元賊軍、長江を荒らしていたと言う鈴の甘寧。
彼の格好の基本は大体においてゲームの画面で見るあの姿だ。
つまり4で目にした上半身裸で腰に鈴と言ういで立ち。
たまに3の服装(?)をしていることもないでもないけど、
どっちかと言うと半裸・・・・・・・の方が多い。
初めて彼を紹介されたとき、好きキャラに会えた感動より先に、
あたしの口から出たのは悲鳴だった。
純情ぶる歳でもないけど、それにしても初対面であれはないと思う。
まぁ、初対面でいきなり悲鳴を上げるって言うのも十分失礼ではあったと思うけど。
ここに来てもう1週間。
さすがにそんな姿でうろつく彼にも慣れてきた。
何と言っても戦場でも勿論あの格好なんだから。
あれで攻撃力だけじゃなく、防御力まであるってとこがかなり謎ではあるんだけど。
でもまぁこの世界でツッコミ所を考えたら切りがない、
この世界自体あり得ない場所なんだし。
それに甘寧は本当にゲームの画面でもそうだったように、
戦場で傍に居てくれるとかなり助かるし頼もしい。
戦=喧嘩って感じで常に戦場ではまさに水を得た魚だ。
あたしがピンチになる前に、何故か不思議なくらい自然に傍に居る事も結構あったりした。
まだ戦には3度しか出てないけど、その最中に助けてもらった数も少なくない。
鈴の音が聞こえて振り返れば必ずアイツが居て、
彼の上半身を占めている双龍の刺青が楽しげに戦場を泳いでるのが見えた。
初めてその光景を見た時、ゲームじゃ味わえないその何ともいえない感覚にやけにぞくぞくした。
そのせいか、最初は甘寧の奴の半裸が直視出来なかった事も忘れて、
今はアイツが傍に居る時はその刺青の龍に目を奪われる事が多かった。
「っ!?ったぁ・・・!!」
「おっと、悪ぃ・・・!ちょっくら急いでてよ・・・・って、、オメェかよ!」
部屋を出て孫堅に会いに行くその途中、
廊下の角を曲がった所であたしは向こうから走って突進してきた甘寧とぶつかった。
当たり前なんだけど、身長差であたしは甘寧の胸部分で鼻を思い切りぶつけて、
しかもそのまま尻餅までついてしまった。
鼻を押さえて顔を上げると、甘寧が手を差し出してきた。
「おら、立てるか?悪かったよ。」
「・・・呂蒙さんに廊下は走るなって言われてるくせに・・・、何でそんな全力疾走してんのよ?」
あたしは恨めしげに甘寧を見て文句を垂れつつも彼の手を取る。
手が重なった途端に、あの力強い腕が片手で軽々とあたしを立ち上がらせた。
その拍子に余りの勢いの良さによろけて甘寧の胸に体当たりする結果になる。
とは言っても、奴は勿論そんなことでは『微動だにせず』な状態だったけど。
「甘寧、もう少し力の加減してくれると有り難いんですが。」
「・・・・そう睨むなって、これでも加減したつもりだったんだよ。」
あたしを見下ろしながら甘寧がぼりぼりと頭をかいた。
甘寧の体から自分の体を離しつつ、
あたしは何となく彼の上半身にある双龍の刺青に目を向けた。
褐色の肌に画かれたその龍は、彼の体の殆どを占めていて、
やけに鮮やかでそしていかにも『甘寧』らしく見える。
「またか、オメェは。」
「え?」
奴の言葉に顔を上げると、何故か嬉しそうな表情の甘寧。
嬉しそう・・・と言うかニヤついた、と言う表現の方があってるかもしれない。
「・・・何よ、その顔は?」
「いや、よっぽどこの刺青が気に入ったんだと思ってよ。」
「・・・・・・・・・・・・・気に入った・・・・・・・・。」
思わず甘寧の台詞をそのまま口にして、あたしはまた双龍に目を向けた。
『気に入った』と言うのは間違っては居ないけど、でも的確でもない気がする。
確かにこの龍にはやけに目が向くし変に惹かれるのも事実だ。
「?何だよ急に黙り込みやがって・・・。
・・・おい、もしかしてまだ体調悪いんじゃねぇのか!?」
ぼけっと考え事をしていると、何かを勘違いした甘寧があたしの肩を掴んで軽く揺らす。
体調が悪いと思った人間にこんな事が出来るコイツはやっぱりある意味すごい。
「違うし。」
「じゃあ何だ?オメェが大人しいと気色わりぃんだよ。」
「きしょ・・・っ!甘寧あんたねぇ!」
仮にもさっきまで寝込んでた女捕まえてこの言い草。
心配してくれてるのは分かるけど、やっぱ口が悪いわ、このヤンキー。
「・・・・もういい、何でもない・・・。てかあんた何か用事あって走ってたんじゃなかったの?」
「あ?・・・ああ、いや。俺の用事はもう終わっちまったようなもんだ。」
「・・・・・・何それ?」
