[曹操軍ニ向ケ幻術発動。竜巻発生]

「!!」

先を急ごうとしたその途端、手元の槍が言った。
あたしは足を止め、周りを見渡す。
すぐに敵将が残したらしい馬を発見した。
あたしがそれに飛び乗ると、前を走っていた黄蓋が振り向いて訊ねる。

「どうしたんじゃ!?!」
「先に行ってて、あたしはやることがあるから!」

難易度が『普通』以上の場合、
殆どの確率でプレイヤーのあたしが動かなけりゃ他の軍は妖術に足止めされてしまうはず。
あたしはとりあえず急いで曹操軍の元に向かう事にした。
あたしの記憶じゃ、この戦で曹操の下についてる部下は李典だけだったはずだ。
槍があたしの目的地である曹操軍の居場所を地図で教えてくれる。
それと一緒に竜巻の発生源である張梁の場所も。

「っ!!居た!!!!!!!」


ドックン・・・

胸の奥が跳ねる。

初めて目にする呉陣営以外の無双武将。
しかもいくらゲームのバーチャル世界とは言っても、今目にしてんのはあの『破格の英雄』曹孟徳。
遠目に姿を見つけてしまっただけで、身体の芯から緊張が走ってしまう。
勿論、無双プレイヤーとしてのミーハー気分での嬉しさも大いにある訳だけど。


・・・・とっ・・・とととにかく!!!
あたしが竜巻を止めるまで兵たちをここで待機させてもらわないと!!


馬で彼の傍まで駆けて行きながら、思いっきり深呼吸する。
心臓が笑える位爆音たてて鳴り響くのを極力気にしないようにして、あたしは曹操に向かって叫んだ。

「曹操・・・っ様!!!私が先へ行き、張梁を討って参ります!!
それまでどうかここでお待ち頂けないでしょうか!?このままでは兵達を竜巻の犠牲にしてしまいます!!」

緊張しまくり過ぎて、名乗る事さえ忘れて、しかも声が裏返りそうになっていた。
振り向いた曹操は少しだけ驚いた様子で私に視線を合わせた。

「ぬ?お主は・・・・、何者だ?」
「突然申し訳ありません・・・!孫堅軍、武将、と言います。曹操さ・・・・!?」

ビュッ・・・・


耳を弓矢が掠め、寸での所であたしはそれを避けた。
しかも、いつの間にか周りにわらわらと黄巾兵が群がり始めている。
その上、手元からいつもの機会音がこう言った。

[曹操軍、竜巻被害拡大]

あたしは馬からあたしを落してやろうと必死に襲い掛かる敵兵を、
槍でどうにか捌きつつ、また曹操に声を掛けた。

「時間がありません!申し訳ないですけど、とにかく兵達を待機させて下さい!!では!!」

それだけ言って、また馬を駆けさせた。
曹操ともっと会話したいだとか、もっと近くで見てみたいだとか、そう言うことを言ってるときりがないけど、
今は早いとこ竜巻を起こしている張梁を倒さないと困るのはあたし自身。
他軍の兵たちにも頑張って敵兵の数や拠点を潰してもらわなけりゃやっていけない。
これは確実にゲーム画面だけの小手先作業じゃないんだから。


それに、曹操軍の後は義勇軍の落石も止めないといけないしね・・・。
ここは美味し過ぎる状況を堪能してばかりもいられないんだ・・・。

[竜巻発生地点接近中、距離500メートル]

「はいはい、分かってるわよ!!!」

あたしは大声で無意味に返事をし、馬を更に早く走らせた。
土煙で前方の視界が悪い上に、敵兵があたしめがけて襲ってくる。
竜巻発生地点に着くと、敵も味方も関係なく凄い勢いで竜巻に巻き込まれている兵たちが目に入った。
あれに襲われてぶっ飛ばされる自分の姿なんか、想像したくもない。
あたしは注意深く馬を少しずつ、確実に歩かせた。
どうにか必死にそれを凌いで先へ進むと、
祭壇らしきところに張梁と黄巾党の兵が集まっていた。

