ある朝突然、ご丁寧に送られてきたムービーメール。

ははは、何?コレ。



〜Wild strawberry〜



そこは見覚えのある教室。
と言っても、教室なんかどこも同じ様なものだけど。
とにかく、舞台は教室だった。
更に言えば人気のない放課後の薄暗い教室。
そして位置的には少し離れた場所に男子生徒と女子生徒が一人ずつ。
男子生徒の方は、すぐに誰だか分かった。
伊達政宗先輩。
二つ年上の、そして、私の彼氏である筈の人。
女生徒の方は遠めで見難かったけど、よく見てみれば、政宗先輩のハーレムの第一夫人だった人。
因みに『ハーレム』ってのは、
政宗先輩に侍る女生徒の数の多さとその勢力争いなんかかから名付けられたもの。
第一夫人とか第二夫人とか呼ばれる先輩まで居て、
それは政宗先輩の彼女有力候補順位みたいなもんだった。
政宗先輩曰く、


―HA!下らねぇ、最初っからただのオアソビだろ?誰も本気にしてやしねぇよ。


らしいけど。
私と付き合い出す事になって政宗先輩自ら解散を言い渡したハーレム。
私の手元に送られてきたムービーメールで、
政宗先輩と向かい合って何事か会話してるハーレム第一夫人だったその先輩の顔は、
どう見ても『オアソビ』には見えなくて、真剣そのものだった。
まぁ、別にそれだけなら問題ない。
ハーレムの第一夫人だった人と教室に二人きりってのはやっぱりムカつくけど、
でもそれだけならまだ『仕方ない』で済まされた。
だけど、それだけなら、わざわざ『ムービー』で送られてくる訳がない。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


今は丁度休憩中で、私はケータイを掴んで先輩の居る3年の教室に向かった。
ムービーメールの内容の続きはこうだ。
向かい合って何事か話をしていた二人。
そして会話しながら少しずつ二人の距離が縮まってく。
更に、政宗先輩の片手が上がって、彼女の頬に触れた。
瞳を閉じる元第一夫人。
顔を近づける政宗先輩。
それから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジで何・・・・・・・・。」


まるでドラマのワンシーンみたいな、キス。


その瞬間、手元にあるケータイ、片手でバキッと、折りそうな程、
私は思い切り力を込めて握り締めてしまった。
何がムカつくって、政宗先輩から動いてた事だ。


―アンタ以外いらねぇ、俺と付き合えよ。俺の女になンな、
アンタを満足させられる男は俺だけだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・嘘つき・・・・!


ムカムカ、競り上がってくる怒り。
先輩がモテる事なんか百も承知だったし、それはもう仕方のないことだと思ってた。
私も分かるから、彼女達の気持ちが。
だけど。



ドンッ。


「っ!?」
「アアン?何だぁ?前見て歩けや。」


3年の教室に向かう廊下。
角を曲がった所で出会い頭に他の先輩とぶつかった。
私は間抜けに廊下で尻餅をつきながら、慌てて咄嗟に相手の先輩に謝る。


「あの、すみません・・・!」
「・・・元親、前方不注意はそなたにも言えたこと、それにも気付かず、
他人・・・しかも女子にその様な物言い・・・まさに愚劣なる行為よ。」


静かな声でそう言ったもう一人の先輩に助け起こされながら、私は思わず声を上げた。

「毛利先輩、長曽我部先輩・・・!」
「あん?オメェよく見りゃ伊達の・・・。」
「そなた、確か名はと申したな。怪我はないか?」
「大丈夫です、有難うございます。」

言って、私は毛利先輩に頭を下げる。
先輩は軽く頷いた。

「この愚か者は自らの行為を悔いる事も出来ぬ様だからな・・・。
我から言い聞かせておこう。」
「って、愚か者ってのは俺か!?元就!?」
「フッ、貴様以外に誰か居るのか?未だに詫びる事さえしておらぬだろう。」
「え!?いえいえ、私も廊下走ってましたし、すみません。」

答えた私に、長曽我部先輩が視線を向けた。

「・・・元就の言い草は有り得ねぇが・・・俺が悪かったのも確かだ。すまねぇな、。」
「いえ、私も。」
「・・・それでそなた・・・わざわざ3年の校舎まで足を運ぶと言う事は、あの男に用か?」
「・・・はい。」

