紅蓮の炎を怯むことなく進むその背中を、
いつまでも追いかけていられれば今はそれで幸せ。
鈍感な貴方が例え振り向いてくれなかったとしても。
だけどいつかその背中に追い付いて、並んで突き進んでいけたら・・・。
それが私の夢。
貴方が絶対に伸びると言ってくれたこの腕を磨いて、
きっとその夢叶えて見せるよ。
甘寧将軍、貴方の下で。
「さすが水鏡のじいさんのとこから来ただけはあるぜ、おめぇは。
、この俺にここまでついて来れた奴は初めてだ!今日の喧嘩も敵軍ぶった切ってやろうぜ!!」
「はい!!」
ずっと憧れていた甘寧将軍の護衛武将として仕官してからもう3ヶ月。
それからほとんどひっきりなしに起こる戦。
最初は『護衛武将』なんて名ばかりで、甘寧将軍に迷惑ばかりかけてた。
今はほんの少しだけど、最初よりはどう動かなきゃいけないのかが見えて来てるところだ。
『おめぇ凄ぇな!戦に出る度にどんどん成長してやがるぜ。
その調子でのし上がって来いよ!!!!!!!』
その一言で私の全ての努力が報われる気分。
だから頑張って来れたんだって、甘寧将軍は絶対気付いてはいないんだけど。
「おぅ、今回は敵さんどもどうやら戦場に伏兵仕込んでやがるらしい。
分かっちゃいると思うが、俺ぁそーゆうまどろっこしいのは苦手だ、頼むぜ!相棒!」
「了解です!私はそういうまどろっこしいの得意ですから。将軍と違って。」
「へっ!よく言うぜ!」
嬉しそうに笑顔を見せて、甘寧将軍が私の肩をポンっと叩く。
それがあんまり心地よくて、私も笑顔で返した。
その後すぐに戦が始まり、私たち甘寧将軍の部隊は中央の拠点を潰す任につくことになった。
「へへっ中央の拠点ってこたその周りもぶっ潰す事が出来るって訳だ!
野郎ども、いっくぜぇぇ!!!!!!!!」
オオオオオオオオ・・・・
甘寧将軍は戦になると心から楽しそうに見える。
見えるんじゃなく、絶対に楽しんでるんだと思う。
そう言うのをどうなんだと言う人たちも少なくはないけど、
私はそんな甘寧将軍に憧れて護衛武将に仕官することにした。
どうしてもあの熱い思いの傍に身を置いて、一緒に戦いたかったから。
「・・・・・・・アイツ伝令兵だ!」
戦場の至る所で兵達が敵も味方も必死に戦う中、
どう見ても急いだ様子で数人の兵がその間を縫うみたいにして走ってる。
私はその敵兵に向かって突っ込んでいった。
「待ちなさい!その書を渡してもらうわよ!」
「そうはいくか!!!!」
伝令兵を護衛しているらしい数人の兵が得物を振りかざして私に向かってきた。
私はそれを横っ飛びにかわして、甘寧将軍から直々に頂いた覇江を構え直す。
甘寧将軍とこの刀さえ傍にあれば私は無敵。
毎回戦の度に私はそう思っている。
「行くわよ!!!はぁぁっ!!!」
気合と一緒に覇江を敵兵の胸元へ素早く突き出し、振り下ろす。
その瞬間に私は確かな手応えを感じた。
「グァッ・・・・!」
「ウワァ・・・!!」
敵兵達が顔を歪めて叫び声を上げて、その体から真っ赤な血潮が飛ぶ。
伝令兵が慌てたように私の傍から離れようと背中を向けたところを、すかさず斬り付けた。
「グッハァァ・・・・く・・・・そ・・・・。」
「・・・・・・・悪いわね、書は私が頂くから。」
私は血を流して倒れている伝令兵の懐から、敵の情報が書かれているその書を抜き取った。
そしてすぐに目を通す。
「・・・・・・・・甘寧将軍!!!中央の拠点は重要拠点じゃない!おとりみたいなもんよ!
