ピンポンパンポーン・・・・


[2年C組 、今すぐ俺の居る生徒会室まで来い。寄り道すんじゃねぇぞ、come along!]


ピンポンパンポーン・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

放課後、帰宅しようとした直前にその放送が校内に響いた。
私の隣に居た佐助が呆れたみたいな声で言う。

「うわー、出たよ、伊達の旦那の職権乱用。」
「ったく、あんな野郎が生徒会長たぁ世も末だぜ。」

姫親もやれやれと言った感じで溜息を吐いた。
まったくだ、と言いたいとこだけど、私はさっさと準備をして生徒会室に行くことにするしかなかった。
それを見た佐助がどこかつまらなさそうに言った。

「・・・あらら、やっぱ行っちまうんだ?」
「まーね・・・。って言うか、このまま行かなかったら酷い目に遭うし。」

いや、遭ったし、と言った方がいい。
初めてこの世界で政宗のヤツから放送呼び出しを受けたとき、
手が離せない状態だった事もあって、私はすぐに生徒会室に向かう事が出来なかった。
行く気はあった、けど、すぐには行けなくて。
そうだ、確かその日は私は日直だったんだった。
しかも姫親も佐助も珍しく傍に居なくて。
で、加えてその日の放課後に限ってえらく沢山書くことがあって、
それでそれを書き終わってから行けば良いと思って・・・・・しまったことが間違いの元だった。
呼び出し放送に呆れつつ、日誌に向かって約5分後、
ズゴゴゴゴと言う地響きにも近い音が遠くから聞こえてきた。
瞬間、幸村が信玄目掛けて走っていく姿を想像して、それからそれはダダダダだ、
と思い直したりしていたその時だった。
その音がこともあろうに私の教室の前で止まり、それと一緒にキャーと言う黄色い声が廊下で聞こえ、
スパコーンッとやけに小気味いい音と共に教室のドアが開いた。
あまりの事に呆然状態でそっちを見ると、そこには政宗の姿。
で、私が何かを言うよりも早く、呆気に取られる数人の生徒達をよそに、スタスタ早足で政宗が私の机に近付いてきた。

『おい、、テメェ俺の放送が聞こえてなかったとは言わせねぇぜ?』

ジロリ、と言うよりも、ギロリと言う形容詞がピッタリの睨み方で政宗は私を見下ろして言った。

『・・・日誌を書かなきゃなんないから、これ終わってから行くつもりだったのよ。』
『What's?日誌だと?、アンタこの程度の事で俺よりこっちを選んだってのか?』

不機嫌そうに眉を顰めた政宗が、とんとん、と、私の手元の日誌を骨ばった長い指で軽く叩いた。
こっちとしては何がどうしてそこまでムカつく原因になってるか全く謎で、
とりあえず質問された事に答える形で頷いた。

『日直だから。先にこれ済ませてから政宗先輩んとこ行けばいいかなって。』
『HA!悪ぃな、これは後回しにしな。』

言って、政宗は私の手を掴んで日誌をパタンと閉じた。

『って、ちょっと!まだ書くことが大量にっ!』
『Shut up!行くぜ。』
『行く?どこに・・・・・・・・わっ!!ちょっ!!!??』


ガッ


と、唐突に政宗の奴が半タックル状態で私の腰に腕を回した。
そしてそのまんま、私を担ぐ勢いで教室を飛び出して廊下を走り始める。


『ギャァァァ!!!人攫い!!痴漢!!変態!!下ろせ!!!!!おろせぇぇぇぇぇっ!!!!』


廊下に絶叫を響かせて、
私は暴君ドぐされ生徒会長に教室から生徒会室へと拉致られる結果になった。
その時以来、政宗の呼び出しには大人しく従おうと心に決めた。
と言っても、今回まだ2度目なんだけど。


大体、廊下をあんな速さで走る生徒会長ってどうよ!?


因みに彼の爆走シーンはBASARAのオープニングで、
信長の城を目差すアレを想像して頂けばほぼ間違いない。
勿論武器なんか装備しちゃいないけど。
政宗の走りは幸村とはまた違った感じの凄い勢いと速さ。


