「策の旦那も周・・・瑜・・・・・・・・・・あ?ああ!?んだぁ!?!?何でおめぇがここに!?っっだっ!!!」
それが、あたしが扉を開けて中に入った時の甘寧の第一声だった。
甘寧はかなりビビッたらしく、動いた拍子に足元にあった椅子を蹴飛ばして、すねを打った。
それが結構な痛さなのは見てても良く分かる。
本当に、分かり易い反応で面白い。
と言うほど、あたしも余裕がある訳じゃないんだけど。
「甘寧・・・。」
「・・・・・・・・・・・何だよ?」
「いつも通り・・・じゃ、なかった訳?」
「・・・・・・・・んだよ、急に・・・・。」
あたしは室内に入って扉を完全に閉めてから、彼の傍まで近づいた。
どこかふてくされたような表情で、甘寧があたしを見ている。
「あたしが他の人に頼らなきゃまともに2人になろうともしないなんてさ、いつもと・・・前と全然違うわよ。」
「・・・・・・・・・・ああ、チッ・・・やっぱそう見えちまったか・・・・・・・・・。」
あたしの言葉に答えると言うより、独り言みたいに彼が言った。
それから眉間にしわを寄せて、またあたしの顔に視線を向けた。
「ま、今更隠しても仕方がねぇとは思うけどよ・・・、
それでも、おめぇと2人っきりになると1人で突っ走っちまいそうだったからな・・・。
極力周りに他の奴らがいねえ状況にはならねぇようにしてたってのは確かだ。」
「・・・・・・・それって・・・今まで通りは無理だって事?」
それを言うのに、あたしの声が少しだけ上擦った。
甘寧はじっとあたしの顔を見つめている。
いつもより少しだけ、その瞳に熱があるように見えた。
不意に書物庫でキスされた時の事を思い出して、あたしの唇にリアルにあの時の感触が蘇る。
あたしはほんの少し、甘寧から目を逸らした。
「・・・。」
「・・・・・・・・・・何?」
あたしの質問には答えずに、甘寧があたしを呼んだ。
あたしは視線を固定したまま返事をする。
「我慢すんのは元々性に合っちゃいねぇ・・・けど、滾るまんま突っ走って、
おめぇを傷つける真似だけはしたかねぇ・・・。」
「・・・・・・え?」
「だがよ、2人っきりになった以上、これだけは口に出さねぇと俺の気が済まねぇんだ。」
「甘寧・・・・?」
あんまり真剣な口調で言うもんだから、あたしはまた彼にしっかり視線を合わせてしまった。
鋭い、黄色がかった薄茶色の瞳。
ドク、と、心臓が跳ねる。
心が揺り動かされる。
キャラじゃない『男の人』の甘寧が、そこに、あたしのすぐ目の前に居る。
今でも生々しく刻まれてしまった甘寧の熱い唇の感触、バーチャルだと、押さえつけないといけないのに。
「、俺はおめぇに惚れてるぜ。」
静かな室内に、その甘寧の告白が、あたしの鼓膜を大きく振るわせるほど響いた。
目を見開いて、何も口に出来ずに彼を見つめ返す。
急に酸素が薄くなってしまったかと思うくらい、息が苦しくなった。
咄嗟に何も思い浮ばなくて、頭は真っ白。
あたしの大好きな鈴の甘寧があたしを好きだと言ってくれた。
無双ゲームのキャラとして見ていたのなら、ここで単純に喜べるはずなのに、
あたしの思考回路は今、完全に停止してる。
そう、さっきも言った通り、あたしの目の前に居る彼は『キャラ』じゃない、『男の人』だ。
だけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「あたし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ・っ・・・・。」
やっと口を開いたその時、甘寧の片手が上がって、その浅黒い大きな手があたしの唇にスッと伸びてきた。
ほんの一瞬、あたしの呼吸が止まる。
骨と筋のごつごつとした彼の掌があたしの唇を軽く塞いだ。
あたしは視線だけを甘寧に向けたまま、棒立ちになる。
