吸いついてくる。
甘く歪んだ熱が私を徐々に侵し始めていた。
頃合いを見計らった如く、再び傷口に主の指先が移動し、
今度はそこを引っ掻くように抉られる。
「ぁ・・・っ・・・!」
ビクン。
咄嗟に身を震わせ、私は僅かに声を漏らした。
「君への褒美は癖になるとまで言われる極上の苦痛と快楽だ。無論、いつもの比ではない程のね。
何、遠慮は要らない・・・何故なら、この私も愉しませてもらうのだからね。」
くっく。
主は再度、喉を鳴らして哂い、私の耳朶を柔らかく食んだ。
(終わり)
後書き
NOOOOO!…どう頑張ってあがいても松永卿のあの大人エロティック(笑)
が表現できません。しかもまたダークだしね。あはは、うふふ。
違う、せめてもっとこうきちんとした形の愛ある話が書きたいのに!
いや、こう言う明らかに歪んでるのも嫌いじゃないんですけど・・・、でも、CHIGAU!(…
ですが必死さだけは読み取って頂けると嬉しいです(笑)
ではでは、ここまでのお付き合い、誠に有難うございました!
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