戦場の空気が、いつもより、鋭く、重く、感じる。
気のせいかもしれないけど、呂布がこの戦場に居るんだと思うだけで、
雰囲気全部が変わってしまったみたいに思えた。
「ハァッ・・・!!」
ザシュゥッ
「「「「「「「わぁぁぁ・・・・・!!!!」」」」」」
あたしに群がって来ていた敵兵が、重い手応えと一緒に一掃される。
敵兵の撃破数はいつの間にか150を超えていた。
虎牢関の戦い。
とうとうあたしは、対呂布戦に突入するステージに、来てしまった訳だ。
正直、無茶苦茶怖い。
スキルアップはこれでもかって位した。
呉内の武将、モブ武将は勿論、周泰や甘寧、
とにかく攻撃力の高い武将に手合わせをしてもらったりもした。
やれることは、全部やったつもり。
それでもやっぱり怖い。
何と言っても相手はあの「鬼神」とまで言われた呂布だ。
ゲーム内は勿論、史実でも恐れられていた程の人物。
現実世界でゲームプレイ中、呂布には何度叩きのめされたか知れない。
修羅モードじゃ、『化け物』扱いまでされてるキャラ。
ビビるなって方が無理ってもんだ。
[敵武将、張遼、接近中。]
「!ちょ・・張遼・・・!?」
槍からの敵武将接近情報に、あたしは思わず上ずったみたいな声を上げる。
ホント、間抜けな話なんだけど、呂布の事にばっかり気を取られてて、
他の顔あり武将の存在をすっかり忘れてた。
呂布がここに居る時点で、忘れちゃいけない筈のキャラの存在。
貂蝉と、そして張遼の事を。
[前方約500メートル。接近速度加速。]
今更焦っても遅いし、ここはもう、腹を決めるしかないか・・・。
張遼か・・・ヤバイ、真剣、緊張する・・・!
呂布は確かに最強だ。
だけど、だからってそれ以外の董卓側のキャラは簡単に相手が出来るかって言うと、
全くちっともこれっぽっちもそんな事はない。
実際、現実世界で無双プレイ中に張遼が主役とも思える『合肥の戦い』で、
あたしは彼に何度かズタボロにされて『敗北』した事も結構ある。
邂逅ムービーつきで覚醒状態、それを差し引いて普段の張遼だったとしても、
彼の戦闘能力は全く持って侮れない。
それにコントローラー握ってるのとは訳が違う。
『難しい』設定の難易度から考えても、苦戦すんのは覚悟するしかない。
[前方約100メートル。目標確認。]
「来る・・・・!」
蹄の音と一緒に上がる土煙。
張遼の姿はもう、あたしの目にもハッキリ確認できた。
「邪魔立て致すと容赦せぬ!この張文遠がお相手致す!!!」
彼が手にある青龍鉤鎌刀を振りかざして、あたし目掛けて声を上げる。
あっという間に縮まる、距離。
あたしは武器を構えて息を呑んだ。
張遼の騎乗した馬があたしの槍の届く範囲に近付く、一歩、手前。
彼を馬から叩き落す為にあたしは思いっきり地面を蹴ってジャンプする。
「はぁっ!!!」
「ふんっ・・・!!」
振り上げた槍が、ビュッ、と、風を斬って鋭い音が響いた。
瞬間。
張遼はあたしの槍を紙一重で避け、そのまま馬から飛び降りる。
「我が武、その身に受けるが良い!!」
飛び降りざまに武器を構えた彼が、大声で言った。
あたしも着地してすぐに戦闘態勢に入る。
体中で感じる、張遼の気迫。
向かい合って分かる、彼の強さ。
そりゃ曹操も目をつけるってもんよね・・・・。
ギンッ!!!
カッ・・・
何度も何度も寸での所で彼の攻撃を避けながら、あたしは必死でゲームプレイ中の動きを思い出す。
プレイキャラを姜維にして張遼を倒した時の動きを。
キンッ・・・!
