あの男ほど「俺様」で自信家な男を、私は知らない。
頭のてっぺんからつま先まで、全てが自信に溢れてる。
戦場を駆ける姿はまさに恐れを知らない龍。
そしてあの瞳、隻眼にも関らず、その視線の強さは絶大。
見つめられたら一発撃沈、射抜かれてそれでお終い・・・。

それで・・・お終い・・・・・・・・。


【挑発熱視線】



「HEY!、邪魔するぜ。」
「・・・・げ!伊達男!!」

いつも突然押しかけてくる出羽米沢城主、伊達政宗。
身分の差が云々関係なく、コイツはいつもこうして私の元を訪れる。
私自身もあまりに身分の差があり過ぎて実感が湧かず、
まともに接しているとはいい難い。
どうやらこの男はそこが気に入ったということらしかった。

「相変わらずいい態度じゃねぇか、。久し振りに会ったんだ、もっと喜んだらどうだ?」
「ワーイ、マサムネサマダァ。ウレシイナ!」
「明らかに棒読みしてんじゃねぇ。」

言いながら片手を伸ばしたアイツが、私の額に軽くデコピンを食らわす。

「フン、で、今日は随分と夜遅くにお見えで、何の用?
1人暮らしの女を訪ねるにしては礼儀がなってないわね、伊達家の大将様は。」

腕組みをしてジロリと思い切り睨みつけて言ってやると、
伊達男はそれを物ともせずにニヤリと形のいい唇の端を上げた。

「OH!いい質問だ。アンタはどうして俺がここに来たと思う?」
「・・・・?さぁ?いつもと同じで雑談しに来たんじゃないの。」
「HA!だったらわざわざこんな時間は選ばねぇよ。」
「・・・??もったいぶらずに教えてよ。」

私がそう答えると、奴は益々意味ありげに唇に笑みを浮かべた。
そして、そのままずんずんと室内に押し入る。

「あ!こら、何勝手に!」
「客人もてなす時は室内に招き入れる位するもんだぜ、。」
「誰が客人!?どこよ、その客人とやらは!?まさか自分だとか言わないでよね。」
「おっと失礼、俺とした事がmistakeだったな。客人じゃねぇ、Steadyだ。」
「すて・・・?また訳の分からん異国語を。」

眉間のしわを深めて私は奴の背中を見る。
伊達男はそこでクルリと此方に振り向いた。

「steady.恋人って意味だ。Do You understand?」
「答えはNO!よ!」

この男との異国語を交えた会話の中で、初めに覚えたその返事を私はハッキリとそう口にした。
この手の話で伊達男相手に肯定するとロクなことにはならない。
それはコイツの顔つきと雰囲気で分かった。

「上等、アンタは絶対否定すると思ってたがな。」
「分かってて口にするんじゃないわよ。大体あんたは・・・・・・・・」

言いかけて、唇が止まる。
伊達男の瞳を見て、直感的にヤバイと感じた。

「What?先を続けろ、大体俺が何だって?」
「・・・・・・・・・・もういい、とにかく!私はあんたの『すてでぃ』とやらでは断じてありませんから、
そんな事実も一切ないから直ちに出て行きましょう、そうしましょう!」

極力あいつの視線を避けて、私は怒鳴るようにそう言って出入り口を指差した。
目の前に居る奴は、未だに余裕の笑みを浮かべたままだ。
勿論、その隻眼の瞳から発せられる妖しい視線もそのまま。

、その事実ってヤツを作ってやろうじゃねぇか。今すぐに。」
「・・・・・・・・・・・・・・なっ何言ってんの・・・!?」

「OH!ハッキリ口にしねぇと分かんねぇってかい?じゃあ言ってやろうじゃねぇか。
俺が今すぐその既成事実を作ってやるって言ってんだ。」

自信満々の瞳をひと際挑発的に輝かせてそうのたまった伊達男。
私は一瞬言葉の意味を飲み込めずにただ固まっていた。
逸らしたはずの目をしっかりアイツの瞳と重ねて、そのまま眉間にしわをよせて考える。


きせいじじつ・・・・・・・・・。
キセイジジツ・・・・既成事実・・・既に成る事実・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・って・・・・・・・・何が既に成る!?


