ここ、バーチャル世界はとにかく何もかもが綺麗だ。
例えば今あたしの目の前に広がってるこの海と、そして空。
抜けるような青空と同じ位真っ青な海の色は同化しそうな位。
つまり今あたしは、テレビ画面で見る無双のグラフィックの美しさを、
まさしく肌で体験している訳だ。
「最高!!ホントに絶景!!」
潮風を身体に心地よく感じながら、あたしは両手を広げて言った。
甲板で慌しく動き回っている船員が、そんなあたしの姿を見て笑う。
そしてその向こうから他の船員と話をしていた甘寧が小走りであたしの方へ向かってくる。
「おぅ!、こんなんで驚くなんざまだ早ぇぜ。オメェ、高い場所は平気か?」
「え?うん、それは全然・・・。でも何で?」
「ヘッ、ま、ついて来りゃ分かるぜ。」
そう言って甘寧は悪戯っぽく笑って、あたしの腕をぐいぐいと引っ張った。
「?甘寧?」
「その梯子に登れ、見張り台に立たせてやるからよ。」
「ええ!?本当に!?」
驚くあたしに彼はまた、おぅ!と威勢良く返事をしてくれた。
「うわー!嬉しい・・・!」
「じゃ、先に登れよ。
そう促す甘寧に、頷いて返そうとした所であたしはその首を左右に振った。
「駄目、甘寧、あんたが先よ。」
相変わらず露出度の高い私の服装は、今日もやけに胸元や太腿まわりがスッキリしている。
このまま私が先に登れば後に来た甘寧に丸見え、
と言うかこの場合『丸見せ』になってしまうってもんだ。
「チッ・・・気付きやがったか・・・。」
舌打ちをしてそう呟く甘寧。
あたしはそんなアイツの背中を後ろから拳でどついた。
「だっ!!!テメェな!!」
「ウルサイ!天然系痴漢男!さっさと先に登って!」
あたしのその言葉に思い切り顔をしかめてぶつくさ文句を垂れつつも、
甘寧は見張り台へ続く梯子に手をかける。
「、登りきるまで下は絶対見んじゃねぇぞ。
いくら高いのが平気たって、途中で見ちまうと恐怖心が湧いちまうからよ。
何かあったらすぐ俺に声かけろ、いいな。」
「ん、分かった。」
何だかんだとふざけているようでもこういうところはやっぱり甘寧、
しっかりあたしのことを気にかけてくれる。
頼もしくて、面倒見が良くて、船員達に『兄貴』なんて呼ばれてるのもベタ過ぎなのに頷けてしまう。
今日あたしがこうやってこの船に乗ることが出来たのだって、彼のおかげだ。
甘寧と食事中に話の流れで何となく海の話になって、
あたしが軽い気持ちで『行きたい』と言ったのを翌日にはこうして実行に移してくれた。
「、後もうちょいだ、足元気ぃ着けろよ。」
「うん、大丈夫。」
梯子を登る間もあたしの速さに合わせて進み、あたしを見下ろしては声をかける甘寧。
ゲームの画面で見て、想像してた以上にイイ奴だ。
ただの単純野郎でもないしね。
見上げれば、甘寧はもう見張り台に到着していた。
あたしに手を差し出してくれている。
「着いたぜ、おら、片手貸せ。」
「ん。」
短く返事をして甘寧の手に自分の手を重ねる。
彼はすぐにあたしをグイと上へ引き上げた。
「んっと有り難う、・・・あ・・・・・・・・すごい風・・・・!」
「見ろよ、。こーゆうのを本物の絶景ってんだぜ?」
甘寧はそう言って眼下に広がる光景を指差した。
見渡す限りの海と、手の届きそうな程近い空のあんまりの綺麗さに眩暈さえしそうになる。
『作られた風景』そう言ってしまえば終わりかもしれないけど、
目にしているこれはそんなものでは収まらない。
「ほんっと!最高!!これぞ絶景!!」
殆ど叫ぶみたいに言って、あたしは見張り台の手すりに身を乗り出した。
甘寧はそんなあたしを後ろから嬉しそうに眺めている。
ひとしきり海と空の見事なコントラストを楽しんで、あたしはふと振り返った。
甘寧があたしと反対側の手すりの前で腕を組んで海を見つめて言った。
「やっぱいつ見てもデケぇな、海ってやつぁ・・・。」
真っ青な空に甘寧の背中の双龍が今にも飛び出して行きそうにあたしには見えた。