「その槍捌き、見事!!!貴公、やはり噂に名高き『鬼姫』殿であったか。
この戦場で合間見える事、感謝いたす!!!」
「それは、どうも・・・!!」
戦闘の最中だって言うのに、張遼はそう言って何処か嬉しそうに笑った。
彼の性格からして、多分、強い武将と戦える事が嬉しいんだと思う。
そして、張遼にそう言ってもらえたことは、素直にあたしも嬉しかったりするけど、
状況が状況だから、笑っても居られない。
ザシュッ・・・。
「うおぉぉぉっ!!!!」
何度も彼と武器を合わせて、少しずつ、だけど確実に削ったヒットポイント。
一瞬の隙を突いてあたしの槍が彼の横腹に食い込んだ。
伝わる、確かな手応え。
体勢を崩した張遼に、すかさず、無双乱舞を喰らわせる。
威力に押されて、彼の体が吹き飛んだ。
「くっ・・・!!恥じて死すより、生きて汚名を注がん!!」
ふらふらとした足取りで彼が立ち上がり、そこにタイミングよく馬が走ってくる。
張遼はあたしが動くよりも早く、あっという間にその馬で遠くまで駆けて行った。
[敵武将張遼、撤退。張遼軍戦線離脱。追撃不可能。]
「・・・とりあえず・・・撃破じゃなくて良かった・・・かな・・・。」
思わず、本音が出てしまう。
このステージでの目的は董卓の撃破、それから・・・・・・呂布の撃破。
本当は、なるべく他の武将は討ち取りたくない。
勿論、向かってくればそんな事言ってられる余裕も無いけど。
簡単に手加減できるほど、この世界は甘くない。
「さすがは鬼姫殿だ!!あの張遼を撤退させたぞ!!!」
[自軍士気上昇]
叫んだ副将の声に少しだけ間を置いて、槍が言った。
あたしは副将に向けて片手を上げて応えると、
張遼に削られた体力ゲージを補充する為に近場にある呉軍補給拠点を目指す。
虎牢関に着くより前に、貂蝉の軍が配置されてる事は、ついさっき、槍で確認した。
それを突破すれば、呂布軍。
だけど。
―呂布が出とる戦では必ずアイツが嬢ちゃん目指して進軍してくるのじゃ。
爺さんの無責任極まりない核爆弾発言が、あたしの頭を掠める。
爺さんは確かに『進軍』と言った。
つまり、あたしが思ってるより早く、呂布と対戦するハメになるかもしれない。
と言うか、その確率は限りなく高い。
そんな事を考えていると、ご親切にも、手元の槍があたしの不安をズバリ明確にしてくれた。
まぁ、戦闘中はあたしの思考と直結してるから、当たり前と言えば当たり前なんだけど。
[呂布軍進軍開始。現在位置表示。]
「っ!!??」
・・・・・・ちょっと待って・・・!?マジで・・・!!??
槍から表示された呂布軍の現在地。
それは確実にあたしの軍を目指して移動していた。
だけど、あたしが驚いてんのはそんなことじゃない。
呂布軍と行動を共にしてる軍が居る事に、だ。
それが貂蝉の軍だと言う事は、槍に聞くまでも無くすぐ分かった。
つまり、私はこれから呂布と貂蝉を同時に相手にしなくちゃいけないことになる。
・・・・・・・・・・・無理・・・!!!!!無理無理無理無理!!!!!!
一人じゃ絶対確実に無理過ぎだわ・・・!!!!
って言うか、貂蝉の見てる傍で呂布が張り切らない訳がないし・・・!
呂布がどれだけ貂蝉の事を好きかなんて、無双プレイヤーなら誰でも知ってる。
残酷に、残虐に、ただ強さだけを追い求める鬼神、呂布奉先。
だけど、貂蝉に対する彼の想いは、ビックリする位純粋で一途だ。
実際、貂蝉でプレイした時の彼女に対する呂布の余りの変わりように、
ビビりまくったのはあたしだけじゃないと思う。
そうだ!!お爺さんのくれた本によれば確か援軍要請が出来た筈・・・・!
[援軍要請可能、連合軍現在位置表示。]
あたしの思考に反応して、槍が味方の軍の現在地を伝える。
あたしの居る場所に1番近くて、それでいて呂布や貂蝉に立ち向かえる援軍。
ピッピピッ・・・
[劉備軍・援軍要請可能。到着時刻は呂布軍とほぼ同時刻。援軍を要請しますか?]
「劉備軍・・・桃園三兄弟!?」
あの3人が援軍に来てくれれば、頼もしい事この上ない。
だけど、問題は彼らが要請に応じてくれるかってとこだ。
大体、この戦はプレイヤー以外の他の武将達は呂布は避けるってのが鉄則。
それを押してまで、必然的に兵を消耗しまくってしまうこの状況に、
援軍として来てくれるかが大問題な所だ。
正直、あたしなら絶対受け入れない。
[援軍を要請しますか?]
―YES or NO?
槍が選択を迫る。
迷ってる暇も余裕も、今のあたしには全くない。
例え要請を断られるとしても。
「どうか、仁の刃をあたしに貸してくれます様に!!!」
ピッ・・・!
―YES― or NO?
言葉と一緒に選ぶ、Yesの文字。
指先が震えてたのは、多分気のせいじゃないと思う。
もしもこれで断られた場合は、
結構な距離の場所に居る孫堅軍に援軍を頼むしかない。
その場合、援軍が来る頃には、間違いなくあたしは瀕死の重傷で、
バーチャル臨死スレスレ状態になってるだろうけど。
(鬼神-2へ続く-)
後書き
久し振り過ぎる・・・そして、またもや微妙な戦闘風景。名前変換なしで申し訳ないです。
山はあくまでこの後の呂布戦なので、董卓との戦いは短く収めたいと思ってます。
・・・・・・・希望ですが、理想ですが(苦笑)共通シナリオって、
本当に色気の「い」の字もありゃしない・・・・。早いとこ各キャラ分岐に移りたいです。
では、今回はここまでのお付き合い、誠に有難うございました!失礼します。
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