毛利先輩のストレートな質問に一瞬ドキリとしつつ、私は頷く。
先輩は整った切れ長の静かな目を少しだけ細めた。

「あの男ならば席を外している、時を改めて来るがいい。」
「え?そうなんですか・・・?」
「おっ、そう言やハーレムの連中が騒いでやがったからなぁ。
女数人と場所変えてたみてぇだが、あの後どうなったかは知らねぇぜ。
はっはーザマみろっつんだ、独眼竜が。」


『ハーレム』


その言葉を聞いただけで、ドクッ、と、心臓が馬鹿みたいに大きく鳴った。
思わず、棒立ち状態の私。
毛利先輩が長曽我部先輩に冷ややかな視線を向けた。

「元親、そなた・・・・。」
「アアン?何だぁ?元就、その面は?・・・ッグアっ!!!!!」


シュッ。
―ドサッ

「「「!!??」」」


一瞬、何が起きたのか分からなかった私たち。
気付けば、長曽我部先輩の背中の上に猿飛先輩が片手を軽く上げつつ座ってた。

「・・・・えーと、猿飛先輩・・・?」
「よ、ちゃん。毛利の旦那が敢えて言わなかった理由を長曽我部の旦那がお節介にも口にしちゃってたから、
なーんか、今が出時かなって思ってさ。俺って気遣い屋さんだからなぁ。」
「テメェ猿飛!!!!!!わざわざ俺の上に乗って出て来んな!!!さっさと降りやがれ!!」
「・・・猿飛よ、これ以上この者の吼え声を耳にする事、我は耐えられぬ。早々に降りよ。」

青筋立てて抗議の声を上げる長曽我部先輩に、毛利先輩が呆れた様な声で言った。
当の猿飛先輩はやけにのんびりとした様子でわざとらしく溜息なんか吐いてる。

「やーれやれっと、ここって騒がしすぎだわ。ちゃん俺と屋上行こうぜ。」
「え!?」

言って、唐突に猿飛先輩に腕を掴まれた。
驚く間もなく、そのまま拉致られる私。


「ちぃっ!猿飛の野郎、次あったらただじゃおかねぇからなぁ!!」
「・・・・・そなたは自業自得と言うものよ。
・・・だが、あの男にとっては都合が良かったと言えるかもしれぬな。」





私が猿飛先輩に連れてこられたのは、先輩の言葉どおり屋上だった。
移動中の状況は全く持って理解不能だけど。

「あの、猿飛先輩・・・?何で私先輩と屋上に居るんですか?」
「俺が連れて来たから。」
「そうですけど、そうじゃなくて!!」
「はは!怒るなって。冗談でしょうが。どうせ伊達の旦那は今居ないし、俺と暇つぶしもよくない?」
「まぁ、そうかもしれませんけど。」

言って、私はゆっくりフェンスまで近付いた。
見上げる空は、真っ青で、雲ひとつ無い。

「なぁ、ちゃん。」
「はい?」

振り向く先、少し向こうに立っている猿飛先輩の顔は、なんだかいつもと少し違っていた。

「先輩?」
「・・・俺だったらさ、あんたを不安にさせること、ないと思うんだけどね。」

少しずつ私の方に向かって歩いてくる先輩が、そう言った。

「・・・・・・・・・・え?」
「俺なら、伊達の旦那なんかよりずっと「HEY!!サル!Don't get any closer!」(それ以上近付くな!)

猿飛先輩の言葉を思いっきり遮って、聞こえた、その声。
同時に、屋上のドアがバァン!と、派手な音を鳴らして蹴り開かれた。

「・・・政宗先輩・・・。」
「・・・あらら、伊達の旦那のお出ましか・・・。」
「ちぃと席を外してる間に、人の女口説いてんじゃねぇぞ。猿飛。」

冷たい視線を突き立てるみたいにしながら、政宗先輩が猿飛先輩に言った。
そしてそのままツカツカと、こっちに向かって歩いてくる。

「伊達の旦那、野暮用みたいだったんでねぇ。俺がお相手務めてたって訳。」
「HA!アンタじゃ役不足なんだよ。」
「政宗先輩!!!」

咄嗟に声を上げて先輩の名を呼ぶ私。
政宗先輩を見た途端、思い出す、ムービーメールの、あのシーン。
お腹の辺りから、ふつふつ、何かが込み上げてくる。

「役不足ねぇ・・・、可愛い彼女を放って行っちゃう人に言われるなんて、俺凹むわ。」
「Shut up!失せな、猿。俺が戻って来た時点で、アンタの役目は終わった筈だぜ。」
「止めてください!政宗先輩!・・・・・・・・・・それに、私も、もう戻ります。」

