私はあの日から毎朝起きては必ず確認する事があった。
それは義姉さんの顔だ。
義姉さんが『まつ』かどうかをいちいち確認しては1日を始めていた。
だけどあれから1週間とちょっと、それも余りに馬鹿馬鹿しくなって止めた。
つまり、今も相変わらず私はBASARAな家族に囲まれてる。
そして最近それに慣れてきてる自分も居た。
例えば毎朝登校前に迎えに来る政宗、姫親の登場と、
その後絶対に始まる幸村、佐助を交えた妙な小競り合い。
これには最初のうち色んな意味でビビってたんだけど、
いつきのおかげで逃亡を図る術を身につけた。
そりゃあの4人はキャラ的に見れば大好きだし、美味しい状況だと思わないこともない。
だけどそれに付き合って一緒に居た日には、必ず遅刻寸前という迷惑過ぎるおまけつき。
毎朝毎朝やってられやしないってもんだ。
これは恒例行事みたいになっているけど、
あいつ等4人、ホント、仲がいいのか悪いのか未だに分からない。
んで、今日も私はその4人よりも先に登校していた。
「おはよう、かすが。」
「おはよう・・・。」
教室に入ってすぐ、私は綺麗な金髪をなびかせたやけに色っぽいそのクラスメイトに挨拶をした。
そう、彼女もBASARAキャラの1人だ。
もう今更驚くも何もあったもんじゃないけど、学校にも数人BASARAキャラが生息してるって訳。
初めて彼女を見た時も日記で大体は確認してたからそこまで衝撃もなかった気がする。
何より、この世界でそんな事で驚いてたら日常やっていけたもんじゃないから。
「何かかすが元気ないね?体調悪いとか?」
「・・・・今日はあの方の授業がない・・・・。」
寂しげな表情でかすがが溜息を吐いてそう返事をする。
「・・・あっ・・・ああ、だね・・・・・でもほら、担任だから朝HRあるしさ、ね?」
私は思わずぶっと吹き出しそうになるのを堪えつつ、そう言って彼女を慰めた。
だって、ホント面白いくらい落ち込んでるし。
こういうところまでゲームと同じだ。
だけどこうして目の前にしてみると、塚ップル(宝塚カップルの略)の片割れかすがは、
恋する乙女として可愛らしく見えないこともない。
因みに、補足すると『あの方』は・・・・・・・・。
「っ!あの方の気配!」
「・・・え!?もうそんな時間!?」
「っと!今日も俺だけ間に合ったね。」
フッ
突然に私の左隣の席に佐助が姿を現して言った。
コイツは遅刻寸前だろうと間に合うという羨ましい裏ワザの持ち主な訳だ。
ゲーム内の職業(?)が忍びなだけにそう言うところは便利みたいだった。
「やーれやれ、旦那方は今日も遅刻決定か。」
「・・・・政宗先輩(もう呼び慣れた)あれでも一応生徒会長なのに、遅刻の連続って許されると思う?」
「いーんじゃない?伊達の旦那は生徒も教師もひっくるめて、カリスマ性発揮しまくっちゃってるからどうにかなるでしょ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・適当過ぎる・・・。」
ガラッ・・・
そんな会話を佐助とかわしていると、教室のドアが開いた。
それと同時に右隣の席のかすがが息を飲んだのが分かる。
そう、『あの方』登場ってとこだ。
多分今彼女の頭の中ではロマンティックな甘ったるい音楽が流れ始めてると思う。
いや、多分じゃなく絶対に。
既にとろんとした潤んだ瞳がその全てを物語っていた。
「みな、きょうもよいてんきですね。おはようございます。」
教壇に立った色白で女並みに華奢な『あの方』上杉謙信が私たちに向かって言った。
言葉にしてるから分からないようだけど、絶対全部平仮名で喋ってると言う自信が私にはある。
ゲーム画面で読みにくいことこの上なしだったのを覚えてるから。
って言うか、句読点がなかったらマジでどこで区切っていいものか迷う。
なんて事を考えていると、不意に謙信が此方を見た。
正しくは私の左隣のかすがを。
「っあっ・・・・!」
「かすが・・・かおいろがよくないようだが・・・。」
言って、教壇を離れてゆっくり彼女の方へ移動している謙信。
その途端、教室内の空気が変わった。
ヤバイ・・・!!!また来る!?あれが来る!?
私は咄嗟に右隣の佐助の方へ視線を向けた。
佐助は片手を挙げて大丈夫、大丈夫、と言う素振りを見せる。
つまり『あれ』が来たら助けてくれるってことだと思った。
私とは反対側にいるかすがの左隣の男子はがさごそと既に移動を始めている。
「かすが・・・さぁ、かおをおあげなさい・・・・。」
「謙信さま・・・・・・・・・。」
ギャァァァ!!!やっぱ来るっ!!!!!絶っっっ対来る!!!