あたしが言うと、甘寧はまたしてもニヤっと笑ってあたしの頭をグシャグシャとかき回した。
「いいんだよ、俺が終わったってんだから気にすんじゃねぇ。
それよりオメェ、ぶっ倒れてから何にも食ってねぇだろ?飯でも食いに行こうぜ。」
「・・・うーん、確かに何も食べてないけど、お腹あんまり空いてないんだよね。」
あたしの頭に手を置いたまま、甘寧があん?と軽く眉をしかめる。
「馬鹿か、テメェは。
んなことだからあんなあるのかねぇのか分かんねぇ体重してやがんだよ。
ちゃんと食っとかねぇと、育つとこ育たねぇぞ!」
言った甘寧が頭の上の手をあたしの腰かお尻か際どい辺りに移動させてペシっと軽く叩いた。
「ちょっ・・・!何よ!?それは!?このスケベ!!痴漢!!」
あたしは思わず声を上げて甘寧から離れる。
「スケ・・・っ!?オメェな!!ったく初対面っから人の事変態呼ばわりしといて、
今度は痴漢扱いかよ!?ざけんじゃねぇ!!」
「うるさい!大体何であんたがあたしの体重がどの位だとか知ってんのよ?!」
「んなのぶっ倒れたオメェを部屋まで運んだからに決まってんだろうが!」
「!!??」
「げっ!!」
その瞬間に、目の前の甘寧の顔が明らかに、しまった!と言う表情に変わる。
言い合いの末、どうやら口にするつもりのなかったことを言ってしまったらしい。
だけどもう遅い。
あたしはしっかり聞いてしまったから。
「そうだったんだ・・・。だったら言ってくれれば良かったのに、迷惑掛けっぱなしじゃん、あたし。」
「・・・ケッ別に迷惑だなんて思っちゃいねぇぜ。」
「・・・・・・そう。」
短く返事をしながら、あたしはお礼を言うタイミングを計る。
さっきまで痴漢扱いしたりした手前変に言い出しにくい。
しかもあたしを抱きかかえて部屋まで運んでくれた甘寧の姿を想像すると、
妙に照れくさい気分になってしまった。
ある意味、夢のような光景第2弾ではあるのかもしれないけど。
因みに第1弾は孫堅と馬に乗った事だ。
「ま、終わった事ゴチャゴチャ言ってても仕方ねぇ。さっさと飯食いに行くぞ!。」
「え?あーー・・・・うん。」
先に歩き出した甘寧の言葉に、あたしは素直に頷く。
そして少し遅れて足を進めながら、またしても奴の背中にまで渡るあの見事な刺青の龍に目を奪われていた。
甘寧が歩く度にコロンコロンと鳴る大振りの鈴独特の音色がやけに耳によく馴染む。
そこで何故か自分でも分からないけど、あたしは気付いた。
彼のヤンキー染みた頭の羽根も、鈴甘寧のトレードマークの鈴も、そしてあの刺青も、
彼のものだから、アイツの一部だからついつい目が向くのかもしれないと言うことに。
ただ刺青が見事だから気に入ったのとは違うと思ったのは、つまりそう言うことじゃないだろうか。
・・・これもある意味・・・このバーチャル世界の醍醐味ってヤツ・・・?
そんな事を考えつつ、あたしは甘寧に追いつく為に少し足早に歩いた。
そして、後ろから彼の筋肉質なその背中をバシッと叩く。
「だっ!!!って、何なんだよ!?オメェは!?」
「お礼とお詫びに今日は奢るぞ!鈴甘寧!!ついて参れ!!」
甘寧を少しだけ追い越して、振り向いてからあたしはそう言って笑った。
それから更にヤツに背を向けて続ける。
「但し、あたしに追いついたらってことで!(神速符レベル18着用)」
「んだぁ!?俺相手に走りで勝負たぁ、オメェも馬鹿な奴だな!!」
振り向かなくても甘寧が嬉しそうに走り出したのが分かった。
笑い声を上げながら、あたしはここでやっと言わなきゃいけない言葉を言った。
「有り難う!!甘寧!!」
「ケッ!馬鹿野郎!んなことより、今は勝負に集中しやがれ!」
スタート遅れてたにも関らず、さすがに移動力の高い甘寧だけはある、
すぐ後ろにピタリと着けられてるのが分かった。
だけどあたしが更にスピードを上げる中、
甘寧の奴がさっきより更に嬉しそうな表情をしてたことは、あたしが気付くはずもなかった。
(双龍の刺青 -終わり-)
後書き
・・・凌統編に比べると短いですね。
本当はこれ小喬が出てくるはずだったんですが、
その方向で行くと話が逸れる上に続きが思い浮かばなくなったので断念↓
・・・しかし何だか今回いつもより更に話がまとまってないような・・・。
では、ここまで読んで下さったお客様、有り難うございます!
失礼致します。
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