ねぇ甘寧、いつまで私を子供扱いするつもりなの?
私もう・・・今年で18になる・・・・・・・・。




18歳オメデト〜♪そろそろ周瑜様みたいな素敵な旦那様見つけちゃわないとね!」

そう言って無邪気な笑顔での腕に自分の腕を巻きつかせて来たのは、
美人姉妹で名高い二喬の片割れ、小喬だった。
の隣を歩いていた凌統が、小喬の言葉に口を開く。

「小喬様、生憎コイツはもう甘寧のヤツがお手つきしてるんですよ。」
「ええ!?そうなの!?ビックリ!知らなかった〜!」

驚いたように声を上げ、を見つめる小喬。
は半ば苦笑するようにして答えた。

「まだ日が浅いですから。」
「いつから!?」
「日が浅いったって、半年近く経つだろ。
ったく、あの単細胞相手によくそこまで続くもんだ。」

凌統が大げさに呆れたような溜息を吐く。
小喬はその事実に更に心底驚いたようだった。

「ウソウソウソ!?半年!?でも全然気付かなかったぁ!」
「でしょうね、俺も3ヶ月前にやっと知った位ですから。秘密主義ってヤツですか。」
「・・・・別に口外する程の事でもないかと思って・・・、秘密主義なんて大げさなもんじゃないわよ。」

半年も付き合いを重ねていても気付かれない関係。
はそれが複雑だった。
周りに知らせたいわけではない。
だが、余りに甘寧の彼女に対する態度は今までの仲間に対するモノと変わらなさ過ぎた。
お互いの気持ちを確かめあって、もう半年にもなる。
にも関らず、その日に抱きしめられたこと以外は口付け所か手を握られたことさえない。


・・・・・子供の戯言だと思ってる・・・?
適当に話を合わせただけなの・・・?


彼女が自分の想いを伝えたあの時、甘寧は笑顔で応えてくれた。
をあの力強い腕に抱きしめ、そして彼もを好いていると言ってくれた。


『俺も情けねぇな、惚れた女に先越されるなんてよ!』


あの時の台詞を彼女は今でもしっかり覚えていた。
だが、結局その日から変わったのは彼女が彼を字で呼ぶようになった事だけ。


「周瑜様〜♪」

並んで歩く3人の前方の廊下を横切ろうとした周瑜を、
小喬はいち早く発見し、すぐさま傍まで走って行く。

「おぉ、小喬か。今から其方へ向かう所だったのだ。
珍しく時間が取れるかもしれない。」

周瑜はそんな無邪気な華を、愛しそうに抱きしめながら言った。
小喬が彼の腕の中で更に笑顔を輝かせる。

「・・・・・・・・おっと、お邪魔みたいだな。俺たちは回り道する方が身の為だ。」
「・・・・・そうね・・・・・・・。」

はすぐに彼らに背中を向けて歩き出す。
今は幸せそうなあの2人を微笑ましく見ている気にはなれなかった。
思わず俯いたまま、やり切れない思いを心の内で呟く。


・・・・・周瑜殿と小喬様だって歳が離れてるわ・・・・。
孫策様と大喬様だって・・・・・・。


「やれやれ、俺はまたお邪魔虫になっちまいますか。
しかも甘寧のヤツ相手に・・・・・・・。」
「え・・・!?」

凌統の台詞には顔を上げた。
確かに、甘寧が前方から此方に向かって歩いて来ている。

「んじゃ、ま、俺はこれで退散するとしますか。」
「え!?凌統!?」

が引き止める間もなく凌統はその場から去って行った。
やがてそのすぐ後に甘寧が彼女に声をかける。

「んだぁ?凌統のヤツ、人の顔見るなり行っちまいやがってよ。」
「え!?ああ・・・用事があったみたいよ?」

彼女はそう言って、凌統が逃げるように走り去った理由を誤魔化した。

「ま、いいけどよ。」

甘寧は特に興味も示さずそう答え、片手にある何かを唐突にに差し出す。

「?何これ?」
「やるよ、今日はオメェが産まれた特別な日だからな。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

思わず黙り込んだだが、それは感動したからという訳では決してなかった。
否、この場合、寧ろ逆だったと言えよう。
『特別な日』とまで口にしておきながら、
何の心の準備も雰囲気もなく、ただ唐突に差し出されただけの『それ』。
中身が問題なのではない、用はその渡し方だ。
昨年、彼女が17歳を迎えたあの日と何ら代わりがないその態度。

