[転送完了、覚醒まで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・]

ピピピピピッ
ピピピピッ・・・

「・・・・・・・・ん・・・・・・。」

私はゆっくり目を開けると、枕元に置いてあった目覚まし時計を軽く叩いて止めた。
只今のお時間、朝5時半。
デカイ欠伸ひとつして、いつものように起き上がる。
天国の夏休みは終わり、今日からまた学校って訳だ。
兄弟の多いうちの家族、弁当は私が作ると決ってる。
てか、そろそろいい加減、あのドぐされ兄弟にも手伝ってもらおうとは思ってるんだけど。
うちの兄弟で可愛いのは妹位、
後はなんと言うか、とにかくドぐされ野郎どもだ。
私はのろのろと制服に着替えて洗面所に向かうことにした。
部屋から一歩出て、また欠伸をかみ殺す。
そのまんままたゆっくり階段を降りて、洗面所まで向かった。
うちの家は無駄にデカくて結構広い。
しかも笑えるほど和風和風した内装で、畳以外の部屋ってヤツが全くない。
別に特に金持ちって訳でもなく、お父さんが少々頑張ったと言うことだ。
つまり、これ全て父の趣味。
ま、それはいいけど、洗面所まで遠いってのは難点だ。


・・・??何か・・・おかしい・・・・・・・・気がする・・・・。


いつもと同じように洗面所まで廊下を歩いて行きながら、
私は何故か不思議な気分を味わっていた。
どこもかしこも私んち。
けど、何かが違う。
こんな気分は初めてだった。

「・・・????ま、気のせいか・・・。」

声に出してそう言って、私はまた洗面所に向かった。

「げ!兄貴らのヤツまた勝手に人の洗顔使ってる・・・!」

洗面所にある私専用の棚の中にある洗顔のチューブが、明らかにしぼんでいた。
毎回勝手に使いやがるからわざわざこっちに移動したのに、全く意味なしだ。


・・・あり得ない・・・、弁当のオカズ減らしてやる!!のり弁だ、のり弁!!


洗顔を手に軽く取って手で泡立てながら、私はまず2人分のオカズを減らしてやることにした。
そして泡だった洗顔で顔を洗う。
洗面台で顔を泡で包んでるその途中、誰かが洗面所に入って来るのが分かった。
この時間に動き回っている人間は限られてるから、私はすぐに口を開いた。

「あ、義姉さん?おはよう。」
「おはようございます、殿。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」


・・・殿・・・・・・・・??いやいやいや、そんなことより・・・・・・・・。


私の問いかけに答えたんだから、今私の傍に居るのは間違いなく兄貴のお嫁さん、
つまり義姉さんなはず。
なんだけど、そんなことより何よりも、今、義姉さんの声が変だった。
変と言うのは掠れてるとか裏返ってるとかって次元じゃない、
どう聞いてもいつもの義姉さんの声じゃなかった。
ハッキリ言うと明らかに別人の声だった。
絶対そうだった。

「義姉さん・・・だよね?」
「?はい、さようですが、どうなされました?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


違う・・・!!絶対違う!!!絶対、ぜっったい義姉さんの声じゃない!!!
・・・・・けど・・・・・・・・・・あれ・・・・・・・・??


その凛とよく通るどちらかと言うと美人声の自称義姉さんの声は、
どこかつい最近聞いたことのあるもんだった。
だけど、どこで聞いたのかはイマイチよく覚えてない。
私は急いでザバザバと顔についている泡を勢いよく洗い落として、顔を上げた。
で、その義姉さん?な彼女の顔を見てやろうと思ったんだけど、
目の前にタオルを差し出されてそれが出来ず。

「あ、・・・・・・どうも。」

一応お礼を言って受取って、また顔をわしわしと拭いてから顔を上げる。
その時には彼女は私に背中を向けて洗面所を出て行く所だった。
だけど、顔なんぞ見なくても分かる。
絶対、あの人は義姉さんじゃない。
何でって、義姉さんはショートカットだから。
私の見てるあの人の後姿、どう見てもショートじゃないし、
しかも結構スラリとしててスタイルもいい。
義姉さんはどっちかって言うとポチャッとしてて可愛らしいタイプだ。
全身整形でもしない限り、一夜であんな風になる訳がない。


・・・・・・・・誰の彼女だ?私をからかおうってこと!?
いい度胸じゃん、のり弁どころかご飯だけにしてやるよ!


ムカつく思いでその偽義姉さんの後追う私。
ドぐされ兄弟ならこれしきやりそうな気もするから情けない。
彼女が入ったのは何と台所だった。


しかも普通に冷蔵庫開けてるし!!


さすがにビビって急いで私は声をかける。

「あのっ!!!待って下さい!」
「はい?」

振り返った不思議そうな彼女の顔。
その瞬間に、私は言葉を完全に失った。
だって、その人は『絶対にあり得ない人』だったんだから。

殿、どうなされました?先ほどから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「?では、朝食の用意を致しますゆえ。」

彼女はそう言ってまた冷蔵庫を開けてその続きを始めた。
私はと言えば・・・・。


あり得ない・・・!!あり得ない!!あり得ないから!!!!