コンコン


「・・・伊達生徒会長、2年C組 、来て差し上げましたが?」

生徒会室前。
私は一応ノックをすると、嫌味を込めてそう言ってやった。
中の政宗が一言。

「Get in!」

例の英語でそう答えられ、私はドアを開けた。
広い生徒会室の隅の机でノートパソコンで何やらカタカタと打っていたらしい政宗が、
クルリ、と椅子ごとこっちに振返る。

「遅かったじゃねぇか。。俺の迎えが必要なんじゃねぇかと思ってたとこだぜ?」
「それだけは止めて!!!」

速攻でお断りを入れる。
どうやらドア前で言った私の嫌味は無視の方向に片付けられてしまったらしい。

「HA!つれないじゃねぇか。まぁいい。そこら辺の椅子にでも座ってな。」

そう言って、政宗はまたパソコンに向き直るとキーを叩く音を室内に響かせ始めた。
私は大きく溜息を吐いて、傍にあった椅子に座る。

「って、今回もそれ?こないだもそうだったけど、大至急みたいに呼び出しといて、用なしじゃん。」

前回もそうだった。
拉致られたすぐ後に生徒会室に監禁され、私をその辺の椅子に座らせて、
本人はその資料片手に仕事を始める始末。
こっちはあんな事までされて連れて来られたって言うのに、何が何だか分からずに、
結局その1時間後に仕事が終わるまで意味不明に付き合わされた。

「この暴君!用もないのに放送まで使うなってのよ。」
「用事があるから呼んでんだろ?アンタが俺の傍に居るって事に意味があんだよ。」
「・・・・・・・・意味分からない・・・・・・・・。」
「Shut up!とにかくイイコで待ってな、。」

手元で有り得ないスピードでキーを叩きながら(早すぎて指先が見えやしないし・・・)、
政宗は自分の後ろに座っている私に言った。
私はこれ以上何を言っても無駄だと分かってるから素直に従うしかない。
またもや大きく溜息を吐いて、奴に言った。

「ずっとこうしてるのって逆に疲れるから、何かお手伝い出来ますか?先輩?」
「OH!いい心がけじゃねぇか、そこに散らばってる資料、番号順に並べてくれ。」

政宗はそう言って片手で自分の右隣の机を指した。
かなりの量の資料がメチャクチャに散らばってる。
諸悪の根源は政宗自身らしいけど、そこは敢えてスルーすることにした。
だって向こうは仕事中だし、ああ見えて生徒会の事は真面目にやってるみたいだ。
って言っても、溜めた後に全部さばいてるみたいだけど。
その捌き方がまた凄い。
この人が生徒会長に当選したの、分かる気がする。
やる事も言う事もムチャクチャ暴君だけど、仕事は見てるこっちが感心する位だから。
とは言え、実は生徒会選挙、どうやら姫親も政宗とデッドヒートを繰り広げたらしい。
姫親本人は『アアン?んな面倒くせぇ事やってられっか!』と言ういかにもらしい理由で辞退しようとしたってことみたいで、
でも結局周りに担がれて無理矢理立候補させられたって事だった。
んで、殆ど並ぶ勢いだったんだけど、結果は今の状況ってこと。
普通はそこまで票を獲得したんだし、生徒会長じゃなくても役員になるはずではあるんだけど、
元々無理矢理だった上に政宗の下につくのは絶対に嫌だって事で断わったって訳みたい。
まぁ、確かに姫親の言う事も分かる。
だってコイツの下でなんて働いたら絶対メチャクチャこき使われそうだし。
姫親が大人しく使われてるとも思えないけど。
でも政宗が生徒会長なんて、生徒会役員の女生徒なんてフェロモンにやられて仕事になんないんじゃないだろうか。
実際会計の先輩が既にそれっぽいと聞いた事もある。


・・・ゲームの時も思ってたけど、実際会って分かった。
こいつのフェロモン並みじゃない。しかも極度のサドっぽいし。
・・・『ドSフェロモン大王、推して参る!俺の邪魔は誰にもさせねぇ。』
・・・・・・・・・・・って感じ。マジで。


「おい。」
「・・・・・・っっえ!?何よ。」

バサッ・・・・

と、そんな事を色々考えていると隣のドSフェロモン大王が声を掛けてきた。
あんまり急だったもんだから、ちょっとだけ反応が遅れた。
しかも、考えていたものが内容的に宜しくない感じだったので、
本人に声を掛けられてビビッて手がわなないて、その拍子に手に持ってた資料が下に落ちてしまった。

「ああ!折角綺麗にナンバー揃え終わりそうだったのに!」
「そりゃ残念だったな。ま、またやり直せや。」
「・・・・・・・・・・あんたね!!・・・もういい、それより何か言おうとしてた?」
、今、アンタ、変な事考えてやがっただろ?」

床に散らばった資料を拾い集める私を、
不意に椅子から立ち上がった政宗がそのまんま見下ろして言った。

ギクリ。

という3文字が妙に似合うほど内心ビビりまくる私。
いくらなんでも『ドSフェロモン大王』なんて思ったことは言える訳がなく、
私は平静を装って資料を集める手を休めないまま答える。

