フッ


佐助の片腕に抱かれていつの間にか移動した先は、教室だった。
勿論、電気なんかついてない。
だけど窓際から色とりどりの花火の明かりがチラチラ入ってきてて、
真っ暗ではないけど。

「何か私・・・連れまわされてる気がする・・・・。」

ハァ、と思わず溜息をついて私は言った。
佐助が呆れたような顔で私を見る。

は気が強い割りに無防備すぎ。
そんなんだから旦那方に連れ回されちまうんでしょうが。」
「・・・佐助、あんたも人のこと言えないから。」
「俺はいいの。家族だからねぇ。」

言いながら、佐助が不意に私の背中に回る。
さっきの姫親の事もあって、私は咄嗟に体を固くしてしまった。
けど、どうやらヤツの目的は『そういう』方向ではないらしい。
ホッとしていると、まだ羽織ったままの姫親の上着を軽く掴れた。

「はいはい、これは脱いじまおうねぇ。寒いんなら俺の上着貸してやるからさ。」
「え?もう寒くはないけど。あ!分かった、脱ぐ、脱ぐから引っ張らないで!」

強引って程でもないけど、何となく有無を言わさぬ勢いで佐助が私から上着を剥ぎ取ろうとする。
私は仕方なく自分でそれを脱いで佐助に手渡した。
佐助はその上着をすぐ傍にある椅子にパサリと無造作に掛けた。

「これでよしっと。さーて、んじゃ、暫くここで俺と花火でも見ながら話でもしてようぜ、。」

何故か満足そうに頷いて、佐助が窓際の机の上に座る。
そして、おいでおいでと手招きをした。
私は軽く溜息を吐いて、でも結局素直にその隣に立って窓の外を眺めることにした。
校庭とも、屋上とも、また違う感覚で花火が私の目を奪う。

は何か欲しい物があった?今年のクリスマス。」
「え?うーん・・・特になし。」

佐助の質問に私は花火に目を向けたまま答えた。
それはまぁ嘘じゃない。
と言うか、最近じゃ、考え方も最初よりは随分楽観的になって、
今のこの特殊すぎる状況こそある意味で神様からの『プレゼント』と言えないこともないんじゃないかとさえ思えてる。

「へぇ、にしちゃ珍しい返事だねぇ。毎年欲しい物があり過ぎるってんで、
お館様が頭痛めてるってのに。」
「フン、私もそれだけ大人になったのだよ、お兄様。」


クスリ。
佐助が小さく笑った。
私はふと花火から佐助の横顔に視線を移す。
・・・正しくは、移そうとした。
だけど、アイツは花火じゃなくて、こっちを、私の顔を見てた。
結果、私は佐助の横顔じゃなく、真っ直ぐ奴の方に視線を移した形になる。
いつになく真剣な目でジッと私を見つめる佐助。
変に緊張してきて、私は視線を逸らした。

「な・・・何よ?」
、あんたやっぱ、可愛いわ。」
「なっ!!!??きゅっ・・・急に何言って!?」


ガタン・・・


佐助の台詞に思わず顔を赤くして、
1歩後退りした拍子に椅子が体に当たってその音が教室内に響いた。

「ははっ、その反応がまた可愛いねぇ。」
「からかわないでよ!って言うか、話題飛びすぎ!」

私は佐助から目を逸らしたままわざと大きめの声で言って、また窓の外に目をやる。
大体、今日がクリスマスだからって、政宗と言い姫親と言い佐助と言い、エンジンかけ過ぎだ。
からかってるのかふざけてるのか知らないけど、
その度にこっちは心臓破裂寸前、思考回路停止寸前で、まったくもって身が持たない。
隣の佐助がまた口を開いた。

「話題飛びすぎのついでにさ、聞きたいことがあるんだけどなァ。」
「・・・・・・・え?聞きたいこと・・・って?」

まだ幾分か身構えながら、私は彼に聞き返す。
ほんの少しだけ長めの沈黙の後、佐助が続けた。


「・・・・・・・・・・・俺と、伊達の旦那と、姫親の旦那、一緒に居るとしたら・・・誰がいいの?」


「・・・・一緒に・・・・・・・って??え?っ!」

質問の内容が余りにも予想外で驚いている所に、今度は佐助の片手が私のほっぺに伸びてきた。
瞬間的に、またもや、固まるしかない、私。

「さ・・・・ささ佐助!?でもほらっ・・・私たち・・・かっ家族・・・だしっ!!」

どうにか返事をしながらも、舌が回りやしない。
声も妙に上擦るし、変に高くなる。


ゲームのキャラに翻弄されるな!!
まともに受け止めるな!!