ポケットにあるケータイを、無意識にぎゅうっと握り締めた。
手の指先、多分、真っ白になる位、力込めて。
政宗先輩の視線が、猿飛先輩から私に移る。

「おい待て、、何でアンタまで行く必要があるんだ?」
「・・・聞きたい事が、ありました。だけど、今はいいです。」
「what's?聞きたい事?・・・だったら言ってみな。」
「伊達の旦那、今のちゃんの言葉聞いてたでしょ。
どうせもう時間ないんだし、後にすれば?行こうぜ、ちゃん。」

猿飛先輩に小さく頷いて、私達は政宗先輩のすぐ傍にあるドアまで近付いた。
それに私が手をかけようとした、その瞬間。


ガッ
―バター・・ァァン!!!!


「「!!」」

政宗先輩が、片足を振り上げて、ドアを勢い良く蹴った。
私の目の前で凄い音を響かせて閉まるドア。


「政宗先輩!?」
「おめぇら・・・ふざけんじゃねぇぞ。誰が仲良く一緒に出て行けつったよ?」
「・・・・・・あーらら、大人げないねぇ。嫉妬ってヤツ?」

政宗先輩の瞳が凄みを増す。
だけど、猿飛先輩は全く動じてる風も無い。
私はと言えば、さっきから、ふつふつふつふつと、
湧き上がる何かと、必死に戦ってる最中だった。

。」

不意に、政宗先輩が私の名を呼んだ。
私は先輩に視線を向ける。

「アンタがハッキリ言ってやんねぇからコイツがつけ上がるんだぜ?
アンタは俺の女だ。ふらふら他の野郎について行ったりすんじゃねぇ。You see?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

―ふらふら他の野郎について行ったりすんじゃねぇ。


今、聞いたばかりの政宗先輩の台詞に、ピクリ、と、私の体が反応する。
沸点。
お腹でふつふつふつふつ言ってたものが、ぐらぐらぐらぐら、
煮えくり返って、それに、達した。

「だったら・・・・・・・・・先輩は・・・・・・・・。」
「ああ?」

呟いた私の声が聞こえなかったらしく、先輩は怪訝な顔で聞き返す。
私の中の、何かが、プッツン、と、音を立てた。


「だったら先輩は何なんですか!?私は他の人と話もしちゃいけなくて、
でも政宗先輩は他の女の人と会ったり、キスしてたり、
私にはそう言うのも受け入れろって言うんですか!?」
「・・・おい、何の話だ?」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
!」

答えない私の肩を、政宗先輩が掴んだ。
私は咄嗟にそれを振り払う。
ポケットのケータイを掴んで、例のムービーメールを再生した。
そしてそれを政宗先輩の手に押し付ける。

「見れば、分かりますから・・・!」
「!?!」

私は屋上のドアを両手で開いて、そのまま階段を駆け下りた。
背中で政宗先輩の声がしたけど、勿論、私は足を止めなかった。




―キーンコーン・・・


授業開始のチャイムが鳴る。
だけど、授業を受ける気になんかどうしてもなれなくて、
私は校舎裏の木の陰に一人で座り込んでいた。


政宗先輩・・・相当怒ってたな・・・。けど、あの場合キレるのは私の方じゃない?
あんな・・・・・・・・・・・・・。


ハァー。

自然と零れ出る深い溜息。
私は両膝に顔を埋めた。

「お、ここに居たのか、ちゃん。」
「!?」

不意に声を掛けられて、ガバ、と顔を上げると、私の前に猿飛先輩が立っていた。

「先輩、どうして・・・・?」
「授業サボっちまったけど、ちょっとちゃんに言っときたい事あってさ。」
「・・・・・・・え?」
「さっきの、伊達の旦那のムービーメール。」
「!」

