あたしがここに飛ばされたのは家族と離れて1人暮らしを始めて、
まだ1ヶ月経つか経たないかって矢先だった。
だからか、最初のうちは全く寂しいなんて考える事もなく、
そんなことよりも毎日が珍しい未体験ゾーン真っ只中だったから、とにかく必死だった。
だけど、ここ最近、ボケッと考え事してる最中に頭に浮かぶのは、家族の事だ。
うちの家庭は平凡を絵に描いたような感じで、今思えば、
それは無茶苦茶に幸せなことだったんだと思う。
ホームシック。
この感情が、俗に言うそれだと認めるには、あたしは多分ガキ過ぎた。
--第4話 よしよし--
夜空。
アパートの窓から見上げてみた。
今夜はいつもより星が多い気がする。
空で瞬く星は、大きさも光の色も一つ一つ微妙に違う。
それがまさに散りばめられた、と言っていい位沢山輝いている。
この時代は、あたしが居た現代よりずっと夜空が綺麗に見えた。
そう言や、この星って・・・何百年も前の星の光だって聞いたことあったな・・・。
ふとそんな事を思い出す。
ってことは、あたしが居る時代の星を、
うちの家族の誰かが見てることもあるんだろうか。
そんな風情のある事をする人間は思い当たらないけど。
「・・・・・心配・・・してんだろうな・・・・・・・・・。」
「ん?誰が?」
「わっ!!」
毎度のことながら、佐助の奴が突然背後から音もなく現れやがった。
いつもなら今更驚いたりなんかしてやらないとこだけど、
今回は考え事してた最中だってのもあって、必要以上に過剰反応してしまった。
「あらら、もしかして柄にも無く物思いに耽っちゃったりしてた?」
「煩い。てか何しに来たんだよ?もう寝る時間なんだけど。」
「まぁそう言うなって。お泊りの約束果たしに来てやったんだぜ。」
「誰がだ!!??してないし!!」
思いっきり否定するあたしに、佐助が苦笑する。
マジで何をしに来たんだ、この男。
「。」
「何?あ!!こら!!毎度毎度アンタは!」
名前を呼ばれて返事をしたのと同時に、佐助の腕が伸びてきた。
そしてそのままその手に絡め取られてあたしは奴の腕の中。
いい加減、このパターンを踏む自分自身が情けない。
それだけじゃなく、この感触に慣れ始めてる自分がエロ忍感染してるみたいでムカつく。
「離せ!!この痴漢野郎!!」
「、暴れるなよ。」
アイツの腕の中でジタバタしていたあたしの耳元で佐助が囁いた。
奴の腕がいつも以上にしっかりあたしの体に回されてる。
「っ・・・!?佐助・・・おい・・・何・・・?」
「最近、は、あーゆう顔してること多いって気付いてたか?」
「・・・・・・・え?な・・・何だよ?あーゆうって・・・。」
「星見てる時の顔、眺めてるってだけじゃなさそうだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
図星。
返す言葉が、見つからない。
忍びってのは心を読む事まで出来るんだろうか。
いつもただのスチャラカ助平のくせに、こんな時だけ、勘が鋭い。
マジで、ヤんなる。
だから、あたしは否定したくなるんだ。
「あたしは・・・・・・・・・・・別に・・・・・・・・・・。」
「1年以上になっちまうからねぇ、あんたがここに来てからさ。」
「だからっ!別にそんなんじゃ・・・・!」
分かってる。
否定すればする程、佐助の奴があたしの気持ちに気付く事位。
それでも、素直に認められない。
やっぱ可愛くない奴だ、あたしは。
ぎゅ。
奴の腕がますますあたしを強く抱き寄せた。
密着しすぎて、息が、苦しい。
「佐助・・・痛い・・・。」
「悪い・・・。」
珍しく、その一言で佐助があたしを解放した。
いつもはどんなにこっちが文句垂れようが、絶対放したりしないくせに。
くっついてた体の部分が、窓からの風で急に寒くなる。
あたしは、自分から頭をこつんと佐助の胸に軽くぶつけた。
そして奴の迷彩柄の忍び装束の袖を掴む。
「佐助・・・寒い・・・。」
「はは、我侭な娘さんだねぇ、アンタも。」
苦笑して、佐助はまたあたしの体に腕を回した。
さっきとは違う、妙に優しい感じに。
奴の片手がゆっくりあたしの頭の上に移動して、そのまま撫でるように動く。
「よしよし。」
あたしはガキかよ!!
いつもなら、絶対にそう言って、振り払うはずの、掌。
だけど何でか、この時は全然嫌じゃなかった。
それどころか、逆に凄く嬉しくて、涙さえ出そうだった。
ぎりぎり、それを、必死で堪えた。
複雑な、おかしな、気持ち。
「佐助・・・。」
目を閉じて、あたしからも、アイツの体に腕を回す。
佐助が、あたしの髪の毛に、唇を埋めたのが分かった。
「、あんた・・・体が震えてるぜ。まだ寒いのか?」
「・・・・・・・少し・・・・・・・・。」
「じゃあ俺も・・・・あんたと一緒に布団に入っちまっていい・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
奴がほんの少しだけあたしから離れてこっちを見下ろした。
あたしは少しだけ、視線を上げてアイツを見る。
重なった視線の、先、佐助はいつものふざけた顔つきはしてなかった。
「・・・・・・・・・ん。」
コク。
頷くのと同時にあたしはたった一文字で返事をした。
佐助はまたあたしの髪に唇を埋めると、
シュッ、と、そのままあたしを腕に抱いたままベッドまでの短い距離を瞬時に移動した。
佐助が先に壁際の方まで隅に寄ってベッドに入り、すぐにあたしがその横に滑り込んだ。
本当に、変な話だ。
いつもならこんなこと絶対許さない。
エロ忍の、下心丸出しの佐助なら、絶対。
だけど、今は違う。
あたしはベッドに入るとすぐ、佐助が腕を回してくる前に、自分からアイツの体にしがみ付いた。
「・・・・・・・・、今日はもう寝ちまえよ。疲れてんでしょ。」
「・・・けど・・・。」
「あんたが眠るまで俺はここに居るからさ。さすがに朝までってのは無理だけどね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、分かった・・・・・・・・・。」
クス。
暗闇の中、すぐ側で、佐助が小さく笑ったのが分かった。
体温。
佐助と、私のそれは、既にもうどっちのもんだか分からない。
温かくて、ホッとする。
あたしはアイツの胸に顔を押し付けてから言った。
「佐助・・・・ありがとう・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・あらら、何に対してのお礼?」
「・・・・・・・・・・色々。」
「珍しいねぇ、あんたがお礼なんてさ。・・・ま、いいや。もう寝ちまえ。おやすみ」
「おやすみ。」
目を閉じた瞬間に、あたしはすぐに眠りに落ちた。
佐助、あんたが来てくれたから、今日はぐっすり眠れそうだ。
なんて、口が裂けても言ってやらないけど。
本当は、『有り難う』の一言じゃ、足りない位の気持ちがあった。
素直に、認めてなんかやらないけど。
絶対。
(終わり)
---------アトガキ----------------------------
珍しく本当に短い話になりました。この話は番外編で佐助視点チックな話も書きたいです。
今回は珍しく佐助のセクハラ発言なしでした。しかし必ず抱き合うコイツ等は・・・。
ではでは、今回もここまでのお付き合い、誠に有り難うございました!
失礼します。
ブラウザバック推奨