心の中ではそう思ってはいるものの、そんなに冷静に対処出来るはずもない。
その間も、ほっぺに触れている佐助の掌から、じんわりと体温が伝わってくる。

「伊達の旦那が言ってなかった?俺は下心のある家族だってさ、あれ、当たってんだわ。」
「なっ・・・・!?」
「で、今、答えを聞かせてくれると嬉しいんだけどねぇ。」

ドックン。ドックン。ドックン。ドックン。
バックン。ドックン。バックン。ドックン。

心臓の鼓動が、耳に煩い。
もうすぐ、胸を突き破って来るんじゃないだろうか。


------俺と、伊達の旦那と、姫親の旦那、一緒に居るとしたら・・・誰がいいの?------


今聞いたばかりの佐助の質問を、確認するようにもう1回思い出す。


選ぶ?
佐助か、政宗か、姫親か?


待って、待って、まっっっって!!!!!!!!
何がどうしてそういう話に転んだわけ!!??


そう思いながらも、私は無意識に、口を開いた。


「私・・・・私は・・・・・・・・・私は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


直前。


スパコーーーン!!!
ズパーーーン!!!

と、
教室の前と後ろのドアがそりゃもうぶっ壊れるんじゃないかって程勢いよく開けられた。

「OH!HA!やっぱりここか!!」「佐助!!オメェ!フザケタ真似しやがって!!」

同時に怒鳴るBASARAキャラが2人。
前に龍、後ろに鬼。

「政宗先輩・・・姫親・・・。」
「あらら、やっぱバレちまったか。」

佐助はまたしても苦笑して溜息を吐くと、机から立ち上がった。
この様子だと、コイツは2人がここに来るのを分かってたみたいだ。
ゲーム内では忍びやってるんだし、当然と言えば当然かもしれない。

「馬鹿にしやがってよぉ!から離れろ!佐助!!」
「元親、アンタも人のこと言えねぇだろ?
俺からを掻っ攫った上に、汚ぇ手使ってくれたじゃねぇか。」
「ヘッ、2人ともお互い様ってヤツなんじゃないの?」

3人集まった途端にこれだ。
いつもならここでいつきが助けに来てくれるんだけど、
そのいつきはさっきチラッと窓の下に見えた様子じゃ、
雪遊びを満喫しているようだったし。
もっと言うなら鎌倉作ろうとしてたみたいだった。(『いつきちゃんを嫁にし隊』のメンバーと)
しかもここは校舎内で、明かりがついてる場所もない。
さすがに1人でさっさと出て行く度胸なんかある訳ない。
なんてことを私が考えている間も、3人はあれやこれやと喧嘩をヒートアップさせている。
習慣化してるも同然だけど、何もクリスマスまでおっぱじめないで欲しい。
(ハァーーと溜息を吐いて途方にくれつつ窓の外の校庭に目をやると、
ツリーの傍に『愛の花園』を発見した。数人餌食になった模様。)

「今日こそ白黒ハッキリさせてやろうじゃねぇか!?あ"!?」
「HA!上等、この俺がオメェらごときにを渡すと思ってんのか?」
「はいはい、伊達の旦那、それは本人に聞いてみなきゃ分かんないことでしょうが。」


・・・・・・・・・・・・・・ん!?何か・・・方向性がいつもと・・・・違う気が・・・・。


不安になって窓から3人に視線を移すと、案の定、奴らが私を取り囲むみたいに立っている。
驚いて後退りしようとしたけど、後ろはすぐに窓の冷たい感触が当たるだけだった。
いつもなら自分たちでバトって自分たちで終わるくせに、
マジで、今日は3人ともいつも以上におかし過ぎる。

「なっ・・・何よ・・・あんた達・・・!」
「今の話は聞いてたな?honey.だったら俺たちが何を聞きてぇのか・・・分かってんだろ?」
「おいおい伊達の旦那、そんな詰め寄るような言い方止めなよ。が怖がっちまうでしょ。」
「チィッ・・・兄貴面するっくれぇなら、オメェはとっとと退きやがれ。」

とか何とか言いつつ、3人とも1歩も退く気はないらしく、全く動く様子がない。
私がこの状況を打開する策を必死に考えているそこに、睨み合っていたはずの3人が、
同時にこっちに視線を向ける。

「っ!?」
、さっき俺も聞いたよね?その答えを聞かせてくれない?」
、正直に言ってやっていいんだぜ?誰を選ぶかなんざ決まってるしな。」
、この気障野郎の言う事に耳は貸すんじゃねぇ。素直に答えてくれりゃそれでいいんだからな。」


だっ・・・だだだから!!!何でこう言う事になってる訳!?
キャラがキャラだけに、3人ともマジで言ってるとは思えないんですけど!?