「・・・・・・いい、今はその先は聞きたくねぇ・・・・・・・・・・。答えは・・・・・今は要らねぇ・・・・・・・。」
気のせいか、彼の手が小刻みに震えてるように思えた。
そのままの体勢で、甘寧が続ける。
「白黒ハッキリつけて、ズバッとけりつけちまえるんならいいんだけどよ、今回ばっかはそうもいかねぇ・・・。
今おめぇの答えを聞いちまえば・・・情けねぇと思うだろうが、次の喧嘩に支障が出ちまいそうなんだ。
ヘッ・・・ザマねぇ話だけどな・・・・・・・・・・?」
言った甘寧が、珍しく苦笑した。
そして、手をあたしの唇からゆっくり離す。
掌であたしの唇を確かめるみたいになぞるように触れながら。
「甘寧・・・・・・・・。」
「・・・・・・・っ・・・・・・・・。」
唐突に彼があたしを呼んで、唇から離したその手で今度はあたしの腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。
あんまり突然だったから、あたしは驚く間もなく甘寧の厚い胸板に顔を押し付けられることになった。
目の前には褐色の肌に泳ぐ双頭の龍。
少し汗ばんだ甘寧の肌の熱が、あたしに直に伝わってくる。
「・・・っ・・甘・・・!?」
「悪い、・・・・・・・。今だけ・・・・・おめぇの身体、俺に貸してくれ・・・・・・。」
ぎゅ、と、身体に回された彼の腕に力がこもる。
それと同時に、あたしの心も揺らいだ気がした。
あたしは返事を口にする代わりに、ただ小さく頷いた。
「・・・・・・・・・・ありがとよ・・・・・・・・・・。」
どこかホッとしたみたいな甘寧の声。
あたしに拒まれた時の事を考えてたのかもしれない。
戦場で見る甘寧とは、何だかとても別人のように思えて、
ちょっとだけ彼を可愛く思えている自分にあたしは驚いた。
それから暫くの間、会話もせずにあたしは甘寧の腕の中に居た。
不意にフッと身体に回されていた腕の力が抜けて、彼があたしから離れた。
「、おめぇ、もちっと防衛本能ってやつを働かせた方がいいんじゃねぇか?」
「・・・・・・・・・・・・え?」
「んな格好で長時間男の腕の中に居て、何の危険も感じねぇのかよ。襲われても文句言えねぇぜ。」
「・・・って!甘寧、あんたねー!」
さっきまでのシリアスムードはあっという間に流されて、甘寧がガハハと大声で笑った。
あたしの乙女的ときめきと戸惑いを返して欲しい。
その上、甘寧の奴はこともあろうに扉の方に出て行く寸前、軽くぽんっとあたしの胸をはたいて一言。
「おめぇのそこ、中々気持ちよかったぜ!あばよ!」
「・・・・・・・〜っっ!!甘寧!!!!」
へへッと笑って廊下を歩く甘寧の腰の鈴が、
コロンコロンと主人と同じように笑っているように鳴り響いた。
あたしはその背中を睨みつけてから、すぐに思わず軽く口元をほころばせる。
だって分かってたから、甘寧、あんたが照れ隠しでそう言う事を言ったのが。
今、答えをくれなくていいと甘寧は言った。
でももしも、あの時答えを迫られていたら、あたしは何て答えただろう。
それはまだあたし自身にも分からなかった。
だけど、甘寧は確実にあたしの中で『大好きなゲームキャラ』から『男の人』に変化していた。
(甘寧編 延長戦 -終わり-)
後書き
やっぱ後半短いですね・・・・・・。しかもこれ、何か甘→主と言うか、両想いっぽいし?
とりあえずはヒロインは自分の気持ちを量りかねていると言う方向でお願いします(苦笑)
しかし約2週間ぶりの無双ドリだわ。スランプの事もあり、更新遅くなって申し訳ございません。
ですがここまでお付き合い下さった方々には、誠に感謝しております!いつも有り難うございます。
では、これにて失礼させて頂きます。
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