「・・・・・・・・・・・興覇・・・・・・・・・・。」
「あ?つーか早く受取れよ。おめぇ。」

「私が欲しいもの・・・・・もっと別にあるんだけど・・・・・・・・・。」
「?んだぁ?急に・・・・・・・?欲しいものって何だよ?」

は真っ直ぐに彼を見つめ、そして彼の問いに答える。

「興覇の恋人の証が欲しい。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

の答えに、甘寧が一瞬言葉を失くす。
は瞳を逸らさぬまま続けた。

「形あるものじゃなくていいの、誰に見せたい訳じゃないし・・・。
ただ・・・、今、私が納得出来る証が欲しいだけ・・・。」

彼女はそこまで言って、甘寧の唇に親指の腹で軽く触れた。
そしてその手を放さず、甘寧を見つめ続ける。


「・・・悪ぃな・・・・・・そりゃまだ出来ねぇ・・・・・・・・・。」

「・・・・っ!!」

甘寧がから目を逸らし、同時に彼女の手を自分の唇から放した。
は一瞬固まった様に呆然とした表情を見せた後、甘寧に背を向ける。

「・・・・・・・分かった・・・・・・・・・・・もういいわ。・・・『それ』もいりません。」

「!?おい、待てよ!」

そのまま走り出そうとするの腕を、甘寧が掴んで引き止める。

「放してよ!どうせ、どうせ興覇は子供の戯言くらいにしか思ってなかったんでしょ!?
いつまでたっても子ども扱いでっ・・・・・・・!私は・・・・・・・・・・・!!」

はそう声を上げながら、甘寧の手から逃れる為に必死に抵抗する。
だが、所詮は男の、しかも彼の力に敵うはずはないのだ。

「だぁー!いい加減にしやがれ!オメェはよ!人の話も少しは聞けってんだ!!」

「あっ・・・!」


両手首を掴まれたは、そのまま壁に背中を押しつけられる形になった。
その拍子に甘寧が手にしていた彼女への贈り物が床に落ちる。
だが、それに気を取られる隙も、今のにはなかった。

「痛い・・・・興覇・・・・・・・っ!」
、俺がオメェに触れない訳を教えてやるぜ!!
その代わり、後悔すんじゃねぇぞ!」


「興・・・・・・・・・・・・・・・っっ」


甘寧の字を呼ぼうとした彼女の唇は、
最後まで音を発することなく彼のその熱い唇に塞がれていた。
まるで噛み付くように何度も唇を重ねる甘寧に、
の身体の力が徐々に抜けていく。
やがて壁に背をつけたままずるずると座り込みそうになる彼女の身体を、
甘寧は許さぬ様に腕を回してきつく抱きしめた。
互いの息が上がり、の身体が熱を増したその頃、やっと甘寧が彼女を腕から解放した。
その途端に、はへなへなと床に座り込んだ。

「・・・・これで分かっただろ?俺が何でオメェに触れなかったのか。
情けねぇ話だが、歯止めが利かねぇんだよ、自分で。」

の片手を握った状態で、彼女を見下ろすようにして甘寧がいった。

「興覇・・・・・・・・。」
「・・・子供扱いしてた訳じゃねぇ、それどころか・・・俺はオメェが欲しくて堪らなかったんだよ。
ただそれじゃ、俺がオメェをムチャクチャにしちまいそうだったからな・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・馬鹿・・・・・・・・・・。」
「ああ!?今何つった!?人が真剣に話してりゃオメェ・・・!」

は怒鳴る甘寧を下から見上げ、クスクスと笑った。
そしてふと、彼女の足元にある包みに目をやる。
先程甘寧が彼女に渡そうとした物だ。
はそれに手を伸ばし、中身を取り出した。

「・・・・これ・・・・・・・・・・・。」
「おぅ!こないだ水軍仲間に頼んどいたんだ。
俺じゃ女の好みはちょいと分からねぇからよ。」

中から出てきたのは、キラキラと輝く翡翠が美しい首飾りだった。
そして彼女は、この首飾りに似た物が何かの書物に描かれていたのを見たことがあった。
そしてその説明文に何と記されていたか、彼女は今でもハッキリと覚えている。

「これって・・・・。」
「あ?」
「ううん、・・・・・・・ね、興覇、着けて。」

は立ち上がり、それを首元に固定すると、甘寧に背を向けて髪を片手で上げた。
甘寧がぎこちない手つきで彼女に首飾りをつけてやる。

「・・・こういう小手先でゴチャゴチャやんのは苦手なんだよな・・・。
・・・おっしゃ、出来たぜ。」
「有り難う・・・・。」
「!」


は振り返るとすぐに甘寧の首に腕を巻きつけた。
そして驚く彼に、自分から唇を重ねる。

「オメェ!だから・・・・!」

言いかけた甘寧を無視して、彼女は嬉しそうに廊下を歩き出す。
そんな彼女の後姿を眺めながら、甘寧は溜息を吐いた。



「ったく、その翡翠の意味なんざ分かってねぇんだろうがよ・・・。」



【生涯の伴侶となり得る者に贈る装飾品】



ある部族が記した書物の一部にそうあったことを、
甘寧は水軍仲間に聞いて知っていたのだった。



(欲しい-終わり-)



後書き
またしてもまたしてもお題に沿っているのか!?
な、内容になってしまってすみません。
何か最初に考えていたのとラストが違う・・・。
しかもまた無駄に長いですね。
でわ、ここまで読んで下さったお客様方、
誠に有り難うございました。失礼致します。


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