早朝。
靄に包まれ、澄んだ空気が覆う草原。
一頭の馬が朝露を飛ばし、ある場所に向かって駆けていた。
草原内の一角で一人、鍛錬を行っていた馬超は、
彼の元へと近づいてくるその馬の気配に気付が付くと、視線を上げた。
遠く霞んで見える馬上の人物。
されどすぐに彼はその人物が誰なのかを悟り、薄い唇に微かに笑みを浮かべる。
瞬く間に馬超の傍まで駆けて来た一頭の白馬の上から、
凛とした佇まいの美しい女が声を掛けてきた。

「ここにいると思ったわ、孟起。朝早くからご苦労様ね。」
「いつ戻った?。」
「たった今よ。フフン、あんたが寂しがってると思って直行して差し上げたの。」

言いながら、彼女は肉感的な紅い唇に艶やかな笑みを浮かべた。
そして、馬からひらりと飛び降りる。

「お前は相変わらずだな、寂しかったのはどちらか分からんものだ。」

馬超は僅かに口角を上げて言った。
下馬したばかりのが、腰に手を当て軽く彼を睨み付けるふりをして見せる。

「あら、半年振りに会う恋人に随分な態度じゃないの、馬孟起。」
「それはお互い様だろう。・・・まぁ、そう膨れるな、。」

彼はに近づくと、その華奢な身体に腕を回した。
彼女もそれに応える様に馬超の腰へと腕を巻きつける。

「半年間、浮気なんかしてないでしょうね?」
「俺にそんな不届きな真似が出来ると思うか?」
「フフ・・・正義の錦馬超ですものね。」

嬉しげに唇を綻ばせたに、馬超がゆっくりと自らの唇を重ねた。
彼女の手がせがむ様にして彼の後頭部へと移動し、口付けを更に深いものへと促す。
熱を伴った舌と舌が絡み合い、互いの口内にぬらぬらとした感覚が広がる。
やがてどちらのものとも言えぬ交じり合った唾液が溢れ出し、の顎を伝って流れ始めた。
馬超は軽く屈み込み、彼女の喉元まで流れたそれに舌を這わせる。

「ねぇ孟起、あんたは聞かないの?」
「何をだ?」
「・・・私が浮気をしなかったかどうかよ。
半年も離れていたんだし、少しは心配してくれないの?」

の問いに馬超が再度視線を彼女と合わせた。

「疑って欲しいのか?俺はお前を信じているのだがな。」
「そうじゃないけど・・・あんたは淡白そうでこっちが心配になるのよ。」

再び、彼女はふてくされた様な声音で答える。
馬超はそんなの艶のある黒髪に長い指を絡ませて弄びながら、
僅かに瞳を細めて愛しげに眺めた。

「俺はそんなに不実な男ではないぞ。
お前を想う気持ちがあればこそ、俺はお前と今までやってこられたんだ。」
「そう言うことはもっと早く言って。あんたは口にし無さ過ぎだわ、孟起。」
「それはすまぬな。」
「まったくよ。」

言ったが小さく笑う。
そしてその唇を自ら馬超の唇へと押し付けた。
彼の手が、彼女の黒髪から離れ、肢体を撫で下ろす様にして移動する。
甲冑を脱ぎ捨てて彼の元へ来ていたは軽装だった為、
薄布の下の曲線が安易に掌に伝わってきた。
薄っすらと瞳を開いた彼女が扇情的に彼の手にその細い指を絡ませてくる。

「こんな所で煽るな、・・・。」
「どうして?ふふ、これしきあんたなら我慢できるでしょうに。」

湿った吐息を互いの唇に吹きかけながら、熱を含んだ声で囁きあう。
彼の片手がの胸の下を撫でる様に動いた。

「出来ると思うか?」
「出来ないの?」

はそう返し、赤い舌で彼の唇をチロリと舐めて誘いをかける。
馬超は耐え切れなくなった如く、腕を彼女の腰に回し、
しなやかな太股を割って脚を絡ませた。

「お前は相変わらず卑劣な女だな、。」
「でもそこが好き、なんでしょう?」

クス、と、彼女の艶を含んだ唇が如何にも嬉しげに笑んだ。

「お前には敵わんな・・・。
甘い果実を味わう時は・・・今暫く待つつもりだったが・・・。」
「目の前にある美味しいものはすぐに胃に収めてしまいなさい。
少なくとも、私はそれを望んでるわよ、孟起。」

互いの腰を密着させたまま、は彼の片手を胸の膨らみまで移動させた。


「ならば俺も遠慮はせぬぞ、。」
「ええ。」


幾度目かに重ねた互いの唇は、もう十分なほどの熱を持っていた。


火照り始めた身体をピッタリと寄せ合う二人を、朝靄の冷たい空気が包む。
だが、彼らの熱を奪い去るまでには至らなかった。


半年振りに顔を合わせた恋人達は、会えなかった時間を埋める如く、
草原の片隅で時も忘れて互いを求め合っていた。


(終わり)



-------------------後書き---------------------------------
ゲームでの馬超の第一印象が「お堅い正義の男」だったので、
ちょっとそれを意識してみようと思ったんですけど・・・・(没)
まずは、馬超の名を出して下さったゆき様、誠に有難うございました。
ご期待に沿えているかは激しく疑問ですが、一生懸命執筆いたしました(涙)
そしてこの作品を読んで下さった方、有難うございます。失礼します。


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