最初から叶わぬ想いだと、
そんなことは分かっていた・・・。
それでもただ傍に居られれば、
貴方と共に戦場に立つことさえも私には大きな喜びだった。
だからいつでも優秀な部下であろうと、
貴方に常に誇られる存在であろうと必死だった・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「孫策様!!周瑜様が間もなく到着されるとの伝令が入りました!!」
「おぅ!!そうか、ありがとよ!!」
孫策は兵士にそう礼を述べながらも、
手にしたトンファーで彼に向かって飛んできた弓矢を見事に弾き返した。
その隙に彼の背後に敵の副将が回り込む。
だが、その副将も孫策の傍に居た女武将によって呆気なく斬り捨てられた。
「孫策様、前方の拠点付近に伏兵が潜んでいる様です。先に叩いてしまいましょう。」
「お?、さすがだぜ!うっしゃあ!んじゃ、周瑜の奴には悪ぃが、先に楽しんじまうか!」
笑顔で答えた孫策が、兵たちに指示を出す。
伏兵が動き出すよりも早く孫策の部隊が敵兵に攻撃を仕掛けた。
「ヒュゥッ!こりゃすげぇ数だぜ!楽しみがいがあるってもんだ!
しっかし、、毎度毎度オメェにゃ驚かされるなぁ!!」
「有り難うございます!」
どのようにしてここまでの数の兵を此方に気付かれずに潜ませていたのか、
もしもこのまま伏兵の存在に気付かずに足元をすくわれていたとしたら、
間違いなく呉軍はこの戦いに敗れていただろう。
だが、それもの活躍によって阻止され、戦は呉軍の勝利となった。
「驚いたな、孫策。まさか私が来る前に片付いてしまっているとは。」
「ハハハ!!悪かったな、周瑜!オメェに楽しみ分けてやれなかったぜ。」
自分が戦地に到着するよりも早く戦の勝敗が既に着いていたことに驚きを隠せない様子の周瑜に、
孫策は満足げに笑って答えた。
そして彼はすぐ傍で韓当と何事か話をしているに大声で言った。
「おい、!今日の宴もオメェが主役だぜ!!
何たってオメェのお陰でこっちはほとんど仲間を失わずにすんだんだからな!!」
「ほぅ・・・、今回もまた彼女に助けられたか。君もいい部下を持ったな、孫策。」
「へへっ!まぁな!」
「孫策様、周瑜様、お褒めに預かり光栄です。有り難うございます。」
は微笑みながら彼らに礼を述べた。
孫策がの肩に手を置き、2,3度軽く叩く。
「これからも宜しく頼むぜ、!オメェにゃ親父や権も一目置いてる。」
「はい、孫策様。」
「ま、親父や権には悪ぃが、オメェを渡すつもりはねぇけどな!」
「・・・・・・・・え?」
孫策の一言に、が思わず驚いたような表情を見せる。
それに気付いた周瑜が、孫策に言った。
「孫策、君の言い方は誤解を招くぞ。彼女が戸惑っている。」
「あ?ああ、悪ぃ悪ぃ!
実は親父や権もオメェを自分の下に置きたがってたんだけどよ、
オメェは俺にとっても得難い仲間だからな、断わったって訳だ。」
「孫策様・・・・。」
「ま、そーゆうこった!そろそろ戻ろうぜ!今日はぱーっと宴だぜぇ!!」
肩に置かれたままの孫策の手が、再びぽんっと彼女の肩を叩く。
「はい、孫策様。」
は頷き、孫策に笑顔を向ける。
孫策と周瑜は先に立って並んで歩き始めた。
は暫くの間孫策の後姿を見つめ続け、
やがて先程彼が触れた肩にそっと手を置く。
にとっては、彼との会話はどんな褒美よりも価値のあるものだった。
正直宴は気が重いけど・・・出ない訳にもいかないしね・・・。
ふっと哀しげに口元を歪め、心の内で呟く。
そして彼女は顔を上げると孫策達より少し遅れて帰還したのだった。
「我ら孫呉の天下に前進を果たしたこの戦の勝利に!!」
孫堅は心から満足そうな笑みを浮かべて杯を高々と上げた。
皆がそれにならい一斉に自らの杯を掲げる。
「乾杯!!!!」
こうして勝利を祝う宴が始まった。
会場の中央では城外から招かれた楽師が琵琶で美しい演奏を響かせている。
はその音色に聞き惚れながら、手元の酒をゆっくり飲み干した。
「、今回もお前の目覚ましい働きについては策から聞いているぞ!よくやってくれた!」
「孫堅様!!」
突然声を掛けてきた孫堅を前には慌てて立ち上がろうとしたが、
彼はそれを片手で制した。
「気にするな!今日はお前も主役の1人だ、飲め、!」
「はい、有り難うございます!孫堅様。」
孫堅はの杯を酒で満たした。
がその酒をぐいと一気に飲み干す。
「ははは、いい飲みっぷりだな!」
「親父ぃ!そいつにあんまり飲まさないでくれよ!