「理解できねぇみてぇだな?OK!honey.ちぃーとこっちに来てみな。」
「っ!!!!」

私の返事なんか聞く気もなく、奴は唐突に私の腕をぐいと自分の方へ引っ張った。
私は不意を突かれて抵抗する間もなくアイツの腕の中へ倒れ込む。

「こらっ!この伊達野郎!!はっ・・・離せ!!」

慌てて抱きすくめられて押し付けられる胸板を両手で押し返して暴れてみる。
だけどそれは本当に全く無意味で、それどころかアイツは更にその腕の力を強くした。
そして奴は唇を私の耳朶スレスレまで近づけて言った。

「いい加減観念しな、。どうあがこうが俺に勝てるわきゃねぇんだ。
言っただろ?既成事実を今すぐ作ってやるってな。」
「っ・・・」

口を開く度に吹きかかるアイツの息と、耳朶を掠る唇。
私はその途端にぞくりと背筋を何かが駆け抜けた気がした。

「ククッ・・・どうした?男の腕に抱かれんのは初めてかい?さっきまでの威勢の良さがなくなってるぜ。」
「っ煩いっ・・・!!この女ったらし!!離せっ!!」

ちゅっ・・・・

「っ!!??」

喉を鳴らして笑っていた伊達男が、耳元に寄せていた唇で耳朶に触れた。
しかも、それと同時に耳に感じた柔らかで吸い付いてくるみたいな感触と、そのはしたない甘やかな音がした。
硬直する私を楽しむように、それは何度も何度も繰り返された。
そしてその度にちゅっと言う唇で吸い付いた後の音が耳に大きく鳴り響く。
石像と化した私の身体は、あまりのことにピクリとも動けなくなっていた。

「いいね、いいねぇ、あんたのその表情。拒む気はあるのに身体が動かないってかい?
いかにも初心者な所が色っぽくて益々そそるぜ。」
「なっ・・・この破廉恥男っっ!!」
「HA!そりゃいい、どっかの熱血兄ちゃんの台詞だな。」

そう言ってあいつはまたしても耳元でクククっと喉を鳴らして笑った。
私は顔を真っ赤にしながらも、至近距離の奴の顔をジロリと睨みつけてやる。

、アンタのその視線、俺を挑発してるようにしか見えないって知ってたか?」
「・・・・っ!?抗議してるのよ!」
「だが俺にゃ誘ってるようにしか見えねぇぜ。」

ほんの少しだけ私から身体を離して隻眼で見下ろす伊達男。
その眼が細められてジッと私の視線を捕らえた。
射抜くような瞳が、私の心臓を大きく跳ねさせる。
獲物を捕らえる肉食獣の眼のような、そんな視線だった。

「俺の女になりな、。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

咄嗟に言葉が出ずに、私はただアイツを見つめ返す。
奴がまた口を開いた。

「YES or NO?アンタの答えを聞かせろよ。」

見つめられたら一発撃沈。
動けなくなったそのままで、私は声を出すことも出来ずにまた固まる。
不意にあいつが親指の腹で私の唇に触れた。
そしてそれをゆっくりと唇の淵をなぞる様に動かす。
それに反応して私の唇が小刻みに震え始めた。

「アンタの唇、俺に触れて欲しくて焦れてるんじゃねぇのか?震えてきちまってるぜ。」
「私は・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・・・・・」

ハッキリと否定できない自分が居る。
その先をすぐに続けられなかったのが何よりの証拠だ。
奴の指がまた私の唇をゆっくりなぞって往復する。
熱が集中する、その一点に。

「・・・・YES・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「What?」

ワザとらしく聞こえないふりをするアイツ。
その瞳は思いっきり楽しげに細められている。
ムカついているのに、どうしてももう伝えずにはいられなかった。

「YES・・・」
「HA!OK.honey!良く出来たな。イイコだ、ご褒美をやろうじゃねぇか。」

顔を赤くして言った私に、奴がニヤリと笑みを浮かべて答えた。
唇をなぞる指を止め、私を少しだけ上向かせる。
そしてゆっくりと私の方へ屈みこんできた。
すぐに私の唇に触れる奴の唇の感触。
重ねた唇は未だに震えてる。
体中の神経が全部そこへ集中しているみたいに思えた。
いつの間にか私の身体はすっぽりとアイツの腕に収められていて、身じろぎ1つ出来ない。
唇をほんの少しだけ離したすれすれの状態で、不意に奴が言った。


「正直言うとな、焦れてたのは俺の方だ。アンタの視線に挑発されちまったぜ。」


その台詞に驚いて目を開けてアイツを見ると、
そこにはまた例の熱を帯びた視線を持つ奴の顔。


、既成事実、本気で作らせてもらうぜ?」


見つめられたら一発撃沈。


射抜かれてそれでお終い。


アイツの挑発熱視線。


(終わり)



後書き
蝶子様、毎回素敵過ぎる夢を頂いてしまって、本当に有り難うございます!
頂くばかりでは申し訳なさ過ぎると、お礼の意味を込めて執筆させて頂きました。
リクエスト頂いたCrazyと攻め攻め政宗を心の中で唱えつつ書き始めたはずなのですが、
・・・・・・・・・中途半端で申し訳ありません!!!!!!!
3回程書き直し、読み直し、それでも蝶子様の政宗には足元にも及びませんが、
とにかく愛情だけはてんこ盛りです!
こんな物がお礼となっているのかは甚だ怪しい所ではございますが、献上させて頂きます。
煮るなり焼くなり炒めるなりして下さいませ(笑)
では、これからもどうか宜しくお願いします。失礼させて頂きます!


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