潔く部屋を出たまでは良かった。
問題はその後だ。
あたしは凌統の部屋の前でかれこれ5分近く声をかけるのを戸惑っている。
何の為にここまで来たのよ!?
とりあえず普通に声掛けて、その後のことはそれから考えれば・・・・。
でも・・・・・・・・・・・。
さっきからこの堂々巡りの考えを頭に思い浮かべながら、
ずっとこうして突っ立っていた。
「よぉ、。いつまでそうしてる気だ?後10分か?それとも1時間か?」
「!!!」
急に背後から声をかけられ、驚いて振り返るあたし。
その先に居たのは紛れもなく凌統だった。
「で、俺に何か用かい?。」
「・・・じゃなきゃここに居ないわよ。」
あ・・・・、最悪。
どうしてあたしもっとマシな答え方出来ないんだろ・・・。
凌統の前に出るとあたし、ホント可愛くない・・・・。
「確かにそうだ。んじゃ、入れよ。」
言って、凌統が部屋の扉を片手で開ける。
あたしは頷き、凌統の部屋に足を踏み入れた。
「さぁて、用ってのが何だかお聞きしましょうか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
部屋に入った途端に扉を閉めた凌統が言った。
あたしはすぐに答えることが出来ずに黙り込む。
「俺に用がなきゃここには居ないって言ったのはどなただったですかね?」
「・・・言うわよ・・・・っ!」
「どうぞ。」
凌統は言いながら、腕を組んで柱に寄りかかる。
・・・別に・・・告白する訳じゃないんだ・・・!
謝ればいいだけよ・・・!
「さっきは・・・その、・・・・・・急に叩いたりしてゴメンなさい!」
後半部分を早口にまるでまくし立てるみたいに言って、
あたしはどうにか凌統に頭を下げた。
腕を組んだままの凌統が口元を少しだけ皮肉に緩める。
「へぇ、それを言いにわざわざここまで来たって訳だ。」
「・・・・・・・・・・・・叩くつもりなんかなかったのよ、ただ・・・・・・・・。」
「・・・・・・・ただ?」
「あんたの言葉が・・・あんまりにも・・・酷くて・・・。」
あの時は、いつもみたいに冗談で済ませられない程腹が立った。
自分だけが凌統を1人の男として見てるのが悔しかった。
それが自然と行動に現れた結果があれだ。
「酷い、ねぇ・・・。甘寧のヤツもえらく食いついてきやがったし、仲の宜しいことで。」
「・・・興覇は今関係ないでしょ・・・。」
「・・・・へぇ、じゃあ話を戻すが、俺が言った言葉のどれがどの位酷かったんだかお聞かせ願えますかね?」
「それは・・・・・・・・・・・・っ!」
凌統は相変わらず柱に寄りかかったままこっちを見てる。
だけど何だかやけに機嫌が悪いみたいに見えた。
「あたしの事を・・・・どこが女に見える、って・・・充分酷いじゃない・・・・。」
眉間にしわが寄ってきているのが自分でも分かる。
このままだとまた喧嘩になるかもしれない。
・・・あ、もうなってる・・・の、間違いね・・・。
あたしはそんな事を考えながら、凌統の返事を待つ。
凌統は益々皮肉な笑みを浮かべた。
「あんたは俺に女として見て欲しいって、そう言うことかい?。」
「・・・・・・・・・・!!??」
「どうなんですかね?」
ヤな男・・・・・・!!!