「天を信じぬ凡愚どもめぇ!!死してその罪を償うがいい!!」
「冗談!!あんたごときでバーチャル臨死なんか御免よ!」

槍を大きく振り回し、一気に張梁の周りの黄巾兵を掃除する。
数回通常攻撃を食らわしてやりながら、
同時に溜まる無双ゲージが一杯になった所で狂信者の奴をぶっ飛ばした。
ウワァァと言う一般兵の叫び声と、張梁の最期の言葉が重なる。
倒れて動かなくなった張梁の身体から、
フワリとアイテムが出現して、いつものように槍に吸い込まれた。

[張梁撃破、竜巻停止。曹操軍、進軍再開。]

拠点の傍にある壷を叩き割り、回復アイテムで体力を回復してからすぐにあたしは曹操を目指した。
夢中で張梁の居場所に来る間に、あたしはいつの間にかこの『難しい』設定の中、
どうにか300人斬りを達成していたらしい。
そう言えば途中で何進が『腕を上げたな!』とか言ってた気がする。
あたしは余りに夢中過ぎて殆ど気にする余裕がなかった。


殿達の声だったらすぐ耳にはいるんだけどね・・・。


「お前は、とか申したな。」
「っ!!はっはいっ!!!」

唐突に声を掛けられて、あたしは慌てて馬を止める。
槍が曹操接近の情報を伝えているのにも気付いてなかった。
あたしのすぐ先に居る曹操が、馬をゆっくりとこっちへ向けて進ませてくる。

「うむ、噂に名高き鬼姫とはおぬしのことであったか・・・。
見事な腕前、しかとこの曹孟徳の目に焼き付けた。
兵の消耗を避けられたのはお前のおかげだ、礼を言わねばならんな。」

曹操は微笑みを浮かべて言った。
あたしはと言えば、あまりのことに咄嗟に言葉が出なかった上に、
顔を明らかに真っ赤にして1人で慌てふためいていた。
それでもどうにか返事をしようと、曹操に気付かれない様に小さく深呼吸して口を開く。

「・・・っ勿体無いお言葉、有り難うございます・・・!」

情けない話だけど、それだけ口にするのがやっとだった。
曹操はそんなあたしを見て目を細めて頷くと、馬を再び進ませながら言った。

、まだ戦は終わってはおらん。その力、更に輝かせてみよ!!」
「あっ・・・!はい!!」

そのまま彼はあたしの傍から離れてまた軍を率いて戦いに戻った。
あたしはただ呆然とその背中を見つめる。
『呆然』と言うか、『うっとり』と言った方がいいかもしれない。
えらく古典的だけど、そんな表現がピッタリだった。


・・・駄目だ・・・、やっぱ格好いい・・・さすが覇王・・・。


[義勇軍ニ向ケ妖術発動、落石、進軍難攻、現在被害拡大中。]

「っ!!!ヤバ!!!」

槍が伝えた情報に、あたしはハッと我に返るとまた馬を駆けさせた。
その途端にまた劉備達の居場所と張宝の居場所が地図で映し出される。
あたしは再び自分の気合を入れなおして、目的地へ向かう事にした。

正直、桃園3兄弟に生で会えるのを楽しみにしたりしている邪な自分が居たりもしたけど、

今はそんなことで浮かれてる場合じゃない。

確実に、慎重に、それでいて素早く、この黄巾の乱を終わらる。


とにかく、今はそれだけ考えろ!あたし!


(黄巾の乱・2 -3へ続く-)



後書き
えーと、共通シナリオ=恋愛要素皆無と心得て下さると有難いです。
策編は分岐(?)なんでそれなりに少しは入れるつもりですが、
何せ今回の甘寧、凌統ルート、相手キャラ出やしませんので。
9話以降またそれぞれ分岐しますので、どうにかご勘弁を。
恋愛要素なしでも楽しめるような文章書きたいとは思ってるんですが・・・、
・・・・・・・・・・申し訳ないです。
では、今回ここまでのお付き合い誠に有り難うございます。
失礼致します。


ブラウザバック推奨