政宗が城に居る場合、1日1回、絶対に私に向かって口にする言葉がある。
刷り込むように、叩き込むように、毎回同じ言葉を耳元で囁く。
「I love you!、お前は俺だけ見てろ。この独眼竜だけをな。」
ねぇ、政宗、だけどそれって本当に愛なの?
もしも本当に好きなら、そんなに簡単に毎回口に出せるものなのか。
それに何より、あんたは1度もまともに私に触れたことすらない。
だから私には分からない、あんたが口にするその言葉の中のどの位が本当なのか。
分からない、分からないのよ、政宗。
【10.言葉なしの”愛してる”】
「よぉ、。Good.morning!いいコで待ってたか?俺のいねぇ間に浮気なんかしてねぇだろうな?」
「おはよう、政宗。安心して、あんたじゃあるまいし、
少し間が空いた位で他に相手見つけたりしないから。」
「HA!そりゃ1本取られたぜ!」
悪びれもせずに政宗が笑って言った。
彼が戦に出て以来、私達が顔を合わせるのは約2週間振りだ。
朝早く広い中庭の石畳を1人で歩いている所に、彼は私に声を掛けて来たのだった。
「政宗、・・・珍しいわね・・・あんたの顔に傷がついてるわ。」
『独眼竜』とまで呼ばれている彼は、まさしくその名に恥じぬ戦いを見せることを私はよく知っている。
何故ならほんの数年前まで、私も彼と同じく戦場に立つ身だったからだ。
6本もの刀をまるで本当に自分の腕の1部の様に、彼は見事に使いこなす。
一振りで数人の敵が命を落すほどに。
その彼に傷を付けることが出来る腕を持つ人間が、今回の戦に居たのだろう。
「ああ、甲斐の虎ってのは間違っちゃいなかったぜ。今回は取り逃がしたが、
あのおっさんはこの俺が食らってやる。」
「じゃあ、その傷は・・・武田信玄が・・・?」
「いや、こりゃそこに居た暑っ苦しい兄ちゃん・・・真田幸村って奴のせいだ。」
私は暫くその傷を見つめ、そして彼の頬にふと手を伸ばそうとした。
「政宗様〜!」
「おっと、またお呼びがかかっちまったね。俺は行くぜ、夜にでも会おうや。」
ひらりと私の手から身を交わす様にして身体を離し、政宗が言った。
そして、去り際にいつもの一言を私の耳に囁く。
「I love you!、お前は俺だけ見てろ。この独眼竜だけをな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
無言の私を残して、政宗はそのまま城の中へ戻って行った。
私は行き場の無くなってしまった片手をじっと見つめ、そしてそれを握り締めた。
愛してる・・・・・・・・?
だったらどうして触れてくれないの?
どうして触れさせてくれない訳?
彼のお決まりの台詞は、今日もただ私に虚しい気持ちを与えることにしかならなかった。
本人はそんなことさえ気付いてないだろう。
私は心の中で、1人毒づいた。
愛なんかくそ食らえ・・・・よ・・・・・・。
その夜、再び同じ場所で私が散歩をしている所に彼は現れた。
まるで闇がフッと突然に人型を模ったみたいにして。
「hey!こんな時間に女が部屋にいねぇとは、
夜這いに行った男が城内徘徊するハメになったらどうする気だ?」
「・・・・・・・・・・政宗・・・・・・・・・・。」
振り返ってすぐに、私はその隻眼の男をじっと見つめた。
そして少しだけ不自然に唇に笑みを浮かべて見せた。
「よく言うわ、夜這いなんか・・・する気もないくせに・・・。」
思った以上に棘のある言い方をしてしまい、私は彼から目を逸らした。
思った以上と言うよりは、思ったまま過ぎたのだ。
政宗はゆっくり側に近付くと、そのまま空を仰いだ。
「ご機嫌斜めだねぇ、何かあったか?。」
相変わらず私の不満に気付いていない彼が、視線を空から外さずに言った。
私は思わず苛立ち、そんな彼の端整な横顔を睨みつけて口を開いた。
「ありっぱなしよ、政宗。もう長いことずっと・・・!」
「おいおい、どうした?そんな怖い顔してちゃcuteな顔が台無しだぜ?」
やっと私に目を向けて、彼は私を宥める口調でそう言った。
それが余計に私を苛立たせる。
「政宗、あんたは会う度口癖みたいに私を愛してると言うけど、
それが本当ならどうして触れてくれないの!?」
私の言葉に彼は少し驚いた様な表情を見せた。
彼が何か言い訳をする前に、私は先を続ける。
「もう1年以上もこんな関係が続いてるわ。それに今朝だって・・・。
私が・・・傷つかないとでも思った・・・?」
話を続けるうちに妙に気持ちが昂ぶって、私の声は段々と掠れていった。
「・・・・、俺はホントの事しか口にしてねぇぜ。」
「ゴメン、政宗・・・今のままじゃ私・・・信じられないわ・・・。
何も触れ合うことだけが全てじゃない事くらい分かってるけど・・・。」
俯いて地面を見つめたまま、私は答えた。
冷たい夜風が頬を撫で、私の髪がゆらりと揺れている。
政宗が静かに口を開いた。
「Ok.honey そこまで言われちゃ仕方がねぇ・・・。
但し・・・俺の話を聞く気なら、おめぇにも覚悟してもらう事になるぜ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・?覚悟・・・・?
