「ウゲッ、真田の旦那、あれで団子20本目だぜ。
よく食えるねぇ・・・、見てるだけで胸焼けしそうだ。」
「!?兄上が団子を20本!?」
「そ、さすがのもあれは真似出来ないっしょ?って、おい!?」
佐助と共に木の上から武田の敷地を見下ろしていたは、
唐突に彼の傍を離れ、不機嫌極まりない表情で兄、真田幸村の元へと向かった。
そして彼女は今にも噛み付かんばかりの勢いで、
今し方団子を食し終えたばかりの幸村の胸倉を勢い良く掴む。
「なっ!?」
「兄上!!!!その『いしづ屋』の団子!!!10本は私の物だと言っておいたでしょう!!??
それを一人で全部食べてしまうとはどういう事!!!???」
「!す、すまぬ!あ、余りに美味だった為、思わず!!」
「問答無用!!!数量限定の貴重な団子の恨み!!!!」
言いざま彼女は胸元から苦無を取り出し、それを目の前の幸村に向けて放った。
刹那。
―シュッ
「ハイ!ちょぉっと待った!」
二人の間に割って入る如くして、佐助が現れる。
彼女の放った苦無はいとも容易く彼によってその勢いを失った。
だが、の剣幕を押し留めるには至らず、彼女は更に声を上げる。
「っ!?佐助!止めないで!!あの団子は連日売り切れの『超』が付く人気商品!
ここ一月通い詰めてやっと手に入れたって言うのに!!兄上!!命でもって償いなさい!!」
「!?ぶっ、武士たる者が戦場以外で命を掛けるとは、あり得ぬでござる!」
「あーーー!!ハイハイ、そこまで、そこまで。まぁまぁ、、落ち着きなって・・・。」
佐助は呆れた様に溜息を吐きながら、彼の主へと向かっていこうとするの両肩を押さえ込んだ。
「佐助!!お前にはあの団子の素晴らしさが分からないのよ!!」
「って、アンタ食ってないんでしょうが。」
「うむ、あれは素晴らしく美味であったな。」
二人の会話に咄嗟に幸村は口元を緩め、何度も頷いてみせる。
ほんわりと幸せを噛み締めている彼に、が再びブルブルと体を震わせ声を荒げた。
「兄上ぇぇぇぇ!!!!覚悟!!!!!」
「だぁーー!!!真田の旦那、アンタちょっと向こう行ってて!」
「何・・・!?・・・いや、分かった、すまぬ!!」
佐助の言葉に従い、幸村はそそくさとその場を後にする。
彼女はその背中に再度、団子の恨みを口にした。
「兄上!!『いしづ屋』の団子の事は一生忘れないんだからね!!!!!」
「・・・・・・・・・ハハハ・・・、アンタら兄弟にはマジで参るわ・・・。」
「佐助!お前さえ邪魔しなければ!」
「ま、そう怒るなって。ほら、これ。ホントはアンタら二人に買ってきたんだけどね。
今回はもうにだけ渡しとくしかねぇか。」
ドサッ。
言った佐助の手によって、の足元に投げてよこされた布袋。
それには彼女も見覚えがあった。
「これ・・・まさか・・・!!??」
「お察しの通り。」
「私に!?いいの!?」
「ははっ、今ここでこれ引っ込めちまったら、標的俺に変更決定でしょうが。」
苦笑する彼に、はすぐさま足元の袋の中身を確認する。
瞬時、その表情が輝いた。
「これで旦那の命は勘弁してよ、。アンタの兄上居なくなったら俺無職になっちまうぜ。」
「『いしづ屋』の饅頭にしょうゆ煎餅!!草餅まである!ああ!!限定団子!!!????
キャーーーー!!!佐助、やっぱりお前は一流の忍びよ!!!!最高!!!」
つい先程までの怒りも忘れ、袋の中身に一喜一憂する。
声が弾み、無邪気な笑顔を振りまいている。
「ったくよー、アンタら兄弟・・・ホンット、戦場と日常で変わりすぎだぜ。
こう見えても・・・戦場じゃ『紅蓮の戦乙女』なんて呼ばれてるんだからねぇ・・・。」
再度苦笑して見せる佐助の傍で、彼女は満足げな笑みを浮かべ、饅頭を頬張っていた。
「佐助、お茶!」
「はいはい。」
「あ〜、も、最高幸せ〜。」
至福の笑みとも言える表情で、彼女はお茶をすすって呟いた。
それを見つめる佐助の目元が、フッ、と、僅か細められる。
「ん?何よ、佐助。あ、もしかして珍しく甘い物食べたいとか?」
「いえいえ、俺は結構っと。あ、待てよ、やっぱ欲しいかも。」
ニヤリ。
答えた彼の唇が妖しく笑んだ。
は微かに首を傾げ、だがすぐに袋の中へと視線を落す。
「?そう、じゃ、どれがいい?私的おすすめはやっぱりこの・・・。」
「。」
「何・・・・・・・・・・・っ・・・!?」
彼女が佐助に名を呼ばれて顔を上げた、その刹那。
佐助の唇に塞がれる、の唇。
不意の出来事に彼女は呆然と視線を彷徨わせた。
そのふっくらとした桃色の唇に、ぬらり、と彼が舌を這わせる。
そしてゆっくりと彼女から身を離すと、佐助は満足げに口元を緩めた。
「、アンタの唇、やっぱ甘いねぇ。マジで、俺様の期待以上にさ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ん?もしもーし。あーあ、固まっちまってら・・・。」
半ば放心状態の。
だが、やがて彼女はふらりと立ち上がった。
彼女の唇が僅かに動く。
「・・・・・・・・・・・き・・・。」
「ん?き?」
「・・・・・・・・・・・貴様・・・、覚悟はいいか?」
「・・・・・アララ〜、これってもしかして・・・。」
チャキ。
突如、は腰の刀を抜き、同時に声を上げる。
「猿飛佐助!!貴様の根性!この私が叩き直してくれる!!!覚悟!!!!」
「って、それ叩き斬るの間違いでしょうが!!!
つかさっきの口付け程度で戦闘態勢に入るってどうだよ!?おい!」
振りかざされた刀を素早く避け、逃走を始める佐助。
しかし、その進路はすぐに阻まれる結果となる。
「佐助!!!そなた今!!何と申した!!??よもや我が妹に破廉恥な行為を!?」
「ゲゲッ!真田の旦那!」
「佐助!!!覚悟!!!」
前後から二人に挟まれた形になりながら、彼はピタリと足を止めた。
「前も後ろもってんなら、残るは一つってな。」
フッ。
瞬時、掻き消える佐助の姿。
「「!!!」」
勢い良く駆けていたと幸村は、寸での所で正面衝突を免れる。
「「佐助ぇぇぇ!!!!!!!」」
怒りを前面に押し出した兄弟の声が重なった。
後日、佐助は二人に甘味十日分を献上し、
どうにか事なきを得るが、
のこの時の行動が極度の恥じらいによってだったという事に気付いた者は、
彼女自身も含め、誰も居ない。
否。
陰で見ていた武田信玄、ただ一人を除いては・・・・。
「・・・はっはっは!若いのぅ。」
(甘味はいかが?-終わり-)
後書き
わー、思いっきり漫画読んでて考えたネタっぽい(笑)
でも幸村の性格自体はうちのサイトの幸村のままです。
漫画の彼よりもっとお笑い方向・・・・。ヒロインは漫画幸村と同じで微妙に二重人格(苦笑)
ではでは、ここまでのお付き合い、誠に有難うございました。
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