それは、たった一回の私のくしゃみをきっかけに始まった。
はた迷惑ないつもの喧嘩に、更に輪をかけて迷惑なバトル。
何で私はあのくしゃみを堪え切れなかったんだろうと、今更ながら激しく後悔した。
放課後。
いつものように幸村、佐助、姫親、政宗、私の5人は、
揃って家に帰っている途中だった。
何だか最近は普通に奴らと一緒に居る事に慣れてしまった自分が居る。
「もうすぐ梅雨明けでござるな。夏も近い。」
「はぁぁ〜夏ねぇ。ったく、暑っ苦しい季節だぜ。
ま、女の子の露出が高まるのは大いに歓迎だけど。」
「佐助の脳内は破廉恥成分率高いわよね。」
脳内だけじゃなく、行動も。
と、付け加えるのは止しておいて、取りあえず私は呆れ顔で佐助に言った。
私の右隣を歩いていた姫親が、声を上げて笑う。
「はっはー!破廉恥成分とはよく言ったもんだぜ!
確かに、オメェの頭は殆どそれで出来てんじゃねぇのか?」
「へいへい、俺はどうせそうですよっと。
けど、そんな事言っちゃって、旦那方もどうせそう思ってんでしょうが。」
「HA!俺はそこまで飢えちゃいねぇよ。ま、に関しちゃ別だがな?」
ニヤリ。
いつもの妖しい笑い方をして、政宗が私を見た。
それに反応して、幸村が私の前にズイっと進み出る。
「伊達殿!!に対して破廉恥な発言はお控え願おう!!」
「OH!破廉恥な発言ときやがったか、んじゃ、俺は殆どと会話できねぇぜ。」
「あ、政宗先輩、自分がセクハラ発言してることに自覚あったんだ、ビックリ。」
なんて、いつもと同じくたわいない話をしながら、歩いてたその時。
「っくしゅっ!」
鼻の奥が突然ムズり出して、我慢できずにくしゃみをした私。
そこで、幸村が驚いたみたいな顔で私を見る。
それは単にくしゃみを1回しただけの妹を気遣うにしては、明らかに大げさな顔で。
「風邪を引いたのではないか!?!」
「え?いや、ただのくしゃみなんだけど・・・。それに、こないだのあれはすっかり治ったし。」
『こないだのアレ』ってのは、つまり、佐助にうつされた風邪の事。
あのエロ忍者のせいで私は奴が私に痴漢行為を働いた数日後、
学校内で風邪を引くハメになった。
しかも、そのおかげで姫親にまで身の危険に晒されると言うオマケつきで。
「いや、風邪と言えども油断してはいかんでござる!
もしやまたぶり返して来たのでは・・・。」
「いやいやいや、大げさ過ぎだって幸村。大丈夫よ。」
必要以上に心配する幸村に、私は慌てて答える。
けどアイツはそれが聞こえなかったのか、突然、ジロリと佐助を睨みつけた。
「おいおい、どうしたのよ?旦那。」
「佐助!!!元はといえば、そなたがあのような破廉恥極まりない行為に走った事が、
が風邪を引く原因になったのだぞ!!!!」
ビシッ!
と、佐助を指差すみたいにして怒鳴る幸村。
その途端、佐助がげげっ!と声を上げて、側の他二人に視線を向ける。
私も何となく嫌な予感がして、佐助と同じくそっちに目を向けた。
案の定、姫親、政宗の表情が、見る見るうちに凶悪に変わる。
どうでもいいけどこの二人、整ってるからこそ、こういう時の人相に迫力あり過ぎ。
「・・・・・・・・・・・・・・アアン?そりゃどういう意味だ?」
「・・・・uh〜・・・俺も詳しく聞きたいねぇ。」
―ギラリ。
言った二人の眼が鋭くヤバく光った。
幸村の奴はそれに気付いてるのかいないのか、普通にその先を説明し始める。
つまり、例の『佐助ベッドに侵入事件』のことを。
「ほぉぉぉ・・・クックックック・・・ムカつき通り越して笑いが出てきやがったぜ・・・。
佐助、そりゃさすがにただのオイタじゃ済まされねぇなぁ?」
幸村の話が終わってすぐ、ズゴゴゴゴ、と言う重低音と一緒に、
政宗は何やらおかしげな青いオーラを体から放ちながら言った。
もっと言えば姫親も殆ど同じで、こっちは紫のオーラを放ってる。
佐助は二人から少しずつ距離を取りながら、言った。
「まぁまぁ旦那方、俺あの時弱りきってたからあんま状況覚えてねぇんだわ。
あ、勿論に風邪うつしちまったってのは反省して・・・・・・・・・・・・・・・、
って、おーい、なーんか、物騒なもん持ってるねぇ、あんた等・・・。」
気付けば、何故か政宗の手に日本刀、姫親の手に拳銃。
・・・・・いや、いやいやいやいや!!!!何コイツら!!??
ふざけないでよ!!??こんな所で思いっきり銃刀法違反だし!!!!!!!
