今日2限目の数学の担当は教育実習生の毛利元就・・・・先生だ。
彼が教育実習生だとは知っているけど、一体いつからここに居て、
しかも期間がいつまでなのかは誰も知らない。
って言うか、本来の数学担当の先生が誰かすら私は知らなかったりする。
この世界でそんなことを考えても時間の無駄だと学んでいるから、もう気にしちゃいないけど。
「ではこの数式の解答を元親、そなたがやってみせよ。」
教卓の上から静かな声でそう言って、元就は視線を姫親に向けた。
で、当の姫親はと言うと。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
無言のまま、片手に拳を握ってブルブル震わせている。
無反応の姫親に、元就がまた言った。
「どうした、聞こえぬのか?そなた耳まで愚鈍だと見える。」
ブチッ・・・
その瞬間、姫親の居る後ろの席から私の耳に不穏過ぎる音が聞こえた。
思いっきり、何かがブッちぎれた効果音。
ガタンッ
乱暴に姫親が立ち上がり、ガッ、と机に足を乗せて怒鳴った。
「元就、オメェさっきから何かにつけて俺ばっかりあてやがって!!これで何回目だ!?アアン!?」
「いちいち数など数えてはおらぬわ、貴様の脳の活性化を促してやろうとする我の僅かばかりの情け、
そなたには分からぬようだな。」
全く動揺もせずにいつも通りの冷静極まりない態度で元就が返す。
それがまた姫親の心に油を注ぐ訳なんだろうけど。
因みに、この授業中に姫親があてられた数、私が数えた範囲ではこれで5回目。
そして更に言えばこの授業風景は毎回変わることがなくて、つまり日常茶飯事だ。
微妙に個人授業みたいに思って居るのは、きっと私だけじゃないはず。
当の姫親本人は迷惑極まりないんだろうけど。
「そなたごときではこの数式は解けぬか・・・、ならば・・・「待ちやがれ!!」
ダンッ
机の上にある足を1度大きく踏み鳴らして、姫親が元就の言葉を遮って怒鳴った。
その姿がまた様になっているところがアイツらしいと言えばらしい。
「あらら・・・こりゃ今日もやっぱり授業になんないねぇ。しゃーねぇな、あの2人は。
あれで実は仲がいいってんだから笑っちゃうよねぇ。」
隣の佐助が呆れた笑いを漏らして言った。
私も苦笑しながら頷いてみせる。
「言えてる。口喧嘩友達みたいなもんかもね。」
これで毎度毎度授業は進んでるんだかいなんだかな状況な訳なんだけど、
それが逆にいいのかうちのクラスは各自結構自習をしている連中が多い。
で、一応数学の成績はクラスの平均でも中の上を保ってるってとこだ。
「おぅ!!これでどうだ、はっはー!ザマぁみやがれ!!」
私と佐助がヒソヒソとそんな話をしている間に、
数式を解いたらしい姫親が黒板を前にして自慢げに声を上げていた。
と、隣の佐助がまた私に言った。
「しかも姫親の旦那、あれで結構頭はいいんだからまた驚きだぜ。
もっとまともに授業出てりゃ、留年なんかしてなかっただろうしねぇ。」
そう、姫親の奴、思ってたよりずっと頭がいい。
それは留年してて同じ授業を繰り返して聞いてるからとか、そう言うレベルの問題じゃなくて。
だから佐助の言う通り授業さえまともに受けてれば、ダブったりなんてせずに済んだと普通に思う。
ドカッ・・・
自分の席に戻って思いっきり荒っぽく椅子に座ると、両手を後頭部で組んで足を机に投げ出す姫親。
ヤンキー学生お決まりにポーズってヤツだ。
「俺のこと馬鹿にしてた割りに呆気ねぇ数式解かせやがって!
俺じゃなくテメェの頭の活性化を測りやがれってんだぜ!はっは!」
姫親はついさっきとは一転して上機嫌になっていた。
これも毎回の事。
で、この後。
「見よ、これぞ、日輪の力なるぞ!」
ビュッ
-カッツーン・・・!!!
「だぁーっ!!!!!!!っ!おい!!元就おめぇ!!!!」
またしても怒りモードに入って立ち上がる姫親。
ここで説明すると、元就は「日輪の力」を実力行使する為にチョークを姫親に向って投げた。
それが見事なコントロールで姫親のおでこに凄い勢いでヒットしたって訳。
・・・って言うか、この場合もう『日輪の力』じゃないし・・・。
思いっきり元就の力だから・・・・・。
内心でツッコミを入れつつも、私は事の成り行きを眺めていた。
「元就!!おめぇ仮にも教師になろうってヤツが物投げんじゃねぇよ!!