「・・・何で?」
「空気で分かんだよ、、素直に言ってみな。何考えてやがった?」
「別にそんな凄むようなこと考えてないわよ。生徒会役員選挙の事だし。」

嘘は言ってない。
元々それを考えて最後の結論に至った訳だから。
でも、それじゃこの暴君はご納得いかないようだった、
あからさまに不審そうな顔で私を見下ろしている。


「What's?何で今更それなんだ?」
「特に意味ない、ここが生徒会室だからね。」

言って、私は手元の資料の角を床でトントンとやりつつ綺麗に重なるように揃えた。
そして下から政宗を見上げる。

「ね、手伝ってくれたりしない訳?伊達生徒会長?」
「Sorry.そりゃ気付かなくて悪かったな?。」

どう見てもそんな気全くなさそうに政宗が言った。
とは言え、もう全部回収してしまったからその必要もなんだけど。
仕方なく私は大袈裟に溜息を吐いて立ち上がろうとした。

「watch your step!そこにまだ資料が1枚・・・「え?っっわっ・・・!!!???」


ズベッ
・・・・・ベリ・・っ・・・


足元に残っていた拾い忘れの最後の1枚に気付かず、
私はそれに足を乗せてそのまま滑って後ろへ尻餅をつきそうになった。

「!」

んだけど、間一髪、政宗がそれを受け止めてくれた。

「おっと!大丈夫かい?資料は破れちまったみてぇだな。」

私の身体に片腕を回したまま、私の足元で皺になって破れた資料を見て政宗が言った。

「あ、ごめん・・・!」
「OK.気にするな。どうせまたコピーすりゃいい事だぜ。」
「そう・・・だったらいいけ・・・・・・・ど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

と、顔を上げた所で政宗と至近距離でバチっと目が合った。


・・・っ・・・これは!!『フェロモンスイッチ』発動!!!
ヤバイ・・・・・・・!!!


身の危険を感じ、私はその腕の中から抜け出そうともがいた。
だけど、放そうとする気配が全くありやがらない政宗。
私はますますビビって声をあげた。

「伊達政宗生徒会長!!私を今すぐ直ちに放して!!」
「ah-ha?今度は何考えてんだ?俺はアンタがすっ転びそうなところを助けてやったんだぜ?
このぐれぇの役得はあってもいいんじゃねぇか?」
「それとこれとは話が別!!放せ!!放せぇぇぇ!!」
「OK.安心しな、コトが済んだら放してやるぜ。」
「・・・・・・っっコト!!??って・・・放せぇぇぇぇ!!!!!!」

部屋に来襲受けた時以来の大ピンチに、声を張り上げる私。
そこで突然生徒会室のドアが開いた。

ガチャッ


「「っ!!」」

「オオー!!悲痛ナ子羊ノ叫ビガ聞コエタノデーース!!
マサカトハネ!大丈夫デスカ?」

説明はいらないと思うけど、入ってきたのは何故学校に居るか本当に激しく疑問な人物、ザビーだった。
さすがの政宗も呆気に取られたらしく、今回ばかりは天の救いって事で私は急いで隙を見て彼から離れる。

「・・・ザビー叔父さん・・・学校に何の用で?」
「非行少年タチ、愛ニ飢エテイマース!
ワタシ、彼ラニ愛ヲ届ケニ来タネ!愛、素晴ラシイ!愛、美シイノデース!!」

イマイチ言っている意味を理解しかねつつも、とりあえず私はザビーと生徒会室を出た。
因みにザビーは何気に生徒会室に、
あの不気味桃尻天使人形と怪しげなパンフレットを置いてきていた。

「愛ノ加護ヲネガッテイマース!!」

とか言い残して。
けど今回は本当にそんなザビーにも感謝した。
そう、あの伊達政宗、現代版においても油断も隙もない男のおかげで。


今度呼び出し食らったら速攻で学校から飛び出してやる!!


私はそう固く心に決めたのだった。


(暴君!見参!)



----------------アトガキ--------------
今回ちょっと長すぎました。無理矢理収めた感が(苦笑)
本当はこの後幸村と佐助を出すつもりだったのですが、無理でした。
しかも最後にザビーを持ってきてしまった。
フフフ、好きなんです。ええ、ザビー教入信希望ですから(笑)
次回は前回の後書きにも書いたように、信長、濃姫、蘭丸出します。
後、教頭の義元も。その後の話に元就を出そうかなと。それで一応オール達成?
その次からは家での日常とか絡めたいです。
では、今回もここまでのお付き合い有り難うございました!失礼致します。


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