「、俺としちゃ、そろそろ真剣に考えて欲しいんだけどね?」
「・・・・何を?」
は同じ寝台で横になっている凌統にそう問い返しながら、
すぐ傍の棚の上にある酒の入った瓶に手を伸ばした。
そして身体を少しだけ起こし、大きめの杯に片手で酒を満たす。
凌統が僅か眉間にしわをよせた。
「・・・嘘よ、ちゃんと聞いてたわ。だけど凌統、今更じゃない・・・。
私は今のままで満足してるし、お互いその方がいいに決まってる。」
言い終えるとは杯に口をつけ、酒で喉を潤した。
「この関係の何がいいんだい?ハッキリ言って、不健全極まりないだろ。身体だけの関係なんか。」
半ば吐き捨てるように彼は答えた。
は杯を棚の上に置いて、隣の凌統に視線を移す。
「それが今更だわ・・・。分かっていてお互い始めた事じゃないの。
まさか1年も続くとは思ってなかったけど・・・・、
それも貴方も私も1人に相手をしぼらずに好き放題してたから今までやってこれたんだわ。」
「・・・・。」
彼女を見つめる凌統の視線が僅か強まった。
「確かにあんたの言う通り、割り切れる相手が欲しかった。それは否定しない。
けどな、ただの『遊び』の相手と1年近くも一緒に居られるほど俺は忍耐強かないぜ。
どうでもいい相手なら、とっくの昔に切っちまってるさ。」
彼はそう言い終えると、の細い腰を片手で引き寄せた。
彼女は抵抗する様子もなく、大人しく彼の腕に収まる。
薄暗がりの中、の白い肌は発光している如くに見えた。
密着した互いの肌と肌から熱が生まれる。
「凌統・・・、突然どうしてそんなことを?」
「・・・突然じゃないさ、俺はずっと考えてた。
、あんたの身体に・・・・・・・・・俺以外の奴の痕を見つける度にね。」
彼の視線がの胸元に移る。
散りばめられた紅い刻印、だが、明らかに今付けられたものとは色が異なるものも数箇所あった。
凌統はそのひとつひとつに冷たい視線を送る。
「あんたは分かってない、俺がこれを見る度、そいつが憎くて堪らないんだ。
その内見つけ出してぼろぼろにしちまうかもしれないぜ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嘘だわ、そんなの。」
は両手で胸元の花弁を隠す様にし、俯いたまま言った。
彼女の頭のすぐ上で凌統が問い返す。
「どうしてそう思うんだい?」
「・・・・・・・・・『遊びで始めた女に、本気になるような真似はしない』そう言ったのは凌統・・・・・・・・、貴方よ・・・・。」
彼の腕がの言葉にピクリと軽く反応した。
やがて溜息とともに再び彼が口を開く。
「確かに俺はそう言った、けど、今は違う。俺は本気であんたに惚れちまってんだ。」
の腰を抱く凌統の腕の力が強まった。
だが、その腕の中で彼女は首を左右に振り、それを否定する。
「・・・・・・・・・・信じられないわ、そんなの・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
腕の中に確かにある存在。
それは合わさる身体の熱から確かに伝わっている。
それでも、凌統との間には千里ほども距離が有る様に彼には思えた。
そしてその距離を作ったのは、他でもない彼自身なのだ。
何度肌を合わせようとも、共に夜を過そうとも、決して埋まらない距離。
「ここ半年、俺の体にあんた以外の女の痕はなかったはずだぜ、。」
凌統の台詞に今度はが反応する。
彼の言うとおり、関係が始まったばかりの頃は他の女人との情事の痕が生々しく残っていたが、
最近は全くそれを目にする事はなくなっていた。
「・・・・・・・・・それは・・・・でも・・・・・・・・。」
「それでもやっぱり、信じられないってとこですか?」
「・・・・・・・・・・・・。」
無言の彼女の反応が、それを肯定している。
凌統はじっと彼女を見下ろすと、不意に腕から彼女を解放した。
「・・・だったら、今日で止めちまおうぜ・・・・。その方が・・・俺もあんたも、楽になれる・・・。
俺はもう、あんたを『遊び』の相手としては見れやしないんでね。」
「・・・・凌統・・・?」
ギッ
凌統は身を起こして寝台から抜け出た。
床に落ちている自分の衣服を拾い、身につける。
「悪い・・・・当分、あんたの顔を見れそうにない。
・・・けど、ま、気にすんな、すぐ慣れるさ。
・・・・・・・・・・・・・・に信用されない男になったのは、自業自得ってやつだしな・・・・・・・・・・・。」
「凌統・・・・・・・・・・・。」
寝台に居るに背を向けたまま、彼は身支度を整えていた。
「待って・・・・本気で・・・止めるの?」
「・・・・・・・・ああ。」
凌統は短く答えた。
「凌統・・・っ!待って、私は・・・・・・・!」
は衣服を身に着け、部屋を後にしようとする彼の服の端を掴んで声を上げる。
「違うの・・・・信じられないのは、貴方じゃない・・・・・・・・・・。私よ、私自身・・・・・。」
「・・・・・。」
振り向いた凌統は、彼女を見下ろす。
の瞳は潤んでいた。
「ずっとこんな関係ばかり続けていたから・・・どうしていいのか分からなかった・・・。
私の傍に居て、私を求めてくれて、私を必要としてくれる人が居るなら受け入れようと・・・。
それが例え一時でも、寂しさを紛らわせられると思ったの・・・。」
そこで彼女は涙を必死に堪えるような表情を見せた。
「・・・・まさか貴方が私だけを見てくれる日がくるなんて思ってなかったわ・・・、
だから他の男とも結局切れずに居た・・・・・・・。汚い・・・・・・私は・・・・・・・・・・。
信じられないのは・・・・・・・私なのよ、凌統・・・・・・・・・・・っ・・・・!」
唇を噛み締め、それでも堪え切れなかったのか、の目の際から雫が頬を伝う。
凌統は彼女の頬に片手でそっと触れた。
「・・・・・・おかしな話だな、裸であんたを腕に抱いてたついさっきより、
今、この距離で目の前に居るあんたの方がずっと近くに感じるんだからね・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
は彼の言葉に瞬きをして凌統を見つめた。
その瞬間に、また一筋の涙が頬を流れて彼の手を僅かに濡らす。
「、俺はあんたを信じるぜ、ま、汚いのはお互い様ってやつ・・・。
いや・・・あんたの方がずっと純粋だと思うけどね。」
「凌統・・・・・・。」
凌統は彼の手を濡らした彼女の涙に唇を付けた。
「この涙と一緒に、が気にしてた『汚い』部分ってやつは外に出ちまったよ、
だから今度は俺の毒を吸い出しちゃくれませんか?」
彼はと見詰め合ったまま、親指の腹で彼女の唇に触れた。
「貴方の毒を吸い出すのは・・・凄く長くかかりそうね。」
苦笑して言う彼女に、再び凌統が口を開く。
「だったらじっくり時間掛けて吸い出して欲しいね、一生かけてでも・・・ね。」
彼はそう口にし、彼女の唇へ屈みこんだ。
(縮まった2人の距離 -終わり-)
後書き
どぇーー!何かかなーり微妙な作品に仕上がってしまった・・・。
しかも続けて凌統・・・。いや、好きなんですけど、
甘寧と凌統は同じくらいの作品数でないと嫌なんですよね。
自分の中での妙なこだわり(笑)
最近やっと凌統書き慣れて来たか!?と思っていたんですが、
イメトレを怠ったからまた怪しい・・・・・・・・・・。
では、ここまでお付き合い下さったお客様、誠に有り難うございました!
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