殿、俺はもう2週間近く禁欲生活送ってるんですけどね?
正直言ってこのままじゃ身が持たない。」

凌統は彼と同じ寝台で横になっているの腰に腕を絡ませ、
耳元で囁く如くして言った。
彼女は凌統の胸元に寄せていた顔を僅かに上げ、彼に視線を向ける。

「大丈夫よ、公績。今まで乱れきった生活だったんだから、ここで今までの分、
生活の清浄化を図ってるんだと思えば。」

そう言った後、は微かに口元に笑みを浮かべて更に続けた。

「でも、今までの分なら後2、3年は清浄化を計らないと駄目かもね。」
「・・・はいはい、どうせ俺は今まで乱れきった生活送ってましたよ。
けど、と出会ってからはあんた一筋だってのも、分かってるだろ?」
「え?そうだったの?」
「へぇぇ、そう言う事言いますか。
いいぜ、だったらあんた一筋のお陰で溜まっちまってるもの、
今すぐ吐き出してやるっつの。」

言い終えてすぐに、凌統の手が彼女の帯紐へと掛かる。
躊躇い無く解こうと指先を器用に動かす彼に、
は慌てた様子でそれを阻止しようと両手で彼の手を押さえ込む。

「駄目だったら!明日も早くに仕事なんだから!」
「それはそれは、あの猪男の尻拭いにそこまでやるなんてねぇ。
・・・ったく、そこがまた腹立つ原因だね、あの甘寧の奴のせいで俺がこのザマだぜ?」

ぶつくさと文句を口にしながらも、彼は手を止める気配は全く無い。
だが、も抵抗を止めずに居た。

「公績!一緒に寝台に横になれるだけで満足だって、言ってたくせに!」
「ああ、確かに言いましたよ?けどそりゃまだ余裕がある時で、しかも1週間前だろ。
今の俺にはそんな聖人君子なお綺麗な台詞は一言も言えないってね。」

帯紐にあった彼の筋張った手が、滑る様に彼女の肢体を撫で下ろす。
びくり、と、が身を震わせると、凌統はそのしなやかな太腿を割って自らの脚を割り込ませた。

「や・・・、公績・・・こら!」
「俺はよく我慢した方だぜ、。そろそろご褒美を貰わなきゃ割りに合わない。」
「公・・・・せ・・・・・・・・っ・・・・・・・!」

彼女の唇は凌統の字を最後まで形取るより前に、彼の唇によって塞がれた。
互いの唇が重なった刹那に、容赦なく凌統の熱い舌がぬらりとの唇を割りさく。
彼女の口内に侵入した彼の舌は、すぐさま彼女の舌を探り当て、生き物の様な動きで絡みついた。

ビクン。

再度、彼女が身を大きく震わせる。
彼女は無意識に両手で彼の胸元の衣服を掴んでいた。
巧みに動く凌統の舌が、彼女の思考を徐々にかき乱し始める。
だが、それでもは弱々しくも抵抗の姿勢を崩さなかった。
身じろぎと共に彼と僅かに距離を取る。

「だ・・・駄目・・・!これ以上は・・・無理・・・。」
「何が・・・?あんただって本当は我慢出来ないんだろ?・・・。」

凌統は微かに息を弾ませながら、彼女の手が帯紐から逸れた事を確認し、
素早くそれを解いて抜き取った。

「あっ・・・・!」
「直に触れれば分かるもんだぜ。」
「っ・・・公績・・・・・・や・・・っ!」

の衣服が乱されるのとほぼ同時に、するり、と襟元を割って彼の手が滑り込む。
ひやりとした彼の掌の感覚に、彼女がぞくりと鳥肌を立てた。

「・・・ちょ・・・っ・・止め・・・待って・・・っ・・・」
「待ったが利く位ならとっくにそうしてるさ・・・。いや、もう随分待ちましたよ、俺は。」

彼女に湿った吐息を吹きかけながら、凌統は胸の膨らみまで手を移動させる。

「やっぱり直に触れると気持ちいいな、あんたの肌。それに結構鼓動が早いぜ。
口で言うより期待してるんじゃないのかい?」
「ばっ・・馬・・・鹿!・・・駄目・・・駄目なの・・・っ・・・!」

