「知らぬ!!私はもう佐助なぞ知らぬのだ!」
「おいおい、姫さん、そりゃねぇだろ。機嫌治してくれよ。」
「ええい!よるな!毎夜毎夜っ、ここここここ、こんな・・・っ!」
言いざま、は佐助に手元の枕を投げつける。
しかし彼は意図も容易くそれを避け、獲物を逃した枕はそのまま壁へ衝突し、
畳の上へと転がった。
「避けるでない!佐助!」
「無茶言うなって。枕って思ってるより硬いんだぜ?」
「知らぬ!そなた等枕の角で頭を打って一度黄泉路を見物してくるがいい!」
言葉と共に、は彼に背を向ける。
「へぇ、そう言うこと言ってくれちゃう訳だ、姫さんは。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・フン。」
彼女の顔を背後から覗きこもうとする佐助を極力避けて視線を逸らし、
拗ねた童の如く小さく鼻を鳴らす玲。
「いいぜ、姫様。さすがに黄泉路を見てくるってのは無理だが、
あんたが望むんならさっさと退散しますってね。」
軽い口調で答え、佐助が立ち上がる。
無論、彼は真にこの室を立ち去るつもりなど毛頭なかった。
これは佐助が本格的に行動を示すより以前に、
彼女が彼を引き留めるに違いない事を、重々承知の上での邪心ある戯れに過ぎない。
しかし、はそんな佐助の胸中など知り得る筈もなく、
彼の態度に即座に動揺を示し、案に違わず取り乱した様にして彼へと振り返った。
「ま、待たぬか!佐助!」
「ん?どうしました?」
「・・・・・・・・本当に出て行く気か・・・?」
「俺が出て行くことで姫さんのご機嫌が直るなら、出て行くぜ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
そこで彼女は無言で佐助を見上げ、
やがて美しい漆黒のまつ毛でびっしりと埋め尽くされたその瞼を僅かに伏せた。
襦袢姿の彼女は常の少女のような幼さと共に、えもいわれぬ艶やかさを滲ませていた。
先程までの行為で僅かに乱れた長くしなやかな黒髪と、
白い喉元から襟首にかけて散らされた生々しい鬱血の痕が、
更にその艶やかさを引き立てている。
佐助は半ば魅入られる如く彼女に視線を送っていたが、
自身は全くそれに気付いている様子はなかった。
「佐助、そなたは私の側に居て欲しい・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「先刻は言い過ぎたと思っている・・・。そなたが望むならば、私は毎夜でもそなたを受け入れる…。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
震える声音でが言葉を紡ぐ。
彼を見上げる彼女の瞳。
不安げにジッと佐助を見上げている。
「さ、さすけ?」
「あああー、もう!俺様降参!!」
「っ!?」
耐えかねた如くして、佐助が再び腰を下し、の体へ腕を回した。
力強く、彼女の体を抱き寄せる。
「姫さん、あんた可愛過ぎだぜ。
だから俺様もついつい手加減出来なくなっちまうんだ。」
「・・・・・・・・・佐助・・・・。」
は彼の名を呼び、おずおずと自らも彼の背へと華奢なその腕を絡めた。
佐助は彼女の肩口に唇を埋める。
「やっぱ俺、姫さんには敵わねぇぜ・・・。」
囁くようにそう口にし、低く掠れた佐助の声音がの耳に届く。
「佐す・・・・・っ!?」
刹那。
彼女は一瞬にして、佐助の下に組み敷かれていた。
余りに唐突な出来事に、彼女は茫然と彼を見上げる。
ニヤリ。
佐助の口角が上がった。
「ってことで、今回もこのまま雪崩込む方向でいいんじゃね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・‥・・・。」
「いやー、姫さんって、ほんっと、可愛いわ。」
喜々とした様子で彼はの襦袢の紐へと手を触れる。
ようやく事態を把握した彼女は、身をカタカタと小刻みに震わせた。
「いいねぇ、姫さん、いつになっても初々しい反応で!」
「佐助、・・・・佐助、そなた、そなたぁっ・・・・・!!」
「ん?」
怒りに身を震わせているを、口元を緩めたまま、佐助が見下ろす。
瞬時。
の怒声が飛んだ。
「そなたなど!!黄泉の果てまで飛んで行ってしまえ!!!!!!」
(終わり)
後書き
超久しぶりのBASARA。そして佐助でした。・・・・佐助、偽物になってないといいが(苦笑
このヒロインの性格、結構書き易いかもしれません。
ではでは、ここまでのお付き合い、誠に有難うございました。失礼します。
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