・・・・・・・・・・・よく分からないけど・・・何も聞かないよりはマシだわ。」
私は彼の言葉に首を傾げながらも、それを承諾した。
何故か政宗はそこでニヤリと笑みを浮かべる。
そしてまた話を続けた。
「天下なんざ取れて当たり前、それは今でも変わっちゃいねぇ。
この独眼竜がこの日本国全てを食らってやるまでだ。
だがな、・・・・天下取りの道のりってヤツは思った以上に長くてね。しかも当たり前だが戦続きだ。
その間にお前に触れちまったとしたら・・・・・・・・・・俺はおめぇを片時も離したく無くなっちまう。
戦でこの城空けるときだろうが、この城拠点に攻めてる時だろうが関係なくな。
自分のEgoで愛してる女を危険に晒すなんざ、どう考えてもCoolじゃねぇだろ?」
「・・・・・・・・だから私に触れなかったと?」
「YES.Do you understand?」
いつもの滑らかな英語でそう言うと、政宗はまた唇の端を上げて笑った。
私はどこか釈然としないと感じながらも、小さく頷いた。
「あんたってもっと短絡的欲情男だと思ってたわ。
だって話では以前は随分遊んでた様に聞いてたし。」
「oh my・・・!酷ぇ言われようだねぇ、そりゃ。これでも俺はPureで一途な男なんだぜ。」
私はその彼の台詞に思わず吹き出して笑った。
純粋で一途だなんて、よく自分で言えたものだと思う。
クスクスと笑い声を立てていると、不意に政宗が私の顎を片手で軽く掴んで上向かせた。
「・・・・・・政宗?どうしたの、急に・・・。」
「おいおい、もう忘れちまったとは言わせねぇぞ。約束は果たしてもらわねぇとなぁ、。」
「約そ・・・・・・・っ!!??」
最後の一文字を声にするより早く、政宗は私の唇を自分の唇を押し付けて塞いだ。
顎に当てているのとは逆の手で、彼が私の腰をグイと引き寄せる。
開きかけていた唇に押し入る様に、彼の舌が強引に私の口内へ侵入してきた。
熱く柔らかいその舌が私の舌を素早く絡めとり、きつく吸い上げていく。
私と彼の吐息が重なり、喉を焦がしていくのが分かった。
「ん・・・ふっ・・・・。」
息苦しさに私の口から知らず知らず小さく声が漏れる。
政宗はほんの少しだけ角度を変えて更に口内を荒らし続けた。
互いの唇の奥から水分を含んだ湿った音が聞こえ出し、そこでやっと彼は私から離れる。
「・・・・・・・・・・・・・政宗・・・・・・あんた・・・・・・・。」
その後の言葉を続ける事も出来ずに、私は息を荒くしたまま彼を見つめた。
政宗はいつもの自信に満ちた笑みを浮かべて私を見下ろして口を開いた。
「言ったはずだぜ、honey.覚悟しとけってな。悪いが手加減なんか知らないもんでねぇ。」
望んだのは私のはずなのに、この敗北感は何なんだろう。
そう思っても、私にはこの竜から逃れる術はなかった。
(終わり)
後書き
いつもの事ですが、お題に沿ってるのか沿ってないのか謎な仕上がり。
政宗はクッサイ言葉も普通に言ってそうで助かります(笑)
もっと短くなる予定がだらだらと続いてしまった。
てかマジ眠い(只今深夜2時)
では、今回もここまで読んで下さったお客様に心から感謝しつつ失礼します!
そろそろBASARA系サイトさん増えてるだろうな♪
ブラウザバック推奨