何て迂闊だったんだろう、私って奴は。
あれ程校内での怪我にだけは気を付けてたのに。
流血だけはすまいと心に誓ってたのに。
なのによりによってかすがと謙信のラブテリトリーの残骸なんかで脚をやられるなんて!
不運だ、不運としか言いようが無いと思った。
大体、『薔薇地獄』の棘は、2人の世界が終わると同時になくなってしまうはずなのに、
その時に限ってそれが残ってるなんて嫌がらせとしか思えない。
しかも刺さっただけなら軽傷ですんだものを、
すっ転んだ足元にあった棘の残骸でザクリだったもんだから、
その傷の広さと深さは結構なもんだった。
おかげで今私は膝からダラダラとスプラッタ映画並みの流血シーンをご披露することになってしまっている。
「!どうした!?その傷は!?」
と、声をあげやがったのは元凶の片割れかすが。
普段は結構親友並みなポジションで大好きなクラスメイトの彼女だが、
今はそう言う見方が出来なかった。
「このようなところに ばらのはなが・・・!?」
思い切り驚いた表情でそう言ったのは、またしても元凶の片割れ、担任の上杉謙信だった。
あんた達のせいだってば!!!
と言うお約束なツッコミよりも膝の怪我がズキズキと痛んで、私は無言で自分の膝を見下ろした。
「あんたら、そんなことより手当てしてやる方が先でしょうが。、保健室「ええええっ!?」
『保健室』と言う単語が佐助の口から出た途端、私は思わず声を上げる。
そして、ブンブンと頭を左右に振り回した。
「無理!!この位何とかなる!平気!これ寧ろただ薔薇の花弁が張り付いてるだけだから!!!」
「またあんたは馬鹿な事言ってんじゃないって。俺が連れて行ってやるからこっちに来いよ。」
こっちに来いよ、と、言ってる割には佐助は自分から私に近付いてきて、
背中から私の腰に腕を巻きつけた。
「ちょっと!!本当に大丈夫だからっ!!いやぁぁぁ!!!!!」
「こらこら、暴れるんじゃない!」
シュッ・・・・・・
私の絶叫と共に、佐助は一瞬にして教室から私を連れ去った。
ハッと気付いて見てみれば、目の前にあんのは『保健室』。
私は膝から流血したまま固まるしかなかった。
「おっ、やっと大人しくなったか。んじゃ、入るぜ。」
「やっ!!待って!!!佐助!!お兄様!!!お願い待って!!!」
「何よ?早くしないと傷に悪いよ、。」
怪訝そうな顔つきでそう言う佐助。
私は佐助の服を掴んでまたしてもブンブンと首を振り回す。
「傷口洗って、タオルでも巻いておけば大丈夫だって!
保健室なんて行かなくてもいいし!お願い、佐助!!」
「はいはい、却下。気持ちは分かるけど、こればっかは聞けないわ。
大丈夫さ、俺がついてんだからね。」
ガラッ
佐助が片手で保健室のドアを開けた。
それと同時に、薬の匂いが軽く鼻を掠める。
私は咄嗟に佐助の腕を掴んで、挙動不審に保健室内をキョロキョロと見渡した。
そしてすぐに小さくガッツポーズをして呟く。
「よっしゃ!居ないし。」
「って、何喜んでんの?どっちにしろ手当てしなきゃなんないでしょうが。」
「いいの!とりあえずここの主にさえ会わなきゃね・・・。」
「クククククッ・・・おや?血の香りがしますねぇ?」
「っっギャァァァァァ!!!!!!!」
ホッとしたのも束の間、私は突然現れたその長髪の人物の姿に恐怖の絶叫を上げた。
傍に居た佐助が、私に耳元で叫ばれて片耳を塞ぐ。
「明智の旦那、怪我人の手当てお願いしたいんですがね。」
「怪我人・・・・?それはいけませんね、さぁ、此方にどうぞ。」
言って、BASARAキャラな保健医、明智光秀が自分の前の椅子に私を呼んだ。
「はい、。ここはもう腹を括るしかないってね。」
「ちょっ佐助!!背中を押さないで!!ギャァァァ!!」
「これはこれは、随分と元気のいい・・・。ククッ・・・」
何故か楽しそうに笑う光秀。
いや、何故かなんかそんなことは分かってる。
答えは只1つ、私が流血してるから。
って言うか、だからここには来たくなかったのよーー!!!!
