土曜日。
週休二日って素晴らしい。
いつもは早起きしてまつ義姉と一緒に弁当作りやら朝食作りやら有るわけだけど、
土日と祝祭日はそれから逃れられる。
まつ義姉が休みの日位はゆっくり休んでいい、と言ってくれたから。
怒らせると怖いけど、普段はマジで優しいしっかり者の頼れるお姉さんだ。
って訳で、本日私は未だにベッドの上。
因みに、時刻は7時近くだと思う。
加えて言えば、後3時間は眠る予定。


フッ。

「・・・・・・・・・・・ん?!って、ちょ・・・え!?えええ!?」

状況説明。
今何故か、突然過ぎる位突然、佐助の奴が私のベッドの中に現れた。以上。
で、私は勿論度肝を抜かれて驚いてる訳だけど、それ以前にコイツ、
何だってこんな時間に私のベッドに出現するかが分からない。
いや、それより何より。

「ちょっと!佐助!何勝手に人のベッドに!!って、ぎゃぁぁ!!こんの痴漢!!!!」

何の前触れもなく現れて、しかも私の身体に抱き枕宜しく腕を回して、
更に足まで絡めてきやがる佐助。
あんまりにも突然過ぎた為、こっちはディフェンスをかます暇さえなかった。
目の前にあるオレンジ色の奴の髪がふわふわと私の視界を遮る。

「佐助!!いい加減にしろ!!」

顔を真っ赤にしてもがきまくりつつ怒鳴る私。
そこでやっと佐助が口を開いた。

「悪い、・・・・ちとここで寝かせてくんない?」
「ばっ・・・・!!馬鹿言ってんじゃないわよ!あんたには自分の部屋があるでしょう!」
「今からまた移動すんのは無理だわ、・・・、俺今真剣ヤベェから勘弁して・・・。」
「はぁ!?何意味分かんな・・・・・・・・・・・?佐助?」

回された腕から感じるアイツの体温は不自然な程熱かった。
私はとりあえずもがくのを止めて、掌で佐助の額に触れてみる。

「・・・佐助、あんた・・・熱があるんじゃないの!?」
「そう、不覚にもな。俺様としたことが・・・風邪ひいちまったらしくてさ。」

私の身体を抱きしめたままの佐助が顔も上げずに答えた。
ハッキリ言って、有り得ない体勢なんだけど、病人だと思うと邪険にも出来ない。
しかもゲーム内での職業柄、今まで殆ど病気なんかしたことのない筈の佐助が、
風邪を引いてるってこと自体、珍しすぎる。
多分本人が1番驚いてるんじゃないだろうか。ある意味記念すべき日かもしれない。
って、そんな呑気な事を言っている場合じゃないんだけど。

「佐助、このベッドは貸してあげるからとりあえず私を放してよ。」
「俺が寝るまで添い寝してくれるんならね。」
「って、あのねぇ!!ギャァァ!胸に顔を埋めるな!!!」

いつもなら絶対、必ず、間違いなく、何が何でも殴り倒してやる所。
いくら大好きなBASARAキャラとは言え、これはもう犯罪だと思う。
立派なセクハラで痴漢行為だ。
だけどやっている事自体はマジで有り得ないとして、いつもより覇気がない佐助を見ていると、
風邪ってのは嘘じゃないらしいし、熱があんのも事実だし、手荒な真似は出来ない。
とか何とか考えている間も、佐助の奴は私の胸に思いっきり顔を押し付けていやがったりする。
この先私は猿飛佐助をエロの代名詞と見なしてやろうと心に決めた。
って言うか、そんなことより早いとこどうにかこの状況を打開せねばならん訳だけど。

、あんた、いい匂いがするね。いい夢見れそうだ。」
「いやいやいや、ちょっとマジでこのまんま眠る気じゃないでしょうね!離しなさいってば!」
「はいはい、・・・お休みっと。」
「人の話を聞きなさいよ!!!!」


強引グ、マイウェイ。


ってのは、政宗の奴だけかと思ってたけど、コイツも違う方向にそれだわ!!
ってか、マジで放せぇぇぇぇっ!!!!!