「ちょっと!!やめなよ!!あんた達!!」
佐助以上に慌てまくる私。
「旦那、これやり過ぎってやつじゃない?下手したら可愛い弟死んじまうぜ。」
幸村に向かって佐助が言った。
でも、何かあんまりビビってるって感じじゃないのは気のせいだろうか。
「佐助!!これも我が兄からの愛の鞭ぞ!!!!
伊達殿と長曽我部殿の怒り、その身にとくと受けるがよい!!!」
『兄からの愛の鞭』の割りに、幸村自身は手を出すつもりはないらしい。
多分、あの事件が起きた直後に散々佐助を追い回してたから、
それでその辺は満足してるってことみたいだった。
問題は、この、独眼激サドコンビ。
「はっはー!物分りのいい兄貴で大助かりだぜ。
おぅ!!佐助!!!オメェの大罪、償ってもらおうじゃねぇか!!」
「Are you ready?悪ぃな、佐助。手加減は出来そうにねぇぜ?
何たってアンタは、俺の一番大事な女に手ぇ出したんだからな。」
何だかある意味ノリノリな二人。
幸い周りに人の気配はないけど、
だからってそんな危険な物を手に話を進めないで欲しい。
「ちょっと!!マジで止めて!!!
もう済んだことなんだから今更ヒートアップしても意味ないじゃないの!!!」
少しだけ不本意な気もしないでもないけど、とりあえず佐助を庇う状態になる私。
まさかあの風邪の話が今になってこんな形で出てくるなんて、マジであり得ない。
「HEY!、そこを退きな。今度ばっかはアンタの頼みでも聞けねぇな。
大体、佐助の野郎があんたのBedに入り込んで、
何もせずにそのままオネンネしたとは思えねぇ。」
「・・・・えっ!!??」
政宗の台詞に、私は思わず過剰反応を示してしまった。
幸村は佐助が私のベッドに侵入した事は知ってても、
その間に何があったのかは全く知らない。
だからアイツの説明には『佐助痴漢行為事件』は含まれてなかった。
でも政宗の奴はそれを大前提に考えてたってことだ。
多分、姫親も同じだと思う。
だからこそどっからか銃やら刀やら持ち出してきやがったに違いない。
「こらこら、伊達の旦那、それじゃあ俺が痴漢か変質者みたいでしょうが。
俺は仮にもの家族で兄貴だぜ?兄弟の適度なスキンシップってやつよ。」
どっ・・・・!!!!どの面下げて言った!!??どの口が言った!!!???
このエロ忍者!!!!!!!
と言う内心のツッコミをグッとグッーーーっと堪えつつ、
私は政宗と姫親に視線を移す。
「はっはー!!!笑わせやがるぜ!!馬鹿にしやがってよぉ!!
何がスキンシップだ!!!オメェだけは許さねぇ!!!」
―シュッ
言いざま、姫親が右足を綺麗に振り上げて、
佐助目掛けて蹴りをお見舞いしようとする。
どうやら銃は本当に脅しだけだったみたいで、少し安心した。
っじゃなくて!!!
「姫親!!」
私が声をあげるのと、佐助がその蹴りを避けて姿を一瞬消したのは、
殆ど一緒だったと思う。
それから佐助はまた姿を見せると、大げさに溜息をついて言った。
「おっと、さすがに長曽我部の旦那、いい蹴りだねぇ。
当たってたらマジヤバイわ、俺。」
「んの!!この田舎モンがよぉ!!!ふざけるな!!!」
「AH-HA・・・ちょこまか動きやがるのはお手のもんだよなぁ、佐助チャンよ。」
政宗の奴がからかうみたいに言いながら、日本刀を。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・抜いたァァ!!??抜きやがった!!!
この白昼で堂々と日本刀を!!!!!!!!!!
「政宗先輩!!駄目!そんなものさっさと収めて!!!」
と、叫ぶ私の声を思いっきりシカトぶっこく独眼竜。
その上。
「悪ぃな、その首、頂くぜ。」
いやいやいやいや、マジで悪いよ!!!!!!!!!!!
