「そう言う単細胞な所、甘寧の奴にそっくりだ。」
「なっ!?単細胞ですって!?しかも興覇とそっくり!?一緒にしないで!」
「おいこら、、オメェそりゃどう言う意味だ?ああ?」
軍議を終えたばかりの夕刻過ぎ、
食堂に向かう途中にあたし達はいつものように3人で喧嘩を始めた。
だいたい、いつの場合も火種は興覇か凌統、
あたしは殆どとばっちりもいいとこだった。
「ガキの頃からつるんでりゃ、うつっても仕方がないってとこですか。」
「凌統!オメェ人の事病気持ちみてぇに言いやがって!!ざけんじゃねぇ!」
「ちょっと興覇!耳元で怒鳴るの止めなさいよ!
それから凌統、あんたもふざけたこと言わないで!」
「ほぉら、言ってる内容が被ってるぜ、お二人さん。」
凌統が人を小ばかにしたように大げさに『やれやれ』なポーズをしてみせる。
隣にいる興覇が更に怒りモードに入ったのが分かった。
「また喧嘩をしているのか、お前達は。」
あたし達の言い争い(とまで言えるほど深刻でもないけど)が白熱するより前に、
これまたいつものように呂蒙殿が呆れたように止めに入って来た。
「喧嘩?俺がこんな単細胞生物達と?冗談じゃない。」
「「凌統!!」」
「あー分かった、分かった、だから静かにしろ。周りの者達に迷惑だ。いいな!?」
子供を叱り付けるようにあたし達3人にそう言って、1人1人の肩を軽く叩く呂蒙殿。
そう言えば、陸遜に最近呂蒙殿が更に苦労人に見える、と笑顔で言われた様な気がする。
「、お前は女なんだ、せめてこいつらと一緒になって喧嘩するのはやめておけ。」
「ハハハ!呂蒙のおっさん、コイツにそんな事言っても無駄だぜ!俺と同じ位喧嘩好きだからな。」
「・・・・・・・・・・・・・・ウルサイよ、興覇。」
本当はもっと言い返してやりたかったけど、それじゃあまた呂蒙殿に叱られてしまう、
そう思ってあたしはとりあえずその場はそれだけ言って口を閉じる。
・・・・つもりだった。
少なくとも、この時までは。
「ったく、呂蒙殿もどうかしてる、コイツのどこが女に見えるって?俺より逞しいぜ、は。
女ってのはもっと可愛らしいヤツをさすもんだろ。」
「!!!」
この瞬間にその慎ましやかな考えは吹き飛んだ。
あたしは自然と両手に拳を握った。
「凌統!オメェそりゃさすがに言い過ぎってもんだろうが!」
「落ち着け、甘寧。凌統、確かに今のは笑えん冗談だったぞ。」
熱くなる興覇、静かに叱る呂蒙殿。
そして、張本人のあたしは・・・。
「はいはいっと。・・・んじゃ、俺は退散するとしますか。」
「・・・・・・・・・・・・凌統・・・・・・・・・・。」
「・・・ん?」
パシ・・・・ッ
乾いた音が廊下に瞬時に響き渡る。
何の警戒もなく振り向いた凌統の頬に、あたしの平手打ちが飛んだ。
驚きの表情を隠せない呂蒙殿と興覇が同時にあたしに視線を向ける。
凌統はあたしに平手を食らった瞬間と同じ方向に顔を逸らせたままだ。
「お休みなさい!」
捨て台詞みたいに言って、あたしは3人の傍を離れた。
興覇があたしに何か言おうと口を開きかけたようだったけど、それも無視して。
その後部屋に戻ったあたしは、1人で寝台の上でうずくまって居た。
・・・悪かったわね・・・女に見えなくてさ・・・。
どうせあんたの周りに居る女の子達とは違うわよ・・・。
凌統の一言は、あたしを凹ませるには充分な威力があった。
何故ならあたしはあいつの事を好いているから。
あたしは凌統の頬を打った右手をじっと見つめ、そしてその手をぎゅっと握った。
気のせいか、掌が今も熱く感じる。
・・・・・・・でも・・・あたしも・・・・・何も叩かなくてもな・・・・・・・。
自分自身、手をあげるつもりなんかなかった。
凌統の奴は特に何も考えずにいつもの憎まれ口程度の意味で口にしたんだって分かってる。
だけどそれが逆に何か悔しくて、悲しくて。
そして興覇はそれを知ってるから怒ってくれたんだろう。
好きなのに・・・全然素直になれない・・・・。
こんなに好きなのに、いつも喧嘩になるし・・・・。
「おぅ、、居るのか?」
「え!?・・・ああ、興覇ね、・・・入れば?」
部屋の扉の外で聞きなれた興覇の声がして、あたしはすぐにそれに答えた。
あたしの返事と同時に扉が開き、興覇が姿を見せる。
「どうしたの・・・?何か用?」
「あ?まぁ別に用って程の事でもねぇんだけどよ。」
「・・・・心配してくれた訳?興覇兄。」
あたしは笑って言った。
もっとずっと昔、小さな頃はそう呼んでた。
本気で血の繋がった兄貴だと勘違いしてた頃だ。
「オメェ・・・さっきの凌統の言葉気にしてやがんだろうと思ってよ。」
「・・・・・・・・・・まぁ・・・・ね・・・・。」
あたしは苦笑いして答えた。
興覇があたしの隣にどかっと腰を下ろす。
「ケッ!ったくオメェらは世話が焼けるぜ。」
「・・・興覇兄に言われても説得力ないなぁ・・・。世話してるのあたしだし?」
クスクス笑い出すあたしの頭を、不意の興覇がクシャっと撫でる。
「いつまでもんなしけた面してんじゃねぇ!
俺の妹なら、ズバッと言っちまえ!!!ズバっとよぉ!!」
「なっ!?それは無理!だいたいさっきのことだってあるし・・・。」
「ありゃオメェが悪い訳じゃねぇだろ!
俺なら拳で殴ってたとしても文句は言わせねぇぜ。」
「・・・いや、それはさすがにどうなのよ・・・。興覇だけだし、そんな事考えるの。」
軽くツッコミをいれるあたしに、興覇がははっと声を上げて笑う。
そしてあたしの頭に手を置いたまま言った。
「ぐだぐだ考える暇があったら行動しやがれっつってんだ。
俺の言いてぇこた、分かるよな?」
「・・・・凌統に会いに行けって・・・こと?」
「おう!アイツに文句言おうがどうしようが勝手だぜ、
頭で考えるよりゃ動いた方が結果が出るってもんだろ。」
あまりに興覇らしい台詞だった。
あたしは思わず吹き出しそうになる。
「時と場合によるけどね。けど、ありがと。そうする・・・!」
「おっしゃ!それでこそだ!」
あたしの頭に置いていた手を背中に移動させ、
ポンっと押すように叩いて興覇が言った。
あたしは頷いてから立ち上がる。
「じゃあ、行ってきます!」
そして興覇に笑顔を向け、凌統の部屋に向かったのだった。
(こんなに思っているのに-続く-)
後書き
短編と言っておきながらしょっぱなっから前後編物に・・・!
本当は無理にでも1つに収めてしまおうかとも考えましたが、
長ったらしすぎるのでやっぱり分けました。
こんな私の作品ですが、お付き合い、誠に感謝いたします。
続きも読んで下されば幸いです。
でわ、失礼致します。
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