心の中で絶叫しながら、それでも乱暴に振り払うことも出来ない。
これは佐助が病人ってことばかりが理由じゃないんだと思う。
正直ほんっと情けない話だけど、やっぱりそれは政宗の時と同じく、
猿飛佐助と言うキャラが好きだからと言うのもあるんだと、自覚してる訳だ。
で、だからこそ有る意味で佐助が憎いんだけど。

「佐助・・・!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」

奴の名前を呼んで軽く身体に揺さぶりをかけてみた。
全く無反応。
しかも、スー、スー、と言う、分かり易いお約束な寝息が聞こえ始める。
のび太並の寝つきの速さだ、コイツ。
思わず大きく溜息を吐く私。
仕方がないのでとりあえずゆっくり動いてこの状況から脱出を試みることにした。
佐助の奴は寝てるんだし、ある意味でついさっきコイツの言った台詞、
『添い寝』は果たした事になると思う。

「・・・・・・・・って言うか、寝てるくせに・・・力強いし・・・。」

動かせない、抜け出せない。
しかも、熱がある佐助に抱きつかれているせいで、こっちまで体温が上がってきてる気がする。
と言うか、マジで熱い。
布団引っぺがしたいくらいに。

「佐助ー!お願いだから起きてよー!」

言いながら、さっきよりちょっと力を入れて私は身体を動かしてみる。

ピクリ。
佐助の体が反応した。
私の顔のすぐ下にあるオレンジ色に近い髪の毛がもそもそと動いて、アイツがやっと顔を上げる。
どうにか起きてはくれたようだけど、この状況・・・・・・・って。

「何?。」
「・・・っ・・・か、顔近過ぎだから!まずは離れて、佐助!」

私を下から見上げる状態の佐助の顔が、私のすぐ側に有る。
おかげであいつが喋った途端、息が私の唇辺りに吹きかかってきた。

「ま、今回は病人だと思って多めに見てくれよ・・・。な?。」
「いや、それとこれとは別問題で・・・だから顔近いって!!」

私はそう言って必死であいつから顔を逸らした。
何度も言うようだけど、病人じゃなかったらとっくに鉄拳の餌食にしてるとこだ。

「薬飲んで寝てればいいじゃない。一人で、一人でね!その方が絶対早く治るし!」
「うーん・・・大丈夫、俺様2時間も眠れば薬なしで全快だからさ。」
「いや、有り得ないから!それは。」
「これが有り得る訳だ・・・、側で見てれば分かるぜ・・・・・・・・。」

だから寝かせてよ、と、痴漢忍者がぼやく。
確かに熱が有るのも分かるし、声も何かいつもよりずっと力ないけど、
風邪引いてるってこと自体は疑いようもないけど、そう言う問題じゃない。

「・・・2時間経ったら戻るからさ、それまで俺に体預けてくんないかなァ?。」
「・・・・・な、何か言い方が引っかかるけど・・・・・・・。」

ハァー。
と、思わずまた大きく溜息を吐く私。
もうこれ以上は堂々巡りに違いない。
その上相手は病人だ。
そう思うと、私の方が折れるしかなかった。

「2時間、それ以上は1秒だろうと許さないからね。」
「はいはいっと、安心しなって、俺の治癒力人外並だから。」
「・・・・・・・・・・・・・何それ・・・。もういいよ、お休み。」
「おやすみ。」

言った数十秒後、佐助はまたしても寝息をたて始めた。
まさにのび太。
そして私、何て情けない女。
結局はこんな形で押し切られたと言う、マジで情けない。
こんな痴漢行為を堂々と許してしまうことになるなんて、本当にあり得ない。

「・・・・・・・・・てか、あんたも何でいきなりここに飛び込んで来るかな?意味分からないんだけど。」

とっくに眠りこんでいる佐助が返事をしないのを分かっていながら、私は殆ど独り言みたいに言った。
それにしても、こう言う状況に陥るたびに思う。
何で私の周りの若手BASARAキャラってのは、こう無駄に接触率が高いんだろう。
画面でしか知らなかったあの頃ならウハウハな状況ではあるかもしれないけど、
現実になってしまうと心臓が幾つあっても足らないってやつだ。
しかも大体殆ど私ばっかり慌てて相手は何にも考えてないか、余裕ぶっこいてるかのどっちかだし。


ゲームのキャラに振り回されっぱなしじゃない・・・。どうなの、私・・・。
いやいやいや、もうこれは今更か・・・。


またしても溜息をつきながら、少しだけ体を動かした。
ら、無意識なのか何なのか、佐助の奴が腕の力を少し強めた。
起きているんじゃないかと疑ってみたけど、どうやらそうでもないらしい。
この状況の問題点はあり過ぎて上げたらきりがないけど、
一番の問題は実は私が心底嫌がってる訳じゃないってことだと思う。


いつからこんな破廉恥娘に成り果てたんだ・・・、私は・・・。


思いつつ、とりあえずは2時間きっかり計って佐助の奴を叩き起こしてやろうと決心した。
片手を少し動かしただけで届く所にケータイを置いておいて良かった、と自分の行動に感謝する。
そうして私は無事に(???)ケータイでアラームをセットして、結局そのまま自分も寝入ってしまった。