「・・・あ、ああ・・・そっか・・・、それもありか・・・。」
「あ?んだぁ?急に、何1人で納得してやがんだ?」
あたしの独り言に甘寧がクルリと此方を振り向く。
「え?ああ、甘寧って海が似合うなと思って。
あたしん中じゃあんたって『滾る赤』のイメージが強かったけど、
こうやって見ると青も似合うよね。けど考えてみたらもともと水賊なんだし、
不思議じゃないと気付いたって訳よ。」
「?よく分からねぇが・・・ま、いいや。」
甘寧が不思議そうにあたしを見て笑って言った。
そこへ、下から彼を呼ぶ船員の声がする。
「兄貴!すいやせん!ちょっと!!」
「おぅ!すぐ行くぜ!、そろそろ降りるぞ。」
「分かった。」
あたしは甘寧に向かって軽く頷くと、すぐに梯子を降りることにした。
それから梯子を完全に降りた後、甘寧はついさっき彼を呼んでいた船員の方へ走って行った。
あたしはまた海と空を堪能する為に、1人で舳先へ向かった。
蒼く、それでいて透き通るキラキラと輝く海の中には、綺麗な魚が泳いでいるのが見える。
テレビで見た沖縄の海みたい・・・。
ズズズッドッ・・・・
「っ!?」
波に見惚れてぼけっとそんな事を考えていると、突然船が揺れ出した。
あたしは咄嗟に何が起きたのか分からず、船員達の居る甲板の方へ振り向く。
甘寧が怒鳴る声が聞こえた。
「野郎共!!これっぐれぇで慌てんな!!岩盤にぶち当たっちまう前によけろ!!!」
「「「「へいっ!!!兄貴!!!」」」」
どうやら予期せぬ事が起きたみたいではあったけど、
甘寧はそんな中船員達を怒鳴り上げつつテキパキと指示を出している。
ズ・・・ドドッ・・・
またしても船が小刻みに揺れ始めた。
甘寧が眉間のしわを濃くして舌打ちをする。
「チッ・・・こりゃどうにかぶち当てんのだけは避けきりゃするが、揺れは避けきれねぇな・・・。
おい!!振り落とされんじゃねぇぞ!!!!!!!!」
ズド・・・ドッ・・・・・・
ドドーーッッン・・・・・!!!!
「っっっ!!??」
あり得ない程大きな轟音が響いて、その瞬間に船が大きく左右に揺れた。
気付いた時にはあたしはその船から投げ出され、驚く間もなく海の中へ落ちる。
ドボッ・・・−ンッ・・・
海の中、と言うよりは空へ溶け込んだみたいな真っ青な水の中、
あたしは口からゴボゴボと泡を吐き出しながら必死で手足を動かした。
なのに、水上は遠のくばかりで、無数の泡があたしのもがく手足から上へ上と昇っていくだけ。
バーチャル世界のくせして現実と全く変わらない水中の感覚。
うそでしょ!!??
ちょっっと・・・!!ちょっと待ってよ!!!!
頭は勿論パニック状態で思考回路は錯乱もいいとこ。
戦場でのバーチャル死体験は頭をよぎった事はあっても、こんなリアルな『死』全く頭になかった。
と言うか、ここでもしこのまま助からなかった場合、
あたしはどうなってしまうのかちっとも予想出来ない。
ドブッ・・・
頭上で誰かが水中に飛び込む音が微かに聞こえた。
だけどそれを確認するより早く、息苦しさは限界を超える。
もがく様に動かしていた手足の感覚も鈍くなり始めていた。
爺さん・・・・・恨む・・・ん・・・だか・・・・・・・・・
腕や足が鉛みたいに重くなった所で、あたしの意識は途切れていく。
そんな中、蒼い海中を泳ぐ双頭の龍の姿が見えたのは、やっぱり幻覚だったのだろうか。
(甘寧編 蒼 -続く-))
後書き
前半と後半の長さがつり合わない可能性大です。
まさか甘寧編まで前後編になってしまうなんて(涙)
本当はもっと短く(以下省略)
一応ヒロイン20代で甘寧より下なんですけど・・・・、
ガキ臭いことこの上ないですね。書いてる人間のせいです、申し訳ありません。
では、今回もこんな作品を読んで下さったお客様方、有り難うございます。
失礼致します。
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