奇襲戦終了後にぶっ倒れたあたし。
それから数時間後に目を覚ました訳だけど、
笑って夢だったなんて、そんな都合のいい事には全くならなかった。
それどころかあの爺さんから連絡もないまま3日経って、
しかも奇襲攻撃をかけてきた敵が再び攻撃を仕掛けてきた。
さすがに初陣で痛い目を見ていたあたしは、
癪だと思いながらもあの謎の爺さんから渡された説明文に嫌と言うほど目を通していた。
基本的な知識をとにかく頭に叩き込んで2度目の出陣。
結果、防衛線はどうにか勝つ事が出来た。

『熱い戦いをしおって!わしまで燃えていもうたわい!ガハハハハ!!』

城に戻る途中、黄蓋があたしに向かってそう言って機嫌良さそうに大声で笑った。
今日の戦いであたしのすぐ傍で戦っていたからだ。

『どうも有り難う、でも黄蓋、味方のあたしらの方にまで爆弾投げるのは勘弁してよ!』

黄蓋が傍に居るのは心強かったけど、逆に敵よりも危険な存在だった気もする。
あんまり黄蓋から距離を取りすぎると敵と一緒に爆弾の餌食になるから、
あたしは必死でこの爆弾オヤジの傍から離れないようにしていた。

『お?すまん、すまん!つい熱くなってしもうてな!』

さっきと同じ台詞を言って、またしてもガハハと笑う黄蓋。
あたしは苦笑しながらそんな彼を見上げた。
これだけ自然に『ここの世界』の彼らと会話出来るようになっただけでも、
あたしは大進歩したとつくづく思う。
この3日間は誰に会ってもサインを求めたい位猛烈な勢いで感動して、
それと同じ位動揺していた。
彼らは史上の人物とはまた別の世界の人間で、
ある意味架空の人物に近い所がある。
そんな彼らにテレビ画面で見るのと直接会うのとでは余りに違いすぎる。
身長だって二喬以外は皆あたしより高かったし、
それにその二喬も想像していたよりずっと背が高かった。
何と言ってもあたしとたった1,2センチしか違わないんだから。
とは言え、あたしのこの体自体ある意味『借り物』ではあるんだけど。
呉の人達に慣れる(?)ことと同じ位苦労したのはこの体。
声は勿論、鏡に映る自分の姿にも最初は戸惑ってばかりだった。
まあ、その辺は最近やっと慣れてきたからいいんだけど。


、お前の力、頼もしく思うぞ!今回もよく働いてくれた!』
『おお、若!』
『孫権様。』

あたしと黄蓋の後ろから、馬で駆けて来たのは孫権だった。
いくらゲームの登場人物だからって、さすがに彼は呼び捨てには出来ない。
何たっていずれは君主になるはずの人物なんだから。

『孫権様、有り難うございます。』
『ああ、鬼姫の名に恥じぬものだったな。』



鬼姫・・・・か・・・・・。
いまいち分かんないのよね・・・その呼び名の訳が・・・。


思いながらも、あたしは馬上の孫権に頭を下げる。
彼はえらく満足げに頷いて、そのまま先に駆けて行った。


爺さん・・・、いい加減現れて説明しなさいよ・・・・。


孫権の背中を何となく見送りつつ、
あたしは心の中で謎の爺さんに対して呟いた。




その後、あたしは部屋のベッドで横になっていたんだけど、
またしても唐突に、例の声が上から降ってきた。
そう、ある意味待ちに待ったお爺さんからの連絡。

『よ!嬢ちゃん、元気にやっとるかの?』
『!!!!』

ガバッ


あたしは凄い勢いでベッドから飛び起き、
そしてすぐさま口を開く。

『いつまで待たせるのよ!?それに、あんたは誰なの!?』

普段ならほぼ初対面の、しかもお年寄りにこんな話し方出来るほど非常識ではないつもりだけど、
今回ばっかはそうも言っていられない、あたしは天井を睨みつけた。

『まぁまぁ、そう怒ってくれるな、嬢ちゃん。
わしは・・・・訳あって名乗れんのじゃが、嬢ちゃんの呼びたいように呼んでくれたらええ。』
『何・・・それ・・・・。ああ、もういいです。ここで常識を説いてもバカらしいから。
じゃあ今まで通り爺さんで。で?どういうことなのか説明して欲しいんだけど!?』
『説明か・・・それで、何が聞きたいんじゃ?大抵の事は紙に書いたつもりじゃがのぅ』
『読んだわよ!読んだけど、でもそんな簡単なもんじゃないでしょうが!?これ!?』

あんまりにも緊張感のない声で話すお爺さんに、あたしは思わず熱くなって叫んだ。
この3日間のあたしの多大なる苦労を、爺さん知らないからこんなにのんびりした事が言えるとしか思えない。