謙信が彼女の頬へ手を伸ばそうとしたのと同時に、フッと私の身体が瞬間的に移動したのが分かる。
そして『あの方』の掌がとうとうかすがに触れたその瞬間、
彼ら2人の周りに唐突に薔薇が咲き誇った。
それと同時にかすがの席周辺の人間の机は薔薇の下へ埋まっている。(勿論私の席も含めて)
突如として彼らの周りに花園めいたものが出来上がったという訳だ。
全くのスゴ技に恐れ入るしかない。
周りがそうやって慌てふためいてる間も、2人の会話は続けられている。
「ああぁー・・・謙信様・・・わたしは・・・・。」
「どうしました?きぶんがわるいようならば・・・きょうはそうたいなさい・・・。」
「いいえっ・・・、わたしは大丈夫です・・・!どうか・・・気になさらないで下さい・・・。」
あんた達は気にしなくても私達は大いに気にするし!!!!!
と言う激しいツッコミを入れつつも、勿論2人にそれを言えるはずもない。
寧ろ近づく事さえ危険極まりなかった。
だってあの薔薇、棘があり得ない程凄いから。
あの棘の目的は絶対に邪魔者の侵入を阻むためのものだと思われる。
逃げ遅れて彼らのラブテリトリーに取り残されてしまい、流血した人間を何回か見たことも少なくない。
その為、この2人が必ず接触する教室内は勿論、廊下や授業中も油断を許さん状態だったりする。
「あの薔薇絶対凶器だねぇ・・・。ま、俺は毎回役得だから気にしちゃいないけどね。」
不意にまだ私の身体に腕を回している佐助がそう言った。
「っ!」
私は慌てて佐助の腕の中から離れる。
「おいおい、そこで露骨に逃げちまうことないんじゃない?。」
「だってあんた今絶対やらしいこと考えてたっぽいもん。」
「あーらら、バレちまった?」
「・・・・・・・・・・とりあえず今回も助かりました、アリガトウ。」
毎回佐助がかすがと謙信の『愛の花園』別名『薔薇地獄』から助けてくれてるのは事実なんで、
私は一応素直にお礼を言った。
「・・・、あんたお礼の部分棒読みっぽかったんだけど、俺の気のせい?」
「気のせい、気のせい。お兄様には助けられてますから。」
「じゃ、ま、そーいうことにしときますかね。そろそろあっちも落ち着いたみたいだ。」
言った佐助がクイとかすが達を指差す。
謙信は丁度教卓に戻っているとこだった。
私と佐助も薔薇の海を掻き分けながら席に着く。
(不思議な事に、薔薇の棘は2人の世界が終わると消えてしまっている、あり得ない。)
未だにかすがは例のうっとり夢見がち乙女、系の瞳で謙信に目を向けていた。
と言うか、謙信が視界に入ればいつでも彼女はこれな訳だけど。
こう言う私の居た世界じゃ絶対に確実にあり得ない事がある度、
私はここが本当に現実なのか分からなくなったりする。
だからってどうやってここから元居た世界に戻れるかも分からないので、
最近はその辺について深く考えないようにはしてるんだけど。
それからようやくある意味で長かったHRが終わり、それからやっと姫親が教室に顔を出した。
「旦那、いい加減アンタまた留年決定しちまうぜ?」
「ケッ・・・うるせぇ。俺だってしたくてしてんじゃねぇ。
元はといえばテメェらがグダグダ下らねぇ問答しかけてきやがるからいけねぇんだろうがよ。」
「でも姫親はHR出ないから朝っぱらから『薔薇地獄』味わったことなくて羨ましいかも・・・」
「!おめぇいい加減『姫親』って呼ぶの止めろつってんだろうが!」
「はいはい旦那、落ち着いて、落ち着いて。可愛いじゃないの、そのあだ名。」
「アアン!?馬鹿にしてんだろ!?」
「してないわよ、別に。てかあだ名の響きかなり可愛いし?」
と言うような会話をこれまた恒例行事みたいに繰り返して、
私達は授業が始まるまでの時間を潰した。
佐助が他の誰より教室に早く到着してくれることは、
私の死活問題だと言う事に気付いた今日この頃。
この世界は危険が一杯。
(メロドラマチックHR)
----アトガキ-----
パラレルトリップに沢山の方が投票して下さっているにも関らず、
4話で更新停滞中だったので5話目を急いで書き上げてみました。
今のところ佐助ばっかり美味しい目を見ている感じですが、
次回は元親をメインに出そうかと思っています。
あ、最後見て分かるように元親は政宗とタメのはずが留年してまだ2年生(笑)
では、今回はこれにて失礼致します。
ブラウザバック推奨