『怪我人は保健室に近付くべからず』これこの世界の常識。
最初にそれを学んだのは、やっぱりかすがと謙信の『薔薇地獄』にうっかり取り残された生徒を見たのがきっかけだった。
彼は片腕に棘が刺さってしまったらしく、保健室で手当てを受けなければいけなかったようで、
それにも関らず涙目でそれを拒否していた。
(今の私と同じく悲痛な叫びと一緒に連行されるみたいに引きずられて保健室に行くのを目撃。)
そのすぐ後に保健医が光秀だと知ってから、私は激しく納得した。
「まずは傷口を洗いましょう。・・・少し、勿体無いですけどねぇ。」
勿体無いって何!!??怖いから!!ただひたすらに怖いから!!!
ビビリまくって腰が引き気味な私の肩に、不意に佐助が手をのせた。
「明智の旦那、今はその趣味は置いといて、早いとこ手当て済ませてやってくんない?」
「おやおや、叱られてしまいましたか。ではさん、そこの蛇口で傷を洗って下さい。」
「・・・・・・・・・・はい。」
言われた通りに保健室内の洗面台で傷口を洗って、私はまた光秀の向かいにある椅子に腰掛けた。
血が洗い流されたせいで、傷が赤い線を引いたみたいによく見える。
光秀は嬉しそうにそれを目を細めて眺めながら、棚のガラス戸を空けて薬瓶を取り出した。
「それにしても珍しい、ここまで血を流して来た生徒は久し振りですよ。
貴方の血は格別に良い香りだ。ククッ・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・ハハハハ・・・ハ・・・ハハッ・・・!」
思わず乾いた笑いを漏らしてしまう私。
こわぃぃぃ!!怖すぎるっ!!!何でイチイチ笑うかな!?
って言うか血が良い香りって何よ!!??
嬉しくないしっ!!!!
消毒をしてもらいながら、私は痛いと言う理由だけでなく涙目になっていた。
「ガーゼと・・・そう、包帯も巻いておきましょうか、絆創膏ではこの傷は隠れないようだ。」
「だったらそれは俺がやりますよ、明智の旦那。」
「え?佐助??」
「では猿飛君にお任せしましょう。」
言って、光秀は片手にある包帯を佐助に渡す。
そして自分はそこから立ち上がると、私を見下ろして言った。
「申し訳ないのですが、私はこれから職員室に用がありまして・・・。
其方のノートに学年と名前を記入しておいて下さいませんか?」
「あ、はい。分かりました。」
「では、失礼しますよ。」
にこり、と笑ったその時の表情は、いつものククと言う笑いと違って結構普通に綺麗だと思った。
ま、1部に熱狂的なファンが居たりすんのはその変の理由だと思う。
彼はそのまんま保健室を出て行った。
「はいはい、、ちょっと動かないでよ。」
いつの間にか佐助が私の前の椅子に座って、私の膝に包帯を巻こうとしていた。
「ねぇ、何でわざわざ佐助が包帯巻いてくれるって言ったの?
あ、もしかして明智先生が用事あんの知ってた?」
「え?まさか、んな訳ないでしょ。」
「?じゃあ・・・?」
佐助は一瞬私の顔を見て、また手元に視線を移した。
「いくら教師だって言っても、の足に触らせんのはどうも我慢出来なくてさ。
だったら俺がやっちまおうと思ったんだわ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
意味深過ぎる言葉に私は驚いて、下を向いたままの佐助を凝視した。
佐助はこの世界では私の兄貴で、でも日記を見る限りでは実は養子だと言う事らしかった。
経緯とか詳しい事は書いてなかったからよく分からない。
だけど、つまり、この世界で兄貴の幸村や利家は血の繋がりがあるって設定だけど、
佐助とはそれが無いと言う事で。
乙女思考回路発動開始!が行われようとしたその直後、包帯を巻き終わった佐助が顔を上げた。
「なーんちゃって、あ、もしかして期待しちまった?」
「・・・・・・・・・へ?」
「単にあんたの綺麗な脚を間近で拝んでやろうと思っただけなんだけどねぇ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なっ!!!佐助!!!!」
ガタンと椅子から立ち上がった私を見て、佐助ははははっと声を上げて笑った。
まぁ、今回は佐助が居てくれて助かったから許すけど。
ホント、政宗にしろ姫親にしろ佐助にしろ、こっちの事全く考えてやがらないんだから。
(保健室へ行こう)
--------アトガキ---------
何か結局最後は佐助かよ!という状態になりましたね(笑)
次回は生徒会室で政宗夢っぽく仕立てる予定です。予定ですけど。
で、その次位に信長、濃姫、蘭丸を一気に出したい。
まだその辺は自分でも分かりません・・・・・。
では、今回もここまで読んで下さったお客様方、本当に心より感謝しております。
失礼致します。
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