その場に馬鹿みたいに突っ立ったまま、頭の中に嵐が起きているのを感じた。
パニックとか、もうそう言うレベルの問題じゃない。
偽義姉さんは思いっきり知っている人の顔だった。
そりゃもう確かによく知ってる、それだけは確か。
だけど、『知っている人』と言うのはある意味で間違ってる。
正しくは『人』と言うより『キャラ』だ。


いやいやいや、おかしいって!!絶対おかしいから!!!!
ああ〜!!こんなことなら睡眠時間削って調子こいて戦国BASARAやってる場合じゃなかったよ!!
絶対寝惚けてる、100%あり得ないし!!!こんなこと!!!!!!!


寝惚けてるを通り越してかなりヤバい状態まできてるんじゃないだろうか。
だって、まさか義姉さんがゲーム、戦国BASARAの『まつ』に見えるなんて絶対にあり得ないから。
こんな事を考えること自体がまずどう考えてもおかしいのに。
そしてまた、頭の嵐が勢力拡大する一撃が私のすぐ後ろから現れた。

「おお、起きておったか、!さすがに早起きじゃな!その心構え、それでこそわしの娘じゃ!」
「ッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

嬉しそうな声でそう言って私の背中を叩いているそのお人。
声を聞いただけで『誰』だか分かって、私はますますパニくりまくる。

「まつ殿、おぬしも毎日苦労をかけるな。」
「いいえ、お義父様、これも犬千代様や皆様に日々頑張って頂く為。」
「うむ!あやつもいい嫁を持ったわい!」

ガッハッハッハ!フフフフ!

心温まるホームドラマ仕立てに事を進ませる2人。
半分屍モードでそれを見守る(!?)私。


・・・・・・・つまり『まつ』が義姉さんで、兄貴が『利家』で父さんが『信玄』
・・・・ってこと・・・・・!?うそ・・・・嘘!!!そんな設定無理あり過ぎじゃん!!!
無理矢理過ぎだし!!!!!!!


「ぬ?、どうしたのだ?弁当の準備をしに来たのではなかったか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、う・・・・・・・ん・・・・・。」

突然また『信玄』に見える父さんに声をかけられて、私はぎこちなく頷いた。
そのまま急いで弁当の準備に取り掛かることにする。


分かった、分かったよ。
これはやっぱちょっと寝惚けてるんだ、じゃなきゃおかし過ぎだし・・・。
とっとと弁当の準備でもして目を覚ます!!!


現実逃避ってやつかもしれない。
だって、どう考えても生々しくリアルな感覚しかない今の『これ』が、
寝惚けた程度じゃ済まないこと位本当はどっかで分かってんだけど、
どうにか説明付けないとやっていけそうになかった。
私は傍に居る2人を極力意識しないようにして、
包丁を手にして弁当のオカズ作りに集中することにした。
その手が震えてんのはきっと絶対気のせいってことにしといて。

「もう6時か、そろそろ幸村達も下りて来る頃だな。」
「さようでございますね、急がねばなりません。」

ゆきむ・・・・・・!?
駄目だ、駄目だ、駄目だ!!気にしたら負けだよ!!私!!!

「佐助はもう起きておろうな、あやつはああ見えても朝は早い。」


さ・・・・・・・・!?武田軍勢ぞろい!!??
って、マジで気にすんな!!!私!!!!!!!!!
無心の心よ!!!無心!!!無の境地!!


ダダダダダダダッ・・・・


地響きがする程大きな音をたてて、誰かがこっちに走ってくんのが分かった。
私はあえてそれを無視して、材料を次々切ることに必死だった。
けど、次の瞬間、その試みはこっぱみじんと成り果てた。

「ぅぅぅお館様ぁぁぁぁ!!!!!!!」
「っっ!!!!???」
「幸村ぁぁっっ!!!!!!何度言ったら分かる!?廊下は走るでないぞ!!!!」


ドゴォォォ・・・・・・!


その出来事は、全部が全部一瞬で起きた。
まず、どう見ても『幸村』としか見えない赤いハチマキの長髪男が、
猛烈な勢いで『信玄』に見える父さんの所に突っ込んできた。
それをゲームで見たあのムービーと同じように、
とてつもなくあり得ない速さと勢いでぶっ飛ばされた訳。


因みに、この瞬間に私の思考回路は完全に停止した。


つまり、私は寝惚けてる、の現実逃避作戦は失敗だったってこと。


だって、手元の包丁で切った指は、しっかりズキズキ痛んでるんだから。



(おはよう、マイ・ファミリー!?)



----アトガキ-----
異世界トリップと逆トリップとパラレルを混ぜた話を書きたくて始めてみました。
しかし1話目にしては長すぎるな・・・・・・・・。しかもヒロイン結構柄悪しです。
そして第一遭遇者は『まつ』(笑)好きなんですよ。
王道のキャラはあえて避けてしまいました。
パラレルって結構賛否両論らしいですが・・・どうなんだろう?
では、今回はここまでのお付き合い、有り難うございました!


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