翌朝、俺は微かに聞こえてきた話し声で目を覚ました。
どうやらが扉の辺りで話をしてるらしい。
体を少しだけ起こして確認すると、相手は甘寧の奴だった。
獄帰りってとこだろう、本当に徹夜になってる辺りが笑っちまう。
まだ寝惚けきった頭でそんなことを考えながら、俺はぼんやりあいつ等の会話を聞いていた。
「ご苦労様、これからあんたも眠り込むんでしょ?」
「当たりめぇだぜ・・・、ったく陸遜の野郎・・・自分の睡眠削ってまで俺に延々説教垂れやがって・・・。」
「フフ・・・目に浮かぶ。周瑜殿と呂蒙殿も居たんじゃなかったの?」
「おぅ、居たには居たがあの2人は結構すぐに戻っちまったぜ。
・・・結局陸遜の奴1人が粘ってよ・・・・。・・・・・・・・・・ヤベェ・・・・俺もう行くわ、眠くて敵わねぇぜ・・・・。」
「お休み、興覇。」
「あばよ、またな。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・待て・・・・・・・・・今・・・・・・・・・・・・。
『興覇』確かにそう聞こえた。
は甘寧と別れちまって以来、アイツを字で呼ばなくなっていた。
少なくとも、俺や他の人間の前じゃそうだった。
2人だけの時はそうじゃなかったってのかい?
・・・・・・冗談じゃないっつの・・・・・・・・・・・・・・・・・。
苛立ち通り越してこれはもう不愉快だ。
いや、そんな生易しい感情じゃないこと位とっくに分かってる。
俺の堪忍袋の緒は、みじん切りからこっぱ微塵になっちっまった。
もうこれ以上、無理だ。
俺は体を起こして寝台の隅に腰掛け、が振り向くのを待った。
「っ!公積、起こしちゃった?ごめん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
俺は無言で彼女を見つめた。
は不思議そうに俺と視線を合わしながらも、寝台の側まで戻ってきた。
「公積・・・・・・?寝惚けてるの?・・・・・・っっ!?」
俺に触れようと伸ばされたの手を、
俺は素早く両手で拘束しそのまま寝台に押さえつける様に彼女の体を沈めた。
「何っ!?公積・・・!?」
「・・・・・・・なぁ、俺は今すぐあんたに聞きたい事があんだけどな・・・・・。」
「・・・・・・?聞きたい・・・・?って、でもだからってどうしてこんなっ・・・!?」
俺の突然の行動が理解が出来ずにが抵抗を試みるが、俺はそれを許さなかった。
彼女の手首を更に両手できつく押さえ込み、見下ろしたまま先を続ける。
「・・・・・・・甘寧の奴のこと今でも惚れてんのかい?」
「なっ・・・・・・!?」
「答えろよ、。でなきゃ俺はあんたを解放してやれない。」
「・・・・・・・どうしたの?公積・・・・・・?何で急に・・・・・・・・・っ!!??」
俺の問いに答えようとしないに、
再び苛立ちを覚えて思わずその唇を強引に塞いだ。
片手だけでの手首を押さえ、もう片手で乱暴に帯紐を解く。
「やめ・・・・・っ・・・いや・・・・・っ・・・公積!!やめて・・・・・・!!お願い・・・・・!!」
懇願するようなの言葉もお構いなしで、
俺は怒りに任せて何度も何度も貪るように彼女の唇を奪った。
「やだ・・・・・・!!!!!!!」
パァンッ・・・・・・・・
服を剥ぎ取ろうとした瞬間に外れた俺の手を払いのけ、の平手打ちが俺の頬に飛んだ。
「公積・・・ごめん・・・けど・・・・・こんなの・・・・・、・・・何で・・・・・?急に・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
最低だ・・・・・・・。本当に何だってこんなことになっちまったんだか・・・・・・・。
理由なんか1つしかない。
俺の方がの何倍も彼女を好いているから。
いや、何倍もと言うよりはもう底なしになっちまってんのかもしれない。
らしくもなく溜めに溜めてた気持ちが噴き出してきたってのも勿論あるにはあると思うが。
「・・・・・・・俺は部屋に戻る・・・・・・。悪かったな、・・・・・・・。」
「え!?ま・・・・・・待って!!公積!!」
これ以上、問答したって無駄だ。
どうせ今はを傷つけるような言葉しか口にできやしないだろう。
だったらここは消えんのが得策。
女並みに嫉妬してるお笑い種な自分の姿なんざ晒したくもない。
「・・・、そこ、退いてくれませんかね?」
扉に向かった俺を追い越し、彼女は俺の前に立ち塞がった。
俺を見上げてそのまま首を左右に振る。
「嫌よ、退かない。理由を言って、でないと絶対にこの部屋からは出さないから。」
ついさっきあんな手荒な真似されといてここまで言えるってとこはやっぱり見事だ。
けど、本当に分かっちゃいないんだな、・・・。
「甘寧の奴を字で呼んでたよな?。つまり2人っきりの時はああやって呼び続けてるって訳だ。」
「違うわ!!・・・・・・・・確かにたまに字を呼ぶことはあるけど・・・それは単に今までのくせよ!
