校門前。
今日も例の4人は小競り合いを始めた為に置いてきて、私はいつきと2人で登校している。
なんと言うか、あの4人のあれはもうきっと日課の1つに組み込まれてるんだろうと思う。
今更あれこれ言うのも馬鹿らしい。
「あ、お濃さんだべ!」
「え?ああ、本当だ。」
私と並んで歩いていたいつきが指を指して声を上げたその場所、
そっちへ目を向けると、彼女の言った通りそこには校長夫人である濃姫の姿があった。
かなりの数の男子生徒が遠目からチラチラ気にしまくっているのが分かる。
信長校長の奥さんだとあって、さすがに堂々と話しかける輩はいないみたいだった。
命が惜しいのは皆同じって訳だ。
「おはよう、さん、いつきちゃん。」
私たちに気付いた濃姫が、同性の私でもどきどきする位妖艶な笑いを浮かべて言った。
「あ、おはようございます。」
「お濃さん、おはようだ!」
返事をしながら、いつきが嬉しそうに片手をブンブンと振る。
私は軽く頭を下げた。
濃姫がこっちへ足を向けて歩き出したその時、私のすぐ後ろから声がした。
声変わりしていない、男の子の声。
「濃姫さまっ!!」
「げげ!鬼っこだべ・・・!おらアイツあんまり好きじゃねぇ。」
さっきまで満面の笑みを浮かべていたはずのいつきが、顔を顰めて呟いた。
私といつきの横をすり抜けて、声の主、蘭丸が濃姫の側に駆けて行く。
「濃姫さま、信長様に会いに来たんだろ?途中まで蘭丸がお供するよ!濃姫様はきちんと守る!」
「ふふ・・・蘭丸君ったら、そんな大げさなこと言って・・・。」
「そんなことないですって、濃姫様は人気あるんだから、おかしな奴が近寄ったら蘭丸が倒しますよ!
じゃなきゃ信長様に怒られちまいますから!」
心底本気で言っているらしい蘭丸がその辺に居る男子生徒達を睨みつけて声を張り上げた。
「鬼っこのやつ・・・おらもっとお濃さんと話がしたかっただ・・・。」
色白のほっぺを餅が膨らんだみたいにしながら、いつきが文句を垂れている。
どうやら彼女は濃姫に憧れているらしかった。
確かに、私もそれはよく分かる。
濃姫はゲームプレイ中に画面で見ていたよりずっと綺麗だし、それに本当に色気がある。
その割りに思ったより気さくで、人当たりもいい。
たまに校内に現れるこの美人校長夫人は、いつきに関らず全生徒(特に男子)の憧れの的ってヤツだった。
信長とは政略結婚でしかも刺客として近付いたはずの濃姫だから、ちょっとその辺気になるとこではあるんだけど。
人気が有るといえば、かすが、彼女もアレがなければ・・・と言う声を結構よく聞く。
アレってのはつまりアレ『愛の花園』別名『薔薇地獄』のこと。
確かに彼女も美人でスタイルがいいし、人気があって当然だろう。
って言っても、真正面から彼女に向かっていくほどのツワモノには未だにお目にかかってないけど。
ま、これは謙信が居る限りかすがは誰の事も目に入らないってのが、皆十分分かってるからだと思う。
十分過ぎるほど十分、流血しつつ、身をもって。
「いつきちゃん!おら達がいつきちゃんの荷物さ持つだよ!」
校舎内に入ってすぐ、下駄箱へ向おうとした私といつきの前に数人の男子生徒が現れて、その1人が言った。
言わずと知れた、『いつきを嫁にし隊』のメンバー。
彼等が何故東北弁を使うか、それは今もって謎だ。
「いいだ、この位の荷物、平気だべ。」
「なんねぇよ!いつきちゃんにそっだら重い物もたせらんねぇべ。」
「貸すだ、おらが持つ。」
「いや、おらだ!」
「おらだべよ!!」
と、いきなり数人の男子生徒がいつきの荷物の取り合いを始めた。
てか、聞いてるだけだと誰が誰やら分からない。
その内その取り合いにブッちぎれたいつきが、
その男子生徒たちから自分の荷物を引っ手繰って怒ったように走って行った。
それでも私に「姉ちゃん、んだらまたな!!」と言う挨拶だけは残してくれる。
我が妹ながら可愛い奴だ。
下駄箱で靴を履き替えながら、ふと、まつ義姉のことを思い出してみた。
そう言えば、結構前に兄弟の誰かの忘れ物を届けてくれたことがあった。
その時に周りの男子生徒がかなり騒いでいたのを覚えてる。
確かに、彼女も美人だからそれも頷ける。
こうやって考えてみると、私の周囲のBASARAの女性陣は、何だかんだで人気がある。
・・・のに、何でアイツらよりによって私なんだろ・・・?
