嫌いだ。
あのエロ忍のああいうところ。



--第2話 愛してない、恋してない、あっち行け--




「実際参るよねぇ、あれ反則技だとマジで思っちまったもんなー。」
「佐助!!そなた!戦の最中にそのような事を!!破廉恥!破廉恥でござるぞ!!」
「まーた、んなこと言っちゃって、真田の旦那もそう思ってたっしょ?」

佐助!!そなた!!!!!!と、言う、とてつもなくうろたえた、
そしてどうやら怒っているらしい幸村の声が、
廊下を突き抜けて彼らの方に向かっているあたしにまで聞こえてきた。
つーか、その前のやけに嬉々とした佐助の会話も聞こえた訳だけど、一体何の話かは分からない。
あたしはとりあえずそのまんま、廊下を2人の方に向かって歩き続けた。

「あーはいはい、けど、ほら、少しは思ったんじゃない?
目がそっちに向くのは男の哀しい性だと思うんだけどなー。あ、そうそう、自然の摂理とも言うかもね。」
「拙者は断じてそのような破廉恥な事は考えてはござらぬ!!そもそも!!戦の最中にそのような!!」
「って、どのような?」

何かを熱く語り合っている2人の間から、あたしはひょいっと顔を出して訊ねてみる。
その瞬間、何故か幸村の顔が、ボフン、と火を噴いたように赤くなった。

殿っ!!!いっ今の会話を聞いていたのでござるか!!??」
「?まぁ、途中から。」


幸村ちゃんてば、耳まで赤いよ。


文字通り、全身真っ赤の幸村を観察しながらあたしは考えた。
ついさっき聞こえた会話内容繋ぎ合わせてみると、キーワードは『破廉恥』『戦』『男の性』だと思う。
『戦』以外の二つ、明らかに怪し過ぎる。
しかも幸村がここまで過剰反応示す内容ってのは、
きっとお子様の教育上には宜しくない感じの話だろう。
あたしは幸村を見つめたまま、また質問風に訊ねてみる。

「下ネタ・・・・・・・・・・・・・・?猥談??助平話??」
「なっ!!!!殿!!拙者はそのようなっ!!!大体女子が口にする言葉ではござらぬぞ!!」
「そうそう、旦那には刺激が強すぎるよねー。でも、ま、当たらずとも遠からず?」

ニンマリ。
と言う表現がぴったりの笑いを浮かべて佐助が言った。
どう見ても、諸悪の根源はこいつだ。

「拙者はこれからお館様に所用があるのだ、
佐助、そなたの戯言に付き合っている場合ではござらぬ!」
「ははっ、悪かったって、引き止めて。だからそんな怒ってくれんなよ。」

結局幸村はそのまんま、信玄さんの所へ向かってしまった。

「・・・で、答えは何だよ?」

仕方がないので佐助に話しを振り直す。
コイツ、絶対ろくな話しやがらないだろう、とか思いつつ。

「くの一の忍び装束ってのは目のやり場に困るってとこかね。今回それがちょっと激しかった訳よ。」
「・・・・・・・・・・・激しい・・・・・・・・・・・・・・?」
「そ、やけに色気のあるくの一でね、かすが、ってんだけど。
戦中だったからさすがに気は抜いちゃいねぇけど、あれは反則だわ。参ったぜ。」
「フーーーーーーーーーーン・・・・・・・。」


やっぱそっち方面かよ。


そう呆れる気持ちとは別に、ムカムカしてくる妙な気持ちがある。
いつもいつも人にひっついてくるのは、単に回りに気軽に触れられる女がいないからじゃないか、
なんておかしな事まで思い浮んできた。
飛躍しすぎだ、あたしの頭。
自分で言うのもなんだけど、凹凸の激しくないあたしの身体に触れる時より、
その『かすが』と言う色気ムンムンでナイスバディなくの一の凹凸ありまくりな身体を見るほうが、
佐助にとって参ってしまう原因になる訳だと思うと、ムカつき指数が上昇してきた。

「フーーーーーーーーーーーーーーーーーーン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

無意味にもう1回言って、無意識に佐助を睨みつけていた。

「あらら、もしかして妬いてくれちゃってるとか?」
「あはははは!面白い冗談だ!!」
「目が笑ってないぜ、。」
「煩い、エロ忍。」

ズルイ奴。
こっちの考えることなんか、お見通しみたいな顔をしやがるし。
それでいて、絶対その先に踏み込まない。
ギリギリと、スレスレの間を、いつも彷徨ってる。
嫌いだ。
佐助のこういうところ。

「やっぱ妬いてる?」
「妬いてない!!!!!!ちっとも、全く、これっぽっちも!!!」
「うわー、そこまで言うかよ。参るねぇ、傷ついちゃうよ、俺。」

どう見ても平気な顔でそんな事を言うあの薄い唇を、思い切りつねって捻り回してやりたい。
ムカつき指数がまたもやグングンと上昇する。このままじゃメーター振り切りそうだ。