何の事を言われてるのかすぐに分かって、私は思わず先輩を見上げる目を見開いてしまった。
猿飛先輩が苦笑しながら続ける。

「アレさ、実は俺、現場を通りかかったりしちゃったんだよねぇ。
ま、勿論旦那方は俺に気付いちゃいなかったけど。」
「・・・・・・え!?」
「敵に塩送るみたいで言いたかねぇけど・・・・、一応言っとくわ。
ムービーの内容自体は事実だけど、多分、真相はちゃんが考えてるのとは違うと思うぜ。」
「・・・・猿飛先輩・・・・それって・・・どう言う・・・?」
「さぁてねぇ、俺もそこまでは言えねぇかな。
おっと、俺は伊達の旦那が来る前に消えますか。また絡まれちゃ、堪らんねぇからな。」


シュッ。


消える。
言葉通り、猿飛先輩はあっという間にその場から居なくなった。

「俺様ってマジでいい男。」

と言う台詞を残して。
先輩の特技(??)に今更ながら呆然としていると、フッ、と、隣から陰がさした。
視線を移すと、そこに立っていたのは、政宗先輩。

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

咄嗟に言葉が出せずに、私は無言で先輩を見上げる。
政宗先輩は不機嫌Maxな表情を全く隠そうともせず、
ポケットから私のケータイを取り出した。

「・・・正直アンタにゃ知られたくなかったぜ。」
「認めるんですね・・・、ハーレムの先輩との事。」
「Ah-ha・・・ま、半分はな。」
「・・・半分?・・・・・・・・・・・・・・意味が分からな・・・・」

言いかけて、私は一度口を閉じた。
ついさっき、猿飛先輩が言ってた言葉が、頭を掠める。


―真相はちゃんが考えてるのとは違うと思うぜ。


政宗先輩は壁を背にして寄りかかると、
胸ポケットから煙草を抜き取って、口にくわえた。
そして、馴れた手つきでジッポで火を点ける。

「説明・・・聞いてあげても、いいですよ・・・・。
但し、納得出来なきゃ・・・・先輩とは・・・もう、お付き合い出来ません・・・けど・・・・。」

喉が、カラカラになりそうになりながら、私はどうにかそう口にした。
政宗先輩は、ゆっくり吸い込んだ煙を、フゥー、と、
同じ位ゆっくりそれを吐き出して、話を始めた。

「昨日の放課後だ・・・、アイツが俺の教室まで来たんだが・・・・・・・。」

先輩の話によると、真相はこう。
元第一夫人は急遽、1週間後に海外留学が決まったらしい。
『最後に政宗からキスして?してくれたら、もう本気であんたのこと、諦めるから。』
二人きりの教室で、彼女は政宗先輩にそう頼んだ。

「ま、当然断ったぜ。、アンタ以外の女に触れる事に、今の俺にとっちゃ何の意味もねぇからな。」

だけど、結局先輩は彼女の願いを聞き入れた。

『こんなに好きにさせたのは、政宗、あんたの責任だわ・・・!
せめて・・・最後くらい、あんたの手で終わらせてくれてもいいでしょう・・・?』

元第一夫人は、凄く気の強い感じの先輩で、
実際、政宗先輩もそこで始めて彼女が泣いたのを見たって事だった。

「・・・女の涙なんざ正直腐るほど見てきたからな、以前の俺ならそれこそ、
はいはい、で終わってただろうよ。・・・・だが、妙な事にあんときゃ情が湧いちまってな・・・。
後はあんたが見た通りだ。
だが、これだけは言っとくぜ、アンタに本気で惚れちまったからこそ、
俺はアイツを無下に出来なかった・・・・。以前みてぇに捨て置けなかったって事だ。」
「・・・・政宗先輩・・・。」
「ま、おかしな情が湧いちまった事でアンタを傷つけたのは確かだ・・・。
・・・I'm verry sorry. もう2度とあんな真似はしねぇよ。」


クシャ。


先輩の片手が、私の頭を優しく撫でた。
私は両膝に顔を埋める。
私と付き合う事で、先輩の性格が前より丸くなってくれたのは嬉しい、
それは、本当に嬉しい、だけど。

「・・・政宗先輩が、私にキスするのと同じキスを・・・あの人にするのが嫌だった・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」

ムービーメール。
あの、ドラマのワンシーンみたいな、キス。
大好きな先輩の大きな手が、あの人の頬に触れるのが、唇に触れるのが、
途轍もなく、嫌で、嫌で、堪らなかった。

その目であの人を見ないで欲しい。
その手であの人に触れないで欲しい。
その声であの人に語り掛けないで欲しい。

何て欲張り、強欲な、私。
だけど先輩、伊達政宗は、間違いなく、私の彼氏の筈でしょう?


