「やはりここに居たのか、探したぞ、。」
「あら、これは文台様、わたしをお探しだったの?ふふ、嬉しいわ。」
振り向きざま、は微笑と共にそう答えた。
広大な城の敷地内にある中庭の一角。
巨木のそそり立つその場所は、稀に見回りの者が姿を見せるのみで、
殆ど人気がないと言って良かった。
「お前が自分の室で大人しくしているとは思っていなかったが・・・、
そんな姿で庭内を歩き回るな、。」
は本来武将としてこの呉に使えていた者だった為、常の生活の間も軽装を好んでいたが、
今の彼女は寝衣姿の為に平生より更に艶かしい肢体の曲線が露になっていた。
「大丈夫よ、誰にも会わなかったし。辺りは暗くて、こんなんじゃわたしの体なんか見えないわ。」
「そう言う問題ではない。それに今そうだったとしてもこれからそうだとは限らんだろう。
お前のその姿を目にする者が俺以外に出てくると言うのは見過ごせんな。」
ゆっくりと彼女の側まで歩を進めた孫堅は、片腕を伸ばして彼女の細い腰へと絡めた。
は素直に彼に身を任せ、肉感的な口唇で弧を描いて見せる。
「殿以外にわたしに近づける男が居る訳がないわ。
元々ここの男どもはわたしを女だと思っちゃいないんだもの。
わたしが側室になると決まった時なんか『孫堅様も毛色の違う女が欲しくなったのか』
なんて言ってるやつまでいたんだから。・・・・・・・・・勿論、その後制裁は受けてもらったけど。」
語り終えると彼女はくすくすと小さな声をたてて悪戯っぽく笑った。
「フッ・・・皆お前のその気丈さに気後れしていただけだ、心の内ではお前に惹かれて居ても、
口にすることは難しい。この俺でさえそうだったんだからな。」
「文台様が?それは初耳・・・。いつでも自信に満ちた方でいらっしゃいますのに、わたしごとき小娘に。」
「はははっ!だが・・・そうだな、それほどにお前は俺を魅了したということだ。」
言いながら、孫堅はを更に強く自らの胸へと抱き寄せる。
隙間無く詰められた距離に、互いの体温が溶け合った。
彼女は視線を上げ、孫堅の瞳をジッと覗き込んだ。
「文台様・・・わたしは・・・。」
何事か口にしかけただったが、不意にチラリと空に視線を向けた。
いつの間にか空に瞬いていた星々は姿を消し、厚い雲が天上を覆っている。
やがてポツリ、ポツリと、雨の雫が落ちてきた。
「・・・雨だわ。」
「本降りになる前に城内に戻るぞ、。」
「待って、文台様。こっちへ。」
は孫堅の手を取り、巨木の陰へと彼を導いた。
枝葉の生い茂ったその場所は、確かに風雨を凌ぐには適している。
だが、降り出した雨は短時間で止むようなものには見えなかった。
「城内までは走ればすぐに室につける、濡れるのが嫌ならこの俺が盾になろう。」
再び彼女を腕に抱いた孫堅がそう口にし、一歩、踏み出す。
しかし、はそれを押し止めるように彼の腕をグッと掴んだ。
「ん?どうした?」
「雨が止むまでの間だけ・・・わたしに文台様を独り占めにさせて・・・・・。」
彼女へと視線を移した孫堅から瞳を逸らすように俯き、が呟く。
彼は動きを止め、その一瞬の後、フッ、と、瞳をやわらかく細めた。
「珍しいな、お前の口からそんな言葉を聞けるとは。」
「・・・らしくないと思う?」
「いや、寧ろ嬉しい位だ。」
「文台様・・・。」
は彼の字を呼ぶと、自らもその細い腕を彼の体へと回した。
刹那、甘く瑞々しい果実を思わせる芳香が孫堅の鼻腔を満たす。
彼は愛しむ如くしての黒髪に指を滑らせた。
「文台様・・・わたしは・・・貴方が思っているよりずっとつまらない普通の女よ。
本当言うと・・・、今でも貴方がわたしをお召しになった理由がよく分からない時があるもの。」
「自信を持て、・・・。お前はこの虎が武人としても女としても認めた者だ。」
言い終えると、孫堅は己が唇を彼女の艶やかな唇へと重ねた。
互いの口内に熱く甘やかな吐息が広がる。
やわらかな口付けは、次第に濃厚さを増し、
やがて雨音に混じってぴちゃぴちゃと淫靡な水音が響き始めた。
孫堅の掌が、の肢体の曲線を確かめる如くゆっくりと滑り降りていく。
雨で気温が下がり、肌寒ささえ覚えていた二人だったが、
今は熱を帯びて体温は上昇し続けていた。
「ふふ・・・何だかこうして雨の中この場所に居ると、この世に二人きりみたい・・・。」
唇を僅かに離した彼女は、何処か嬉しげな表情を浮かべて言った。
先程降り始めた雨は、既に本降りと化している。
地面を濡らす雨の音が、二人の耳に心地よく反響していた。
「お前とならば、そんな世界も悪くはない。」
「クスクス・・・江東の虎の台詞とは思えないわね・・・。だけど・・・有り難う・・・。」
彼女はふっと笑みを零し、再び自ら艶やかな唇を孫堅の唇に重ね合わせる。
幾度も口付けを交わしながら、互いに無意識の内に片手の指を絡めて握り込んでいた。
「このままずっと、雨が止まなければいいわ。」
なんて、やっぱり高望みね。
は心のうちで一人、そう呟く。
耳に響くは相手の心音と雨音のみ。
雨は未だ止む様子はなかった。
(終わり)
-------------------後書き---------------------------------
っだああああああ!もっとスラスラ書ける筈だったんですが・・・。
スランプ、再来・・・!気づいたら最初に考えてたものと全く違う話になってるし、
大体ヒロインはもっとこう・・・こっとおおお・・・とにかく何かが違いました。
とにもかくにも初孫堅夢。久々に無双プレイして書いてみました。
ではではここまでのお付き合い、誠に有り難うございました。
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