ザシュゥゥ・・・ッ・・・
ザンッ
「「「「「「「「ワァァァーーー!!!」」」」」」」」
あり得ない程呆気なく、私の前に群がっていた一般兵たちはそう叫び声を上げて倒れた。
血は一滴も流さず、ただ動かなくなった人形の様に地面に張り付いている。
あたしの通った後は、ほとんどそんな一般兵達のこの世界で言う『死体』が大量に転がっていた。
手に残る何とも言えない感触。
本当の人間を斬った時のものとは絶対に違うのは分かってる。
でもだからってそんなに簡単に慣れるものじゃなかった。
本当に嫌な感じだ。
「やっぱ、コントローラー・・・握ってた方が楽だわ・・・。」
あたしは溜息混じりにそう言ってとりあえず次の拠点を目指す。
後ろから着いてきていた味方の将が、あたしを見て誇らしげな瞳を向けて言った。
「お見事!さすがですな!」
その台詞を聞いて、あたしは今斬った敵兵達で100人斬りを達成したことを知る。
あたしはその将に向かって片手を軽く挙げてそれに応えた。
名前は知ってるけど、顔は知らない中国史上の人物。
テレビ画面の前に居た状態で私が彼に褒められてたんだとしたら、
あたしは間違いなく不満を口にしてた。
『ちょっと!ここは孫家のキャラが褒めてよ!』
と言う感じに。
だけど今、この戦場では、名前だけしか知らない彼らもとても個性的に見えるし、すごく頼もしく思える。
ホントまったく勝手な話だけど。
「その首貰ったぁ!!!」
前方の拠点近くであたしを待ち伏せしていたらしい敵将が大声で叫び、
馬上からブンブン手にした武器を振り回してあたしに向かって突進して来ている。
えらくガタイのいい大男だ。
「女相手に馬の上からって大した度胸をお持ちですこと!」
あたしは思い切り皮肉っぽく言って、目の前の大男に何の迷いもなく突っ込んでいく。
相手の振り回す大剣をかわし、そのままその将の頭上高くまで飛び上がった。
そして背後からの蹴りでそいつを馬から地面に思い切りよく叩き落す。
ズ・・ドーンッ・・・!
やけに大げさな重低音が響き、その衝撃で敵将がダメージを受けたのが分かる。
そして相手が体勢を立て直す前にあたしはすぐさま攻めに回った。
他の兵とは違い、あたしの攻撃をムカつく位上手く受け止めてかわす。
だけどあたしも負けてはいない、敵の隙を突き、鋭い攻めで周りの兵たちごと大男をぶっ飛ばした。
それが決め手の一撃だった。
「こんなとこじゃ、死ねねぇんだよ!!!!!!」
捨て台詞のようにそう言い吐いた敵将が、
再び馬にまたがり凄い勢いであたしの前から逃げて行く。
さすがに肉まんになったりはしない。
と言うか、もし肉まんなんかになられても、食べる気なんか起きないけど。
その後も順調に拠点を潰し、私たちの軍は見事勝利した。
あたしがこの世界に来て3度目の勝利だ。
ここは少しの常識と、たくさんの非常識で出来たバーチャル世界。
もっと分かり易く言うと、ゲームの中の世界だ。
あたしがどうしてここに居るのか、それは未だにあたし自身もあまりよく分かってない。
あれはほんの一週間ほど前の出来事だった。
あたしはごく普通の短大生で、ごく普通に学生生活を送っていた。
本当に普通過ぎる位普通で、だからって特に不満があった訳でもなくて。
それどころかそんなきままな生活をそれなりに楽しんでいたと思う。
で、あの日、あたしは特に用事もなかったから最近ハマリまくってるゲームをやろうとしてたとこだった。
『一騎当千、爽快アクション』が自慢の三國無双。
言わずと知れた三国志の人物が登場するアクションゲーム。
だけどどんなに捜してもいつもあるはずの場所にそれがなくて、もうほとんど諦めた時だった。
『あった!!!
・・・・・・・?あたしこんなとこに直したかぁ?』
他のゲームの山に埋もれて、やけに見えにくいところからそれが出てきた。
だいたい毎日やってるんだからそんな所にあること自体おかしいって言うのに。
けどその時は気にもせずに、あたしはとりあえずゲームを始めることにした。
異変が起きたのは、ディスクを電源の入ったプレステ2本体に入れた数秒後の事だ。
ギュルギュルギュル・・・・・
いやに本体の中のディスクが大きな音をたてだして、
驚いたあたしが中身を確認しようとしたその時・・・・・。
カッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!
『!!!!!!!!』
目を刺す様な真っ白な光がテレビの画面から飛び出し、
あたしは咄嗟に目を瞑った。
そして、次に恐る恐る目を開けた時にはあたしはもうこの世界に居た。
見慣れない豪華な中華風ベッド。
ぐるりと見渡す部屋の中は、見事なまでの装飾品やツボなどが並んでいる。
テレビや映画で見たことがあるようなそんな風景。
あたしは一気にパニック状態に陥った。
ベッドのすぐ横にある窓から見える風景も明らかにあたしの家のものとは違うし、
それよりも絶対に日本じゃない。
・・・・・・・何!?何!?何!?ホントに何!!??