でも、ふざけて言ってるようにもやっぱ見えなくて。
と言うより、珍しく、3人とも目に真剣さが滲み出てて、それが逆に何か怖かった。
3人に気付かれない様に深呼吸を繰り返して、私は床に目を落す。


『そう言う澪はどうなんだ?好きな相手はいないのか?』


パーティ開始直前のかすがからの質問。
あの時、私は、私の頭に浮かんだのは、間違いなく、今、目の前に居るこの3人だ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめん・・・・・誰か1人を選んだりするのは・・・無理・・・。」

長めの間を置いて、私は言った。
正直に、素直に。
だけど都合が良いって言われても仕方ないとは思う。
私をジッと見つめ続けてたらしい3人が、同時にフッと力を抜いた。


「そっか、ま、今の状況は俺たちもちと卑怯だったかもな。
クリスマスなんだから、神妙に話し込んでないで、楽しむべきってね?旦那方。」
「Yes!今回ばかりはおめぇに賛成してやるぜ、佐助。Partyは楽しむもんだ。」
「女1人に野郎3人で迫ってりゃ・・・出る答えも出ねぇのも仕方ねぇ。」

珍しく苦笑して見せた姫親が、自分の机の方に歩いて行くと、その傍にある箱に手をのばした。
って言うか、いつの間にか用意されてたみたいな箱だ。

「OH!champagneじゃねぇか。Ah-ha・・・さてはテメェここで1杯やる気だったな?」

ガサゴソと箱を開いた姫親が取り出した瓶を見て、政宗が言った。
だけど、口元はハッキリ笑ってるみたいだ。

「さすがに先公達も気付きゃしねぇだろうよ。生徒会長さんよぉ、オメェさえ目ぇつぶってくれるんならな。」
「あらら、姫親の旦那も悪だねぇ。」
「共犯ってヤツか、いいだろう。そのchampagneに免じて許してやるぜ。」

ニヤリ。
姫親と政宗が笑う。
佐助は肩をすくめて私と目を合わせた。
ついさっきまでの危機的状況がまるで嘘みたいだ。

「glassは丁度4つあるな。、アンタも飲むだろ?」
「ええ!?・・・そりゃ、ちょっとは興味あるけど・・・・。」

クッ、と、そこで政宗が喉を鳴らした。

「安心しな、酔っちまったら俺が介抱してやるぜ、honey?」
「なっ・・・!」

顔を真っ赤にした瞬間、隣の佐助が私の前に出る。

「こらこらこら!そこは家族の出番でしょうが!」
「はっはー!こんな時だけ家族だの兄貴だの言いやがって。
おい、危ねぇから俺の傍から離れてろ。シャンパン開けるぞ。」

言った姫親が、シャンパンの口を黒板の方へ向ける。
話をしながらも、シャンパンを開ける作業は進めていたらしい。


ポンッ!


小気味いい音と一緒に、シャンパンが開いた。
溢れ出てくる中身を、姫親が箱の中にあった布で受け止めている。
未だに夜空を彩っている花火が、シャンパンにキラキラ反射していた。

、オメェの量は抑えとくからな。」
「うん。」
「あ、旦那、俺のも抑えといて、動きに差し支えたら格好悪いからねぇ。」
「What?何の動きだよ。まぁいい、元親、コイツはと同じくらいでいいだろ。」

グラスに次々とシャンパンが注がれてく。
澄んだ色をした液体に、炭酸の泡が無数に立ち上っている。
シュワシュワと泡の弾ける音が、何故かよく耳に届いた。

「OK.皆glassは持ったな。俺たちだけのPartyの始まりだぜ。
ま、俺はと2人きりって方が嬉しいけどな?」
「あーはいはい、もういいよ、伊達の旦那。」

呆れた様に言って、佐助もグラスを軽くあげる。
姫親が小さく舌打ちした。

「私は今でも十分楽しいわよ。幸村達がいないのは残念だけど。」

私もグラスを軽く揚げる。
そして、4人同時にグラスを合わせた。


「「「メリークリスマス!」」」「Merry Christmas!」


グラス同士が触れ合った瞬間に、澄んだ音色が教室内に響く。


笑顔でシャンパンを口にする3人が、
それぞれ複雑な思いでリングの入った小さな小箱を内ポケットに潜ませていたことは、
勿論この時の私は全く知るはずもなかった。



(終わり)



後書き
ザビーー!!!ザビーが出せなかった!!くっ、信者としての名折れだ・・・(沈)
絶対出すつもりが、長すぎて収まり切れませんでした。
それでなくても間抜けな時期にクリスマス夢更新してますし(涙)
今回は政宗より元親や佐助との絡みの方が多かったような??
では、この遅れすぎなクリスマス夢にお付き合い下さって有り難うございました!!
本当に申し訳ございません、失礼します。


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