私の隣に立って壁に寄りかかっていた先輩が、こっちに屈みこんで来る気配がする。
不意に、耳元、湿った吐息で先輩が私に言った。


、顔を上げな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

言われるまま、私は無言で顔を上げる。
先輩は耳元に寄せていた唇を、ゆっくり私の唇スレスレまで近づけた。

「I love you with all my heart.俺にゃアンタ以外考えられねぇ。
(俺はアンタを心底愛してるぜ。)
誓って言ってやる、、この先アンタ以外の女を欲しいと思うことなんざねぇってな。」

言葉を言い終えてすぐに、政宗先輩が唇を私に押し付けてくる。
先輩の大きな掌が、両手で私の頬を挟んだ。
伝わる、温もり。
私の下唇を甘噛みするみたいに吸い付いてくる政宗先輩の唇。
ちゅ。
と、言う音が何度も耳の届く。
ゆっくり瞼を開けてみると、目の前の先輩が私の瞳をジッとみつめていた。

「・・・・・・・・・政宗・・・先輩?」
「Honey.アンタ、納得してくれたんだよな?」
「・・・・・・・・・・え・・・?」

珍しく、心配そうな、自信のなさげな表情の先輩。
いつも、どんな時でも、私の事振り回してばっかりなのに。
可愛い。
なんて、言ったら、きっとこの人は怒るんだろう。
私は少しだけ迷うふりをしてみせて、それから先輩のシャツの胸元を軽く掴んだ。

「・・・さっきの、日本語で言ってくれれば・・・・、今回のこと、忘れますから・・・。」

政宗先輩はいつも肝心な部分を英語で言う。
それはそれで勿論嬉しいし、先輩らしいとは思うけど、
やっぱりここは日本語で言ってくれたらもっと嬉しい。

。」
「はい。」


「俺はアンタに心底惚れてるぜ。他の女の事でアンタを不安にさせたりなんざ金輪際しねぇよ。」


囁いた先輩が、フッ、と、目元を細めた。
そしてまた私にキスをくれる。
心からの、安心感。




その後、すぐに私は例のムービーメールを削除した。

「猿飛先輩の言うとおりだったな・・・。」
「what's?猿飛だと?」
「そうです、猿飛先輩が政宗先輩来る前に教えてくれたから。真相はきっと私が思ってるのと違うって。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「政宗・・・先輩?」

急に黙り込んだ政宗先輩は、スゴク険しい顔つきになっていた。

「先・・・ぱい??」
「Honey.ちーとケータイ貸せや。」
「はい?あ、どうぞ。」

私が素直にケータイを手渡すと、先輩はカコカコと何やら操作して、
またしても唐突に私の肩を片手でグイと引き寄せた。

「!?政宗先・・・・・・・・っ!」

驚く私の唇を再度、政宗先輩の唇が塞ぐ。
瞬間。


―パシャ!


「!!!」


ケータイのカメラ機能の音。
呆然としている私に先輩はさっきと打って代わってご機嫌な声で言った


「アンタは他の野郎にゃ絶対渡さねぇぜ、。害虫は早めに退治してやんねぇとなぁ?」


送信先は猿飛先輩。
更に、例のムービーメールの人にも送ったらしい。


だけど、何で、猿飛先輩???


「Honey,アンタはこの先もずっと俺だけ見てりゃイイんだよ。
俺ぁとっくにアンタしか見えなくなってんだからな。」


先輩の私を抱きしめてくれる腕が、力強い。
スゴク、心地いい。
思わず抱きしめ返す私の腕。


「私も、とっくにそうなんですけど?」


言った私に、政宗先輩は、この上なく、嬉しそうに笑ってくれた。


(終わり)



後書き
もう何と申し上げて良いのやら、まずは紅雀様!!深くお詫び申し上げます!!!
素敵な相互記念夢を頂いておきながら、こんなにも遅れてしまった上、
長々と読み難い状態の小説を押し付けてしまうことに、本当に申し訳ございません(土下座)
ですが、私の汗と感謝の結晶ですので、それだけはてんこ盛りです。
紅雀様から頂いたのは『すれ違い』とのリクでしたが、パラレル、しかも他のキャラ出張りすぎ、
私の趣味が混じりすぎていました・・・(苦笑)
こんな作品ではございますが、紅雀様に献上させて頂きます。
どうぞ、これからも宜しくお願い致します。


ブラウザバック推奨