私は、奴隷。
一生逃れることの出来ない、囚われの者。
この牢獄で、一生を送る者。
私は、全てを奪われ、何も持たない、あの男の、奴隷。




―カツ・・・カツ・・・カツッ


冷たい石の床。
静寂を破り、ただ大きく、響く、足音。


―カツッ・・・カツ・・・カツッ


鎧を身につけ、戦場の空気を纏ったまま、
あの男が私の元へとやって来る。
鋭く、暗い、青い炎を宿した、隻眼の竜が。


―カッツ・・・ーン・・・・・・・・・・。


足音が、私の『室』の前で止まった。
私は顔を上げ、虚ろな瞳でその姿を捉える。


「HEY!、いいコにしてたか・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

答えず、私は男を無言で見上げた。
つい先程、数人の女達に湯浴みに連れ出された理由など、
嫌になるほど分かっている。


―カツッ・・カツッ・・カツッ・・・


『室』に踏み込んだ男が、口角を上げて私に近付く。
そして隻眼の竜は私に向かって手を伸ばした。
男が戦で浴びた返り血が、鎧に黒ずんでこびり付いている。
生臭い、血の臭い。
私の鼻を突く。
むせ返る様な感覚。
戦場の、匂い。

「クックック・・・、アンタ、未だに武将として戦に出たいと思ってやがるようだな?」

男が喉の奥で哂い、言った。
私はただ視線だけを、奴に向ける。
男の手が、私の唇に触れ、その形を確かめる様に、動いた。

「諦めな、。アンタはここから逃げられやしねぇ・・・。
Honeyアンタは俺のもんだ。髪の毛1本だろうが誰の手にも渡しゃしねぇ。」

隻眼を細めて、喉を鳴らして、再び、男が哂う。
そして不意に私の唇へ、その薄い笑みを浮かべた唇を押し付けてきた。
冷たい、唇。
やがて私の口内に男の舌がねじ込まれる。
私はそれに抗うことなく、受け入れた。
目を閉じれば、浮かぶ、戦場の風景。
それ程に、この男の周囲の空気は、戦の名残を含んでいる。
男が無造作に私の帯を解き、衣服を引き剥がした。
唇を貪られながら、冷たい石の床へと背中を押し付けられる。
その感覚に鳥肌がたち、私の体が震えた。
男は構わず私の上へと覆い被さってくる。
重く冷たい鎧の感触が、私の肌に密着した。
疼く、体の芯。
再び、鮮明に、戦場風景が私の脳へ去来する。
思えば、あの時から、この男に戦場で出会ったあの時から、
私の運命は位置づけられてしまっていたのかもしれない。
敵に捕らえられ、捕虜になった私を見つけたこの隻眼の竜は、
私を連れ去り、己の奴隷へと変えた。
力の限り抵抗し続けた私の全てを、いとも容易く踏みにじり、奪った男。

「HEY!何を考えてんだ?Honey.俺に集中しろよ。
アンタは俺のことだけ見て、感じてりゃいいんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

耳元で、何度と無く、囁かれた言葉。
熱い舌が、ぬらぬらと、私の耳朶を這い回る。
男の吐息が、私の鼓膜を震わせる。
疼き、火照る、私の体。
絶対的な支配。
身も、そして心も。
男に抗う術など、私には、全く、ない。


「ァあっ・・・っ・・・・ぅ・・・・!」
「Your voice gives me chills.-アンタの声は俺をゾクゾクさせるぜ。-
、もっと声を聞かせな・・・・。俺がそれだけでイっちまう位のsweet voiceを頼むぜ?」


内から私を揺さぶる低い声音。
ガチャガチャと、響く、男の鎧の震える音。
私の肌に、擦れる、返り血の染み。




私は奴隷。


この牢獄の鍵は、閉めらてはいない。
この牢獄には、錠は、ついてはいない。
それでも。



私は、奴隷。
一生逃れることの出来ない、囚われの者。
この牢獄で、一生を送る者。



(終わり)



後書き
ひぃぃぃ!!激ダークチックなものが書きあがってしまいまいした。
企画部屋の「至上の快楽」の続編ってな感じなのでダークなのも仕方ないんですが、
ちょっとこれかなりの危険作品だな・・・(苦笑)しかもヒロイン・・・喋ってないし!
ではでは、ここまでのお付き合い、誠に有難うございました!失礼します。


ブラウザバック推奨