言ったでしょう?甘寧と長く付き合って逆に分かったって、甘寧とは今の距離の方が合ってるのよ。」
「百歩譲ってその言い訳を信じるとして・・・・・・・・、じゃあ今までの事はどう説明つけてくれんですかね?
との時間を過そうとする度に、あんたは必ずアイツの元に居るってことについてね。」
言っちまった・・・・・・・。
ったく、これじゃどっちが女だか分かりゃしないっつの・・・・・・・・・。
説明なんざ本当は欲しくない。
そんなものが聞きたい訳じゃない。
なのに結局口をついて出んのはそうゆう無意味な事を促す言葉だ。
さっさとここを出なけりゃ俺はもっとみっともない自分を晒しちまうことになる。
「・・・・・・・不安だったからよ・・・・・・・・・・・・・。」
俺を見上げていたはずのが不意に俯いて呟いた。
「・・・・・・・不安・・・?」
「・・・・あんたが・・・・・・本当に私を必要としてるのか・・・。
・・・・だってあんたの周りにはいつだってお綺麗な女官達が陣取ってたし・・・・。
でもあんたにそんな不満を言ってしまう位なら、戦でそれを発散してしまおうと思った・・・。
甘寧と一緒に居ればそんな下らない事を考えずに済む位、クタクタになるまで戦に全力を尽くせるから・・・。」
ごめんなさい・・・・・・。俺の胸に軽く額を当て、俺の服の袖を掴んだが言った。
参ったね、俺は自分がこんなに単純な人間だと思っちゃいなかった。
こんな、好きな女のこんな言葉でさっきまでのどろどろした感情が跡形もなく消えちまう程単純だなんてね。
けど・・・ま、・・・・・・・・もう一押し・・・・・・言ってくれると有り難いんだけどねぇ?。
「公積・・・・・・・まだ怒ってる?」
「いや・・・・・・俺も悪かったよ・・・大人気なかった・・・。」
胸に押し付けられている彼女の頭をそっとなでて俺は言った。
が顔を上げて俺を見つめる。
「私が好きなのは凌公積だけだから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
俺は見上げている彼女の唇に吸い寄せられる様に口づけた。
俺の望んだ通り、『もう一押し』を言ってくれたに感謝を込めて。
「さっきの・・・・・・痛かった?」
「ん?」
「頬・・・・・・・。」
「そりゃもう、泣きそうな程ね。」
「・・・・・馬鹿・・・・・・。」
俺の唇に軽く自分の唇を触れさせたままがクスリと笑う。
俺は彼女を抱きかかえ、寝台へ向かった。
「公積・・・・・・私・・・・・目が冴えちゃったわ・・・・・・・。」
「・・・・・へぇ、そういう事言うと、俺はあんたを食らっちまうぜ?何せ飢えに飢えてますから。」
俺の腕に抱かれたがまた俺をじっと見つめ、そして耳元に唇を寄せた。
「実はね・・・・・・・・私もなのよ・・・・・・・。」
思いもかけない嬉し過ぎる台詞に、ニヤリと口元が緩んだ。
さぁて、んじゃ、今までの分も・・・・・・・いきますか?殿。
(貪るように -終わり-)
後書き
暁様からのリクお題で消化させて頂きました。
甘寧に嫉妬する凌統ってことでしたが・・・・・・・、
嫉妬に燃えすぎだったかもしれません。
誰これ!!??と言う感じが否めない。
未だにキャラ視点が曖昧で申し訳ありません。
これでも煮えた頭を必死に使って書きました。
では、今回ここまでのお付き合い下さったお客様、
そしてリクエストでお題消化に貢献して下さった暁様、
有り難うございました。
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