「君は稀に見る極上の器だ、
一体今まで幾人の哀れな男が君に溺れ、跪いて来たのか興味深いところだな。」

言葉を紡ぐと共に久秀は唇の端を微かに歪めて哂った。
その手が彼の隣に横たわる女の肢体を滑る。
先程までの行為で室内のは独特の芳香が立ち込め、艶やかな空気が周囲を満たしていた。
未だ熱を帯びた白く磁器の如き彼女の肌は、彼の掌に張りのあるなめらかな感触を伝える。

「お褒めに預かり光栄ですわ、久秀様。」

何所か皮肉を含んだ口調で返し、と呼ばれた女は久秀の視線を捉えた。

「ですが、わたくしが今までどの様に過ごしていたのかは久秀様が一番よくご存じのはず。」
「クック・・・、そうだな。愚かな夫君の元、
随分と退屈でつまらない日々を送っていたらしいと言う事だけは良く知っているよ。」

歪めた口元はそのままに、彼は喉の奥を鳴らして言った。
は小さく頷き、肯定する。

「その通りですわ、退屈で殺されるかと思っていた。
でも、夫に嫁ぐ以前もずっとそうでした。わたくしは、いつも何かに飢えていた・・・。」
「満たされぬ渇き・・・、欲望・・・。人の欲望は尽きる事を知らない。
、君の不幸は周囲にそれらを少しでも満たすことのできる人物が存在しなかった事だ。」
「ええ、ですが今は・・・。」

そこで言葉を切り、は紅唇で艶やかな弧を描く。
そして細くしなやかな指先で久秀の頬に軽く触れた。

「あなた様がいらっしゃる。
わたくしの欲望をその先を、いつでも与えて下さるあなた様が。
あの退屈でつまらない日々からわたくしを救い出し、快楽の何たるかを教えて下さった・・・。」
「従順で純粋な姫君が今や妖艶な我が愛妾殿だ・・・。
いやはや、君の亡き夫君は冥土でさぞかし悔しい思いをしているだろうね。」

の手を片手で掴み、彼はその繊細な指を口に含んだ。
彼女は半ば恍惚の表情を浮かべ、自らその肢体を彼の胸へと密着させる。
瑞々しい果実を思わせる豊満な乳房が久秀の胸板で形を変えて押しつぶされた。
再び互いの熱が上昇を始め、それと同時に情欲が膨張を開始する。

「あなた様だけが、わたくしの唯一の人。
久秀様、あなた様の望むまま、わたくしも与えて差し上げますわ、悦楽に満たされたひと時を。」
「クック・・・可愛いことを言ってくれるじゃないか、。」


言いざま、久秀は彼女の首筋に顔を埋め、唇を寄せた。
はその背に腕を伸ばし、彼を強く抱きしめる。
しなやかな彼女の脚を割って久秀の足が絡みついた。
彼は唇を徐々に彼女の耳元へと移動させ、囁く様にして口を開いた。

「ならば今まさに沸き起こっている私の内のこの衝動を解放して貰おう。
無論、君自身のその身を持ってね・・・。」

低く掠れた久秀の声音。
の鼓膜を心を震わせる。
甘く。
黒く。

「仰せのままに、久秀様。」


の瞳の奥。
ゆらめく炎。
久秀と同様の闇の炎が宿っていた。



(終わり)


後書き
・・・・どおどどど・・・どうしてこうなった!(…
いえ、あの「普通の愛」的な松永卿を書こうとしていた筈なんですけどね!
これ、どう見てもヒロインもダークサイドだ(苦笑)
でもこの手のヒロインは初めてで凄く楽しく執筆出来ました。
ではでは、ここまでお付き合い下さった姫様に深く感謝しつつ、失礼致します


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