幾度、こうしてあなたの腕に抱かれただろう。
幾度、こうしてあなたの唇に触れただろう。
幾度、こうしてあなたと閨を共にしただろう。


数え切れないほどの逢瀬。
だけど、ねぇ、小十郎様。
私はいつでも不安で堪らないのです。

戦場であなたが傷を受けて帰って来たと聞いては心臓が止まる思い。
私の元にお姿を見せて下さった瞬間、いつもいつも涙が出そうな程にホッとする


戦場。
私とてくのいち。
あの壮絶な空気を、あの冷たさと熱を、激しさを身に沁みて知っているから。


きっとあなたはこれを知ったら怒ってしまうのでしょうね。
だけど決して、あなたを信頼していない訳ではないのです。
臆病な私を、どうかお許しくださいませ。





どくんどくんどくん。
 ドクンドクンドクン。

眠っている小十郎様の裸の胸に耳をそっと押し当てる。
聞こえる。
力強い、命の音。
小十郎様の音。

「・・・。」
「小十郎様…起してしまいましたか?」
「いや、構わねぇさ。どうせうたた寝程度のつもりだったんだ。」

言って、小十郎様は私の髪を優しく撫ぜた。
私の頭上から放たれる声は胸を締め付けられる程静かで穏やかだ。

「フッ・・・オメェはまた俺の心の臓の音を聞いてたのか。」
「はい、落ち着くんです。」
「そうか、こんなもんで良けりゃ、いつでも聞かせてやる。」
「小十郎様・・・。」

私はもう一度小十郎様の名を呼ぶと、
先程よりも両腕に力を込めてその厚く逞しい胸板に身を寄せた。
小十郎様に抱かれる度、私は生を確認する事が出来る。
私は小十郎様の胸にある幾つも刻まれている太刀傷のひとつをゆっくりと指先でなぞった。
そして無意識の内に体を僅かに動かし、その傷に舌を這わせていた。
硬い筋肉の隆起した感触に、肌に刻まれた傷痕の生々しい感触が混じり合って私の舌に伝わり、
私の体の奥が再び疼き始める。

「困ったもんだぜ、オメェには・・・また、俺の体に火が点いちまうだろう。」

言いざま、小十郎様はわたしの脇腹から胸元にかけてを撫で上げた。
大きく骨ばった掌。
素肌を滑ったその感触に、ゾクリ、それだけで鳥肌が立つ。

「明日は早朝から軍議がある・・・。遅れる訳にはいかねぇな、。」
「はい、さようでございますね。」
「だが、このまま終わるつもりもねぇ。」

言い終えてすぐに、小十郎様は私を腕に抱いたまま、身を反転させた。
そして、言葉を紡ぐことなく性急に口づけられる。
小十郎様の熱い吐息が私の喉を満たし、焦がした。


ドクンドクンドクン。
  どくんどくんどくん。



鼓動が速度を上げる。
耳を当てていなくてもそれは分かっていた。
だけどそれが、私のもなのか、小十郎様のものなのかは分からない。
心音。
命の音。


「小、十郎・・・様・・・。」


「安心しな、。俺の鼓動はいつでもオメェと共にある。
それでも不安なら、いつでも何度でも俺がオメェに教えてやろう。全身全霊をかけて、な。」


「―――――――――っ・・・!?」


ドックン。


小十郎、様。
知って。
知っておられたの、ですか?
私が、私がずっと、不安を抱えていたことを。


「お喋りはここまでだ・・・、後は体でじっくりと、・・・分かってるな?」

鼓膜を震わせる小十郎様の低音。
熱が、生まれる。

「はい、小十郎様。」

頷いた私の唇に再び小十郎様は噛みつくような口付をした。


ドクンドクンドクン。
  どくんどくんどくん。

あなたと私。
重なる、命の音。
ああ、小十郎様。
今宵もまた、いいえ、この先もずっと、あなたの腕に愛されましょう。


(終わり)



後書き
激しく久々小十郎夢でした。ちょっとヒロインがくのいち的な性格とは言い難いですが(笑
でも小十郎は書いていて凄く楽しかったです。またネタが降臨すれば書きたい。
凄く好きなんですけど、いざとなるとネタがなかったりする悲しい事実(涙)
ではでは、ここまでのお付き合い、誠に有難うございました。失礼します


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