殿の陣の傍に敵将が固まって布陣してるみたい、早くしないと・・・・!!」
「んだぁ!?ったく、思いっきり引っかかっちまうとこだったぜ!!
クソ!!野郎ども急ぐぞ!!!!速度上げろや!!!!!」
伝令兵を使って今回の軍師、陸遜様へ急いでこの事を伝えるように言った。
甘寧将軍の部隊は攻撃力だけでなく、移動力も高い。
早い段階でこの密書が手に入ったおかげで、このままいけば阻止できるはず。
その後、陸遜様の策で殿を狙っていた敵将たちを逆に奇襲してやることに成功した。
そして戦が終わって本陣に還る途中、甘寧将軍は嬉しそうに私に向かって言ってくれた。
「へへっ!おめぇにゃ毎回感謝してるぜ!」
甘寧将軍のその笑顔を見れただけで、私は戦に出る意味を見出せる。
この手に握る甘寧将軍から頂いた覇江が私の誇りだった。
「っつぅ・・・傷は浅いけど結構長いな、これ・・・・。」
城に帰ってすぐに、私は戦で受けた傷を手当てしてもらった。
と言っても今言ったとおり、深さは大したことない。
ただ傷の長さが結構あって、左腕の手首から10センチ近く切り傷が伸びてる。
包帯を巻いてもらっているので、少し違和感を感じた。
「おぅ、。傷の手当ては済んだか?」
部屋に戻る廊下の途中、後ろから声をかけられて私は振り向いた。
「あ、甘寧将軍。はい。」
「ったく、戦で傷が出来んのは仕方ねぇが・・・気ぃつけろや。」
「でも将軍、『戦の傷は勲章だ!大切にしやがれ野郎ども!』って・・・以前言ってたと思うんですが・・・?」
私の言葉に甘寧将軍が少しだけ、あ?と言う顔をした。
そしてぼりぼりと頭を掻く。
「ああ、まぁ確かにそう言ったけどよ、オメェは女だろうが。」
「戦場では性別なんて関係ないです。」
「・・・・・・・おぅよ!・・・・って、だぁーーー!!そう言うことじゃねぇんだよ、
俺が言いてぇのは!!!!」
「はい?」
甘寧将軍はそこで一呼吸置くと、何故か凄く照れくさそうな顔をして言った。
「そんな綺麗な腕に傷なんざ似合わねぇってんだよ!」
「!」
驚く私に、将軍は続けてまた言った。
「ま、そーゆうこった。オメェは俺の相棒なんだからな、あんまり心配させんじゃねぇぞ。
んじゃ、俺はこれからまたしち面倒くせぇ軍議だからよ。あばよ!」
「・・・・・・・あ、はい!」
甘寧将軍はそう言って、また元来た方向に走って行った。
私は顔を赤くしながら、ただその背中をジッと見つめていた。
そして、思わず自分の腕に巻かれた包帯に軽く触れる。
『そんな綺麗な腕に傷なんざ似合わねぇってんだよ!』
今聞いたばかりの将軍の言葉。
「クサイ台詞・・・。」
プッと吹き出して、声に出して私は呟いた。
けど、それが嬉しいんだから始末に終えない。
相棒・・・・・・・いい響き・・・だよね?
女として見てくれてないことなんて百も承知。
そりゃ男に『腕が綺麗だ』なんて言ったりはしないだろうけど、
そういう問題じゃなくて。
私は包帯に触れていた手をゆっくり下ろして、腰の刀に移動させた。
そしてまた、誰に聞かせるでもなく呟いてみる。
「どこまでもついて行きますよ、兄貴・・・・・・・・・。」
クスリと笑った自分の顔が、何処か哀しく思えたのは、きっと気のせい。
(遠くなる背中 -続く-)
後書き
申し訳ありませんぴょん太様、散々お待たせした上に前後編。
しかも前編だけ先に更新してしまいました・・・・・・。
急いで後編も書かなければ!!!
久し振りの甘寧短編なので緊張しておりますが、
とにかくここまで読んで下さって有り難うございました。
宜しければ後編もお付き合い下さいませ。
では、失礼致します。
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