「ええ!?今日も駄目な訳!?こないだもそうだって・・・。」
「おぅ、悪ぃな。これでも俺は忙しいんだよ。」
「・・・・・・・・・・・そう、分かった・・・・・・・・。」
思わずムスッと顔にそれが出てしまう。ここ最近、甘寧とは毎回こんな感じだ。
顔を合わせればいつも通り話はするし変わったとこは何もないように見える。
だけど、あたしが鍛錬に誘ったり食事に誘ったりした途端、こうやって理由をつけては離れてく。
それが1回や2回じゃ収まりきれない、偶然とは到底思えない。
いい加減、そろそろムカついてきた。
大体こんなの甘寧らしくない。
どう考えてもおかしい、その理由も分かってるんだけど。
やっぱり今まで通り、なんて無理なんじゃない・・・!
自分からそう言っといて・・・。
そりゃ・・・あたしだって気にしてないって言えば嘘になるけど・・・さ・・・・・・・・・。
『、昨日は悪かったな。・・・俺もどうかしてたぜ。』
『え・・・あ、・・・う・・ん・・・。』
『あんな事しといてこんな台詞言えた立場じゃねぇが・・・・・、
近くデケェ喧嘩がある、それが終わるまで、今まで通りでいちゃくれねぇか?
それが終わったらちゃんと話てぇ事があるからよ。』
『・・・・・・・・うん、分かった・・・。』
それが5日前、書物庫で甘寧にキスをされた翌日の会話。
だけど全然今まで通りじゃない。
極力2人になるのを避けているとしか思えないし、あんまり私の方を見ようともしないし。
確かに、大きな戦があると言う事で色々とやる事があるのは分かる。
あれでも甘寧は水軍の頭、軍議を抜け出してる事もしょっちゅうだけど、ちゃんとやるとこはやってる。
だけどそう言う事じゃなくて、あたしにはどうしても甘寧の行動が納得いかなかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・ムカつく・・・・・・・・・・・・。」
甘寧が行ってしまった反対方向に歩きながら、あたしは小さく呟いた。
「♪何がムカつくのー?」
「っ!!わ!小喬!?」
突然下から見上げるようににゅっと小喬が顔を出し、あたしに声を掛けてきた。
あたしは驚いてよろめくみたいに2,3歩後退りした。
「もう、小喬ったら!さんが驚いているでしょう。ごめんなさい、さん。」
小喬のすぐ後ろに立っていた大喬がそう言ってすまなさそうに困った笑顔を向けてくる。
あたしは軽く首を左右に振った。
「ううん、大丈夫。」
「ねぇねぇ、それでぇー何にムカついてたの?」
あたしの右腕に自分の腕を絡ませて、小喬は無邪気に笑いながら言った。
あたしは思わず苦笑する。
「ま、特に大した事じゃないから。」
答えたあたしの顔を、小喬は下からじっと見つめてニヤっと笑った。
「甘寧のこと・・・考えてたでしょー?」
「えっ!?」
「しょっ・・・小喬!?」
またしても驚くあたしに、大喬も同じように声を上げて彼女に目を向ける。
小喬はあたしの表情を確認すると、片手をあたしの腕に絡ませたまま、
空いた片手であたしを指差して言った。
「あははっ!せーかい!?」
「・・・・・・・うっ・・・・。」
「もう!小喬ったら!」
大喬がまた声を上げて小喬の服の端を引っ張る。
「・・・いいよ、大喬。顔に出したあたしもあたしだし・・・・・・。でも何でそんなすぐに甘寧だって分かったの?」
「だって〜、2人ともスゴク仲いいだもん。悩むならやっぱそれでしょ!」
「・・・クス・・・確かに、お2人は戦場でもとても息が合っていますよね。」
納得したように大喬が小さく笑う。
「それで、どしたの?甘寧に何かされちゃったの?浮気!?」
「・・・・・・・・いや、あたし達、付き合ってる訳じゃないから。」
「あの・・・わたし達で良ければお話、覗いますけど・・・。」
遠慮がちに大喬が言った。
あたしの腕に自分の腕を巻きつけている小喬も、首をこくこくと縦に振っている。
気のせいか目が輝いて見えるんだけど。
あたしは少しだけ視線を上げて考えた。
キスされた部分はどうにか誤魔化すとして、誰かに相談するのもいいかもしれない。
この世界に来てから尚香は勿論、この二喬も色々と力になってくれた。
この先、甘寧の言う『大きな戦』が終わるまで、彼とこのままギクシャクするのは絶対嫌だし、
ここは有り難く2人のお言葉に甘えさせてもらおう。
・・・大喬は多分つっこんで話を聞いてはこないかもしれないけど・・・、
小喬は・・・でもさすがにキスされたってのはバレないようにしとかないとね・・・・・・・。
そして結局あたしは2人に甘寧のことについて相談してみることにした。(例の部分は適当に誤魔化して)
大喬は可愛らしい眉間に軽くしわを寄せて、少し考えているような素振りを見せた。
小喬はと言うと・・・・・・・・・・案の定、ぼかしたはずのその部分をつっこんできた。
「ねぇねぇ、そのきっかけって何なの?
あーんなにズバズバ物言っちゃう甘寧がそんなになっちゃうってことは、結構、スゴイ事??」
「・・・小喬ったら、それは聞かないの!人にはそれぞれ言いたくない事もあるものでしょう。」
さすが大喬、よく分かっていらっしゃる・・・・。
「だってー気になるんだもん。・・・・・・・・・・・・・あーーっ!!!!分かった!!