尚も抵抗の姿勢を崩さずに居るに、凌統は僅か苛立った表情を見せた。
そして彼女の肌に触れさせている掌を、膨らみを包み込む様にして揉みしだき始める。

「・・・んっ・・・やっ・・・公績、・・・私・・・明日も・・・「お喋りはそろそろ止めて、集中してくれよ。」

言いざま、彼は再びの唇を塞いだ。
深く、濃く、幾度も角度を変えながら彼女の口内を荒らし、その意識を奪う。
やがて抵抗の無くなったを満足げに見下ろし、彼は自らも衣服を脱ぎ去った。
裸の肌を重ね合わせ、彼の胸板で潰れるの柔らかな胸の膨らみに、
凌統の熱が沸騰する。
ただ貪欲に、彼女と一つになることだけが頭を支配していた。

「公績・・・っ・・・この責任・・・絶対取って貰う・・・わよ・・・!」

潤んだ瞳で彼を睨み付けるに、凌統は形の整った唇のその端を薄く上げる。

「勿論、取りますよ。今夜は寝かせないから、あんたも十分覚悟しておいてくれよな。」

の台詞の本当の意味を理解する事無く、彼は早々にその肢体を貪り始め、
やがて快楽の波へと身を任せた。




朝靄に包まれた早朝。
彼の邸へ馬を駆けさせ乗り込んできた人物が居た。
呉で知略を駆使する若き軍師、陸遜。
端正な面持ちのその軍師は、下働きの者の案内に従い、迷う事無くその一室へ向かった。

「おはようございます、凌統殿。陸遜です。」
「・・・・・・・・・ん・・・?ふ・・・ぁー・・・、・・・陸遜だって?」

扉の外の聞き慣れた声に、今し方眠りについたばかりの凌統が欠伸交じりに答えた。
寝惚けていると言うだけでなく、現在の状況を理解出来ない彼が、
寝台から身を起こして扉へと視線を向ける。

「貴方を迎えに来たんですよ、凌統殿。」
「おいおい、こんな朝っぱらから何の冗談だっての・・・。」
「冗談ではありません。」

抑揚の無い声で扉の向こうの陸遜が一言、凌統に返した。
そして、深い溜息と共に更に続ける。

「そこに殿がいらっしゃいますね?本当なら彼女はもう私の執務室に来ている筈でした。
ですが彼女は時間になっても現れなかった。・・・その時点で大よその事情は見当が付いていましたが、
やはり私の推測は当たってしまいましたか。」
「それでわざわざここまで迎えに来たって?あんたもご苦労だね、陸遜殿。」

半ば呆れた如く返答する凌統に、陸遜は再び口を開いた。

「ええ、ですが、私が迎えに来たのは殿で無く、貴方ですよ、凌統殿。」
「・・・・・・・何だって・・・?」
「甘寧殿つきの女官とは言え、彼女ばかりに負担をかけるのは心苦しいと思っていました。
殿には十分な睡眠が必要でしょう。そして、それを妨げたのは貴方だと言う事は明白です。
・・・・・・凌統殿、私の言わんとする事、お分かりでしょうか?」

呆然と陸遜の話に耳を傾けていた凌統には、何故か扉の外に居る彼の爽やかな笑みが安易に想像できた。
そして不意に、昨夜が口にした言葉が頭の隅を掠める。


―この責任・・・絶対取って貰う・・・わよ・・・!


「・・・そりゃないっての・・・。」

彼女の言っていた台詞の本当の意味をこの時やっと理解した彼は、
情けない声で小さく呟いた。
視線を落せば、未だ彼の隣で静かに寝息をたてている
己のした事を思えば、そして彼女の事を思えば、彼女を揺り起こす事など出来ない。
彼はがっくりと肩を落し、絶望的な溜息を吐いた。
扉の外にいる青年軍師は、恐らくこの上なく爽やかな笑顔で彼に告げることだろう。


『凌統殿、貴方には私の執務室で甘寧殿と共に書簡が片付くまで頑張って頂きます。』


そしてその予想は、すぐに現実となったのだった。


(終わり)



後書き
久し振りの凌統を、珍しく3時間で書き上げました。(酷い時は1日かかっても1本も書けないんですけど。)
4Empireやっていたら無性に凌統と甘寧を書きたくなって、先に思いついたので凌統を。
そして久し振りなのに方向性が全く変ってない上に、陸遜はモドキだし(苦笑)
ではでは、ここまでのお付き合い、誠に有難うございます。


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