「あらら、もぐっすり眠りこけちまってんだな。
俺はこのまんまでも全然有難いけど、さーて、どうしたもんねぇ・・・。」
「・・・・・・・・・・・ん・・・・?」

凄く間近で聞こえる佐助の声。
私はもぞもぞと動きながら、ぼんやりとした頭でゆっくり瞼を開ける。
視界もまだ頭と同じくらいぼんやりしていて、
目の前にある佐助の顔を見ても全く状況が掴めていなかった。

「おはよう、。いやーホント助かったぜ、お陰で俺完全復活出来たからな。」
「・・・・ん・・・・んん?んんんんんん!!!??佐助!!」

やっとそこで佐助の顔がハッキリ認識できて、私は咄嗟に奴から離れようと体を起こした。
んだけど。

「ちょっと!!復活したんだったらさっさと話せ、このドエロ痴漢大臣!!!」
「ま、そう言うなって。お、そうだ!大臣止まりならこの際魔王レベルになっちまう行為してみよっか?」
「馬っっ鹿じゃないの!!放しなさいよ!!」

私が体を起こしたのと同時に、佐助の馬鹿が私の肩に手を伸ばしてきて、
しかもそのまま私をベッドに沈める。
どうやらコイツ、マジでたった2時間で完全復活を果たしたらしい。
まさに人外並。
って言うか、今はそんな事を言っている場合じゃない。
さっきより更に更にピンチ的状況だ、何たって佐助の馬鹿はもう病人じゃないんだから。

「あんたね!!妹を襲う兄貴がどこに居るのよ!放せ!!」
「うーむ、言われてみればそうかもしれないけど、
ほら、俺たち他の旦那方と違って血が繋がってないしさ。」
「そっ・・・そう言う問題じゃないでしょうがっ!!!」
「それにあれ何だよね、健康体でベッドで二人きりってのは、結構そそられちまうもんだぜ。」
「ばっ・・・・!はな・・・・・・・・・・・・・・・!!」


ドドドドドドドド・・・


聞き慣れすぎた爆走音。
家が揺れそうな地響きが聞こえてきた、その時だった。
ズバッコーーン!!!っと、私の部屋のドアがそりゃもう猛烈な勢いで開けられる。

ーー!!今朝は随分と遅い目覚めでござるな!!
拙者、起こしに来・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「あらら、旦那、女の子の部屋に入る時は、いくら妹とは言えノック位はするもんだぜ?」


半分怒鳴り込みに来たみたいな幸村が、ベッドの上に居る私と佐助を見つめて硬直する。
佐助の阿呆は特に気にせず妙なアドバイスをしていやがるし。
因みに、私はどう見ても佐助の奴に襲われる寸前!みたいな押し倒された格好になってる。
って言うか、まんま、それなんだけど。
幸村は数十秒間位石化した後、今度は急にブルブルと体全体を震わせ始めた。
私の上に居る佐助が小さな声で、こりゃそろそろヤベーかな、と、言った。
つか、もう私的にはとっくにヤバイ所じゃない。


「佐助ーーー!!!我が妹に対するその破廉恥極まりない行為!!!
いくら兄弟仲と言えど、許さぬ、許さぬでござるぞぉぉぉ!!!」

「はいはいっと、んじゃ、俺そろそろ退散するわ。
の体って抱き心地いいし、気持ちイイし、これからも本気で癖になっちまいそうだけどな。」
「・・・・・っ!!!!」

私がまたしても真っ赤になって怒鳴り声を上げる前に、佐助は私の上からフッと消えてしまった。

そして、我が兄上、幸村と言えば・・・・・・・。


「うりゃぁぁ!!!佐助!!そなた!我が天誅にて目にものをみよ!!!!逃がさぬぞ!!!」


完全にドタマに来ているらしく、そのまんま、私の部屋を飛び出して行った。


ああ今日も、BASARAキャラな家族に振り回されて、私の1日が始まる。


(終わり)



----アトガキ-----
抱きつき魔佐助、ここにも登場。『喧嘩の花道』で政宗ばっかりいい目をみていたので、
今回は佐助に頑張らせてみました。と言うことで、次回は元親で。ヒロイン人柱ですね(笑)
脇役でちょい役の幸村の暴走っぷりを推して下さる方が多いので、彼にも色々と頑張って欲しいです。
ではでは、久々のパラレルトリップ夢を読んでくださって有難うございました。失礼します。


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