「アパート戻る。特に用事があったって訳じゃないし。」

大体、バカみたいだ、こんなあたし。

「待てって、女の子は素直が1番だと思うんだけどねぇ。」
「煩い。あたしはいつも素直だ。」
「ま、裏を返せばそうかもな。」

ふむ、と、何やら1人頷く佐助。
苛々する。
あたしは佐助に背を向けて、そのまんま、スタスタ廊下をもと来た方に歩いた。


シュッ


「・・・・!」

あたしの後ろに居た佐助が、例の忍び特有の動きで瞬間的にあたしの前へ移動した。
あたしは無言で膨れた顔を向ける。

「はいはい、そう怒ってくれんなよ。
ほら、あんたの為に柄にもなく饅頭とか買っちゃう可愛い俺に免じてさ。」
「っ!饅頭!?」

思わず顔を輝かせ、声を上げてから気付く。


しまった・・・・!!


案の定、ニンマリ、とまたしても笑う佐助。
色気より食い気、そんな自分が悲しい。

「あぱーとに帰っても、どーせ寒いだけだろ?
だったらここで俺と楽しくお茶しながら話でもしてた方がよくない?
心も温まるって感じでさ。お腹も膨れるし。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・足元見たな、佐助・・・。」
「あらら、人聞きの悪いこと言ってくれるね。
けどほら、心だけじゃなくて身体も温めてやるってのも俺はありよ?」
「誰がだ!!エロ忍!!」


スパコーン。


小気味良い音をたてて佐助に一発お見舞いしてやる。
上手く決まりすぎて、思わず笑えて来そうな程だった。
コイツ、避けようと思えば120%避けきれるはずなのに、今までそうしたことが1度もない。
マゾなんだろうか。
言っておくけど、あたしは奥州の俺様男と違ってSッ気がある訳じゃ全くないから。


「・・・・・・・あんたねぇ、いちいち人の頭殴るのやめろっての。」
「佐助が怪しい発言するからだろ。それにあたしなんかと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「何?」
「・・・・・・・・・なっ、何でもない!!饅頭食べるんだったらお茶淹れに行かないと。」
、気になるから続き聞かせてくんないかなー?『あたしなんかと』の先。」

何でこうなんだ、コイツは。
あたしがツッコンで欲しくないのを分かってて、敢えてその先を聞きたがりやがった。
しかも、ご丁寧に、饅頭はそれを教えるまでお預けね、と来た。
ざけんな、このエロ忍。
あたしは犬かよ。
嫌いだ、こいつのこういう所。

「・・・・・・・・・・・・・・ケータイでかすがの写真でも撮ってやろうか?
そうすればあたしなんかとひっつく気も失せるんじゃないですか?佐助君。」

嫌いだ、あたしのこういう可愛げのない所。
我ながら、刺々しい、あんど、嫌味ったらしさ抜群の口ぶり。
さすがに佐助も呆れるだろうとそう思っていたら、
不意にその顔がフッと苦笑に変わった。

「あんたってホント、分かり易くて助かるわ。」
「・・・!」

一瞬、馬鹿にされたんだと思ったんだけど、どうやらそうじゃないらしい。
何となく、佐助の表情で分かる。
佐助の片手が上がって、あたしの頭をグイと自分の胸に押し付けた。

「おいこら、佐助!またこれか!」
、どんな色っぽい美人の裸見るより、あんたとこうしてる方が俺はずっと嬉しいぜ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・っなっ何言ってんの!?」
「ま、そゆことだからさ。機嫌直して俺とお茶してくんないかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


今も佐助とあたしの間におっ立っているあの壁の崩壊は、近いのか、遠いのか。
それさえも今は分からない。


だけど。

「・・・・・・・・・・・・ん・・・・・・・。」

たった一文字であたしは返事をした。
頭の上で、クスと佐助が小さく笑う。
あたしの後頭部にある手とは反対の手が上がって、あたしの身体をさっきよりもっと抱き寄せた。

「お茶の前に、もう少しだけこうしてていい?」

それにあたしが頷くのと、廊下の奥から地響きがしたのとは、殆ど同時だった。


ズドドドドドドドドッ


「佐助ぇぇ!!そなた!!このような場所で破廉恥!!破廉恥でござるぅぅ!!!!!!!!」
「げげ!!真田の旦那!!そりゃないっしょ!!」

その後、幸村が突っ込んで来て、結局あたし達は3人でお茶する事になった。



(終わり)



---------アトガキ----------------------------
折角同盟に入って佐助の助平を主張させて頂いているので(笑)
今回はそんな佐助を書いてみようかと思って進めてみました。
ですがお題に沿っているのか・・・・・・・・・・・・。しかも普通の長さになってる・・・。
最後は尻切れ気味になってしまったな・・・はっはっは!
では、こんな作品に最後までお付き合い下さった皆様、有り難うございます!


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