何が起きたのか全く分からなくて、あたしはベッドから飛び降りる。
ふらふらとした足取りで歩き出しながらも、どうしていいのか全然分からなかった。
『何な・・・・・・・!・・・・!!??』
思わず出した自分の声にさえあたしはもう驚くしかなかった。
だって、それはまったく別人の声だったんだから。
『嘘・・・え!?』
確認するように出す声も、やっぱりあたしの声じゃない。
でも何処かで聞いたことのあるようなそんな声。
落ち着け、落ち着け!!これは夢だ!じゃなきゃ・・・・
『!!!???』
次から次へと起こるのはあり得ない出来事ばかり。
視界の隅に入った大きな全身鏡、そこに映る一人の女性。
当たり前だけど、この部屋にはあたししか居ない。
驚いた様な表情で眼を見開いている彼女の姿は、今、あたしがしている動きとまったく変わらなかった。
あたしが1歩鏡に向かって進むと、鏡の中の彼女もピッタリ同時に前へ進む。
震える手で口を押さえるあたし、そして彼女。
『夢だ・・・・・・・絶対夢・・・・・・・・・・・。』
あたしの声とは似ても似つかない声があたしが出したはずの言葉で言った。
・・・・・・・・あれ・・・・待てよ・・・、この顔どっかで・・・・・・・・。
『ああ!!』
あたしは鏡の中の彼女を指差して大声を上げる。
どこかで聞いたことがありそうなこの声、
そしてどこかで見たことがありそうなこの顔。
『あたしのエディット武将!!!!』
そっか!!それで見たことあったりしたんだわ!
それに声だって聞きなれてるはずだし・・・・・・!
口に出してすぐにあたしは納得する。
そう、目の前にあるこの顔は、
紛れもなくあたしが作成した『真、三國無双』のエディット武将『』だった。
やっぱ夢だこれ、何だ、ビックリして損した・・・!
変な感じだけど、現実にこんなことはあり得ない、つまりこれは100%夢だってことのはずだ。
だいたい夢の中でだって、『夢だ』って実感することも珍しくはないし。
『あたしもハマリ過ぎよね、まさかこんなリアルに夢に見るなんて・・・!』
思わず独り言を呟いて、笑ってしまう。
いつからどこから夢なのかなんかこの際どうだっていい。
夢と分かった以上、あたしはこの状況を楽しむべきだから。
ちょっと待て!これが無双夢なら・・・・・・・・・・・・。
どの国!?どこに所属してる設定!?
『!!』
てかあたしの服の色、赤だ!!
ってことは・・・・!!!
『呉!?ホントに!!??』
やけに色気のある衣裳に仕立て上げていたあたしのエディット武将。
その色は深い紅の色が大部分を占めていた。
夢ってことはすぐ醒める可能性大!
早く殿や皆の顔見に行かなきゃ!!!!!!!
あたしは急いで部屋の大きな扉に手を掛けようとした、その時だった。
『はいはい、嬢ちゃん、待ちなされ。』
『!!!!!!!!!!!』
どこからともなくお爺さんなしわがれ声があたしの上にふってきた。
驚いて扉から手を放す。
『誰よ!!??』
『もう時間がないからさっさと話しを済ませるぞ、よぉく聞きなさい。』
『だから誰?あたし今忙しいの。あたしの夢なんだから邪魔しないで!』
『何か勘違いしてるようじゃがな、嬢ちゃん。これは夢じゃないぞ?
立派な現実じゃ。まぁ、『立派』かどうかは怪しいが現実じゃな。』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』
たまに居るわよね、こういう夢の中の登場人物。
夢の中だからってあたしの思いのままって訳じゃないんだな、きっと。
あたしが黙り込んだことで、そのお爺さんは何かを読取ったらしく先を続けた。
ホントに変な夢だ。
『嬢ちゃんが何を思ってるかはだいたい想像はつくがの、
さっきも言った様に時間がない。詳しいことはまた後で折を見て話そう。
説明は紙に書いてやっとるからきちんと目を通すんじゃぞ!?ええな!?』
そこで急にプツっとお爺さんの声は聞こえなくなった。
きょとんとしてその場に突っ立ったまんまで居たら、
いきなり天井からひらひら何かが落ちてきた。
あたしはそれが床に落ちる前にそれを掴み取る。
『無双本格体験バーチャルトリップ、試作品・・・????』
手の中にある紙の1番上にはデカデカとした文字でそう書いてあった。
【真、三國無双の世界を本格的に体験できるバーチャルシュミレーション。
プレイヤーは自らが作成したエディット武将となって無双世界へトリップし、天下統一を目指す。
尚、エディット武将のレベルなどはプレイヤーが育成したものに反映している。
リアルさを極限まで求めつつ、極力流血シーンを避けるなどの配慮も有り。】
『って・・・これ・・・え???』
驚きながらもあたしは更にその下に続く文章に目を通した。
『!!??』
・・・・・・・・・・・嘘!!絶対嘘!!これ夢よね!?夢だよね!?
動揺しまくりなあたしの目にしたその文章、それはこう続いていた。
【警告!!!!!!これはあくまでも試作品です。
まだ人体における影響なども未知数の為、実際に使用することは避けて下さい。】
(開かれた扉〜無双世界への道 -終-)
後書き
異世界トリップを書いてみたくて始めましたが、
結局『呉』です(笑)
でもこの回は呉キャラまったく登場せず、すみません。
最初に始めた甘寧の仲間賊軍ヒロインの方もあるので、
更新の速さは何とも微妙なとこですが。
でわ、ここまで読んで下さったお客様、誠に有り難うございました。
失礼致します。
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