と、焦ったのは私だけじゃなかった。
「げげっ!伊達の旦那、それ卑怯!!俺丸腰のか弱い高校生よ!?」
「HAHAHA!!気にすんな!!推して参る!!」
言いながら、政宗が佐助に襲い掛かる。
勿論、必死に逃げる佐助。
「ってっか!!幸村、姫親!!!止めなよ!!!あんた達!!やりすぎだってば!!」
私は慌てて傍観者状態の二人の肩を同時に掴んで、ガクガクと揺さぶる。
「アアン?止める?はっはー!冗談じゃねぇ!俺は参戦させてもらう!」
「・・・・・・・・・・ばっ!?何言って・・・・幸村!!何とか言ってよ!!」
「あの刀捌き・・・見事でござるな。さすが伊達殿・・・。」
「ちっがーーうわ!!!そんな事言わなくていいから!!!このままじゃっ・・・!」
誰一人として私の声に聞く耳持ちやがらない。
馬鹿共揃いのBASARAキャラの行動に、右往左往する私。
だけど、もしこのまま警察にでも通報されたらシャレにもならない。
だからって、どう止めればいいのか分からないから動揺しまくってんだけど。
「殿、この様な所でいかがされました?」
「・・・・・・・え!!??あ、まつ義姉!!!」
突然後ろから声を掛けられて、振り返るとそこには買い物袋片手のまつ義姉の姿。
私は思わずまつ義姉にすがり付く。
「聞いてよ!!まつ義姉!!あの馬鹿達が!!!」
「まぁ、刀など振り回して、危のうございまする。」
とか言いつつも、あんまり驚いてもいなさそうなまつ義姉。
それはもう彼女がBASARAキャラだから仕方ないと言う方向に片付けるとして、
今はまつ義姉に頼るしかなかった。
マシンガンな勢いで、今までの事の成り行きをまつ義姉に話す。
彼女は何度か頷いた後、にっこりと微笑んだ。
「殿方が好いた女子の事を争うのは当然のことなれど、殿は大変お困りの様子。
殿は犬千代様の大切な妹君、ここはまつめにお任せ下さいませ。」
「うん!!お願いします!まつ義姉!!」
懇願。
な、状態で、私は彼女に頼み込む。
それからまつ義姉は今もバトッている3人の側まで近付いて、一言。
「鷹よ!!」
って・・・、ええええええええええ!!!??
マジで!!!!!????
―バサバサバサバサッ
バサバサバサバサバサバサッ
ゲーム内での彼女の固有技が炸裂。
しかも、本当に鷹が数十羽、どっかからか凄い勢いで飛んできて、
奴ら3人をぶっ飛ばしてしまった。
ある意味、ゲームより迫力あったかもしれない。
私はマジで腰を抜かしそうになってしまった。
「OH!my・・・不意打ちとはやってくれるぜ・・・。」
「奥方殿!?」
「アアン?あの犬野郎の嫁かよ・・・。」
「あっちゃー・・・、俺ってば、実はさっきよりもっとヤバくない!?」
まつ義姉の登場は、思った以上に奴らに効果有りだった。
ぶっ飛ばされた3人は戦意喪失状態だし、幸村も何やらビビってるし。
「殿から全てお聞きしました。女子の寝所に足を踏み入れた佐助殿へ拷問を加える最中とか。」
「That's right!拷問ねぇ、ククッ・・・いい響きだぜ。」
「政宗先輩!妙な所で喜ばないでよ!しかも二人とも間違ってますから!!!」
私はすかさずツッコミを入れてしまう。
この世界でこの役所が染み付いた自分が情けない。
「お三方、このままでは埒が空きませぬ故、わたくしに提案がございまする。」
にっこり。
微笑んだ、まつ義姉が言った。
それからまつ義姉はツカツカと佐助の前まで歩いて行く。
「佐助様の犯した不埒な罪は、まつめが全てお義父様にお話致します。
どうぞ、ご覚悟なされませ。」
「うげっ!!!じょ、冗談・・・!!!!」
まつ義姉からの提案に佐助の顔が青ざめる。
それと対照的なのが、他3人。
「いいねぇ、そいつぁcoolな提案だ。あのオッサンもにゃ甘いからな、
今回の話を耳にすりゃあ・・・相当なお仕置きは間違いねぇぜ。」
「おぅよ、それにコイツもあの親父相手に逃げ回ったりなんざ出来ねぇはずだしな!」
「うむ、お館様なら此度の事、きつく叱り置いて下さるであろう!」
コイツらは手放しで大賛成らしい。
佐助の奴は少しだけ可哀想だと思わなくも無いけど、
ここは丸く収める為にもまつ義姉に従ってもらうしかない。
「では、皆様、わたくしと佐助様はお先に失礼致します。」
「ちょ・・・!マジ勘弁!!!!」
涙目の佐助を引きずりながら、まつ義姉が去っていく。
佐助の奴もここで逃げたらもっと酷い目に会うのが分かってるのか、
無理に逃げようとはしないみたいだった。
って言うか、出来ないみたいだった、の方が正解だと思うけど。
取りあえず、一件落着。
因みに、『佐助ぇぇ!!!!このたわけが!!!』と言う信玄の怒鳴り声が、
かなりの範囲に響き渡った事は、
この後帰宅途中の私たちの耳にまで入って来た事で確認できた。
ご愁傷様、佐助くん。
(終わり)
----アトガキ-----
『襲来!痴漢ウイルス』の番外編です。拍手からご要望を頂きましたので、
佐助の所業が他2人にバレてしまった結果どうなるか?と言うのを書いてみました。
本当はこれに連鎖して元親がやろうとしたことをザビーがバラす、
と言うシーンも入れたかったんですけど、収拾がつかなくなりそうだったので断念。
佐助だけに全てを被って貰いました(苦笑)
ではでは、ここまでのお付き合い、誠に有難うございました。これにて失礼致します。
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