アイツら、それは勿論、BASARA若手キャラの佐助、姫親、政宗、の3人のことだ。
BASARAの女性キャラに限らず、うちの学校は結構可愛いコが多いことで有名で、
私の居た世界ではドぐざれブラザーズがやけに浮かれまくっていたのを覚えてる。
それなのに、絡むにしろからかうにしろ、
大抵あの3人は私にターゲットを絞っている様に思うのは、多分自惚れじゃない。
って言っても、勿論、さすがにあの3人が私に恋愛方面での好意を持っている、
とは絶対に言い難いとは思うんだけど。
要するに、平凡を絵に描いたみたいな私なんかをいじって遊ぶより他に、
可愛い子がわんさといるんだから、そっちに目を向けてもいいお年頃なんじゃないかってことだ。
あいつ等なら何の苦労もなく彼女の1人や2人や3人(以下略)出来てしまうに違いないし。
って、さすがに現代なこの世界に側室制度を持ってくるようなことは無いと思うけど。
教室に向かう階段を上りながらもそんな事を考えてみる。
「。」
「ん?あ、おはよう。かすが!」
後ろから声を掛けられて振り返ると、
今階段を上り始めたばかりのかすががこっちに向って微笑んでいた。
どうやらかなりご機嫌な様子だ、って言うか、その理由はすぐ理解できたんだけど。
「謙信先生と登校した?」
「!?何故それを・・・!?見ていたのか?」
私の質問に、瞬間的にかすがの頬が赤くなる。
私は思わず苦笑して見せた。
「や、違うけど。かすがが凄く機嫌よさげだから。」
と、言うのは嘘で、実は彼女の肩に薔薇の花弁がついていたからだ。
だけど、かすがは私の返事に普通に納得してくれた様だった。
「偶然学校の側の角であの方と出会った・・・。」
嬉しそうに、恥ずかしそうに、はにかんだ表情でかすがが言った。
こういうときの彼女は、本当に可愛いと思う。
毎回そう思ってしまうくらい、かすがは『恋する乙女』を地で行っていた。
元々は『可愛い』と言うより『綺麗』の部類に入る彼女だけど、
謙信のこととなるとまさに『可愛い』と言う表現がピッタリだと思う。
「・・・ちょと羨ましいかも・・・・・・・・。」
「何がだ?」
「・・・・・え!?」
「今羨ましいと言っただろう、何が羨ましいんだ?」
ついさっきの名残で頬を少しだけ赤くしたままかすがが言った。
私は心の独り言を口に出したことにその時やっと気付いて、思わず無意味に笑ってしまった。
「その、かすがみたいに好きな人が居ることで可愛くなれるのっていいな、と。」
「には居ないのか?伊達や長曽我部達がお前を取り合って居るのをよく目にする。」
「・・・・・・・・・・・・・・いや、あれって・・・・そう言うのじゃないと思う。私ってからかうと楽しいとか?
そう言う感じじゃないの。よく分からないけどね。」
二人並んで階段を上り終え、教室に向かう廊下を歩きながら私は言った。
「・・・わたしはそうではないと思うが。」
「そう?けど、ほら、可愛い子なんか他にいくらでも居るのに、私ってのが説得力ないし。」
かすがに会う直前まで考えていた事を、私は彼女に答える。
自分で言っておいてなんだけど、理由が『からかうのが楽しい。』と言うことなら、結構失礼な話だ。
「お前は自分が思っているよりずっと可愛い、もっと自信を持てばいい。」
「え・・・・!?」
かすがが真面目な顔でそんな台詞を言うもんだから、思わず私は足を止めた。
って言うか、こんな綺麗なコにそう言う事を言ってもらえるのは、同性でも結構どきりとするもんだ。
「ええーーっと、有り難う。」
ぽりぽりと頬を人差し指で掻きながら、私はお礼を言った。
かすがは艶やかに微笑んで、軽く頷いてくれる。
そして私が教室のドアに手を掛けると、彼女は独り言のように囁いた。
「あいつらの決着がつく日は、まだ先のようだな。」
と。
(疑問符∞なこと-終わり-)
----アトガキ-----
今回は男性キャラ一切でず!本当は女性陣オールしたかったんですが、
まつは無理だった・・・・・・。そしてかすがの口調がイマイチ分からない(苦笑)
ではでは、今回もここまでのお付き合い、有り難うございました!失礼します。
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