僅かに開いた窓の隙間から流れ込んできた冷たい風に、は不意に目を覚ます。
寝台からゆっくりと身を起こすと、視線を窓へと移した。
やわらかな雨の音が耳に響く。
外では小雨が降っていることに、その時彼女は初めて気付いた。
ハラリ。
肩にかけていただけの衣服が滑り落ち、肌寒さに彼女は片手でそれを再び羽織りなおす。
は乱れた長い黒髪をかきあげ、隣で横になっている男に視線を向けた。
平生見せる冷徹で鋭い瞳は今は閉じられ、穏やかな寝息が彼女を安心させる。
は唇に微笑を浮かべると、男の頬へと手を伸ばした。
だが不意に、その手首を眠っているはずの男に掴まれる。
「よ、私の寝首でもかくつもりか?」
「・・・子桓様・・・お目覚めだったのですね。」
答えたの手首を掴んだまま、彼は彼女を自分の方へと引き寄せる。
それと同時に羽織りなおした筈の彼女の衣服が、再びハラリとその白い磁器の肌を露にした。
晒され肌に冷たい空気が触れ、が身を震わせる。
「ふっ・・・随分と身体が冷えてきている様だな・・・。
あれ程に快楽に身を攫い、熱を与えてやったと言うのに、まだ足りぬと見える。」
「子桓様・・・!またそのような意地の悪いことを・・・!」
羞恥に頬を朱に染め、彼女は僅か睨み付ける如く曹丕を見つめた。
口角を上げ、笑んだ彼がの細い腰に腕を絡ませる。
彼女は素直にそれに従い、自らも彼の身体へ腕を回した。
「純真な女の振る舞いをしてみせようとも、私の手に堕ちるそなたの身体は淫らなものだな。」
「子・・・ぁっ・・・!」
抗議の視線と共に再度開いたの唇が、彼の名を成す前にその唇で塞がれる。
それと同時に彼の掌がのしなやかな肢体を滑るように撫で下ろした。
「・・・っんぁっ・・・!」
彼の動きに反応する如く、の身体がびくりと脈打つ。
曹丕は唇を離すと青い炎を湛えた瞳を微かに細め、囁くように口を開いた。
「どうした?認めぬと言うならば、抗ってみせよ。それともこのまままた私の手に堕ちるか?」
言いながら、彼はその手で彼女の胸の膨らみを力を込めて揉みしだき始める。
更に舌を彼女の首筋に這わせ、味わう様にゆっくりと移動させた。
「っ・・・酷い方・・・久し振りの逢瀬だと言うのに、
・・・そうやって私をただの猥らな女に変えて・・・・、
・・・・・貴方に堕ちるのを愉しんでいらっしゃるのですね・・・。」
彼女は掠れた声でそう口にし、必死で理性をつなぎ止めようとしていた。
「容易く私から甘い戯言が聞けるとは、そなたも思ってはいまい・・・。
よ、そなたは美しい。何より懸命に抗うその姿・・・熱を帯びるこの瞬間に格別な妖艶さを見せる。
ふっ・・・・先程まで冷えていた筈のそなたの身体が、既に私にその熱を移しているのだからな。」
耳元で囁いた曹丕の湿った吐息がの思考を乱し始める。
彼はそのまま唇を彼女の耳朶へ寄せ、舌を使って丹念に弄んだ。
「っ・・・ぁ・・っ・・・」
それだけの行為にも彼女は敏感に反応し、曹丕の身体に回した腕に力を込めた。
耳にある彼の唇から、クチュ、と言うなんとも言えない淫靡な音が漏れる。
彼が目覚める以前にあったやわらかな雨の空気はいつの間にか一掃され、
室内は艶と湿り気を持ち、それがより一層を狂わせた。
彼女のしなやかな脚を割り、曹丕の長い脚が絡められる。
「っ・・・!」
「よ・・・、今宵はそなたを賞玩するに相応しい・・・。
熱を与え、快楽を誘い、その後その身体が冷えきったその瞬間に・・・再び私の手に堕ちる様、
幾度となく目にする事も易くはなかろう・・・。」
彼の瞳の青い炎が妖しく揺らめき、それと同時に彼の手が再び移動を始めた。
の唇から甘い悲鳴にも似た嬌声が発せられ、室内に響く雨の音と重なり合う。
小雨は今や、本降りと化していた。
(終わり)
後書き
・・・・・・・・・・最後、難産過ぎて尻切れトンボでした。しかもやっぱり曹丕微妙(涙)
ここまで読んで下さった方、誠に有難うございました!失礼致します。
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