【1.一分一秒】
「抜け忍は死罪、・・・だとしたら・・・私が忍びを止めた時・・・、
私を殺しに来るのは佐助なの・・・?」
佐助の隣で曇り空を仰いでいたが、突然ポツリと呟いた。
佐助はに視線を移し、その横顔を見つめて口を開いた。
「・・・何だ?急に、穏やかじゃない質問だね。何、アンタ忍びやめる予定でもあんのか?」
「そう言う訳じゃないけど・・・・・・・・。ただ・・・・・・・賊に家族を殺されてからお館様に拾われて・・・、
そのお館様にご恩返しとして何かしたくて忍びの道を選んで・・・・・・・・・、
・・・・・・・今は私が人の命を奪い続けてる・・・・。
私が手に掛けた人たちにだって・・・家族は居たはずなのに・・・・。」
彼の質問に彼女は空を見上げたまま答えた。
その瞳に色はなく、何も映してはいない。
「・・・忍びの道を選んだ事、後悔してんのかい?」
「・・・・・・・・・・・正直、分からない・・・・・・・・・。」
はふと目を伏せた。
言葉を紡ぐその声が沈んでいることに、彼女自身も気付いていた。
そして彼女は更に続ける。
「・・・もしも・・・もしもよ?・・・・忍びの道を捨てたとしても、
多分そのまま生き抜いていくのは・・・無理だと思う・・・。
それで・・・もしも私を殺しに来る相手が貴方だとしたら・・・・・・・・・・・・・・・、
忍びを止めて、ただの私に戻って貴方の手にかかるなら・・・・、
それも幸せかもしれないと・・・・思ったの・・・。」
「・・・!」
戒める如く彼女の名を呼んだ佐助の表情は珍しく険しかった。
「もしもだって・・・言ったでしょ。・・・そんな顔しないでよ。」
「もしもだとしても、そんなこと口にしないで欲しいんだけどね。」
不機嫌そうにピシャリと彼は言った。
「・・・・・・ごめん・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
佐助は隣にいる彼女に手を伸ばし、引き寄せた。
「俺にお前を殺させるなんて真似、させないでくれよな・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・佐助・・・・・・・・・・・・。」
仕事と割り切れば冷静にそれをこなすのが彼だ。
もしも彼女が本当に忍びを止めてしまったら、
彼は彼女をその手にかけるだろう、とは思った。
「俺に殺されれば幸せだとかお前は言っちゃってるけどさ、
・・・・・・・・・その後残された俺はどうすればいいんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・って、馬鹿らしいか・・・・・、
俺までの『もしも』に付き合って感傷的になってちゃザマないってね。」
佐助はそう言って苦笑すると、彼女を抱きしめる腕に力を込めた。
「こうやって・・・・・・・・佐助と一緒に居る間・・・、1分でも、1秒でもこの時間が続けばいいと思う・・・。
その間は・・・私は人を殺さずに幸せに浸っていられるから・・・・・・・・・・。
死んだ家族に思いを馳せずに済むから・・・・・・・。」
自らも彼の腰に腕を絡めて、は佐助の胸に顔を埋めた。
曇っていた空から、ポツリ、ポツリと雨が降り始める。
それでも2人はその場から動かずに互いを腕に抱いたままだった。
やがて雨が本格的に降り出した頃、佐助は雨で濡れるのも構わず空を見上げた。
「・・・・・悪いな・・・、今日がどんな日かもっと考えるべきだったわ。」
「・・・・・・・・・・・・・いいのよ・・・・・・・・・・・・・。」
佐助の腕の中でが口元を歪めて哀しい笑顔を見せる。
「、俺達は忍びだからさ、この先もずっと・・・なんて気軽に約束は出来ねーし、する気もない・・・。
けど、今は傍にいてやれる・・・。今この時間はお前のもんってこと。」
は無言で頷き、それに答えた。
雨が2人の身体を濡らしていく。
だが、重なり合った体温から寒さは感じなかった。
その温かさを肌で感じながら、は自分自身が『生きている』ことを強く実感する。
十数年前の今日。
それはの家族が幼い彼女の目の前で殺された日であった。
(終わり)
後書き
ええーーーっと、何だかとてもシリアスなのか何なのかよく分からない・・・。
ちょっとイマイチ収拾がつかなくて、短くなった上に微妙な展開に・・・。
こんな作品にお付き合い頂き有り難うございました。では、失礼致します。
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