「甘寧、そろそろ後方の援軍と合流した方がいい。
このまま突っ込んでもこっちが危ういだけだぜ。敵さんの数が並みじゃない。」
「ああ?ざけんじゃねぇ!こーゆうのはな、勢いってのが大事なんだよ!
行くぜ!!!このッ位の方が滾るってもんだろ!?なぁ野郎共!!!!!!!」

オオオオオオオオ!!!


やれやれ、またこれで軍師連中のお小言は決定だね・・・。
ったく、それに巻き込まれる俺の身にもなって欲しいもんだ・・・。


俺は大きく溜息を吐きながらもアイツの軍と離れないよう自分の軍に指示を出した。
甘寧の奴と同じ戦場に立つようになって、こうゆう展開にはもう慣れたもんだ。
ただ、ま、勘弁して欲しいのは陸遜と周瑜殿の嫌味説教攻撃だが。
加えて呂蒙殿からも灸を据えられることは間違いないだろう。
いや、それより戦場でもっと勘弁願いたいのは・・・。


「悪いわね、甘寧。先に行かせてもらうわよ!本陣の敵軍は私らで蹴散らしておいてあげる!!」
「ケッ・・・!!!今日の喧嘩のトリは俺が飾るぜ!!!待ちやがれ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


これだ・・・。
またこれを見せられるハメになんのかと思うと気が重い。

「甘寧、それじゃ、どっちが先に拠点を攻め取れるか、今度の酒代賭けようじゃないの!」
「おぅ!!望むところだ!!野郎共、遅れんじゃねぇぞ!!!」

見ていて苛つく程にえらく息の合った2人だ。
それもそのはず、
この2人は半年前までその内一緒になっちまうんじゃないかと言われるほど長く付き合って居た。
付き合う前からやけに2人は気が合っいて、こいつらが暴れる度にその後を俺が尻拭いしてやってたって状況ではあったが。
尻拭いがどうのなんてほんとのとこ俺としちゃどーだっていい。
それにはもう手慣れたもんだ。
だが、俺が気に食わないのは未だにここまで仲のいいと甘寧の関係だ。
別に別れたからっていがみ合えと言ってる訳じゃない。
ただこうも毎回こんな楽しそうな2人の姿を見せられる俺の身にもなって欲しいってもんだ。


今、あんたの恋人は俺のはずだぜ?分かってんのかい、


俺と彼女が付き合い始めたのは1ヶ月程前からだ。
けど、ハッキリ言ってそれから恋人らしい時間なんか殆ど過しちゃいなかった。
連日続く戦、その度に甘寧と張り合おうと全力を尽くす
挙句俺との時間は削られ、彼女は睡眠を最優先することになっていた。
ま、戦で手を抜けなんて馬鹿げた事を言う気はさらさらないが、
それにしたってあの猪甘寧と同じに始終滾ってりゃ要らない力を出してると言わざる得ない。
俺だって無理してまで自分に時間を割けとまで言うつもりなんかないし、
そんなことをして欲しい訳でもない。
ただ、たまの休みが取れたと俺がの方へ足を運べば、彼女は甘寧と討伐部隊に加わったなんて話を聞かされ、
待ちぼうけ食らった数も知れないとなれば話は別だ。
俺の堪忍袋の緒ってヤツは、切れたの通り越して今じゃ既にみじん切り状態。
俺はあんたにとって何なんだ?なんてまるで女みたいな事まで口にしそうになんのを必死に抑えるしかない。



「今日の勝負は引き分けってとこかしら?ねぇ、甘寧。」

戦終了後、は城に戻った途端にその話を甘寧に振った。
これから軍師連中の待つ獄へ送られるこた既に決まってるってのに、やけに嬉々とした表情だ。

「ヘッ、まっ今日の所は仕方ねぇ。そーいう事にしといてやるぜ。」
「よく言う、私と公積が居なかったらあんたは絶対袋の鼠だったわよ、賭けてもいいわ。」

苛立つ俺のことなんかお構いなしに、2人はいつもの様に話を進めている。
俺は大げさに溜息を吐いて言った。

「はいはい、もういいだろ?お迎えが来たぜ。」
「・・・お迎え・・・・・・・・。」
「ゲッ!!陸遜!!」

いい加減、この展開に驚くコイツの姿ももう見飽きた。
目の前でえらく機嫌の良さそうな顔で微笑む陸遜の顔も、見飽きた、
と言うよりゃ実はもうこの笑顔はあんまりお目にかかりたくない。
その笑顔が嬉しそうであれば有るほど、獄中の内容が激しさを増すってのも毎回のことだ。

「甘寧殿、楽しそうにお話中申し訳ありません。周瑜殿がお呼びですのでお迎えに上がりました。」
「なっ!?何!!??ちょっと待て!!俺だけかよ!?」
「へぇ、そりゃ助かった。んじゃな、甘寧。」

意外な展開じゃあったが、俺は取り合えず甘寧を笑顔で見送ってやる事にした。
それが礼儀ってもんだろ、この場合。

「甘寧、あんたの犠牲は忘れない!また明日ね。」

徹夜になる位の覚悟をしておけとばかりにが言った。

「何ぃぃ!!??裏切りやがるか!?テメェら!!!!」
「さぁ甘寧殿、行きますよ。」

騒ぐ甘寧のヤツを殆ど連行する様に陸遜が引きずって行った。
その背中を見送ってすぐに俺の隣のが片手を俺の肩に乗せる。

「・・・じゃ、公積、私も部屋に戻るわ・・・。もうクタクタ・・・・・・。」
「部屋までお送りしますよ、姫君。・・・・・・・ったく滾り過ぎだっつの。」
「・・・・・・・ん。」

俺の言葉に素直に頷いてしなだれかかって来るその態度はやっぱり可愛い。
けど、この様子じゃ明日も殆ど睡眠で時間が潰されんのは目に見えてる。
ま、体なんか壊されちゃそれこそ堪らないんでそれはそれでいいんだけどね。
の部屋に着くと彼女を抱えたまま寝台に近付き、その上に下ろした。

「なぁ、俺はもう自分の部屋に戻る気力もないんだけどね。ここで寝ちまってもいいかい?」
「・・・・・・・・・・・・・いいけど・・・・・・・・・今日は・・・・・本当に寝るわよ?」


今日は・・・ね・・・、今日も、の間違いじゃありませんか?


思わず頭にそんな皮肉を思い浮かべちまいながら、俺はに向かって頷いた。
がそれに応えて俺に場所を空けるため、寝台の隅へ移動する。

「公積、おやすみ。」
「おやすみ。」

寝台の上で感じるの体温は限りなく心地いい。
疲れきってんのは俺も同じで、あれこれと考えちまうより先に俺は眠りにおちていた。



(貪るように -続く-)



後書き
また微妙な凌統視点でしたね・・・。
暁様からのリクエスト物だったんですが・・・、
前半と後半の長さの釣り合い取れなさそうな予感・・・。
ここまで読んで下さったお客様、有り難うございます。
宜しければ後編もお付き合い下さいませ。


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