【3.生々しく愛して】


「かすがって綺麗だね、スタイルもいいし。そりゃ任務中に声掛けたくもなるってもんだね。」
「・・・はい、そこ。なーに誤解しちゃってんのかな?」

いつもの如く屋根の上から城下を見下ろして寝転がっている佐助の隣で、
は独り言のように呟いて頷いていた。
だが、それは勿論すぐ傍に居る彼の耳にも届いていた。

「誤解?誤解??鼻の下伸ばしてたくせに。」
「俺はただ忍び同志の挨拶で調子を訊ねただけだぜ?」
「ああ、そうだったね。で、ついでに『仲良くしよう』とか言ってみた訳よね?」

はそう言うと隣に居る彼を立ったまま見下ろして睨みつける。
佐助は大きく溜息を吐いて身を起こした。

「やれやれ、朝から機嫌の悪かった理由はそれか。ヤキモチはもっと素直に妬くもんよ?。」
「!ホッホッ!!誰がヤキモチよ!」

彼女は言い終えるとすぐに屋根から地面へと飛び降りた。
そして、まだ上に居る佐助に向かって捨て台詞を吐く。

「かすがは『あの方』で頭一杯なんだから、
あんたみたいな普通の男は相手にしてくれる訳ないわよ!」
「・・・はいはい、って、誤解だって言ってんでしょうが。」

さして動揺も見せずに佐助は答えたが、その時には既に彼女の姿はなかった。

「ったく・・・困ったもんだね、あいつも・・・。」

彼はぼやきながらもの後を追う。
くのいちである彼女は優秀だが、その忍び隊を率いているのは長である佐助だ。
彼はいとも簡単にのいる場所に追いついた。

「忍びの人間ってのはどうしてこうも高い所が好きかねぇ。」
「・・・・・・常に周りが見渡せないと不安だからでしょ。
何でついて来るかな?乙女の複雑な気持ちも理解してない野暮天が。」

先程の屋根と同じく見晴らしのいいその高い木の上に彼女は居た。
あまり遠くへ足を運ばなかったのは、彼が自分を捜せば必ず見つけられてしまう事を考えれば、
どこも同じだと思っていたからだ。
そして案の定、彼はの居る場所まで追いかけてきた。

「かすがのことなら、本当に何とも思ってないんだぜ。」
「・・・知ってるわ。・・・・だから野暮天だと言うのよ。」

木の幹に寄りかかって腕組みをして立ったまま、は遠くを見つめて言った。
佐助はその正面に立っているが、彼女の視界には入っていないように見える。

?」
「・・・こないだの戦、ザビー教だっけ?覚えてる?ほら、あの『愛ヲシリナサーイ!』の河童ハゲ。」
「ブッ・・・!!河童ハゲってお前ねぇ・・・。覚えてるさ、あの色んな意味で驚きの城だろ?」

はそれに頷いて、視線を不意に彼に戻した。

「?で、それがどうしたんだ?まさか入信したかったなんて言うなよ。」
「・・・・・あんたさ、あの河童ハゲに勧誘台詞言われた時・・・なんて答えたか覚えてる?」

彼女は佐助の瞳をしっかりと捕らえたまま、そう訊ねた。
彼は僅かに眉間にしわを寄せると思い出そうとする素振りを見せた。

「あの手の勧誘は速やかにお断りする主義だからねぇ・・・、悪いな、覚えてないわ。」

はその返事を聞き、クスリと哀しげな笑みを零した。

「そう言うと思った。あんたは本当に覚えてないんだろうけど、私はしっかり覚えてる。
ずーーーーっと、気になってたことだったから。」

軽く目を伏せて彼女は続ける。


『悪いな、愛ってヤツは分からなくてね。』


「・・・・・・・・・・・・あんた、そう言ったのよ?」

言葉と同時には伏せていた瞳を再び上げて、佐助の表情を伺った。
彼は少し驚いたような顔をしている。
は更に口を開いた。

「あんたが私の前で普通にかすがに声を掛けた時、ヤキモチも勿論あったけど・・・、
それより・・・ああ、やっぱその程度なんだ・・・って・・・納得した・・・・・・・。」

寂びそうな、哀しそうな瞳で彼女は独り言程の声で言った。
佐助はそんな彼女の肩に手を伸ばし、抱き寄せる。

「参ったね・・・、そんな風に思われてたとは・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「俺が分からないって言ってんのは、『愛』ってヤツの伝え方のことだったんだけど。」
「・・・・・・・・・・クサい台詞・・・・・・・。」

腕の中のがボソリと呟く。
佐助は苦笑してその頭をクシャクシャかき回した。

「今俺いい話しようとしてんだけどね?多分お前が今1番知りたいことをさ。」
「・・・・・・・・・・・・続けて・・・・・・・・・・。」

の髪から手を離し、彼は彼女の身体に腕を絡めた。

「で、まっ結論から言っちまうと、どうやら言葉だけじゃ伝わらないもんだって事だ。」
「・・・・・・・・・何それ・・・、『いい話』してくれるんじゃなかったの?」
「しますよ、行動で。」
「・・・・・・・・・・佐助・・・・・?・・・・・・・っ!!」

彼女が彼を見上げた途端、その唇に彼の唇が降りてきた。
声を上げる暇もなく、言葉を紡ぎかけたその音も同時に彼の唇へと飲み込まれていく。
を抱く佐助の手がゆっくりと彼女の身体を撫でるように滑った。
そしてその細い腰に腕を絡め、先程よりも更に強く、彼女が息苦しさを感じる程に身体を密着させる。
その間も彼は自分の唇から熱い吐息を彼女に送り込むように、深い口付けを繰り返した。
は自分でも気付かぬ内に彼の頭を自ら引き寄せ、角度を変えてはその唇に吸い寄せられていた。

「・・・どう?俺の愛、感じてくれた?」
「・・・・・・・・・・・・もっと、こんなんじゃ足りないわ・・・。」

息を荒くし、頬を蒸気させたは濡れた唇に軽く笑みを浮かべて答える。
佐助はそれに見惚れながら、手を彼女の衣服の合わせへ滑らせた。

「そう言う事いってると、屋外だってのに襲っちまうよ。」
「・・・・・・『いい話』行動で示してくれるんでしょ?私も答えなきゃならないわね。」

の言葉に佐助も唇に笑みを浮かべる。


「了解、了解っと・・・。但し、この先待ったは聞かないぜ?」


佐助は片手で彼女の帯紐を緩め、その紐がはらりと木の下へ落下した。


それが彼らの『会話』の合図となったのだった。


(終わり)



後書き
えーーっと、これは佐助か!?佐助なのか!?
(相変わらずすみません)初の佐助短編ドリでした。
考えた割りに何か辻褄があってない気がしますけど、
そこは目を瞑ってやって下さい・・・・。
ではでは、今回もこんな作品にお付き合い下さって有り難うございます!
失礼致します。


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