飲みすぎるとどこででも寝ちまうからな、は。」
孫堅の背後から現れた孫策が笑いながら声を掛けてきた。
は驚いて声を上げる。
「!?孫策様!!私はどこででも寝たりなんてしていません!」
「そうかぁ?俺は過去2回くれぇオメェを部屋まで運んだ覚えがあるんだけどな!」
「ええ!?」
「ははは!話が弾んでいるようだな、策、。
では俺は程普たちの元へでも行くとしよう。」
孫堅はそう言って2人の傍を離れた。
が不満げに孫策に視線を向ける。
「失礼ですが孫策様、何も孫堅様の前でおっしゃらなくても。」
「ハハ!悪ぃ!」
悪びれた様子もなく孫策が答えた。
はそんな彼に思わず苦笑する。
「もういいです、確かに孫策様には何度かご迷惑おかけした事もありますし。」
「ん?まぁオメェを部屋に運ぶ位どうってことねぇぜ。俺の前でなら眠っても運んでやるよ。」
孫策は彼女の肩を軽く叩いて言った。
は思わず顔を赤らめたが、孫策は全くそれに気付いていない。
「孫策様、此方にいらっしゃったんですね。わたし、捜しました。」
「・・・・・!」
「おぅ!大喬!」
孫策の妻、大喬が現れた途端にが一瞬身を強張らせる。
目の前に2人が揃うと嫌でも彼らの仲睦まじい姿を目にしなければならなくなるからだ。
彼女にとって宴が苦痛となるのはこの為だった。
そんなの胸中を知る由もない大喬が、笑顔で彼女に声を掛ける。
「さん、孫策様から伺いました!素晴らしい働きだったと。」
「そんな、私は呉の将として当たり前の事をしまたでです、ですが有り難うございます。」
「コイツはすぐ謙遜すっからなぁ!ま、そこがオメェのいいとこでもあるんだがよ。」
孫策がそう言うと、大喬が笑顔のまま頷く。
「んじゃ、大喬、そろそろ部屋に戻るか!俺はまだしなきゃなんねぇ事が残ってるんだが、
その前にオメェを部屋まで送ってやるぜ。」
「はい、孫策様!」
孫策は極自然に大喬の肩を抱いた。
そして大喬もまた、極自然に彼に寄りそう。
の胸がぎりりと小さく軋んだ。
それでも彼女は2人にそれを悟られぬよう彼らに笑顔を向ける。
「じゃーな、!」
「さん、また明日!」
「はい、孫策様、大喬様。」
2人が彼女に背を向け遠ざかって行く。
は孫策の大喬の肩を抱いている手に目を向け、
そしてすぐに逸らした。
孫策のその手は、戦後、そしてつい先程自分の肩を優しく叩いてくれたもの。
そして今は大喬の肩を抱いている。
それは同じ彼の手には違いないはずだが、
には全く違うもののように見えた。
そしてそれはには絶対に与えられないものだと彼女は知っていた。
だから宴は嫌いなのよ・・・・・・・・・・・・・・・。
は手元の酒を手酌で注ぎ、ぐいとそれを飲み干した。
先程までは喉ごしのいいスッキリとした後味だったはずの酒が、
今はやけに熱く苦々しいものに思える。
今更・・・夫婦であるお二人を羨んでも仕方がないわ・・・・・・・・・・。
自分に言い聞かせ、再び杯を満たす。
そして手にした杯の酒に映る自分の余りに沈んだ表情に、は哀しく口元を歪めた。
「何て顔してんのよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
声に出して呟き、杯の酒を喉に流し込む。
周りで騒ぐ兵士達の声も、今の彼女には届いていない。
ただ、楽師が奏でる琵琶の音だけがやけに美しく彼女の胸に響いていた。
(こっちを見て、見て欲しい -続く-)
後書き
続くのか・・・と自分でツッコミ入れました。
すみません、初の策夢でしかも思いっきり悲恋!
悲恋の上に続き物、どうなの私・・・。
何か策なのかも怪しいし、性格が甘寧めいてる感じがします・・・。
書き分けられてない・・・難しいですね、やっぱり。
しかも『策にシリアスって似合わない』と妹に言われたような気がします。
こんな作品ですが、続きも読んで下さると嬉しいです。
でわ、今回はこれにて失礼します。
ここまで読んで下さったお客様、有り難うございます。
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