皮肉な笑顔が余裕の笑みに見えてくるのは、あたしのコイツへの気持ちのせいだろうか。
思わずヤツを見る目に力がこもる。
「今日はいつもより更に意地が悪いじゃない、凌統。」
「そりゃどーも、だが、あんたはいつもより更に素直じゃないな、。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
お互いそこで黙り込み、沈黙が続く。
「・・・・・興覇のとこに・・・戻る・・・・・・・・・。」
あたしはやっとそう口にし、扉に向かう。
扉の取っ手部分に手をかけ開きかけた、丁度その時、
背後に凌統が立ったのが分かった。
「え・・・!?」
バタン・・・・・・・ッ
ほんの少し開きかけた扉が、乱暴に閉められた。
凌統の手によって。
あたしは驚いて凌統を振り返る。
凌統の顔が、驚くほどすぐ傍にあった。
「なっ!?何・・・!?凌統・・・・!?」
「ったく、甘寧のヤツは字で呼ぶくせに・・・。冗談じゃねぇっつーの・・・。」
「凌・・・・・・・・っ!!!??」
スルリと降りてきた凌統の腕があたしの腰に回されたかと思うと、
気付いたときにはもう唇を塞がれていた。
身体中に一気に流れ込んでくる凌統の熱い吐息に、
一瞬にして息が出来なくなる。
「鈍感過ぎるにも程があるんじゃないか・・・?。」
「・・・・・・・・・・・・凌統・・・・・?」
唇が擦れ合うほど近くで凌統が呟く。
あたしはただ呆然とした様にヤツを見つめた。
あまりにも突然すぎて、何が何だか分からなかったから。
「あんたが甘寧を字で呼ぶ度、俺が苛だってたのも気付いちゃいなかったろ。
しかも今回はご丁寧に『興覇の所に戻る』?・・・冗談じゃない・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・凌統・・・・それって・・・・・・。」
「、俺はずっとあんたの中で特別になりたかった。あの甘寧のヤツを超える位にな。」
凌統の吐息が、言葉を発する度に軽く開いたあたしの唇に何度も吹きかかる。
「・・・・・凌統・・・あたしは・・・・・・・。だって・・・・・・」
何から言っていいのかも分からず、あたしはそのまま言葉を切った。
「あんたの気持ちが知りたい、今回ばっかは素直になってもらうぜ、。」
ズルイ奴・・・・・・・・・。
こんな状況でこんなこと言われたら・・・・あたしはもう言うしかないじゃない・・・・・・。
あまりに至近距離で凌統と向かい合っている中、あたしは俯くことさえ許されない。
黙って頷くという意思表示さえ無理。
つまり、もう言葉にするしか手がないのだ。
「・・・・・・・・好き・・・・・凌統が・・・・自分でも嫌になる位・・・・・・・・。」
聞き取れるのか取れないのか分からない程か細い声で、
あたしは搾り出すように言った。
目の前にある凌統の瞳が、満足そうに細められる。
「やれやれ、まったく、手を焼かされたもんだ。」
凌統は茶化すように言って、再びあたしに深い口付けをした。
「今更興覇を甘寧なんて呼べないわよ、兄貴みたいなもんだし。」
「んなこた分かってるっつーの。」
「だったら今度は何で怒ってるのよ?」
久しぶりに2人だけで過す午後のひとときだった。
にも関らず、やけにふくれっ面な凌統。
文句のひとつも言いたくなる。
「よくもまぁ、そこまで鈍感でいられるもんだな、あんたも。」
「!!ちょっと凌統!!!どういう意味よ!?」
「・・・・・、未だに字で呼ばないってのはどう言う了見だい?
しかも今は俺達だけだ、その辺察して欲しかったんだがな。」
「あ!」
そこでやっとあたしは気付く。
凌統の不機嫌の理由に。
あたしはあれからずっと彼を字で呼べないでいた。
照れくさすぎて。
だけど想ってるだけじゃ伝わらない。
あたしは小さく深呼吸すると、勇気を出して口にする。
「・・・・・・・・公績・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・ったく、いつまで待たせりゃ気が済むんだか・・・。」
口調とは裏腹に、嬉しそうな彼の顔。
あたしの口元が自然と緩む。
「公績、好き・・・・・・・・・・・。」
(こんなに思っているのに-終わり-)
後書き
お題に沿ってるのか沿ってないのかかなり微妙ですみません。
でもこのお題見て出来あがった物です。
最後はクサすぎて何度も考え直しましたが・・・・、
結局思い浮かばずにそのまま・・・。
でわ、こんな作品の最後までお付き合い頂き、誠に有り難うございました!
失礼致します。
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