『そうは言っても実はワシにも何で嬢ちゃんがあのディスクを持っていたのか分からんのじゃ。
じゃから嬢ちゃんがそっちに行っていると分かった時は驚いてな。
あれは持ち出し厳禁のしかも未完成品じゃし、世に出すつもりはなかったしの。』
『でも現にあたしがここに居るし!しかもあたしの部屋で見つかったし!』

そこまで言ってあたしは自分を落ち着けるように小さく深呼吸する。
ただ熱くなってたんじゃ説明が聞けない所か話だって前に進みやしない。

『それで、あの紙に書いてある通りなの?
・・・・・・・・・・・・・・・・【天下統一しなければ帰れない】ってヤツ。』

1番気になってた文章。
この世界からの出入り口があるのかどうか。
あたしはいちるの希望を持ってお爺さんの返事を待つ。


『そうじゃ、天下統一以外に嬢ちゃんが帰る道はない。』


さっきまでのほほんとした声で話していたお爺さんが、
その台詞だけはやけにしっかりとした口調で言った。
それを聞いた途端、あたしの腰がストンっとベッドへおちる。
あの文章に目を通してもう3日、ある程度覚悟はしてたけど、
まさかこんな事が本当に現実にあるなんて。
だけど、聞いてしまった以上やるしかないのもまた確かだと思う。
何故なら、選択権なんかあたしにはないんだから。
帰る道はたった1本しか用意されてないんだから。

『あたしの体はどうなってるの・・・・・・・・・・?
これってどうみてもあたしじゃなくて、エディット武将だけど・・・。』
『それは大丈夫じゃ、嬢ちゃんの体は今も嬢ちゃんの家におる。
いわばここは精神世界に近いもんがあるからの。』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・仮想現実・・・・マ○リックスみたいなもんか・・・。』

お爺さんに対してと言うより、独り言であたしはそう呟いた。
そこでふとあたしは眉間にしわを寄せる。
この上なく嫌な考えが頭に浮かんだ。
嫌というか、最悪な考え。

『ねぇ、もしもこの世界で・・・・ゲームオーバー・・・なことになったらどうなるの・・・・?』

どうしても『死』と言う言葉が口に出来なくて、あたしは遠まわしに聞いた。
確か映画のマ○リックスでは仮想世界で銃で撃たれた場合、
その精神的衝撃が体に伝わって死ぬことになっていたと思う。
それがこの世界でも言えるとしたら、最悪どころの騒ぎじゃない。
この無双の世界は乱世が舞台。
戦が絶え間ないからこそゲーム化に選ばれて生まれた舞台。

『安心せい、嬢ちゃん。この世界で死んでしまうことはない。』
『ホントに!?良かった・・・・・・!』

あたしは心底ホッとして胸を撫で下ろした。
意味分からない内にゲームの世界に放り込まれた上に、
戻る前に殺されちゃあシャレにならないってもんだ。

『じゃがな、やはりエデット武将の死はそれだけで嬢ちゃんの精神にも大きな負担がかかる。
死ぬことがないとは言っても肉体的にも精神的にも危険な事には違いないんじゃ。充分注意するんじゃぞ。』
『・・・・・・何かすっごい理不尽な気もするけど、分かった、注意する。』
『さてと、それじゃあ今回はここまでじゃ。用がある時には机の中にある手鏡を利用してくれたらええ。
使い方は見ればわかるじゃろう・・・。体はゆっくり休めるんじゃぞ、でなければ精神的ストレスがもろに出てしまうからな。
じゃあ、わしは行くぞぃ。』

プッ

前回と同じように唐突にお爺さんの声が途切れた。
そして前回と同じように上から何かが降ってくる。
但し、今回は紙じゃなくて薄めの雑誌くらいの厚さのある物だった。
あたしはそれを受け止めて、ベッドの枕の下に隠す。
今すぐ目を通す気にはなれなかった。
何か男子中学生がエロ本隠すみたいで嫌だったけど。

結局、ここから現実世界にすぐには戻れないと言う事実は変わらなかった。
あたしは大きく溜息を吐くと、そのままベッドにごろんと横になった。
そして両手を天井に向けて上げ、ぎゅっと拳を握る。

道は1本しかないんだから。

ついさっきしたばかりの決意をもう1度確かめる。


あ、鬼姫のこと聞きそびれたな・・・・・・・・・・・・・。



そんな事を考えながら、あたしはそのまま眠ってしまっていた。



(決意 -終わり-)



後書き
無双キャラ前半にしか出てないし・・・。
本当にすみません。
しかもまだ分岐出来てない!!!
もっとこうまとまりのある文章が書きたいんですが、
本当に申し訳ありません。
ここまで読んで下さったお客様、誠に感謝です!
でわ、失礼致します。


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