チューされちゃったんだ!?そうでしょ!?」
「っ!!!???」「なっ!?小喬!?あなた何を!」
この時ばかりは心底小喬の勘の鋭さに驚いた。
どこをどう考えてそういう風に辿りついたか聞きたいくらい、ピタリと言い当てられたから。
あたしは驚いて思わず目を見開いて彼女を凝視してしまった。
「あ、またせいかーい!だったんだぁ!そっかー。ん?でも2人、付き合ってないんだよね?
ねぇ、ねぇ、それって??」
と、先へ先へと質問を続ける小喬、あたしはビビって固まったまま。
大喬も小喬が言ったことが図星だったんだと分かって、少し慌てた表情を見せていた。
「小喬!」
「・・・・・・・うん、小喬ってば冴えてる、本当に。」
「やーっぱりねー!」
まさか16の彼女にこんな事言い当てられてうろたえるなんて、あたしもまだまだ純粋だ。
あたしは今度こそ本当の意味で詳しく甘寧の事を話す事にした。
変に隠しても意味ないことが分かったから。
と言うか、逆にドツボにハマッてる気がしたから。
「甘寧ってばやーるぅ♪・・・・・あ、でもそれで避けられちゃってるんだったら意味ないかー。」
「いつも通り出来ないのはあたしも同じだけど、・・・それでムカついてたって訳。」
言って、あたしは2人に苦笑した。
大喬が小さく、そうだったんですか、と、呟く。
「ああ!じゃあさ、アタシとお姉ちゃんで協力したげるよ!ね?お姉ちゃん!
ダイジョーブ!上手くやっちゃうよぉ!」
突然、何かを思いついたように元気よく小喬が言って、あたしから離れると大喬の手を取った。
そしてあたしの返事を聞くよりも早く、彼女は大喬の腕を引っ張ってそのまま2人で居なくなった。
あたしは少しの間呆然と2人の背中を見つめて、ぽりぽりと頬を人差し指で掻いた。
さすが小喬・・・パワフルー・・・・。って、結局どういう意味だったんだろ?協力・・・????
「考えても仕方がない・・・か、とりあえず今日のメニューでもこなそう・・・。」
それからあたしは1人で鍛錬所で『』のスキルアップのをすることにした。
本当なら、甘寧も一緒に向かうはずだったんだけど。
「、邪魔をして悪いが、いいか?」
「あ、周瑜。?珍しいね、何か用?」
鍛錬所で一通りの事を済ませて少し休憩を取ろうとしてたところに周瑜が声を掛けてきた。
周瑜がわざわざここまで足を運んであたしを呼びにくるなんて、本当に珍しい事だった。
あたしは急いで彼の傍に駆け寄る。
そしてこれまた珍しく、彼はどうやらどこか少し困ったような顔をしていた。
で、ここでピンと来たあたし。
「もしかして、小喬に何か頼まれたとか?」
「ああ、そうなのだ。・・・私も余り他人のこの手の話しに手出しをするのはどうかと思うのだが・・・。
他でもない、小喬の頼みだからな。彼女の頼みならば聞かない訳にはいかないのだ。」
周瑜は何となくのろけにも近いことを言いながら、少しだけ苦笑してあたしを見下ろした。
ま、策と大喬夫婦だけじゃなく、彼と小喬がどれだけバカップル風なのかはゲームでも知ってるし、
今更驚いたりはしないけど。
「それで・・・、何を頼まれたの?」
「私も余り時間がない。共に来てくれれば状況が飲み込めるはずだ。」
「分かった。ごめん、周瑜。」
あたしの言葉に、フッと周瑜は涼しげな切れ長の整った瞳を細めて笑って応えてくれた。
こうして傍で見ると、本当にこの人は『美周郎』の名に恥じない容姿の持ち主だと実感する。
「・・・この室だ。中に入れば誰が居るのか分かるだろう。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、ああ、そう言う・・・事か・・・。」
周瑜に言われるまま連れられて来た一室の前で、あたしは軽く頷いた。
この部屋に誰が待ってるのかなんて、もう考えることもない。
あたしが小喬たちに相談した後に彼女は自分の旦那まで使って、
『彼』をあたしと2人きりにしてくれようとしたと言うところだろう。
「私はこれで執務に戻る。後は好きにするがいい。」
「・・・・有り難う、本当に。」
「フッ・・・ではな。」
そう言って、周瑜はあたしに軽く微笑むと、そのまま背を向けて執務室へと戻って行った。
あたしはその背中を見送ってすぐ、部屋の扉に手を掛ける。
甘寧と久し振りに2人で話をするんだと思うと何だか妙に緊張した。
ちょっと前に顔を合わせはしたけど。
スゥーっと深呼吸をして、あたしは扉をゆっくりと開いた。
(甘寧編 延長戦 -続く-)
後書き
なぁんと!!続いてしまったではないかぁぁ!!
・・・・と言う気分です。小喬を出すといつも話が長くなります、何故だろう?(笑)
凌統編も1話に納めたので、甘寧編もそうしたかったんですけど、無理でした。
しかも甘寧殆ど出てない、ま、これまたいつもの事ですか(苦笑)
後半の長さは・・・・・・・・まだ何とも言えません。長ったらしくなるか、逆に短くなるか。
ではでは、今回もここまでのお付き合い、誠に有り難うございます。
失礼致します。
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