しかも俺は本当の事しか言ってねぇだろうが!!」
「愚劣な・・・、そなたでなくともあれしきの公式、解答出来るは順当なことよ。」
「アアン?おめぇさっきと言ってる事が違ってねぇか?
だったらはなっから他のヤツもあてやがれってんだ。」
元就は不満たらたらの姫親にチラリといつもの冷たい視線を向ける。
その後すぐに黒板に素早く別の公式を書いた。
「そなた、次なる問題を解答して見せよ。」
と、言って向けた元就の瞳の先。
それが姫親からそのすぐ前に移動した。
つまり、私の席に。
気のせいじゃなければ、『そなた』ってのは多分私だ。
そこはかとなく嫌な予感を察してしまう私。
「・・・・・元就先生・・・・もしかして・・・私・・・ですか・・・?」
「そうだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
一言で返されて、私は思わず絶句する。
こう言っちゃなんだけど、数学は嫌いじゃない。
どっちかって言うと好きな方に入るし、多分平均的には出来てるとは思う。
思うけど、この場合そういう問題じゃない。
だって、この2人がやりあってる公式って、大体高校生レベルの問題じゃないんだから。
「あらら、、固まっちゃってるけど大丈夫?毛利先生も酷なこと言うねぇ。」
「他人事だと思って!大丈夫な訳・・・・・・・・・・・・・・・・あれ・・・・・・・・・・?」
隣からヒソヒソと話しかけてきた佐助にそう返しながら、ふと、私は気付いた。
この難解なはずの公式に、何となく見覚えがあったからだ。
「ああ!!」
私は思わず声を上げると、そのまま席を立って黒板まで近付いた。
思い出した!!この公式・・・!!
私が居た現実世界の数学教師は授業中に必ず1つは無意味に、
超激難解公式を生徒の前で解いて見せるのが趣味の人間だった。
大抵は自分で解いて満足するんだけど、その時はどうしても私たちに解かせたかったらしく、
結局解答出来なかった私たちは何故かノートに嫌と言うほどその公式の答えまでの数式を書かされたのだった。
つまり、ほとんど丸暗記させられたってとこだ。
私はチョークを手に、その時書かされた数式をまんま、黒板に書いて見せた。
「お!凄いねぇ、!やれば出来るってこった!」
佐助の言葉に私は思わず苦笑いしながら、元就の方に視線を向ける。
彼はチョークを握り締めたままの状態で、プルプル体を震わせていた。
そして。
「日輪よ、照覧あれ!これぞ光の下に生まれしツワモノよ!!」
と、言う声と一緒に手の中のチョークをボキッと折った。
いやいやいや、これ、丸暗記なんだけど・・・・・・・・・・・・・。
って言うかいつ私まで日輪の加護を受けたんだ・・・。
こっちがビビる位に感激しまくりの元就が、不意に姫親の席まで近付いて行く。
それから姫親の席の前で足を止めると、思い切り勝ち誇った顔で言った。
「フフフ・・・元親、そなたにこの数式は難題であったに違いない、どうだ?」
「・・・ちぃっ!!うるせぇ!に解かせておいておめぇが威張るんじゃねぇよ!」
姫親は不機嫌Maxな声でそう怒鳴ってから、ギラリと元就を睨んだ。
結局、この後2人の喧嘩(????)はいつも通りチャイムと一緒に幕を閉じた訳だけど、
私としてはこれを機会に元就がまた私に難解方程式か何かを持ち出さないかが心配だ。
戦国BASARAキャラ、いつ如何なる時も油断を許しやがらない奴らだと、実感させられた授業だった。
(緑と紫の小競り合い -終わり-)
----アトガキ-----
元就を書いてみました・・・が、イマイチ喋り方が微妙ですね。
拍手で頂いていた「難解な公式を解けたらチョークを握り締めて感動しそう」
と言うのを使用させて頂きました(笑)
次に彼を出す時は「森の妖精」(此方も拍手から設定を頂きました)
として森林浴をしている姿を書けたらと思います。あ、名前変換少なくて申し訳ありませんでした!
ではでは、ここまでのお付き合い、誠に有り難うございます!失礼します。
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